オータムリーフの部屋

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孤独担当大臣

2019-06-02 | 政治
イギリスのメイ首相は2018年1月18日、「孤独担当大臣」のポストを新設し、トレイシー・クラウチ氏を任命した。
また、イギリス政府は孤独の問題に関する調査を開始し、人々を結びつけるコミュニティ活動に対して金銭的な助成をすると発表した。
この政策は、2016年に極右過激派に殺害された労働党のジョー・コックス党首の遺志を引き継いだものだ。メイ首相は、彼女が生前に設立を計画していた「ジョー・コックス委員会」が提出した「孤独」に関する問題についての勧告の多くを受け入れた。
 
ジョー・コックス委員会の調査の結果、明らかにされたのは以下のようなものだった。
・イギリスでは、900万人以上の人々が常に、もしくはしばしば「孤独」を感じており、その3分の2が「生きづらさ」を訴えている。
・月に1度も友人や家族と会話をしないという高齢者(65万人)の人口は20万人にのぼった。
・身体障害者の4人に1人は日常的に「孤独」を感じている。
・子どもを持つ親たちの4分の1が常に、もしくは、しばしば「孤独」を感じている。
・400万人以上の子どもたちが「孤独」を訴え、チャイルドライン(相談窓口)の支援を受けた。
その結果を元に、委員会では「孤独が人の肉体的、精神的健康を損なう」と警告、肥満や一日に15本のタバコを喫煙するよりも有害であるとする啓発活動を実施していた。
また、委員会は孤独がイギリスの国家経済に与える影響は、年間320億ポンド(約4.9兆円)に上るとしている。
 
「孤独はわれわれが直面する最も重要な健康問題です」
イギリスの「孤独担当大臣」トレイシー・クラウチさんは、壇上で聴衆にこう呼びかけた。
 
「1人で不安だ、寂しい」という感覚そのものは、心身に大きなストレスを与え、心臓や脳、血管などあらゆる病気を招くリスクを高めるとされ、早死にする確率が50%上昇するという。
孤独に関する研究の第一人者と言われるアメリカ・ブリガムヤング大学のジュリアン・ホルトランスタッド教授は「社会的つながりは人間の本質的欲求である」とし、「水や食べ物同様、つながりの質が大切だ」と訴える。
「孤独」はある種のスティグマで多くの人が孤独を抱えながら、根本的な解決策を自発的に取ることが難しい。孤独の不安を抱える人に対して、「自己責任」と突き放すのではなく、その気持ちに寄り添い、解消するためのインフラ・環境づくりが急務である。
 
イギリスは孤独対策の先進国だ。約7年前に、高齢者の福祉に携わるNGOの間から、高齢者の孤独を問題視する声が上がり、そこから民間の慈善団体を中心として、多種多様な取り組みが進められてきた。そうした草の根の動きを受けて、これ以上看過できないと、政府も動き始め、世界で初めての孤独担当大臣が任命された。
 
無数の調査研究が行われ、孤独があらゆる年代の問題であることが明らかになり、対策の対象は幅広い層に広がっている。たとえば、孤独を感じる高齢者の電話を受け、会話をする「シルバーライン」。すべての運営費は民間の寄付や宝くじの収益金などで賄われる。24時間365日対応するのは資金的にも人員的にも容易ではないが、特に深夜やクリスマスなどのホリデータイムには孤独を感じる人が増えるという理由から夜間や休日でも受け付けている。
 
男性は面と向かっておしゃべりをするより、ゲームやスポーツ、仕事など何かを一緒にすることでコミュニケーションしやすいという人も多い。であれば、「一緒に何かをする場」を作ればいい、という発想で、「居場所づくり」が進められている。現在、イギリスでは475カ所の「男たちの小屋」があり、新たに100カ所以上が近々オープン予定で、1万人以上が参画し、一大ムーブメントとなっている。この動きはオーストラリアやアイルランドなど世界でも広がっており、オジサンの生きがい再生基地として、注目を集めている。「Walking football(歩くサッカー)」も大人気だ。サッカーが大好きなお国柄であるが、年を取ると走り回るのはなかなか難しい。そんな人でも気軽に楽しめる「歩きながらするサッカー」が「孤独対策」の一環として広がっている。今やイギリスだけで1000チーム以上。大会も開かれるようになっており、ちょっとおなかの出た高齢のオジサンも元気いっぱい、フィールドを「歩き回って」いる。そのほかにも、イギリス人男性の大好きな居酒屋「パブ」を拠点にした朝食会、週末に近所の人たちが集まって、路地にテーブルを並べて、一緒にランチを楽しむ「ビッグランチ」、高齢の独居者を招いてのティーパーティなど、よりどりみどりの対策が展開されている。特徴的なのは、老若男女の多くのボランティアが活動を支えていることだ。
 
正確なデータはないが、孤独感を感じている日本人はかなり多そうだ。町内会という組織が全国的にあるが、首都圏での町内会入会率は低い。生涯未婚率も増えている。2035年には日本の男性の約3割が生涯未婚となるとの推計がある。女性は約2割だ。
 
結婚は面倒で煩わしく、生活環境が便利なので結婚の必要性が無い、ということか?
 
町内会の回覧をLINEで行っている事例があるという。町内会費もスマホの割り勘アプリのようなものを使うと、集金に廻る必要もなくなり、役員会は役員専用のLINEグループでスマのホ会議を行うと、日時を合わせて集まることも無くなり、負担はかなり減る。しかし、便利な仕組みを作れば作るほど、互いの顔を見ることも無くなり、コミュニティは崩壊する。面倒だからこそ町内会が続くのかもしれない。
 
コンビ二に行くと無人の店舗で、スマホがあれば入店でき好きなものを持ち帰り、支払いは知らないうちに行われている。人と会話をすることもなく、お金を手渡すことも無く、誰とも接することもなく買い物が完結する。
 
地震、台風、洪水、がけ崩れ、火災、など災害の宝庫ともいえる日本。
便利になり過ぎると人は孤立していく。不便な世の中であれば、パートナーを求める人も多くなり、子供の出生数も増えるのかも知れない。
 
日本政府の孤独対策は皆無で、一足飛びに孤独死対策となる。事態は深刻だ。
ニューヨーク・タイムズ紙は、「A Generation in Japan Faces a Lonely Death(孤独死に直面する日本のある世代)」と題した記事を掲載している。千葉県松戸市にある常盤平団地に住む91歳の女性の日常を通じて見る、高齢化社会日本の陰を描いた長編記事となっている。
 
 1960年代から、日本政府は東京近郊に、日本の戦後経済の再建を託した何千もの若い「サラリーマン」のための巨大な団地を立て始めた。その一つである常盤平団地は、2駅にまたがる約4800戸の巨大団地である。高い競争率を勝ち抜き、女性とその夫はここに新居を構えた。新しい西洋的ライフスタイルを享受する核家族が集まる団地で、女性は幸せな人生を送るが、夫と娘が25年前に相次いで他界した。仲の良かった友人たちも次々と亡くなり、四半世紀を一人で暮らすこの女性には、知り合いはほとんどいない。
 
 今や団地の住民のほぼ半分が65歳以上でアパートで孤独死した遺体の発見が相次いでいる。このような状況を案じた91歳の女性は、向かいのアパートの年下の住人にあるお願いごとをしている。女性は就寝前に窓の障子を閉め、起床後障子を開ける。「もしも朝になっても(障子が)閉まったままなら、それは自分が死んだという意味だ」として、その際はすぐに行政に連絡をしてもらう約束を取り付けている。毎朝窓をチェックしてもらうお礼として、女性は毎夏、この隣人に梨を贈り続けているという。
 
記事によれば、亡くなった人々の死は、光熱費の支払いが止まったり、部屋から異臭がしたりすることで、やっと気づかれることが多いという。公式な数字はないが、専門家は、孤独死の後、数日から数週間後に見つかる人は、年間3万人と見積もっている。しかし、孤独死の遺体処理や清掃をする業者は、その2~3倍と見ている。
 
 孤独死は高齢化する日本で広がるトレンドで、日本独特の文化、社会、人口動態的要素が問題を形作っているとしている。社会保障政策の専門家、藤森克彦氏は、日本では家族が高齢者を支えるのが普通であったが、未婚者の増加や家族規模の縮小で、そのシステムに変化が出てきていると指摘する。単身世帯は人口の14.5%で、この30年で倍増し、50代男性と80代以上の女性の増加が目立つ。不安定な職についていることから結婚できないという男性や、働き自立する女性の増加で、婚姻率も低下しているという。
 
 家族がいない高齢者は、他人に迷惑をかけたくないという日本的な考えから近所の人に助けを求めず、結果として他人との交流の欠如につながる。また、家族が離れて暮らしている、経済的に高齢の家族を援助できないというケースも増加しており、もはや家族に期待することはできない。
 
しかし・・・・・・自殺をするまでに追い詰められた人に対して何の被害も受けていない人から「一人で死ね」と言う言葉が公の場で投げつけられる社会にも自殺抑止を期待できない。
 

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