豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

富士山の件で静岡市の事故調査委員会が調査結果を公表

2014年03月20日 | 山を飛ぶヘリコプター
==2014.3.21 追記あり==



昨年の12月初め、ホイストで遭難者をピックアップ中にスッポ抜けてしまうという事故が富士山でありましたけど、静岡市消防局による事故原因の調査がようやく終わったようです。


富士山救助落下 ヘリ着陸脚に足掛かる
中日新聞  2014年3月19日


引用
市の関係者によると、消防局は今月十三日までに十回の調査委を開き、救助の様子を再現して原因を調べた。男性の服などが機体側面の突起に引っ掛かった可能性などもあったが、最終的に「スキッド」と呼ばれる着陸脚に足が引っ掛かったと判断した。
引用おわり



スキッドは通常、太いパイプみたいな形状なんで、足が引っかかってもスリ抜けそうなイメージがあります。ですから、ちょっと意外でした。


引用
男性を機内につり上げる際に足が引っ掛かっているのに気付かずに救助用ベルトを引き上げたため、男性からベルトが外れたとみられる。
引用おわり

引っかかった時に遭難者が足を引っ込めるとか、あるいは脇を締めてスリングをしっかり握る等の反応をしていれば問題無かったのでしょうけど、本人は相当ヨレヨレだったのでしょうね。




さてさて、


引用
報告書には、救助中の異常を監視する隊員をヘリに同乗させるなど再発防止策も盛り込む。市消防局の担当者は「救助体制を見直し、防止策を確実に進めたい」と話している。
引用おわり


これはどうなんでしょう?


スリングから遭難者が簡単にすっぽ抜けるようであれば、いくら監視の目を増やしても意味が無いような気がします。通常はホイストを操作している人が遭難者及び救助隊員を見ていて、何かトラブルがあればホイストを止めたりするわけですけど、足が引っかかったぐらいでスポンと落ちてしまうのであれば操作が間に合わないでしょ。

それよりも単純に、サバイバースリングの使用をもっと制限するとか、安全性の高い器具に変更する方が理にかなってると思います。このケースは、股間に補助のベルトを通すだけでも防げたでしょうから・・・



==追記==

「静岡市消防航空隊は富士山での救助はしない。」という宣言?
みいさんのブログ・・ヘリコプターが好き

このエントリーだと、遭難者がスリングからいかにしてすっぽ抜けたかが、画像でわかります。なるほどね・・・。


もうひとつ・・・

富士山ヘリ救助失敗 「ベルト外れた可能性高い」
NHK  3月20日 20時46分

引用
男性の下半身を体温の低下を防ぐ保温シートで覆っていたため、男性の登山靴がヘリコプターの脚の部分に引っ掛かっていたことに気付かなかったとしています。
引用おわり



わかりやすく出てる動画もありました。

足の甲引っ掛かり、救命具脱落 静岡市消防ヘリ事故





9 コメント

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Unknown (ONS)
2014-03-21 01:38:35
東京新聞に詳しく出ています。
https://www.facebook.com/RopeAccessRescue/posts/709497519113064

山岳救助では機体の重量を減らすため、通常より隊員と燃料を減らして乗り組みます。
今回はパイロット1+隊員2の3名乗り組み。
(通常は正副パイロット+隊員3名程度)

事故時はホイスト操作の隊員がとっさに要救にしがみついて確保したため、パイロットが片手で操縦桿、もう片手でホイストリモコンを後ろ手に操作しながら、着陸可能場所を探して急降下という状況だったようです。

報告書の改善策には、サバイバー以外の担架などを活用するなども盛り込まれています。
ただしサバイバー以外の器具は装着に時間がかかるため、「一瞬の晴れ間を狙って!」みたいなのは難しくなってしまいます。
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Unknown (ONS)
2014-03-21 01:58:40
すみません、静岡新聞でした。
県防災が飛べなくて、富士山での訓練経験ゼロの市防災に回ってきたわけで、もともとやりたくなかったでしょうね。
岐阜防災の二の舞になる可能性もあったわけで、なぜ市防災が飛ぶ事になったのかも問題な気がします。
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Unknown (bongo-pete)
2014-03-21 05:57:14
ONS様
参考リンクどうもです。

確かにサバイバースリングは素早い装着が可能だと思うのですけど、股間にベルトを通すタイプだって、そんなに手間が掛かるわけでは無いと思いますけどねえ。

このケースは、サバイバースリングを使うにしても股間にベルトを通すだけで防げた事故だと思います。
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Unknown (みいさん)
2014-03-21 09:57:34
ONS様

「パイロットが片手で操縦桿、もう片手でホイストリモコンを後ろ手に操作しながら、着陸可能場所を探して急降下」ってのは、おかしいです。

ヘリの操縦は、水平移動を制御する操縦桿を右手で、上下移動を制御するコレクティブを左手で制御しながら行います。
そしてその最適な組み合わせは、状況:風等により、めまぐるしく変わります。

水平飛行中ならまだしも、乱気流のなか高度を下げているときに、片手を離すということはちょっと想像ができません。

そもそもサバイバーから抜けてしまっていたのなら、ホイストを操作する意味もないように思えます。
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Unknown (ONS)
2014-03-24 12:03:50
ピートさん
股下のスリング、今回は要救がシュラフ型銀紙に入っていたので、装着しなかったわけです。
ただ、一度要救の腰を浮かせるか立たせないと股にまわせないので、銀紙がなくても、今回の要救に1人で装着するのはかなり難しかったと思います。
また、かなり痛い事もあり、あまり使っていないようですね。股下が付いていないサバイバーも少なくないようです。

股下が必要な場合はピタゴール(トライアングルハーネス)を使うのが一般的ですが、一度ホイストから外さないと装着できません。
股下を通す余裕があれば、最初からピタゴールを使っていたと思います。

確かに「股下を通していれば助かった」事故なんですが、股下を通す前提だと、「救助不可」とされていた可能性が高くなりますね…
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Unknown (ONS)
2014-03-24 12:22:50
みいさん

ホイストはヘリ外にあるため、担架などは一旦巻き上げてから、ヘリ内に引き込みつつホイストを緩めて(降ろして)いきます。

今回は一旦巻き上げたときにずり落ちて(サバイバーがずりあがって)しまい、要救は万歳状態でサバイバーに腕が残ったくらいの位置で隊員2名がしがみついたようです。

ホイストを下げれば、再度サバイバーを適正位置に戻せる可能性がありますし、ホイストとサバイバーを降ろさなければ、要救は中に引き込めないんです。

サバイバーから完全に抜け落ちた場合も、
要救に抱きついている隊員はサバイバーと同じホイストに繋がっているので、ホイストは緩めないといけません。

ヘリパイが片手操縦になるというまさにあり得ない緊急事態だったようです。
関係者からの伝聞ですけどね。

もちろん、そういう事態になってしまったのがいけないのですが、そうならない様に救助できたかと言えば、たぶん静岡市ヘリには無理だったのではないでしょうか。
よほど経験豊富な隊なら可能性はありますが、逆にさっさと引き返してしまった可能性もかなり高いと思うわけです。
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Unknown (bongo-pete)
2014-03-24 17:33:02
>股下を通す前提だと、「救助不可」とされていた可能性が高くなりますね…

んー、それは無いと思いますよ。サバイバースリングだと30秒で装着できるけど、股下通すと10分かかるってわけでは無いですから。

天候の急変なんて予測のつかないものですから、サバイバースリングだから間に合うとか、他の器具だとダメだとか、そういうのは無いと思いますけどね。
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Unknown (みいさん)
2014-03-24 22:34:23
ONS様

ホイストの件については言われてみればそうですね。
解説ありがとうございました。

しかしそれが事実なら、ヘリもろとも墜落の際にあったということですね。

いままではあくまでサバイバースリングの作業手順のミス「だけ」だと思っていたのですが。
墜落しなかったのは、全くの幸運でしかないですよ。

伝聞情報ですのであんまり言っても無意味ですが、ものすごいすっきりしない終わり方です。
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Unknown (ONS)
2014-03-26 17:23:40
報告書の原文を読む機会があったのですが、サバイバーの装着に2分かかったようです。
ナイフを携行していれば、もう1分くらいで股下通せたかもしれませんね。

ただ、知り合いの航空隊員の話しでは、機長が無理と判断すれば、その時点で全て中止、中断となるほか、時間も降下前に言われた時間、遅延は許されないとのこと。

また、現場の状況からサバイバー以外の装具を使うつもりはなかったようです。
訓練でピタゴールなど触る機会があるのですが、平地で、要救が健常者でも2分くらいかかりますから…

それから、落下後の再救助をあきらめた経緯は、だいぶ報道とは違ったものでした。

静岡市ヘリは南アでそこそこの救助活動ができるのを目的に機種選定や訓練が行われていたので、富士山での活動に向けて 機種なども…という提言もありました。

もし機会があれば、是非目を通してみて下さい
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