Are Core Hire Hare ~アレコレヒレハレ~

自作のweb漫画、長編小説、音楽、随想、米ラジオ番組『Coast to Coast AM』の紹介など

038-事件

2012-10-26 21:29:03 | 伝承軌道上の恋の歌

 ある事件が噂になっている。誰かが見たとか、誰かが被害にあったとか、その誰かも本当にいるのかどうか誰も確かめたことがない。そんな事件が起こっているという。『ナンバー狩り』とみんな、そう言っていた。要はナンバーを入れたものが襲われる事件のことだ。ナンバーとはマキーナの首元にあるシリアル・ナンバーと同じ刺青。自分の気に入った数字と、バーコードのような帯状の線を入れる。スフィアで流行っているらしい。とはいっても、ほとんどがフェイクで、その瞬間の気分と一緒に二日もすれば消えてしまう。そのくらいがちょうどいいから。どうせ、自分たちの小さな泡のようなささやかな心の中のスフィアもそうして消えてしまう。彼女たちがどんな運命に定められたそれぞれのマキーナになれたとしても。
 また、こんな話もあった。マキーナを救い出した同じ研究所にいたアンドロイドがいるという。名前はマキーノだとか、『000(トリプルオー)』だとか…断片的に広がる『マキーナ神話』によればその男のアンドロイドがマキーナを博士の研究所から救ったことになっている。シリアル・ナンバーからもマキーナより以前に作られたプロトタイプだということだ。マキーナと同じように彼にもオリジナルがいたというものもいて、それをイナギとヨミになぞらえるものもいる。けど、まだ『正典』と認識されるほどに支持されている『レイヤー』ではないらしい。ともかく、この男女一対のアンドロイドにまつわる物語はお互いがお互いを求めることの物語が欲しい恋人達にも使えた。そしてそれは『ナンバー狩り』の被害者は男でも女でもありえるということでもあった。何者かによってこのナンバーの入った首筋を刃物で抉り取られるように切られることから、このナンバーを狙った犯行に間違いはないということだ。しかし本当に起こったのかも分からない。だから、ただの噂だ。それはでも、いずれ口伝えに伝承されて、また新しい伝説になる、そういう類のものの、つまりは『レイヤー』のひとつなのかも知れなかった。

…つづき

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