豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

船窪小屋を知らずして北アルプスの小屋を語るなかれ

2007年10月07日 | 白馬岳など北アルプス北部ネタ
上記のタイトルは、山小屋マニアな貴方なら納得いただけるかと思います(笑)




日本国内有数の大きな山小屋で働き、現在も大きな山小屋だらけの山域でパトロールしている私にとって、小さい山小屋はオアシスです。中でも船窪小屋は、電気もない、ポンプアップによる揚水もしていない、ヘリの荷揚げも最小限という、北アルプスでは奇跡的な山小屋で、大好きです。

数年前、この近辺をパトロールしていた時に何度か泊まりましたが、とてもいい雰囲気でしたね。電気がないので照明は灯油ランプのみ、中には囲炉裏があって、お客さんはそのまわりで食事するという、すばらしいスタイルです。



船窪小屋はどこにあるの?って人が多いと思いますが、場所は針ノ木岳から南に縦走し、蓮華岳を越えた先にある七倉岳付近です。山小屋へは大町市から七倉ダムに入って七倉尾根を登るか、針ノ木から縦走するのが一般的です。また、ここから烏帽子岳までの縦走は、北アルプス随一の「ど根性コース」でしょうね。コースタイムは8~10時間となっていますが、アップダウンがきついのと鎖場やハシゴ場が多いので、けっこう時間がかかります。この部分を縦走するなら、船窪小屋から烏帽子へ行く方が逆コースよりやや楽かもしれません。水は多めに持参したほうがいいですね。


電気もなく、飲料水の背負い搬送をしているような山小屋ですから、北アルプスのほかの小屋のように便利とは言えません。が、山小屋らしさだけはたっぷり味わえます。食事も美味しいですよ。

まあ、そういう山小屋なので、下界感覚丸出しの、お行儀の悪い登山者にはオススメしません。





当時、オーナーの松澤さん夫妻は針ノ木谷の登山道が荒れ果てているのを見かねて、何とか復活させようと考えていました。この登山道は古い時代に富山と信州を結んでいた道で、佐々成政が冬に北アルプスを越えた時に使ったという伝承が残っています。我々も相談を受けたので、草刈り鎌とのこぎりを持って針ノ木谷へ降り、草刈りしたものです。

その後も古道復活の活動が山小屋の常連さんを中心に続けられ、廃道寸前だった登山道が通れるようになったようです。

参考記事 信州山小屋ネット 07年8月26日(日)掲載
針ノ木谷の古道を復活 船窪小屋の松沢さん整備





船窪小屋は2003年に50周年を迎えましたが、その年に書いた日記をもとに1冊の本が昨年出版されています。

参考記事 信州山小屋ネット 06年6月15日(木)掲載
山の交流つづる一冊 北ア・船窪小屋 100日間の日記


で、今年になってパトロール終了後に、ついつい大町で購入してしまいました。



この本は残念ながらAmazon等では購入できません。興味がある方は大町の塩原書店(TEL 0261-22-0076)にお問い合わせください。ちなみに私は大町駅前のアップルランド内の店舗で買いました。本の売り上げは登山道の整備や山岳救助等に使われるとのことです。


この本を読むと、船窪小屋が常連客にとても愛されているのがわかります。北アルプスの山小屋で、これほど常連がいるところって無いですね。



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13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (北あかり)
2007-10-08 15:18:40
先月、針ノ木峠から黒部湖まで下りましたが、ブログにあるとおり、草を刈って整備されたこの道、ありがたく通過させてもらいました。ヤブがえらかったらもう少し時間がかかったと思います。針ノ木古道という新しい道標がありましたが、ずいぶん高巻する道でしたね。そうそう「山の上のお母さん」は大町の山岳博物館にて入手しましたよ。
あまり有名になると小屋が混むので宣伝したしたくない気持ちもわかります。まあそう簡単にいける場所にはないですけどね。
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Unknown (bongo-pete)
2007-10-08 17:27:58
黒部湖まで行かれましたか。話を聞いたら、きっと松澤さん夫妻は大喜びするでしょうね。

私は5~6年前に針ノ木小屋から針ノ木谷へ降り、そこから船窪へ登りながら草刈りをしたのですが、当時は草ぼうぼうもいいとこで、まともには歩けない状態でした。登山道の標識などは熊にかじられてバキバキになっており、「すごいところだなあ」と驚いたのを覚えています。
当時、寿子さんから古道復活を希望する手紙をもらい、それを私の手で校正して新聞社や雑誌に送ったのもいい思い出です。



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感動 (北あかり)
2007-10-08 17:43:51
あの道はいろいろな方の協力で開通した道なんですね。そうは言っても難所には違いないので、登山者もほとんどいませんでしたし、一緒に行った友人は沢に落ちるわで大変でした。
所どころに焚き火のあとがあり、おそらくここで泊まりながら、草を刈ったのではないかと想像しておりました。
でも昔むかしの人はこの道をたくさんの荷物を持って大町から富山へ、富山から大町へ行ったりきたりしたんだと思うと感慨深く、とても印象深い道になっています。その日はそのまま立山まで上がって、翌日ザラ峠まで行ったんです。
来年は針ノ木谷から船窪へ上がる道にも挑戦してみようと思ってます。
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私も船窪小屋に惹かれちゃいました (やまおんな)
2007-10-08 21:42:30
はじめまして
山登りを趣味にしている者にとっては、とっても参考になり、楽しみにさせていただいています。
まさに古道復活がもうすぐ完成するという間際に小屋にお世話になって来ました。
確かに「ど根性コース」でしたわ(笑)

囲炉裏を囲んで焼酎を酌み交わしながら(あっ、これは相棒持参ですよ)とっても楽しいひと時を過ごすことが出来感激しました。
常連さんが撮影してくれたという、復活までの様子のCDも見させていただきました。もちろん電気のない小屋なので、映写機(こんな言葉が当てはまるのかわかりませんが)も常連の方の手作りでしたよ。
常連という言葉がではあらわせられない暖かい繋がりをいっぱい感じてきました。御夫婦の人柄が皆さんを惹き付けるんでしょうね。
テントを張り、アルファ米を食べながらの重労働は、失礼ながら70歳の体には相当の負担だったと思います。
でも、ほんのり酔った顔は輝いていて、とっても嬉しそうでしたよ♪
御夫婦、そして小屋の皆さんに見送られて、船窪岳に元気いっぱい向かうことが出来ました。(ここはまさに根性が要ったわ)
また行きたくなる小屋ですよね。



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Unknown (bongo-pete)
2007-10-09 00:08:07
北あかり様

歴史の重みのある登山道っておもしろいと思うのですが、現在も不通のままになっている徳本峠のように、歩く人が少ないですね。

やまおんな様

リンク先拝見しました。当ブログのリンク、ありがとうございます(笑)

松澤のおとっつあんは登山道整備に熱心というか大好きな人で、烏帽子~船窪間でも一生懸命草刈りしているところを見かけたことがあります。烏帽子~船窪間は距離がありすぎるので「今度ヘリコプターをチャーターして、登山道の真ん中に降ろしてもらってから草刈りするんだ」と言ってました。いやあ、ホンモノの小屋番ですね。
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Unknown (とべとべ)
2007-10-09 10:21:27
はじめまして。いつも拝見しております。

船窪小屋の近くのテント場で幕営したことあります。
小屋までビールを買いに行くのも往復30分だし、水場まで行くのも、命がけで面白かったです。

夜中にヘロヘロの大学生の集団がテント場に到着して、幽霊かとビックリしました。
元気のある子を小屋まで行かせて、小屋の人が迎えに来てくれたました。小屋まで連れて行くために、全員に雨具を着させ、ゆっくり歩かせたのですが、先頭を歩く子が早く歩いていて、小屋のおじさんがどなりつけてましたね~。

私は、彼らに水を全てあげたので、翌日の朝、また水を汲みに行ったのですが、なぜ、彼らに水をあげた自分が、こうやって命がけで水を汲みに来ているんだか、不思議な気分になりましたね。




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針の木谷 (veve)
2007-10-09 12:52:14
はじめまして、veveと申します。
私もずっと前から「佐々成政のさらさら越え」が気になっていたのと、日本の3大峠(山サイやってますもので、、、ピークハントではなく、どちらかというとパスハンティングなのです)の一つ針の木峠へ行きたいと調べていたところ、船窪小屋と針の木古道のことを知りました。
それで先月針の木峠越えを変更し、七倉尾根から登って船窪小屋泊、松沢夫妻に古道整備の苦労談などを写真とともに聞かせていただき、翌日針の木谷を下りました。
とてもよく整備されていて、安心して下れました。途中途中チェーンソーの跡や石積みの跡などを見て、本当にありがたいなあと心から思いました。高巻道(平側)を出た後、南沢出合の先の木橋までが少しわかりにくかったのですが、9月末に船窪小屋の常連さんが刈り払いをしたそうで、私が苦労したところも今では大分わかりやすくなったと言っていました。あの暖かい小屋の雰囲気が大好きな常連さんがたくさんいるというのはよくわかります。私も来年、また針の木谷の高巻道を踏みに行きたいです。
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Unknown (bongo-pete)
2007-10-09 14:57:08
とべとべ様

あそこの水場は、おそらく北アルプス最強でしょう。何度行っても怖いです。どのように怖いかは、これから行く人のために内緒にしておきます。


veve様

あそこを山岳サイクリングですか?そりゃまたすごいですね。
雲取の石尾根なんかではよく見かけますけど、針ノ木谷でもやる人はやるんですねえ。




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今回は自転車なしですよ~ (veve)
2007-10-09 22:32:17
豊後ピートさま

さすがに今回のコースは自転車なしの歩きで行きました。
針の木谷の状況もわかりませんでしたので・・・
針の木谷の後、平の渡しを経由して五色が原まで行き五色が原山荘に泊まりましたが、五色が原山荘の方も船窪小屋のご夫妻をよくご存知のようで、針の木谷古道の様子をいろいろ聞いてくださり、「よく来たね」とねぎらってくださいました。

今回は相棒(自転車)のない歩き旅でしたが、縦走路と違って歩く人も少ない、とてもいい山旅でした。

*道は今回の針の木谷の一部と鎖、はしご部分を除けば、北アルプスは担いでも歩きやすいと思いました。奥秩父の埼玉側などの道の方が山サイ的には厳しいことが多いです。今回は船窪小屋から一気に五色が原へ行ったのですが、平へもう一泊するつもりなら、自転車を持って室堂までは行けそうです。但し乗れるのは針の木谷のあの河原の一部だけですから、このコースを行かれる方には山サイでなく、歩き旅をオススメします。
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船窪小屋に接したい! (おさんぽ隊長)
2008-03-29 02:17:44
船窪小屋いいですよね。
地元、県、国から保護してもらいたい山小屋だと思います。

昨年、針の木谷のお手伝いをちょっとだけお手伝いさせていただきました。
今年は小屋の水場を守り、南沢岳方面の草刈を志願したいと思います。

針の木谷の【水没】もまた楽し!!!!・・・あのご主人があるからそんなことも楽しいんだろうな~。

御夫妻と会い、お話を聞き、御夫妻を見ていると、山にいること全てが楽しくなります。(+ベンパさんも)
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