酔眼独語 

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八百長交渉のにおいがする

2008-06-14 04:18:47 | Weblog
 斎木外務省アジア大洋州局長と北朝鮮のソン・イルホ日朝交渉担当大使の二日間にわたる協議が終わった。斎木氏は12日、「内容は帰国して総理らに報告してからでないと…」ともったいぶった言い方をして、拉致問題に関して進展があったことをにおわせた。

 きのう明らかになったのは何か。北が拉致問題は解決済みという常套句をやめ、「再調査する」と言っただけのことである。よど号事件の犯人らの引渡しにも言及したらしいが、これは付け足しだ。

 北朝鮮が「再調査」を口にするのは2002年9月の小泉訪朝以来3度目である。満足な調査が行われた試しはない。今回もおそらく口先だけだろう。

 しかし、政府は「一定の前進があった」として、北朝鮮に対する経済制裁を一部解除するという。拉致被害者の家族会が「おかしい」と声を上げるのは無理もない。なぜこんなことになったのか。

 今回の交渉では何が何でも「進展」の二文字が必要だった。おそらくアメリカがそう要請したのだろう。米朝はこのところ急速に歩み寄っている。アメリカは北朝鮮をテロ支援国家から外す腹を固めていると思われる。もちろんブッシュ大統領のレジェンド作戦の一環だ。

 先日、北が唐突とも思われる「反テロ声明」を発表したのも、こうしたアメリカのサインに応じたものだろう。今回の日朝協議はこの流れの中で理解すべきだ。

 アメリカがテロ支援国家指定を解くときに障害になっているのが拉致問題である。一方的解除では日本の世論を納得させられない。それでなくても危機的状況にある福田政権をさらに窮地に立たせることにもなる。

 そこで編み出されたのが今回の回答である。

 斎木氏は人事課長当時、田中真紀子外相とのバトルで、脚光を浴びた人物である。前職は駐米公使。本来北米畑の人間だが、妻が北米二課長などを務めていた関係で現在のポストにはまったのではないか。北に対する姿勢では「強硬派」の代表格とされ、家族会などの受けもいい。

 
 その斎木氏が回答にもならぬ回答を持ち帰って、政府の公式見解につながった。家族会が失望するわけである。斎木氏は北の回答を必ずしも評価しているわけではなさそうだ。12日の会談後の表情は極めて硬かった。「前進」を引き出した顔ではない。

 13日、帰国後の発表となったのもポイントの一つだ。斎木氏は自ら公表することを避けたのではないか。公表と評価を官邸に委ねたのだ。こうしておけば、世論の批判は自分には向かわない。と考えたとすれば、なかなかの策士だ。

 日本の北朝鮮政策は、結局アメリカ次第ということをはしなくも露呈したのが今回の協議とその後の動きだといえよう。

 「次からの調査は日本も関与する形で」などと官邸筋は語っている。6年前、政府調査団の団長として北に入ったのはほかでもない斎木氏だ。北での調査がどんなものか熟知しているはずだ。

 今回の斎木氏の使命はただ一つ「進展があったと印象付ける」ことだった。そう考えるとすべての説明が上手くつく。北の基本スタンスは何ら変わっておらず、拉致問題解決への「前進」は全くない。今回の協議を客観的に評価すればそうなる。

 
 
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