あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

まどみちおさんの詩

2014-03-02 14:29:19 | インポート

まどみちおさんが、104歳の生を閉じたことをニュースで知りました。大好きな詩人でした。

理論社から発刊された全詩集には、本人の意思もあり、戦争を謳歌する詩2編も収められています。あとがきで、その経緯を振り返り、自責の念を深く述べておられます。命の不思議さやかげかえのない尊さを 時空を超えて見つめてこられた詩人だからこそ、過去とも誠実に向き合われたのだと思います。心からご冥福をお祈りいたします。

たくさんの好きな詩の中から1篇を取り上げ、追悼の思いを込めて次に紹介します。

              光

                       まど みちお

手でさえぎると 

地面が暗くなるので わかる

こんなに ここに 

太陽の光が 流れてきているのだ

     ここに存在する 

     すべてのものにねだられて

     一おく五千万キロの むこうから 

     川の水のように やすみなく

     あとから あとから あとから…

         だが川の水は さえぎると溢れて 

         激しくそれを おし流そうとするのに

         光は おとなしい

         さえぎる ぼくの てのひらの上に 

         ひよこのように ちょこなんと…

              ああ 何なのだろう

              光というのは

              地球の夜を 消し去って

              自分が無いかのようにして

              ここに 昼があるというのは

              このかぎりない やさしさは!

光のかぎりないやさしさを 一瞬にして気づかれたのでしょうか。さえぎるてのひらの上に、ひよこのようにちょこなんと たたずんでいる 光のありようを見たことで。ひとつの切り取られた景色が、まどさんの限りない想像の世界の中で意味のあるものとして形となり、言葉となって私の心に下りてくるようです。

一億五千万キロの旅をしながら、川の水のようにあとからあとから降り注ぐ光。分け隔てなく地球上にあるすべての上に、自分は無いかのようにして 昼を届ける。さえぎるものがあればおとなしくそこにちょこなんと在り続ける。

そんな光のありように、人間としての理想的なありようを見たのでしょうか。

まどさんの一篇一篇の詩には、さまざまな光が織り込まれているような気がします。その光が心に届くことで、自分自身が少しは豊かになっていけるような感じがしました。

これからも まどさんや吉野弘さんの詩を取り上げながら、私なりに見出した光を紹介していけたらと思います。

 


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