雑木帖

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政府の「格差」対策は欺瞞

2007-02-26 00:43:40 | 階層化社会・新自由主義


 政府は急激に拡がる社会の階層化、「格差」対策として「成長力底上げ戦略」などを打ち出しているのだが、これまでどおり空前の利益をあげている大企業などの優遇という基本姿勢には変化はないようで、その上での利益受給層「底上げ」、というスタンスをとっているようだ。
 しかしこれは論理矛盾なのだ。しかも、それは欧米の先進諸国も問題にしている新自由主義のはっきりとしたシステム上の問題点なのだ。

 冒頭の戯画は好景気の「底」を上げているのは一般社員という構図を示したものである。その彼らの犠牲の上に経営者や配当者は大きな利益を得ており、「底上げ」をしている彼らを「底上げ」する者などは存在しない、という図でもある。

 下のグラフは2007年2月22日の『しんぶん赤旗』の“貧困と格差 だれが広げた 国会この10年 各党の態度(下) 大企業は「成長」なのになぜ家計は?”という記事に出てくるグラフである。




 では冒頭の戯画も共産党の『しんぶん赤旗』の記事にあるもの?と思うだろうか。
 答えはNoで、『COURRIER JAPON』 2007.03.01号の<特集:世界に拡がる“新・格差社会” 「中流(オレたち)」に明日はない!>の“得をするのは経営者ばかり… なぜ“中流”サラリーマンは好景気を実感できないのか?”という、イギリスの「フィナンシャル・タイムズ」の記事に出てくるものである。
「利益を上げれば、君たちの給料も上げてやろう」
 資本家が従業員に対してこう言うのが労使交渉の基本的な原理である。
 しかし、近年の実態を見ると、そんな取り決めは、すっかり反故にされてしまったようだ。先進諸国全域で、企業が記録的な好況を迎えていても、羽振りがよさそうなのは、大金持ちばかり。給料は上がらず、上昇しているのは物価だけと感じる人がほとんどではないだろうか。

 企業収益は史上最高だが…

 英国では05年、史上最高の企業収益が計上されたにもかかわらず、国民の実質平均週給は前年比で0・4%下がった。もちろん、これは英国に限った話ではなく、西側諸国全般で見られる趨勢である。米投資銀行大手ゴールドマン・サックスの米国経済に関する調査報告書には、こう記されている。
「2006年第1四半期、GDPに占める企業収益の割合が史上最高値を記録した。その要因は種々考えられるが、GDPに占める労働者の取り分の割合が低くなったことが最も大きい」
 投資家や金融関係者が、企業収益の増大を喜んでいるのは言うまでもない。株価が上昇し、M&A取引も記録的な水準に達したことで業績は好調。昨年、金融機関の従業員に支給されたボーナスの額も破格のものだった。企業の経営者も儲けが多かった。昨年10月に行った調査によれば、05年の英国大手企業の役員報酬は、前年比で28%増加したという。
 だが、記録的な高収益を上げている企業に勤める、ごく普通の中流サラリーマンはどうなのか。どうして彼らは好景気の恩恵に与れていないのだろうか。
 その原因として、労働組合の弱体化を挙げることもできるかもしれないが、もっと広い視点を持つ必要があるだろう。
 (略)
[“得をするのは経営者ばかり… なぜ“中流”サラリーマンは好景気を実感できないのか?(フィナンシャル・タイムズ)”『COURRIER JAPON』 2007.03.01号より]
 『週刊東洋経済』 2007.02.24号でも<特集:貧困の罠>で、“営業利益2兆円企業を支える「賃金格差」”という記事に次のようなグラフを載せている。



 政府の「大企業に牽引させ底上げをする」というのは無知か欺瞞かのどちらかであるのだが、多分後者だろう。

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