聖地。イナギとヨミが死んだって言われてる偽りの聖地。でも私は知ってる。本当はそうじゃない。でも、みんなが信じたいことの意味は大事。
私といつものスフィアのメンバーは床に座って輪になって写真の切り抜きを作ってる。ここはミヤコアトリエ。ガタガタと鳴るミシンを響かせて、揺れる長い髪を一つにしてる女の人の背中が見える。スフィアの衣装もそのほとんどを作ってくれてる。その代わりに私達はミヤコさんが店員をやってる服屋の飾りを作ってあげる。ミヤコさんに一度聞いたことがある。手間をかけて作ってもらってるのにこんなお礼だけでいいの?と。そうしたらミヤコさんはこう答えた。『君達の普段着ている服は海の向こうの貧しい少女の皮でできてるんだからこっちの方がずっとましだよ』って。
「モノ、最近見ないけどどうしてるんでしょう?」私の隣にいたアカが聞いた。
「いや俺も知らない。けど、イナギの秘密が分かったとか言って色々動いてるみたい」
私はその言葉に少しどきりとした。
「モノは実はイナギの信奉者だったんだよ。そうは見えなかったけどね」
もう一方の私の隣にいるのはミドリ。
「…ねえ、みんなイナギがオリジネイターだと思ってるの?」私は聞いた。
「もうそれは関係ないんだ。俺達は別に人類史上初めて中指を立てた人間に敬意を持ってないぜ?」他のメンバーがそう言う。
「でもソースは大切だよ。いつまでたったってそれはマンデルブロのように自己相似的にしか広がらない」ミドリがつぶやいた。
「なら全体がどうなるかもう少し見てみようよ。そこにモノが探してる答えもあるかも」
「アノンはどう思うの?それでいいの?」
「私の意見は今でも同じ。イナギはオリジネイターじゃない。でも、マンデルブロっていうのは素敵。神様って眼に見えないでしょ?だから私みたいな人がいる。マキーナを形にしてる。それが端末化。だからみんななれるの。それがマキーナの何かを表してるってことだとしたら、ヒントが私の中にも生まれるってことだよね」私はミドリにそう言った。
「とにかくでかくすることさ。スフィアやデウ・エクス・マキーナの世界を…」
「ああ、そうだな。アノンにはみんな期待してるんだ。みんなを乗せて遠くまで連れって行ってくれたんだから」
「はは。そうかな…」そう言って私は笑った。
あれは聖地じゃない。ここは偽りだ。本当はあそこだ。初めの『ゆらぎ』のあったあの場所。待っててヨミ、私本当のマキーナを見つけるから。
「ほら、できた!」
ミヤコが私達の眼の前に広げたオートクチュールは少しきわどい軍服風の衣装だった。
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