豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

鑓温泉上部の鎖場について

2010年10月11日 | 白馬岳など北アルプス北部ネタ
北アルプス北部の北半分にはけっこう岩場鎖場があるのですが、中でも事故が多いことで関係者に知られているのが、鑓温泉の上部にある岩場です。



下の画像がその岩場です。





下のサムネイルをクリックすると、ライン入りの拡大画像が開きます。







この岩場を通るのは白馬三山を縦走してきた人が圧倒的に多いです。で、縦走してきた場合、ここは下りとなります。そういうわけで、事故もほとんどが下りです。


で、なぜ事故が多いのか、と言いますと、まず第一に通行量が多いことですね。文句なしの人気コースでツアーもよく組まれます。

そして、ここの岩が見た目以上に滑る、ってことでしょうか。不意にツルン!と来る感じです。

さらに、慣れた人なら屁でもない岩場、ってのも大きいでしょう。


というわけで、この夏にデジカメで撮影してきた画像を元に解説していきやしょう。来年に白馬三山を縦走して温泉に入りたい!って人は必見です、マジで。







白馬三山を縦走し、天狗山荘の手前にある分岐から下降していくと大出原となります。さらに下降を続けると樹林帯に突入し、短い鎖場を過ぎてまもなく、問題の岩場が出てきます。



出だしはこんな感じ








気持ちいいほど平らで幅も広く、普通の人なら何の問題も感じないでしょう。が、このエントリーを読んだアナタは、もうこの時点で警戒を始めてください。


ここの岩の特徴は、楽勝に見えていきなり「つるん!」と来ることです。大勢の登山者が通ることによって岩が磨かれ、また岩場の途中に水の流れがいくつもあるため、思わぬところで登山靴がグリップを失うんだな、これが。









張られている鎖のほとんどはこのように、オーバースペックと言えるほど太いものです。支点もハンマードリルでがっつりやってあるので、まず安心です。

よく「鎖にたよるな!」なんてアドバイスが登山のテキストに書かれていますけど、ここではそれを忘れてください。思い切り鎖に頼ってOKです。チェックも頻繁に入っているところなので、支点が崩壊して転落死する可能性なんて、私だったらまず考えませんね。





この平らなバンドを少し歩くと、水が流れています。このあたりがどうも転落ポイントのひとつらしく、今シーズンはここからひとり転落しています。幸い途中で止まったので、肩の脱臼で済みました。





狭いバンドを過ぎるとこんな感じです。







緩やかに下っているのですが、普通だったらそれほど危険を感じることは無いと思います。が、なんかね、微妙に滑る雰囲気があるんですよ。うっかりコケて、しかも勢いがついていたら、大変なコトになってしまいますね。

というわけで、個人的には下の画像中の実線ラインのように、なるべく山側を慎重に歩くことを推薦しておきます。







で、次







ここは一段下って折り返すんですけど、ここもまた、わりと滑るところですね。まったく難しいことは無いのですが、とりあえず鎖は握っておけ、とアドバイスしておきましょう。




さて次にいきますか。







こんな感じの水流が出てきたら、まもなく核心部です。








で、核心部はこんな感じ。是非クリックして拡大画像を見てください。









岩場の途中なんだけどめちゃ平坦で、せいぜい緩やかに下っている程度。しかし、ここでコケる人が、めちゃ多いんです。

今年の夏、ここでよく待機してましたけど、皆さん気持ちいいほどここで転びます。例えばね、某月某日、2パーティで8人が連なってここを通過していくのを監視していたんですけど、その8人のうち3人がここでコケたんです。みんな片手で鎖を持っていたので尻餅で済みましたけど、見ていて何度も心臓が止まりそうになりましたよ。

で、そんな光景を見ていて思ったんです。この岩場で転落して死ぬ人って、ここで鎖とか触らずに普通に通過していったんじゃねーか、と。



画像みたらわかると思いますけど、幅は充分にあります。傾斜してますけど、緩やかです。鎖なんかさわらなくたって、簡単にいけますよ。実際、鎖をほとんど触らず、ダブルストックのまま通過していく人も何度か見かけました。



ここから落ちて死んだ人って、簡単過ぎる岩場に無警戒で突っ込み、いきなり「ツルン!」と来て、そのまま奈落の底へ逝ってしまったんでしょうね、と。









というわけで、ここを通過する際には、先ほども述べたように鎖へ頼りまくることが重要です。困難でも何でもない岩場ですが、いきなりつるーーーぅんと来ますので、常に転倒と転落に対する心構えが必要ですね。





ただ、ここってあまりにもコケる人が多いもんでさすがに「これはなんとかしないとまずいのでは?」と考える関係者もいるようで、近々工事が行われるかもしれません。来シーズンにはまた様相がまったく変わっているかもしれませんので、そのと気にはあしからず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8 コメント

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思い出しました (最近行っていない人)
2010-10-12 10:21:45
もう20年くらい前に重い荷物を背負って、雨の中を通ったことを思い出しました。荷物が軽ければ、それほどでもなかったかもしれないですが、重い荷物と雨に濡れていたのでつるっと行きそうで思いのほか慎重に、肝を冷やしながら通った記憶があります。でも、ガイドブックには比較的簡単にしか触れられていなかったりするんですけど。
怖い思いをして降りると、鑓温泉は猿倉から登ってきた観光客でごった返していて、温泉以外はあまりいい思い出はないですね。
当時は鎖、もっと細かったし、ステップももう少し谷に傾斜していたような気がします。
私はその後の爺さん、婆さんの登山ブームに命の危険(登山道でわがまま気ままに振舞い、山小屋で早立ちの客がいるにも関わらず宴会を開いたり傍若無人ですから)を感じて山登りを避けるようになっていますけど。
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確かにそうですね (悶次郎)
2010-10-12 22:22:27
3年前ごろだったと思います。白馬三山から下ってきてこの岩場にブチ当たりました。
確かにツルツル滑りそうだったので慎重に歩いた記憶があります。
ただしやってしまいました。見事にツルンと・・滑ってしまいました。
いえ、この岩場ではなくてその先です。
岩場を過ぎた少し先の温泉小屋がすぐ近くに見えるあたりです。
シーズンとはいえ斜面に残雪がありましてソロソロ歩いたのですが
岩場を過ぎて安心したせいもあるかと思います。
幸い尻餅程度で済んだのですが右側は斜面で滑り落ちれば転がり落ちたかもしれません。
至仏山のような蛇紋岩ですと本当にツンツルテンなので緊張するのですが温泉小屋手前の岩は岩質が似ているような気がするくらいです。
このサイトでいろいろと警告される危険地点について歩きながら確かめたこともありますが
なんでこんな所で落ちるのかと疑問に思ったこともありますがそれは素人の判断なんでしょうねえ。
要するに山は危険な場所であるということを肝に命じて歩くようにしています。
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今年の8月このコースを下りました (シュン)
2010-10-12 23:16:46
はじめまして。
いつも記事アップを楽しみにしています。
私も今年の8月下旬に、このコースを下り方向へ降りてきました。
そのときは晴れていましたが、やはり水が流れているところがあり、記事中にあるように岩が滑りやすいところがありました。
また、梯子が岩に固定されているところもありましたが、濡れた靴底と鉄の丸い横棒の組み合わせが滑りやすく、ステップがずっこけそうなので、梯子は使いませんでした。
記事にある鎖場以外では、杓子岳からの雪渓を横切るとき、雪渓が硬く滑りやすくなっており、アイゼンもピッケルもなしだったので、一気に下まで滑落しそうで少し緊張しました。
また、他の雪渓ですが、秋に近くなり紅ガラが消えていて、雪渓上のコースが不明瞭な雪渓もありました。が、落ち着いて向こう岸を眺めていると、正しい上陸地点が判断できました。
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怖かったです (azami)
2010-10-13 10:06:40
はじめまして
いつも楽しみにしています。
ここは登りと下りで2回通過したことがあります。下りは去年で、不帰経由だったのですがこのツルツルの下りが一番の核心でした。すれ違いは怖いだろうなあと思って通過したのをよく覚えています。
やはり事故は多いのですね。
あまり鎖をしっかり握るほうではないのですがこの時はしっかり頼って下りました。
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Unknown (bongo-pete)
2010-10-13 10:31:09
みなさんコメントどうもです。

最近行っていない人様

鎖が太くなったのはおそらく10年ぐらい前あたりからでしょうね。その頃からあの周辺の鎖がわりと更新されている感じです。

悶次郎様

鑓温泉の小屋が見えてから滑落した例はけっこうあるようです。割と道が狭いですからねえ。一説には、温泉の匂いで気が緩むと言われています。

シュン様

鑓温泉から下の道は雪渓の状態や土砂崩れの影響で、常に変化しています。毎日ライン取りが変わると言ってもいいぐらいです。
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Unknown (bongo-pete)
2010-10-13 10:41:29
azami様

>すれ違いは怖いだろうなあ

この岩場を登ったことはうんざりするほどありますが、途中ですれ違いをやる勇気はないですな。
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あるある (最近行ってない人)
2010-10-14 09:37:58
確か、そこだったと思います。
該当箇所ですれ違いさせられました。
しかも、こっちは重い荷物を抱えて下りなのに、向こうは足元がおぼつかない団体さんの上り。
山は登り優先なんて方便で、場所によりけり、特に岩場などは下りの方がやたら難しいのにもかかわらず、谷川に登山道をはみ出させられて延々と待ちました。向こうはすぐそこに安全な退避帯があるにもかかわらず道を譲らないんだもの。
それこそ、殺されると思いましたね。

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Unknown (Satoshi)
2011-04-08 13:38:17
覚えています。
確か一歩めでズルッときたので一気に冷や汗・・・。仲間にも声をかけて慎重に下りました。岩の性質でしょうかね。まさか滑るとは、とても思えない石だっただけに印象的でした。
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