オータムリーフの部屋

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モンサントの不自然な食べ物

2012-09-08 | 映画

渋谷アップリンクで9/21まで上映中。
農業大国フランスで150万人もが鑑賞し、話題となったドキュメンタリー。アメリカに本社を持つ多国籍バイオ科学メーカー、モンサント。世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を牛耳る企業の裏側に迫る。食の安全性や環境への配慮を軽視し、利益追求に傾倒する企業の知られざる歴史が数々の証言や文書により白日の下にさらされていく衝撃的な作品。
GMO(Genetically Modified Organisms)をはじめ、枯葉剤や除草剤、牛成長ホルモンなどを扱ってきた同社の1世紀にわたる歴史を検証していく。自然界における遺伝的多様性や環境への負担、人々の暮らしを顧みない利益偏重型のビジネススタイルを通し、現代の食の経済構造に警鐘を鳴らす。

モンサントは今まで、PCB(ポリ塩化ビフェニール)、枯葉剤としてのダイオキシン、遺伝子組み換え種子、それぞれの時代に多大な公害や環境汚染を引き起こしてきた。PCBは、アメリカの小さな町で生産されていた。直接川に流し野積みにしていた。工場の事故で、発がん性がないとデーター公表したが、半世紀経過した1990年代になってねつ造データーと判明した。ベトナムで泥沼の戦いに陥っている軍に、ベトコン対策として「枯葉剤」の散布を強力に推し進めた。後に、胎児の奇形や子供たちにがんが発生しても、公式に因果関係を認めていない。モンサント社は、PCBの発がん性に関する訴訟で、2度敗北している。そのどちらも、データーねつ造が問題とされている。

モンサントが、遺伝子組換え種子を販売したきっかけは、自社の除草剤「ラウンドアップ」に耐性の種子の生産が目的だった。こうした品種は、「ラウンドアップ・レディ(ラウンドアップに備えている)」と呼ばれ、農作業を大幅に軽減させる。モンサントは、除草剤と種子をセットで販売して大もうけする。

モンサント社の政治介入力はすごい。パパブッシュ政権時代に、遺伝子組換え種子を品種改良植物として認めさせた。改良である遺伝子組換え種子は何ら検証されることなく、市場に出回ることになる。遺伝子組み換えの大豆をアメリカ市場に出して、わずか10年で90%を占めるまでになった。多収穫と除草軽減で、瞬く間に広まったが、雑草ひとつない農地は不気味だ。モンサントは遺伝子組み換え種子の特許権を取得しているので、農家は毎年買い付けなければならない。 遺伝子組換え種子を購入するために、農家は契約書を提出する。収穫した種子を播くと、特許権の侵害になる。モンサントは「遺伝子警察」を設けて、農家の不正を取り締まる。疑わしい場合は、即座に訴えられる。訴えられた農家は、争わない。モンサントに嫌われると農業経営ができなくなるからである。
今のところ、遺伝子組換え種子で生産した農産物を、科学的にいくら分析して異常は確認されていない。マウスを遺伝子組み換え大豆と、従来の大豆で飼うと、長生きしないとか、繁殖能力が劣るとか、不特定の不健全さが認められる程度である。一部の科学者は、ラウンドアップは使用者に遺伝的異常を引き起こすとか、大豆に発がん性があるとか報告しているが、確証は得られていない。
植物が、特定の虫や薬剤に耐性して平然と実をつけるのは自然ではない。インドではBT綿(虫にも薬剤にも耐性)が大々的に導入され、毎年高価な種子を買わされている。在来種を栽培しようにも交配が起きて作れない。メキシコでも在来のトウモロコシが、GM品種に淘汰され、トルティーヤの味が変わったなど、深刻な問題が生じている。食糧危機を乗り切るためには、遺伝子組換え作物に頼るしかないとする意見が、アメリカでは一般的になりつつある。

モンサント社が、牛の成長ホルモン(BST)を武器に酪農領域に入ってきたのが20年ほど前。牛の成長ホルモンを投与すると、20%近く乳量が伸びる。現在アメリカの酪農では、牛成長ホルモンの投与は日常的に行われている。モンサントは大腸菌を通じて牛成長ホルモンを生産する技術を開発した。この牛成長ホルモンを牛に与えるには、最低月に2回乳牛に注射する。ポジ ラックという商品名で飛ぶように売れている。わかりやすく言うと牛成長ホルモンの投与は、「乳牛のドーピング」である。製造された牛成長ホルモンが自然のものと同一だと言うのを根拠として、投与された乳牛から生産された牛乳は、検査すら行われない。
牛成長ホルモンの投与は、EUや日本では許可されていない。ノンBST牛乳が、高価格でも飛ぶように売れているのを見ると、アメリカの消費者も疑問を抱いているようだ。恒常的に、牛成長ホルモンを投与された牛に、乳房炎の多発や乳成分の低下を指摘する学者もいる。無投与の牛乳に比べてIGF-1(インシュリン成長因子)という物質が、2~6倍多く含まれていることは判っている。この物質は、人の乳腺細胞の急激な増殖を促し、女性の乳房が大きくなったり、乳がんのリスクを高める原因になると言われている。モンサントは加工の過程で破壊されると主張し、ノンBST牛乳に対して、「問題のないことをわざわざ表示して消費者に誤解を与えている」と、牛乳販売会社を訴えている。
かつては、80%を超えていたBST投与牛乳は、半数程度になっている。

TPPに参加するということは、こうしたアメリカの脅威のシステム、食品安全なども容認することになる。
2011年、アメリカのタイム誌の表紙を飾る今年の人は、抗議する人という不特定多数の人物であった。アメリカの農民も、ウオールストリートに出て、この動きに参加した。アメリカの食料は、大企業の農産物、とりわけ、遺伝子組み換え作物によって支配されている、と訴え、食料の正義(Food Justice)を求めた。
穀物の高騰や食糧危機で、モンサント社はこれからも業績を伸ばすことが予測される。
 
監督のコメント
1年間にわたって10カ国(メキシコ、パラグアイ、米国、ベトナム、インド、英国、イタリア、スイス、ノルウェー、フランス)で撮影し、インターネットで調べた数十人の証言者にインタビューを行った。すでにインターネット上にたくさんの情報があり、われわれはモンサントの犯罪をこれ以上、見て見ぬふりをすることはできなかった。情報源の大半はインターネット上で入手可能なもので、私自身がモンサントから告訴されるのを避けるために、取材源としてインターネットを利用した。
モンサント社は人を雇って、私を訴えることができないか調査していたが、私が糾弾している内容をつぶさにチェックして、結局はあきらめた。このドキュメンタリーは42カ国で放送され、書籍も16カ国語に翻訳された。
現在、日本の農業を取材している。日本は、“提携”発祥の地であり、これは世界的に広がりつつある有機農家と消費者を結ぶ新しい流通のモデルになっている。私は現在、世界の人々に食糧を供給する手段としてのアグロエコロジーについて、ドキュメンタリーを制作している。また次のドキュメンタリーとして、福島事故後に日本の農業がどうなったかについても撮影中だ。

 


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