晴れ時々スターウォッチング

昔の出来事もたま~に紹介

スペースシャトルSTS-27 アトランティス号の危機

2021年06月27日 | STS(スペースシャトル)
 宇宙開発史上、最も輝かしい歴史を残したと言っても過言ではないアメリカのスペースシャトル計画だが、実は30年以上前のミッションでシャトル計画が終焉を迎えたかもしれない最大の危機があった。

以下そのドキュメンタリー記事である。

 その危機はチャレンジャー号の事故後、2年8か月ぶりとなる飛行再開を無事終えたフライトの次のミッションSTS-27で起きた。あろうことかリフトオフ84秒後に固体ロケットブースターのノーズキャップから剥離した断熱材がシャトルを直撃して耐熱タイルを破壊していたのである。損傷を受けた耐熱タイルの数はなんと数百枚以上…。

 そう、2003年2月1日に起きたコロンビア号の悲劇と同じ事が15年前に起きていたのである。いやひとつだけコロンビア号の事故と違う点がある。それは、耐熱タイルが損傷を受けて地上への帰還が難しいことをクルー全員が知っていたことである。

 そして最大の危機はこの状況を地上管制に報告しても取り合ってくれなかったことだ。クルーはどのようにしてこの状況に立ち向かい無事帰還できたのか。

 時は1988年12月2日…

 当初公表されたスペースシャトル計画では、STS-27はコロンビア号の通算13回目、国防総省の6回目のミッションとして1985年4月27日にリフトオフが予定されていたが、実際は計画の遅れとチャレンジャー号事故の影響を受け1988年12月1日にアトランティス号でリフトオフする4回目の国防総省ミッションとして変わっていた。

 国防総省ミッションであるためその秘匿性は高く、ミッション内容はもちろんクルーの訓練も別施設で極秘に行われ、打ち上げ日時の公表もリフトオフのわずか24時間前という徹底ぶりだった。


Photo Credit: NASA

 コマンダーのR.ギブソンは事故を起こしたチャレンジャー号の1つ前のミッションSTS-61C(1986.1.12、コロンビア号)でもコマンダーを務め、STS-41Bミッション(1984.2.3、チャレンジャー号)ではパイロットとして搭乗しているベテラン宇宙飛行士だ。今回で3回目のフライトとなる。J.ロス(MS)とW.シェパード(MS)は2回目、G.ガードナー(P)とR.マレーン(MS)は今回のフライトが初飛行である。

 当初の打ち上げ予定日であった12月1日は天候不順のため延期となり、翌日12月2日にアトランティス号は見かけ上ではあるが無事リフトオフした。この時は地上管制官もシャトルクルーも耐熱タイルが未曾有の危機的状況になっていることをまだ知らなかった。


Photo Credit: NASA
 


Photo Credit: NASA

 軌道に乗ったアトランティス号は早速ミッションを開始し、積み荷である極秘偵察衛星のリリースを行った。この時の積み荷は軍事機密上公開されることはなかったが2008年7月に機密指定が解除され今では合成開口レーダーを搭載したラクロス1号機であったことが分かっている。

ミッション中に撮影されたSTS-27宇宙飛行士。左からギブソン、マレーン、ロス、
シェパード、ガードナー。 Photo Credit: NASA

 ミッション2日目の早朝、クルーは不穏なニュースで目覚めることになる。それはリフトオフ時のビデオ解析により84秒後に右固体ロケットのノーズキャップから落下した断熱材がシャトルをヒットしているという内容だった。それを聞いたクルーはリフトオフ時にフロントガラスに不規則に付着する白い物質を観察したことを報告した。ミッションコントロールセンターの指示のもとカナダアームを伸ばして点検した画像にクルー全員は声を失い凍り付いた。

 そこに見えたのは、シャトルのノーズから右主翼前端まで伸びる幾筋もの白い傷であった。マレーン宇宙飛行士は後日インタビューで「白い傷はカメラの視界を超えて伸びており、傷跡が右翼の先端のカーボン複合パネルに向かって広がっているように見えた。何百もの数のタイルが損傷しており、少なくとも1つのタイルが胴体から完全に剥がれ落ちていた事が分かった。」と述べている。

 この危機的状況を撮影したビデオを地上管制に送信したとき地上から到底受け入れられない返事が返ってきた。それは「損傷に見えるのは、ただの光と影によるものであり帰還に支障は無い。」という内容だった。ギブソン船長は激怒して反論したが、ここに国防総省ミッションゆえの不運があった。極秘の任務であるため全ての交信が暗号化されており映像の解像度も限られたものだったからである。

 説得しても受け入れない地上管制を前にギブソン船長は死を覚悟し、クルー全員に「なにも緊張しながら死ぬことはない。最後のフライトとなる宇宙飛行を存分に楽しもう。」と伝えた。(He told his crew to enjoy the final days of the flight. “No use dying all tensed-up”)

 予定されたフライトは4日間だったが、飛行士たちはフライトを楽しむ余裕などないほど忙しい時間を過ごしていた。というのも未確認情報ではあるが漏れ伝わる話として、リリースした偵察衛星に不具合が生じたため予定には無かった偵察衛星とのランデブー飛行および2人の宇宙飛行士による修理のための極秘の船外活動があったと言われている。

(このエピソードには船外活動が行われていればタイルの損傷状況を地上管制が知ることになるので実際はなかったという説と2001年2月に記念すべき100回目の船外活動を終えた宇宙飛行士にインタビューした際に「実は前回の船外活動が100回目だった…」と答えたことから、これがSTS-27の船外活動を表しており実際に船外活動は行われたという説があるが真偽のほどは定かではない。)

 

 12月6日早朝、全ての任務を終えたアトランティス号は地球の裏側にあるエドワーズ空軍基地への着陸に向けて軌道離脱を開始した。5人の宇宙飛行士は全員かさばるオレンジ色のスーツを着込みそれぞれが最後の瞬間への準備を始めた。

 マレーン宇宙飛行士はフライトデッキ後部天井にある窓から状況を撮影するためギブソン船長の許可を得てギリギリまで着座せずに留まり、やがて溶融アルミニウムが窓ガラスを塗りつぶしていくであろう様子を観察していた。

 大気が濃くなりGを感じるようになったことからギブソン船長はマレーン宇宙飛行士へミッドデッキへの着座を指示し、自分は地上への最後の報告の準備をしていた。

 高温のプラズマが右翼側の耐熱タイルからシャトル内に侵入するバーン・スルーが始まったら右舷側の効力が高まる。そうなると姿勢を修正するために右エレボントリムが働き左エレボンは下がる。この修正は大気圏突入の時に自動システムで起きる状況であり見慣れた事であるが、修正角度が1/4を超えることは無い。この角度が1/4を超えたときにギブソン船長は残された人生の時間60秒を使って地上管制官に「ミッションコントロールが下したヒートシールドの分析についてどう思うか」と問うことを考えていたと非公式のコメントを残している。

タッチダウン時の写真。右舷側の耐熱タイルが多数損傷していることが分かる。
Photo Credit: NASA


Atlantis touches down at Edwards Air Force Base, on 6 December 1988 Photo Credit: NASA

 1988年12月6日午後3時36分、4日半のミッションを終えたアトランティス号は着陸1分前にドンドーンと聞こえるいつものソニックブームを響かせながらエドワーズの乾燥した湖底滑走路17番に無事着陸した。クルーがタラップを降りて外に出て見た光景は、グラウンドクルーが機首付近に集まり首を横に振っている姿だった。損傷したタイルの数は707枚に及び、ノーズのタイル1枚は完全に欠落していた。今回バーンスルーが起きなかった理由は幸運にも剥がれたタイルの下にLバンドアンテナ取り付け用のアルミプレートがあったからであった。

Photo Credit: NASA
 のちにギブソン船長は、チャレンジャー号事故後の2回目のフライトであるSTS-27が帰還しなかったら、アメリカのシャトル計画の息の根を止めることになっていただろうと述べている。

 当時のシャトルには翼内温度センサーが装着されていなかったためバーン・スルーが起きたかを判断する手立てが無かったわけだが、右エレボントリムと左エレボンの動きを判断材料としてバーンスルーの瞬間をモニタリングしていたギブソン船長はさすがである。のちに「生と死の境は髪の毛1本分だった。」とギブソン船長は述べているが死を覚悟しながらも冷静さを失わずに大気圏への突入を遂行する宇宙飛行士たちはこれぞライトスタッフの持ち主であると言える。
 
 この事故後、シャトル計画には様々な改良が加えられたはずだが、15年後のコロンビア号の事故を未然に防ぐ未来に繋がらなかったことは極めて残念なことである。



参考文献:
'Dying All Tensed-Up': 30 Years Since the Troubled Secret Mission of STS-27 
By Ben Evans, on December 9th, 2018

Into the Black: NASA’s Secret Shuttle Missions – Part Two By Ben Evans, on January 30th, 2012
STS-27- Wikipedia
SpaceGuide宇宙年鑑2007/AstroArts
スペース・イラストレイテッドJuly1982.Vol1.No.1/ワールドフォトプレス
スペース・イラストレイテッドOctober1982.Vol1.No.4/ワールドフォトプレス

STS-133 ディスカバリー号 ラストフライト

2011年09月04日 | STS(スペースシャトル)
2011年3月8日に撮影したディスカバリー号のラストフライト…、

当時パソコンがクラッシュした直後だったことと3日後の大震災発生で
撮影記録をブログにアップしていませんでした。メモリアルなフライトなので
遅ればせながら撮影記録をアップすることにします。

〈STS-133 ディスカバリー号 ラストフライト撮影記録〉
STS-133がISSからアンドックしたのは2011年3月7日19時00分(JST)
その23時間後に日本でディスカバリー号のラスト・ランデブー飛行が見られた。

イベントデータ

ISSの最大仰角はわずかに21°、光度は‐2.9等級、直距離842kmと条件は良くありません。
しかも、太陽高度が-7°で空が明るい状態なのでSTSは見えない可能性があります。

ランデブー飛行は見えるのでしょうか?

時間です。北の空にISSが見えてきました。

2011.3.8 18:07:51 f18mm F5.0 3sec

STSはまだ見えません。

2011.3.8 18:08:00 f18mm F5.0 3sec

肉眼では見えませんでしたが、STSがかすかに写っていました。

2011.3.8 18:08:06 f18mm F5.0 3sec

眼視でやっと確認することができました。

2011.3.8 18:08:53 f18mm F5.0 3sec

東の空ではきれいなランデブー飛行が見られました。

2011.3.8 18:09:47 f18mm F4.2 5sec

やがて、STSは地球の影に入り見えなくなりました。

2011.3.8 18:10:16 f18mm F4.2 5sec

これがSTSを撮影した最後の写真となりました。

What Kind of World Do You Want?

2011年09月03日 | STS(スペースシャトル)
NASAのVideo Galleryにあるこのビデオクリップ…、
映像も綺麗ですが、深く考えさせられる内容のビデオです。

「What Kind of World Do You Want?」→YouTube


「あなたが描く未来はどんな世界?」
STS-135は国際宇宙ステーションに向かう最後のスペースシャトルです。スペースシャトルが
引退した後も、人類は途切れることなく宇宙への進出を創出していくでしょう。
そう、STSによって組み立てられたこの国際宇宙ステーションをスペースポートとして…

このミュージックビデオは国際宇宙ステーションのクルーメンバーと未来を担う世界中の
子供達によって作られています。…とNASAのWEBに解説が載っています。

STSが引退した今となっては無理なことですが、7人まで乗れるSTSが現役の
うちに各国の首脳クラスの要人を載せて宇宙サミットを開いて欲しかったですね~。

青い地球を宇宙から見れば、今何をすべきかがすぐわかると思うのですが…。

「あなたが描く未来はどんな世界?」と各国の首脳に問いたいですね。
「子供たちの未来のために、今あなたは何をしていますか?」という問いに
まともに答えられる国はどの程度あるのでしょうかね~?

いつの日か…

このような写真が撮れる世界になってることを願います。

「アトランティス号」撮影記録

2011年07月19日 | STS(スペースシャトル)
2011年7月19日午後3時28分(日本時間)、ファイナル・スペースシャトルがISSからアンドックした。

Credit:NASA

このような巨大有翼スペースシップがISSにドッキングすることは、もうない。
2日後にスペースシャトルは輝かしい歴史の一つとなる。

すべてのことには終りがある。しかし、次世代への飛躍が見えない
終わりには、さみしいものがある。これからアメリカは有人ロケットの
ない時代をしばらく過ごすことになる。

2008年からはじめたISS拡大撮影でSTS「アトランティス号」関連の写真が
いくつかあるので、まとめてみました。

2008年2月17日 ISSにドックしているSTS-122「アトランティス号」


2009年11月25日 STS-129「アトランティス号」がドッキングしているISS


2009年11月27日 STS-129「アトランティス号」とISSのランデブー飛行


2010年5月15日 STS-132「アトランティス号」 単独飛行


2010年5月15日 STS-132「アトランティス号」 単独飛行


2010年5月15日 STS-132「アトランティス号」 単独飛行


2010年5月16日 STS-132「アトランティス号」とISSのランデブー飛行


2010年5月16日 STS-132「アトランティス号」とISSのランデブー飛行


*注:上記ランデブー飛行写真は同倍率で切り出した写真を合成したものです。
同一視野で撮影したものではありません。2009年11月27日の写真は動画から
静止画キャプチャーしたものを合成したものです。


STS-135 Daily Mission Recap - Flight Day 1

2011年07月10日 | STS(スペースシャトル)
NASAのVideoGalleryにSTS-135の打ち上げまでの様子と
リフトオフの様子をまとめたビデオがアップされています。

このビデオは見所満載の必見ものです!

STS-135 Daily Mission Recap - Flight Day 1→YouTUbe
最後の搭乗員を静かに待つアトランティス号

搭乗するアストロノーツは4人、

右がコマンダーのクリストファー・ファーガソン、左がパイロットのダグラス・ハリー、

後ろがミッションスペシャリストのレックス・ウオルハイムとサンドラ・マグナス

アストロバンに乗って発射台へと向かいます。


アストロバンを降りるとSTS-135との記念撮影タイムです。


そして、ホワイトルームを通っていよいよコックピットへ


搭乗のお手伝いをしてくれるクローズアウト・クルーにとっても最後の仕事です。


STS最後のクルーを見送った後にSTSに関わったすべての
スタッフの気持ちを代表してクローズアウトクルーがビデオを収録しています。
「Shuttle Closeout Crew Says Goodbye」→YouTUbe
このビデオはちょっと切なくて、STS計画の終焉を感じさせられました。

まもなくSTSにとって135回目のリフトオフです。


ホワイトルームが動き始めました。

ゴッドスピード! アトランティス!

メインエンジン点火!


ブラストオフ!


STSの影の先端にグローリー(ブロッケン現象)が見えます。


STSは地球の丸みに沿って上昇していきます。


ブースター切り離し成功!


エクストラタンクを切り離して漆黒の宇宙に上昇するSTSは…

大海原を泳ぐシロナガスクジラのおなかみたいだな~といつも思っていました。

STSのラストミッションが始まりました。最後のSTSがドッキングしている
ISSを見たいところですが、日本からは見えないようですね~、残念!


STS-135: Final Launch of the Space Shuttle Program


STS-135 打ち上げ成功!

2011年07月09日 | STS(スペースシャトル)
STSのラストフライトとなるアトランティス号が無事、軌道にのった。

NASATVの映像ではリフトオフ直後に雲に入ったためブースター分離はよく見えなかったが
薄雲の中を突き進むSTSはスピード感たっぷりで見ごたえのあるリフトオフであった。

エクストラタンク分離時は光線の具合がとてもよく、タイルのナンバーが見えるほど
であった。


いつ見てもこのシーンはワクワクする。

もうライブで見ることができないのはとても残念…。

楽しみがひとつ減ってしまったな~。


ついに公開!「the ultimate photo op」

2011年06月08日 | STS(スペースシャトル)
5月23日にネスポリ宇宙飛行士によって撮影された
「STSがドッキングした状態のISS」の写真がついに公開されました。

青い地球をバックに撮影したISSの完成形です。大きいサイズはこちら(

130度ターン中のISS

ターンの途中ですが、アングル的にはベストとも言える写真です。大きいサイズはこちら(

そして、ミッション・コンプリートの写真

古川宇宙飛行士は10日午前6時22分にISSにドッキングします。

大きいサイズはこちら(


↓関連ブログ
shuttle photo op (2011.5.28)
Out-of-this-world photo op approved (2011.5.23)
Proposed ultimate space station photo op rejected (2011.3.2)
ISS完成記念撮影会? (2011.2.13)

shuttle photo op

2011年05月28日 | STS(スペースシャトル)
「STSがドッキングした状態のISSを撮影するミッション」が
23日予定通り実施され、みごと成功しました。

ネスポリ宇宙飛行士が撮影した写真とビデオはまだ公開されていませんが、
ソユーズの積載カメラが撮影した写真がいち早く公開されています。

ISSの後方、600フィートから撮影した写真、地上から撮影した写真と
同じ向きになってます。(

地球を背景に入れるため、ISSがすでに90度向きを変えていることがわかります。

ISSが130度のターンを始めました。


STSを真横から見る位置まで静かに回転します。


あと少しです。


真横から見る位置に来ました!ミッション・コンプリートです。

歴史的瞬間です。STSのフライトは最後のSTS-135を残していますが、
ISS組み立てフライトとしては今回がラストです。

この写真はとても意味深いものがあります。

この写真は、STSによるISS組み立てミッションのラストシーンを
青い地球を背景に撮影した、まさに歴史的メモリアルフォトです。

同時に、この写真は「スペースシャトル-国際宇宙ステーション」時代の終焉を告げる
写真となります。これからの10年はISSのセカンドステージとなります。

その先陣を切るのが古川宇宙飛行士です。6月8日にソユーズでISSへ向かいます。

こちらはグレゴリー・シャミトフ宇宙飛行士とマイケル・フィンク宇宙飛行士が
金曜日の船外活動中にフィッシュ・アイレンズで撮影した写真です。

フィッシュアイレンズを使用しているためSTSの全景が映っています。
こちらも今まで撮影されたことのないめずらしいアングルの写真です。

ISSの背景を撮影した写真にはプログレスM-10MとATV2「ヨハネス・ケプラー」が写っています。

さあ、いよいよ、古川宇宙飛行士の長期滞在が始まります。

がんばれ! 古川宇宙飛行士!

古川宇宙飛行士の乗船するISSを拡大撮影するため、ISS撮影班が
(メンバーは一人ですが…、)撮影システムの変更を現在、検討中です。

Out-of-this-world photo op approved

2011年05月23日 | STS(スペースシャトル)
なんとNASAは、一度は断念した「STSがドッキングした状態のISSを撮影する
ミッション」を23日(日本時間:24日)に遂行すると先週の金曜日(20日)に発表しました。

スペースシャトルがドッキング中のISSを撮影するミッションは当初から予定されていたものではなく
エンデバーの打ち上げが予定より遅れたことによって可能となったミッションです。

当初4月29日に予定されていたエンデバーの打ち上げが5月16日になったため、
159日間滞在した第27次長期滞在クルーの帰還がSTSのドッキング中に行われる
ことになりました。

前回このミッションが計画されたとき、ロシア側から未承認()となった理由として
アンドックさせたSoyuzを再ドッキングさせるというハイリスクがあったからです。

今回は帰還のためのアンドックなので再ドッキングする必要がまったくありません。

つまり、帰り道の途中に、ついでに写真を撮るといった感じのミッションです。

今回アンドックするするソユーズTMA-20はPMMのすぐ隣にあります。

ソユーズがドッキングするときは多量のスラスターを噴射するので危険ですが
アンドックするときはいたって静かなのでSTSを傷つけることはありません。

撮影のためSoyuzはオリジナル・プランより1時間30分早くアンドックします。
その後、手動で船体をまっすぐ後進させ、600フィート離れたところで待機します。

撮影者のネスポリ宇宙飛行士ははコマンダーの左側に着座していますが、撮影のため
軌道モジュールへと移動します。ISSは最適のカメラアングルとなるように130度の回転を始めます。

マニューバの詳細は「Soyuz departure animation」↓をご覧ください。

撮影のスケジュールはとてもハードワークのようです。

撮影終了後はすぐにソコル宇宙服の気密チェックを行って
大気圏突入の準備をしなければなりません。

ソユーズには撮影した画像データを送信するKuバンドアンテナがないので
ISSに画像を送ることができません。撮影した映像をいつ公開するか
についても、未定となっています。

美しい地球をバックにSTSがドッキングしているISSの写真は
想像しただけでワクワクします。公開が待ち望まれますね。

イベント・タイムスケジュール

EDT/EST.......DDD...HH...MM...SS...EVENT

12/15/10 (EST)
02:09:25 PM...000...00...00...00...Soyuz TMA-20 Launch

5/23/11 (EDT)
04:40:00 PM...159...01...30...35...US to Russian attitue control system handover
04:52:00 PM...159...01...42...35...ISS maneuver to undocking attitude
05:24:36 PM...159...02...15...11...Sunrise
05:29:32 PM...159...02...20...07...Daily orbit 13 Russian ground station AOS
05:31:00 PM...159...02...21...35...ISS to free drift
05:32:00 PM...159...02...22...35...Nominal separation command
05:35:00 PM...159...02...25...35...Physical separation/hooks open
05:36:40 PM...159...02...27...15...ISS to LVLH snap-and-hold
05:38:00 PM...159...02...28...35...Soyuz manual separation burn #1
05:41:00 PM...159...02...31...35...Arrival at stationkeeping (590-650 feet)
05:41:00 PM...159...02...31...35...Habitation module ingress
05:43:20 PM...159...02...33...55...ISS return to undocking attitude
05:44:33 PM...159...02...35...08...Daily orbit 13 Russian ground station LOS
05:50:00 PM...159...02...40...35...Begin ISS photography
05:52:28 PM...159...02...43...03...Noon
05:55:00 PM...159...02...45...35...ISS maneuver to photography attitude
06:06:00 PM...159...02...56...35...ISS in photo attitude
06:15:00 PM...159...03...05...35...Soyuz manual separation burn #2
06:20:00 PM...159...03...10...35...Habitation module egress; start leak checks
06:20:20 PM...159...03...10...55...Sunset -- photography complete
06:21:00 PM...159...03...11...35...ISS maneuver to duty attitude
06:56:01 PM...159...03...46...36...Sunrise
07:00:00 PM...159...03...50...35...Russian to US attitude control handover
07:00:00 PM...159...03...50...35...Hatch and suit leak checks complete
07:02:08 PM...159...03...52...43...Daily orbit 14 RGS AOS
07:19:33 PM...159...04...10...08...Daily orbit 14 RGS LOS
07:36:00 PM...159...04...26...35...Sunrise at landing Site
08:30:13 PM...159...05...20...48...Daily orbit 15 RGS AOS
08:53:58 PM...159...05...44...33...Daily orbit 15 RGS LOS
09:36:14 PM...159...06...26...49...Soyuz deorbit burn start (257.7 mph)
09:40:39 PM...159...06...31...14...Deorbit burn complete
10:03:36 PM...159...06...54...11...Atmospheric entry (62 miles altitude)
10:11:49 PM...159...07...02...24...Command to open parachute (6.6 miles altitude)
10:26:49 PM...159...07...17...24...Landing

Proposed ultimate space station photo op rejected

2011年03月02日 | STS(スペースシャトル)
ロシア・ミッション・マネージャーはNASAが提案した、ソユーズを
アンドックさせてISSの写真を撮る提案を未承認と決定しました。

この提案が承認されなかった大きな理由は、やはり「リスクが
大きすぎる」のひと言に尽きるようです。

このオプションを実施するには、ソユーズTMA-01Mをアンドックさせ、
さらに、ISSの向きを微調整する必要があるそうです。

ミッション完了までの時間は約1時間で済むそうなので、簡単では
ありませんが、出来ないことはなさそうに思えます。

では、なぜ承認されなかったのか?

ロシア側がGOサインを出さなかった理由はアンドックするソユーズが
新型機TMA-01Mだったからだそうです。

新型機のTMA-Mは基本的にはTMAと同じですが、36個の古い電子デバイスを
19個の新型デバイスに交換し、ソユーズの船内コンピュータとISSのロシアモジュール
間のデータ通信をデジタル多重通信に変更してあります。

その1号機であるため、最大の任務はこのシステムのチェックと地球への帰還を
予定通り行うことです。よって今回の提案は想定外のマニューバであるため
起こりうる不具合の予測ができず、危険すぎるという判断のようです。

あれ?ISSにはもう1機ソユーズがドッキングしているはず…、しかも、旧型ソユーズ
だからそれを使えばいいんじゃないの?、と誰しも思うところだが、それは始めから
想定していないそうです。

理由はドッキング位置です。TMA-20はPMMのすぐとなりにあります。

ここからアンドックすれば、まちがいなくTMA-20のスラスター噴射がSTSを直撃します。

ですから、この選択肢は最初からありません。TMA-20がTMA-01Mの位置にあれば
可能性はあったと思われます。HTV2がシールドとなるのでTMA-01Mの噴射は
STSにまったく影響を与えないとはっきり述べています。(あれ~? たしかに
HTVは燃やされる運命にありますが、まだミッションの途中ですよ…)

今回の提案はそもそも、NASAの中でも、リスクを冒してまで行う価値があるのか?
と言う意見が多数だされていたそうです。

さらに、ISSのコマンダー、スコット・ケリー船長が難色を示していたようです。
延長された1日は荷物の搬出とクルーの休息に使いたいと述べていたようです。

さすが、コマンダーですね。冷静で適切な判断です。

残念ながら、コンプリートなISSの撮影をコンプリートすることはできないようです。

できることなら、6月のラストフライトまでにカメラ内蔵の小型衛星を開発して、
STSがドッキングしているISSの写真を撮影してほしいものですね。