雑木帖

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北朝鮮のドンは統一教会に入信でもしたのか?

2006-10-11 20:16:33 | 政治/社会
 毎度とはいえ、今回の絶妙なタイミングの“核実験”は、世界が危惧するように(アメリカと日本の一部の危険な人々を除き)、東アジアでの核武装ドミノの序章となる可能性のある絶対やってはいけないものだった。
 “北朝鮮の核実験声明”(21世紀の日本と国際社会 浅井基文)にあるように、金融制裁などで追い詰められたための北朝鮮の最終手段だったのか、それとも、いつもの統一教会を軸にした朝米日韓ラインの潜行した東アジアの「枠作り」の「シェイプ」の一環だったのか。
 僕にはもちろん判断はつきかねる。けれど、様々な理由から、今回も後者である可能性のほうが高いというほうに考えを傾けざるをえない。
 しかし、いずれにしても、北朝鮮が統一教会に経済面で牛耳られているというような程度のものではなく、ドン・金正日が統一教会に入信でもしたのではないか、とも思われるほどのデタラメさぶりである。
 前に紹介したように次のことを思えばそれも有り得ないことではないだろう。

 息子金正日の教育まで託す

 日本の統一教会員たちが北朝鮮で経済活動を行うきっかけとなったのが、九一年十二月の文教祖と金主席の会談である。文教祖の北朝鮮訪問の目的は、生まれ故郷を訪問すること、さらに統一教会グループと北朝鮮の宗教、思想、教育問題および経済協力の協議をするためだとされていた。九一年十一月三十日、香港から北京に到着した文教祖一行は、北京国際空港の貴賓室で北朝鮮の金剛山国際グループの朴鍾根社長から、金達玄副首相がサインした招請状を受け取った。文教祖一行は北朝鮮の専用特別機で平壌に到着。十二月一日に金副首相、六日には金主席との会談を持った。
 …(略)…
 会談では、金日成主席が文鮮明教祖に、息子である金正日氏の教育まで託すという「遺言」めいた話にまで及んだという。統一教会の大江益夫広報部長はこう語る。「文先生は『私のお兄さんになってください』と言い、金主席が『いいでしょう』と答えたそうです。そこで文先生が『私たちは義兄弟です。お兄さんに頼みがある。これからはあなたの息子(金正日氏のこと)の教育を私たちに任せてください』と言いました。金主席は『分かりました』と答えたんです」
 金正日氏への「教育」が金剛山国際グループを通じて行う統一教会員たちの資本主義的な経済活動や投資ならば、文教祖は金主席との約束を充分に果たしている。
 (『「神の国」の崩壊』有田芳生著 1997年09月刊より)

『ダカーポ』 2006.09.20で鈴木邦男氏が、「一方で、(北朝鮮は)拉致被害者5人を返せば日本は納得するだろうとか、横田さんの夫の再会演出で日本は喜ぶだろうと考えるなど、日本に対して読み違えも多い。今や、日本社会の温度や感覚について、アドバイスをくれる人が北朝鮮にはいないためでしょう。かつては、日本の団体や政党などの人脈があったのですが、今は北朝鮮と付き合ったり情報を渡すと、ケシカラン!売国奴!とパッシングをされるため、ほとんど交流がなくなってしまっている」と書いている。その通りで、拉致問題が悪化してからも日本の世論の非難を、北朝鮮は「日本の右翼分子が…」と見当違いのことを自国のニュース番組で流している。

 しかし、たとえば、昨年の2月9日の日本でのサッカーワールドカップの日本対北朝鮮の試合を横田めぐみさんのご両親がテレビで観戦し、「大変面白い試合だった。心配されたトラブルもなくて良かった」「政治と関係なく見た。北朝鮮の選手も一生懸命で、気持ち良かった」と発言した次の日、北朝鮮は「われわれは、すでに核兵器不拡散条約から脱退するという断固とした行動を取り、われわれを孤立させようとするブッシュ政権に対抗するため、自衛目的の核兵器を製造した」と発表し即座に敵対的な雰囲気に戻した。
 まるで対北朝鮮関係で少しでも未来的によい兆し、雰囲気などになることを細心の注意を払って絶対に避ける、と言わんばかりの行動に出ているのだ。しかも、その行動が、日本に居て仔細に世の中の空気を読んでいるかのように的確なのである。
 ところが、北朝鮮中枢部の実態は上の鈴木邦男氏が指摘した通りなのだ。
 この「読み」の適否のアンバランス、懸隔をどう説明すればよいのか。むろん日本の政財界に根をはっている統一教会が裏で蠢いている、ということなら矛盾はなくなる。

 今年7月5日に北朝鮮がミサイル実験をして世の中を騒然とさせた。
 10日、韓国の新聞『朝鮮日報』が次のようなニュースを載せた。

 【ミサイル発射】インドのミサイルは問題にならないの?

 インドは9日、核弾頭を搭載できる中距離大陸間弾道ミサイル(ICBM)を初めて試験発射したと発表した。インドが発射したこのミサイルは、最大射距離が4,000キロで、北京や上海など中国の主要都市を射程圏内に置いている。

 にもかかわらず、北朝鮮のミサイル発射以来、制裁事項についてまで話し合っている米国や西側諸国はこれを一切問題視していない。インドのメディアは「米国の暗黙的同意の下に行われたもの」としている。なぜだろうか。
 (略)
 しかし、この興味深いと思われた論点の推移はすぐに次のインド国内で起きた大事件のニュースで掻き消された。

 ムンバイで連続列車爆破テロ=死者163人、負傷者464人-インド [AFP=時事] 2006.07.12

【ムンバイ11日】インド西部の中心都市ムンバイで11日夕、列車や駅を狙った連続7件の爆弾テロが起き、少なくとも163人が死亡、464人が負傷した。今のところ犯行声明は出ていないが、カシミール地方の分離独立を求めるイスラム過激派のテロとみられている。(写真はムンバイの爆弾テロで爆破された列車)

 爆発は通勤客で込み合う夕方のラッシュアワーに起きた。しかも約20分以内に満員列車で次々に起きている。連続爆弾テロを受けてマンモハン・シン首相は首相公邸で緊急会議を開いた後、国民に平静を保つよう呼び掛けるとともに、「われわれはテロリストの悪らつな企みを打ち破る」と言明した。

 インドの治安当局は首都ニューデリーのほか、北部のウッタルプラデシュ州、カシミール地方で厳戒態勢をしている。この日の連続爆破事件についてA.N.ロイ・ムンバイ警視総監は「爆発の背景には明らかにテロリストの一味がいる。なぜなら普通の人はこんなことはしないものだ」と語った。また隣国のパキスタンは同事件について「いやしむべきテロ行為」だと非難した。
 ところが今月1日、同じAFP=時事通信で次のニュースが流れた。

 パキスタンが関与と非難=7月の列車爆破テロ―インド警察  [AFP=時事] 2006.10.01

【ムンバイ(インド)30日】インド西部のムンバイ警察は30日、同地で7月11日に起きた通勤列車同時爆破テロ事件に関して、隣国パキスタンの軍情報機関である統合情報局(ISI)と同国内に拠点を置くイスラム過激組織ラシュカレトイバが計画したものだと非難した。(写真は爆破テロで破壊された車両を調べるインド当局関係者)

 これに対しパキスタン側は直ちに、ISIが関与したとのインド側主張はまったく根拠がないと反論、ラシュカレトイバも関与を否定したが、この事件により両国間の和平プロセスは中断している。

 同事件では15分間に7回の爆発が起き、ムンバイ警察によると、186人が死亡、800人以上が負傷した。同警察は、これまでに15人を逮捕、うち12人の役割を突き止めたと明らかにした。また、事件に関与したパキスタン人は11人で、爆破の際に死亡した1人と、警察との銃撃戦で死んだ1人を除く計9人が逃亡中としている。国際テロ組織アルカイダが関与した可能性はないという。
 パキスタンといえば、その核開発で北朝鮮との連携が噂されている国だ。しかも、「911事件」来、アメリカとイギリスとは軍事的に密接に行動をしてきた国である。

 7月12日にイスラエルがレバノンに侵攻、無差別ともいえる爆撃などを繰り返し、7月30日にはレバノンのカナで周辺から避難してきた民間人が集まっていた建物を空爆し子供37名を含んだ57名を死亡させた。
 世界中からイスラエルに非難が集まった。イスラエルを擁護するアメリカ、イギリスも苦しい立場に置かれていた。イギリスでは政府を非難する大規模な市民デモもおこなわれた。
 そのイギリスで8月9日の朝、捜査当局にパキスタン政府から旅客機爆破テロが48時間以内にも実行されそうだとの情報が入った。…

 パキスタンで数人逮捕 テロ摘発の端緒に [産経新聞] 2006.08.11

 【バンコク=岩田智雄】パキスタンの情報当局者などは10日、英国での民間航空機爆破テロ未遂事件に関与した容疑者2、3人をパキスタン国内で事前に逮捕し、その逮捕が英国での犯行グループの摘発につながったことを明らかにした。AP通信が伝えた。
 パキスタン政府高官によると、当局は東部ラホールと南部カラチで数日前、パキスタン人容疑者2、3人を逮捕した。しかし、人物の詳細については明かしていない。また、別の情報当局者は、アフガニスタンとの国境付近で数週間前、イスラム武装組織のメンバー1人を逮捕したことが英国でのテロ未遂事件摘発の端緒となったとしている。
 一方、フランス通信(AFP)によると、アルカーイダ関係者3人を含む数人がこれまでに逮捕されているという。パキスタンのアスラム外務報道官は、米英両国との協力でテロを阻止したと強調した。
 結局この絶妙なタイミングで「起きた」旅客機爆破テロ未遂事件騒動は、イスラエル、アメリカ、イギリスを世界の非難から救うこととなった。

 その旅客機爆破テロ未遂事件を摘発したパキスタンの情報部がインドで7月11日起きた通勤列車同時爆破テロ事件の首謀者だった、というのが先にあげたニュースなのである。
 国際的な、各国をまたぐ裏の工作部隊の存在を彷彿とさせるような一件である。

 先月、加藤紘一氏が次のように語っていた。
 (略)
 今、国民の多くの心情は、糸の切れた風船が何十万個とフワフワ浮いている状態のようです。どこかに帰属したい不安な日々を送っている。この風船にナショナリズムという微風を送るだけで同じ方向になびいてしまう。
 私の実家に放火したのは“たそがれっぽいテロリスト”でしたが、動機は私が靖国参拝を批判した雑誌を読んだからだ、と言っているそうです。実家の放火はそんな風潮の証明のようです。
 奥さんに責められ、息子から非難されるお父さんが一家をまとめる簡単な方法がある。いきなり窓を開けて大声で隣の悪口を言うことです。
 むこうから「何を!」と言い返せばシメたもので、奥さんも息子も「父さん頑張れ」となる。これは政治の世界では絶対にやっちゃいけない簡易指導法なのです。
 国民の6割が反対していた靖国参拝も、小泉さんが「中国の言いなりにはならない。批判する方がおかしい」と言うと、賛成が6割になる。おかしな風潮です。

 その小泉政治で生まれた格差社会は、安倍さんが言う「再チャレンジ支援策」では是正できないでしょう。
 小泉さんは改革で日本の景気はよくなったと言いますが、これは中国特需と、国民が受け取るはずの金利をゼロにして銀行と企業を救済したこと。それに派遣雇用法の改正で企業の雇用負担を軽減させたことです。しかし、再チャレンジは競争原理を前提にしていますから、格差はさらに広がってしまいますよ。
 (“中国も米国も敵に回す「戦争肯定論」” 加藤紘一(元幹事長) 『日刊ゲンダイ』 2006.09.26より)
 氏の言うように、批判の多い国内政治の問題、中韓との深刻な外交問題、新閣僚らの醜聞報道の異常な多さ、また安倍総理自身の国会での醜態などなど、安倍氏は総理就任早々数々の難題を抱えた状態だ。
 けれど、相手は自分からやって来た。それも、誰が見ても、安倍内閣の多くの問題から国民の関心をそらすという意味では絶妙なタイミングでだ。
 しかし、この絶妙なタイミングには、安倍総理周辺の固有の問題としてもう一つの不気味な側面がある。それは、安倍総理が日本での核合憲論者だったということだ。

 参考:
 ・安倍晋三の“核合憲発言”
 ・日本核武装計画が動き出した ──キムとサダムのおかげです (レルネット 2003.03.28)

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