cahors日記

美味しいものを求めて東へ西へ

チーズ中級講座 世界編⑥ イギリス

2010-10-02 | チーズ
6回目のテーマは「イギリス」。



気候や歴史をざっくりまとめると・・・。



イギリスは標高の高い山がなく平野が多い。なだらかな地形で雨の多い穏やかな気候は、牧草地に向いている。



伝統的にチーズ造りが盛んに行われてきたが、19世紀の疫病発生から大量の牛を撲殺され、チーズを造ることが困難に。



そこで、アメリカから工場製のチーズが輸入された。



それを機にイギリスでも、農家中心だったチーズ製造が工場化され、農家製チーズは姿を消すことなる。



その際、MMB(ミルク・マーケティング・ボード)により農家のミルクの供給と乳牛メーカーの
需要が調整され、製造できるチーズは一律化された。



現在は、伝統的なチーズが見直され始めている。



本日の試食チーズはこちら。

全て、イギリス特有の製法“チェダリング”したもの。中央は“トマトのチャツネ”。



飲み物は、ボルドーの赤とイギリスと言えば!のビール。



シャトーデュティル2004               ペールエール(上面発酵ビール)
 
ボルドーはかつてイギリス領だったこともあり、つながりが深い。



ビールは、おなじみバス。喉越し重視・下面発酵の日本のビールに比べて味わいが濃い。



チーズはまず、チェダー3種類。



世界中で多く造られているチェダー。チェダーとはその製法“チェダリング”からくるもの。



その“チェダリング”とは、凝固させたカードをしばらく置いて(数時間)、その後、ポロポロのミンチ状に
細かく砕き、塩を混ぜ込み型詰めすること。



チェダリングをする理由は、カードをしばらく置くと乳酸発酵が進み、酸度があがる。

そのため、殺菌効果が上がり、チーズ造りが比較的簡単になる。また、細かく砕いたカードに
一定量の塩を混ぜ込むので、味を決めやすい。

つまり、チーズ造りにおいて、失敗が少ないということ。

チーズとしては、初めてレシピ化され、世界中で造られている理由にもなっている。

チェダリングしたチーズは見た目にも、砕いたものをくっつけた感じが確認できるし、
ナイフで切ると割れやすいためこのようなチーズワイヤーがオススメ




【リンドレスチェダー】熟成違い

左はレッドチェダー16ヶ月熟成。右はホワイトチェダー3ヶ月熟成。



リンドレスとは表皮をつくらない真空パックで売られるもの。リーズナブルなのが魅力。



熟成若いホワイトはチーズらしいあっさりとした味わい。それに比べて長期塾生のレッドは、
アミノ酸の結晶も感じられて旨みが凝縮。ねっとりと濃くてビールがよく合います。



【ウエスト カントリー ファームハウスチェダー PDO】

こちらが正真正銘チェダー故郷はイギリス南西地方のチェダー渓谷。



現在も伝統的な手法を守りながら造られている。



表皮のまわりを包帯のような布で巻いてその上からラードを塗って空気に当たらない状態で、
熟成を進める。その期間、最低9ヶ月。チェダリングされた組織の中には自然に混じった青かびも見られることも。



今回のも、青かび入りでした。味わいは塩気がしっかりしていて濃厚。



チェダー3種類食べ比べ。トマトのチャツネを添えて。

チャツネはインド料理でお馴染み、野菜や果物のスパイス煮。スパイシーなジャムという感じ。



トマトのチャツネはウスターソース風の味でした。



単調になりがちなチェダーにアクセントをつけてくれます♪



お次は世界三大青かびで有名な【スティルトン PDO】熟成違い

生産は、ノッティンガムシャー・ダーヴィシャー・レスターシャーのみで許可されている。



“スティルトン”とは村の名前で、でも、その村ではスティルトンは造られていない。



ではなぜ?それはスティルトン村にある“ベル・イン”というホテルで、
このスティルトンが泊り客に売られ、その美味しさが評判となったからだとか。



上は15週間熟成。下は8週間熟成。



スティルトンは表皮がしっかりあるのでその皮由来の香ばしさが好き!



熟成違いで劇的な違いは感じなかったけれど、15週の方がこなれた味わいでした。



スティルトンには相性◎のポートワインを合わせて。

ポルトガルの酒精強化ワイン。甘くてAlc20%。こちらはルビーポートでやや、カジュアル。



スティルトンの塩気にはポートワインの甘みがぴったり。



でも、名前の由来となったホテル“ベル・イン”では“スティルトンにはビールがオススメ”と謳っているとか(笑)。



でも、確かにビールとも合いますよ~。



【セイジ ダービー】

チェダリングの組織が分かるチーズ。植物性の色素とセージの葉を混ぜこんでいる。



大理石調の模様が美しく、チーズ盛り合わせにあれば、目にも華やか。



他にも、黒ビールやワインを流し込んだものもあり。



【シャロップシャー・ブルー】

鮮やかなオレンジ色はアナトーで色づけされたもの。味わいはスティルトンにそっくり。



アナトーで色づけされたオレンジ色のチーズはイギリスをはじめ、オランダや北フランスに多く、
北ヨーロッパ特有の傾向みたい。



ここでイギリスは一休み。



2ヶ月ほど前に私が持ち込んだスペインの【トルタ・デ・バロス(Torta de Barros)】の登場。

朝鮮あざみの雌しべを利用して凝固したスペイン特有の羊乳のチーズ。



可愛らしいリボンで巻かれています。



賞味期限が2ヶ月過ぎて、触った感じはかなり硬かったけれど、中は柔らかい。

植物製レンネット特有の苦味、羊乳のこってり。初心者には向かない個性的な味ですが、
チビチビ食べ進めると、結構癖になる。。。



デザートチーズ【ホワイトスティルトン】

スティルトンといってもカビは入っていません。スティルトンと同じ生地を使って、
レモンピールが加わっています。その甘さのチーズの塩気が絶妙。



これは紅茶に合わせてみたい!



最後は【ウエルッシュ・ラビット】

ラビットと言っても、兎料理ではありませぬ。



チェダーチーズをエールビールで煮溶かし、マスターソースとウスターソースで味付けしたもの。



イギリス風だと薄いトーストにのせて頂きますが、今回はバゲットで。



名前の由来は、昔、兎狩りに出かけたが、獲れなかった時に、
これを食べていたからだとか。



ソースやビールのコクとチーズの旨みが混ざって、こってり・しっかりした仕上がりでした。






memo

・チェダーチーズは温めると、より美味しい。


・イギリスチーズには、ビールが合う。


・華やかな色合いものはチーズプレートにオススメ。


・アナトーを使ったチーズは北ヨーロッパの特徴。

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