「当面ターゲットとしなければならないのは、来るべき参院選挙」と、反戦老年委員会のましまさんが書いておられた。憲法や教育基本法の改定を阻止したい人達は、みな同意見であると思う。むろん私も来夏の参院選は正念場だと思っているが、個人的な気持ちとしてはその前にもうひとつ、都知事選という大きな山がある。知事はあくまでも地方自治体の首長。誰がその座に就いてもそれで国全体が変わるわけではないが、首都の知事となれば他の府県の知事以上に影響力は大きい。特に知事本人が「有名人」でマスコミに登場することが多い場合は、彼の主張の影響力はその他大勢的な国会議員の比ではない。
その都知事選に石原現知事が出馬するという情報をキャッチして以来、私は神経がかすかにささくれだったままである。石原都知事のことは何度か書いた覚えがあり、10日ほど前にはUnder the Sun のコラムでも少しぼやいた。以下はそのコラムの後半部分を加筆訂正したものである。
〈オトコを誇示する男〉
なぜ石原慎太郎などという人物に人気があるのか私はわからない。いや、学者や評論家はその理由を綺麗に分析してくれており、その分析を言葉としては理解できる。ああいった一見勇ましげな人物にふと惹かれる人間の心理だの、社会心理だの、といったものも知識としてはわかる。ただ、「わからない」と言い続ける側に、私は立っていたい。
「ああいう暴言男が都知事の椅子に座っていると、他の国の人達に対して恥ずかしい」からではない(私はそれほど愛国心のある人間ではない)。人間を有用であるかどうかによって峻別する思想の持ち主であり、これ見よがしな浅薄な男らしさを賞賛したり(※)、国のために死ぬなどという世迷い言に酔ってあまつさえそれを他人に押しつける(あなたが死ぬのは勝手ですが……)――つまりははた迷惑な人物で、こういう人間が知事の座に居座っていると、私達都民は枕を高くして眠れないからだ。まったく、危なくて仕方ない。
※彼が書いたものを覗くと、男・男・男の連呼に反吐が出そうになる。マッチズモを誇示する男ほど、実は「男らしくない」連中が多いのだが……。というより自分に自信が持てないから、(せめて生物学的な事実としてこれだけは疑いようがない)「男であること」にすがりつくのではあるまいか。男、だけではない。「女」の強調、「親」の強調、さらには「日本人」の強調……すべて同じことのように私には思える。
〈東京オリンピックはいらない〉
石原都知事は記者会見で、「自分は五輪誘致の言い出しっぺだから、(それに関して都知事として最後まで尽力する)責任がある」と言ったそうである。誰もそんなこと、頼んでないって……。私は東京オリンピックなどいらない、と思っている。それどころか東京以外の日本の何処にも、オリンピックなど誘致してもらわなくていいと思っている。そんな「国家的イベント」などで、また幾つも幾つもの重大な問題が霞まされてはたまらない。(私はスポーツに無関心で、しかも日の丸に限らず国旗というものが嫌いなせいでオリンピックのテレビ中継なども見たことがない。国威発揚の祭典、としか思えないのだ。そういう人間だから、なおさら目が冷ややかになるのかも知れないが)
彼は「スパルタ主義」(厳密な意味で使っているわけではない。戸塚ヨットスクールの戸塚氏に共感し、あれこそ真の教育者の態度と絶賛する奇矯な傾向を、ここでは一応、スパルタ主義と呼んだ)の男である。自分の子供をその主義で育てるのは(虐待にならない限り)まあご自由にとしか言いようがないが、都民にまでその主義で臨まれては困る。
〈私は豚だけれども〉
石原慎太郎には『狼生きろ豚は死ね』という作品がある。私はこれを読んでいない(読まずにアレコレ言ってはいけないと思って、以前彼の本を少し読んだものの、さすがに数冊で力尽きた)。だから内容については何も言う気はないが、タイトルの印象からひとつ思うことがある。彼は自分を「鋭い眼で荒れ野を睥睨する、気高い狼」だと思っているのだろうな……。まさか「蒼き狼」だとまでは思っていないだろうけれど(いや、思っているかも知れない……)。なんとまあ、すさまじい自己陶酔よ。
彼から見れば眼を輝かせ、直立不動で「国のために死ににいきます」と宣言する若者は狼、――彼をボスとして仰ぐ狼集団の一員なのだろう。そして「国家なんか知らねーっと」とほざく人間は豚、なのだろう。与えられた餌を喰い、やがてハムになるだけの存在。
余談をひとつ。豚といえば、「肥ったブタよりも痩せたソクラテスたれ」という有名な言葉がある。40年ぐらい前に東大の卒業式(だったと思う)で、大河内一男総長が学生達にこう訓示したそうだ。一時は流行語にもなったそうで、今でもエッセイなどの文中に引用されているのを見ることがある。名言集に載っていそうな言葉だけれども、私は正直なところあまり好きではない。この言葉を何処かで読んだ時、「カッコよすぎるよな……」と思ったことを覚えている。いや、むろん大河内総長が何を言いたかったかはわかっているつもりだし、それは正しい――というよりも「人間としてまっとうな」意見だとも思う。それでもなお「感激」できなかったのは、おそらく人間が勝手に「ブタ」のイメージを作り上げていることに違和感があったのと、もうひとつ、エリート臭を嗅いでしまったからだろう。私はソクラテスにもなれず、鼻先を血だらけにして柵を壊そうとしているだけのブタの一人であったから。
まあ、それはどうでもいい。狼と豚、である。
豚で結構。あなたをボスとして仰いで声を揃えて遠吠えするぐらいなら、私は「ノラ豚」(?)になる。ハムにされないために、私は何としてでもあなたの三選を阻止したい。都民の皆さん、それぞれの場で、それぞれのやり方で、できる所からできることを。他府県の皆さん、都民への応援を。
〈追記〉
石原都知事について、これまでに書いた記事を2つほどで挙げておく(何度も書いた気がするが、メモ感覚で書き飛ばしているのでちゃんと思い出せないのだ。列挙しようと思って、何処に書いたかすっかり忘れていることにはたと気づいた。笑)。もしも関心を持っていただけたら、お暇なときに覗いてくださるとありがたい。(特に、私の石原嫌いを不愉快だと思われる方は、過去のエントリもお読みの上で反論していただきたい)
上からモラルのうさんくささ。そして――都知事殿。三選に意欲など出さないでくだされ
◇◇ご意見歓迎。ただし揚げ足取り、嘲弄口調の詰問、記事と関係ない持論の長々とした展開はお断り。コメンテーター同士の記事と関係のないやりとりもご遠慮ください。私はコメント欄は基本的に何を書いてもらってもいい「落書き帳」だと思っていますが、落書き帳は落書き帳なりにマナーがあるはずです。また私は原則としてよほどのことがない限り削除しませんけれども、別にそれが正しいとは思っていません。コメントに対して厳しい基準を設けて削除するという考え方もあり、実のところ管理人の態度としてはその方が良質だと思います。ですからコメント削除等々の方法を採っているブログを非難するようなコメントも、いっさいお断り。今日以降、そういうコメントは削除します◇◇
東京のことはオラには関係ねぇや、といきたいところですが、良くも悪くもこの社会は繋がっていて、そうもいきません。「石原都知事三選にNo!」には陰ながら応援させてもらいます。
狼といえば、思想の押し付けに体を張って反対の姿勢を貫いている教師たち、あの人たちこそ狼だと思います。それに対して、上からの命令に従順に従い“反体制教師”に研修を行う役人たち、「狼vsブタ」という使い古された文脈で言うなら、この役人たちこそブタでしょう。そのブタの親玉は、だれあろう石原慎太郎。ブタの親玉が狼だなんて、出来の悪い冗談です。
石原、彼は私より1個下ですが、「シナ」とか「第三国」発言、子供のころは、差別ではなく、ごく当たり前に使った言葉です。そういった体験は同じですが、『太陽の季節』の頃から全く成長が止まってしまった奇形児ですね。
それに追随している都議会、都職員、そして選挙に投票する都民。プライドはどうしたんでしょうか。
最近、神奈川県民から都民になったものです。でも、前から石原慎太郎には嫌悪の念を持っていました。
私の友人に都の上級職の公務員が数人いますが、彼らもその同僚も、石原の支離滅裂で無責任な都政及び発言には、とことん辟易しているそうです。
議会も、石原の子分だった、浜渦副知事を解職させましたし、実際には、都庁の中では、石原は「裸の王様」に過ぎません。
しかし、選挙になると当選する。
私は、不遜をしりながら、あえて、「衆愚政治」の結果と思わざるを得ません。
石原ではなく、小泉に関してですが、首相官邸の補佐官の一人が、マスコミに、「今、小泉首相を支持している人たちは、新聞の政治欄など読まない人たちです」と言ったそうです。それに対応した戦術や言動をとってきたのでしょう。
石原も同様で、そのような人たち向けに、勇ましい言葉を使い、それが弟の裕次郎イメージを増幅し、石原が当選するのでしょう。
私もなんとしても、石原の3選を阻止したいと思っています。
ではでは。
>ましま様
「奇形児」という比喩は同意できません。気持ちが沈みます。
そう生まれてしまった子どもと、後天的な石原の思想を同じものにはなりません。
言葉狩りではなく、ワタシの気持ちです。
余計なコメントかもしれませんが、書かずにいられませんでした。
すみません。
「三国人発言」が効いてると思うな。
東京では外国人犯罪が多発してて、実際にその半数以上が中国人や韓国人。
それに対して、皆が心の中で思ってたことをスパッと言ってくれてた。
↓
だがそこに左翼が、「不法入国した」というのを抜いて「三国人発言!」と騒ぎ立てる。
↓
普通の人が「左翼ウザイ」というのが少なからず芽生えるし、右側もそれを利用する
↓
石原支持
日本人は、怒ってる事とか結構ストレートに言い出しにくい性格だからな。
本音丸出しの石原都知事を支持するのも無理はないかも。
まぁ、総理はともかくとして、石原都知事にはあまり興味ないや。
俺は東京都民じゃないし、これは都民が決めることだから。
ただ、左側が(右翼だとか、外国人差別だとか言う面で)都知事バッシングをするほど、支持率は上がっていくと思うけど。
眠り猫氏
「今、小泉首相を支持している人たちは、新聞の政治欄など読まない人たちです」
それってマスゴミが嫌われてるからだと思われ。
現に、ネット上の人間はマスゴミが発表する以上のソースを持っているのに小泉、石原寄りだし……
マスコミは思想信条の別なく多くの人に軽蔑されておりますようで、昨今は「マスゴミ」などと言われています。確かにそう言われても仕方ないだらしなさですが、まだ「あいつら信用できねぇ」「くだらない連中だ」と見捨ててしまうわけにはいかない。十把一絡げに馬鹿扱いすることで、現場の人間を腐らせて欲しくない。甘いと嘲笑されるのも、自分がその片隅で働いているから身びいき感情があるんだろと冷笑されるのも覚悟の上で、私は少なくとも今のところはとういう考え方をしています。
ですからできれば私のブログのコメント欄では、「マスゴミ」という言葉は使わないでいただきたい。むろん皆さんそれぞれの考え方があるわけですから、各々ご自分のブログで書かれる分には一向に構いませんし、それに対して不快感を持っているわけでもありませんが。
彼は国会議員の時から目立つことをぶちあげているだけ、たとえば、首都移転などの急先鋒でしたが現在は逆。実は一貫性のない信念も政策もない人間なのですが、そういうことを一つ一つ話していくと、都民の皆さんは「支持できるところはないけど他に人がいない」という感じになります。
ディーゼルの黒煙を振ってみせながら、都民のことを考えているふりはするのですが、この問題は、多くの外国人がいう、「どうして鉄道網があるのにトラックがここまで多いの」というグランドデザインの問題です。
貨物駅の集配は国鉄以外の管轄で、縄張りがあって鉄道を使うことが阻害されてきた結果です。彼も運輸大臣をやっているんだからそれはわかっていなければならないはず。自分がそのデザインを壊してきた一員のくせにマッチポンプのパフォーマンスに都民は欺される、だから知らないだけなんだと思います。
それより華氏さん、アメリカ下院の従軍慰安婦決議はすごいですね。慰安婦として世界に知られている、とまで書いてますよ、しかも決議は全会一致。日本人の中には「そんなのいない」という愚かな人もいるようですが。
もう一つ、死刑廃止のリレーを華氏さんでしめてくれませんか?
了解しました。
まぁ、マスコミでもそれなりにがんばってる日とかはありますからね。
完全に見捨ててはいませんけど……