夏への扉、再びーー日々の泡

甲南大学文学部教授、日本中世文学専攻、田中貴子です。ブログ再開しました。

サバティカル日記・半分過ぎた・・・

2012年09月26日 | Weblog
更新が滞っておりますが、みなさまお変わりありませんでしょうか。

すでにサバティカル期間が半分過ぎようとしています。この夏は調査と学会とに

日々を費やし、時に執筆も行う、という、いわば助走期間でした。あれもしよう、

これもしたい、と考えているうち、今年のテーマである「九相図」が思わぬ展開

になり、今はなぜか圓山応挙の画集と睨めっこしています。来年春刊行予定の拙著

の構想はほぼ出来上がり、少しずつ書いているのですが、どんどん新しいことが

わかるにつれ、ものすごい大風呂敷を広げることになりました。なんせ、サブタイトル

が「万葉集から幽霊画まで」ですから。「九相図」というものが、日本中世、近世

の文化事象にかかわっているという思いを強く感じます。ま、いくつかの「新説」

は本が出てのお楽しみということにしておきましょう。

結局、論文にならないようなことをぼうっと考えることが出来たのは、四月だけで

ありました。その後はいつもの生活の繰り返しで、外国にも行かず(行けず。これ

については『まほら』次号に書きました)、ふらふらもせず、狭い街のあちこち

を移動するのが関の山でした。

普段読めないような本を読む、ということもほぼできず、唯一、今まで読み通して

いなかった『ドグラ・マグラ』を最後までじっくり読んだくらいですが、これは

本書に「九相図」に相当すると思われる「六死美人絵巻」が登場するからです。

夢野久作は禅僧でもありますので、どこかで九相図を見た可能性はあるのですが、

いったいどんなものだったかはついにわからず。しかし、夢野が残した日記を

同僚から借りてざっと目を通せたのは面白い読書体験でした。

しかし、『ドグラ・マグラ』は以前、桂枝雀が正木博士を演じている映画で

見ていたのですが、あの映画は『ドグラ・マグラ』ではなく、「枝雀を見る

ための映画」といったほうがよいものでした。なお、本書はフランス語訳さ

れているらしいのですが、ようこんなもん訳せたな、と感心しきりです。

「外道祭文」て、フランス語では何ていうんだろう・・・。

「九相図」を仕上げたら、光文社の古典新訳で『好色五人女』の現代語訳

をやります。久々に、注釈的研究に基づく仕事ですが、こちらも調べれば

調べるほどわからないことが出てきます。時間さえあれば、こうした「手作業」

は面白いものですが。やはり、「手作業」は古典研究の原点であると感じ入った

次第。

あと半年、鉢巻締め直して励むことにいたしまする。

特に面白味のない(と、自分もよくわかっている)近況報告でした。(ブログ

更新しないと、広告に占領されるからね)


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