あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

流爽夏景

2013-06-15 11:41:35 | あおひー写真




夏の車窓から。

飛ばしてく特急列車。

ふいに現れた景色はビュンビュンと流れて記憶の向こう側。

旅のお土産は目に爽やか。
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レオナール・フジタとパリ1913-1931(静岡市美術館)

2013-06-10 23:43:47 | アート系


静岡市美術館で開催中の「レオナール・フジタとパリ1913-1931」に行ってきました。

実はここ静岡市美術館にはオープン前に一度訪れていました。

3年前の2010年、静岡県立美術館で若冲の展示を見た帰りに立ち寄ってたのです。
(関連記事:伊藤若冲アナザーワールド(静岡県立美術館)

この時はまだエントランスで鈴木康広さんの「まばたきの葉」の展示のみでした。

まだ真っ白でこれから始まる美術館にわくわくしていました。

そしてようやく3年経ってまた来ることが出来たのです。施設として本格的に稼働した姿を見られるのはとても嬉しいことですね。

フジタの展示としては7年前に国立近代美術館での生誕120周年藤田嗣治展以来!

(関連記事:生誕120周年藤田嗣治展(国立近代美術館)

結構、フジタは見てたと思ってたのですがいろいろな展示でそれなりの点数を見てはいたってことですね。

久々のフジタづくしに大満足!

気がつけば2時間みっちりと鑑賞していました。会場内の温度が低くて少し冷えてしまったくらい。それくらいしっかりと集中して見ることが出来ました。

各章毎に気になった作品について書いてみますね。



第1章:渡仏以前―画家への道

「にわとりとタマゴ」はなんと藤田14歳の時の作品。地味目だけどじっくりと描かれててどことなくかわいらしい。

「自画像」はかつて東京芸大美術館で見て以来。

その後のフジタの画風と比べるとなんとまっとうに見えることか!

でも↓この時のブログにはフジタの自画像については書いていなかったことが判明。。。

(関連記事:自画像の証言(東京藝術大学大学美術館 陳列館)

妻・とみ宛の書簡は読み応えがありました。

フランスの一人で「淋しい」ってフレーズは堪えますね。

でもそれは最初のほう。後になってくるとイラスト入りの手紙が出てきてこれはとても楽しくなる。

ギリシアダンスの着物というがの描かれていて、いまこれを着ているなんて文中には書かれている。さらにその後に展示されていた写真には川島理一郎と一緒のこの服を着て池に浸かる姿が!

藤田がとみに送った雑誌、パンフなどはどれもセンスがいいなあと。カラーで大判の表紙はそれだけで十分に見栄えするものでした。



第2章:模索の時代―パリの潮流の中で

「ジャン・コクトーの肖像」

ここまでキュビズムの影響を受けてたことに驚く。極端に面を作って構成された顔、長く伸びた鼻筋。

隣に並ぶ「髭のある男」も同じトーン。

「マルザック城の入口」は蔦の描写がなんとも怖かったです。



第3章:成功への階段―パリ美術界へのデビュー

1917年にパリで最初の個展を開催した藤田。

意外にもその作品はどれも水彩画。油彩の画材を買う金がなかったと解説にその理由が書かれてました。

色彩と曲線、フォルムが面白い。シンプルに構成された人物は浮世絵的にも見える。

そして長い指の織りなす姿形が美しい。

特に「夢想と鳩」が一番好き。

画面上方にクチバシでキスする二羽の鳥。

下からその様子を伺うおんなの横顔。その腕のクロスする形。

全体を飾る黄色がなんとも幸せなムード。ともかく画面構成が素晴らしい。


「風景の中のヴェールの女」は指のフォルムとヴェールの波打った様が響き合っている。

あと表情の読めない感じ。画風もどこの国?って感じで謎めいた雰囲気が上手く引き出せている。

といったように最初の個展に出ていたシリーズはこれまで見てたフジタのイメージとはちょっと異なっていてほんと意外でしたね。


「マラコフ風景」

シルエットの馬車、汽車、人。画面も全体がモノトーン。第一次世界大戦当時に描かれたとのことで納得。陰鬱だけどもいい絵。


「カーニュの風景」

建物、道、木の織りなす線のリズム。微かに見える海、人のシルエット。

なんてことのないはずの景色。でも妙に居心地がよい。


「ふたりの少女と人形」

少女の表情の読み取れない感じが秀逸。

まだ人に達していないその生き物。さらにその少女の手の中に収まる黒い布に白い布を被せた人形みたいな更なる人未満。

この構成にいろいろと想いを巡らせてしまう。


「少女」

こちらの少女も怖い。この不安定な感じは何だろう。よどみを感じるテイストの中に澄んだストレートな問いかけが応えてくるような感じ。


第4章:栄光の時代―エコール・ド・パリの寵児

「猫の居る自画像」

これは版画。ドライポイント。フジタの裸体の人物の細い稜線は版画でもその良さは生きている。

版画だと短い線でその面まで構成してくのでまた違うのだけどもこれはこれですごくしっくりとくる。

やっぱり猫が似合うなあ、フジタは。


「十字架降下」

タイトルどおりのキリスト。なのだけどタッチが西洋のそれとは違う。

線の細さからだろうか。どころとなく仏画っぽいなとも。

なんとなく見ててかわいそうという気持が残ってしまう。


「子供と犬」

謎!

画面の上方に3人の唐子。すっぱだかで妙なポーズ。

画面の下方に5匹の犬。動きは激しいのだけどもどことなくユルい。

見て脱力してしまう。なんだこの感じは。

何を思ってフジタはこの絵を描いたのか??しかもしっかりした下絵までも残ってる。

画面中央を横切るラインのピンクも謎。


『・・・風に』(26点組)

これは面白かった!

他の画家風に描いたシリーズ。プライベートで恋人のユキに描いたもの。

「レンブラント風に 読書する聖人」 墨でラフに描いてて、「風」といいつつも本人の味が出てる。

「アンリ・マティス風に 肘掛け椅子に坐る裸婦」 色のイメージが的確。

「オーギュスト・ルノワール風に 裸婦」 塗りが丁寧じゃないのがおかしい。

実際いその画家の作品と並べてみたい衝動に駆られますね~。


「ポーズの合間に休むキキ」

おそらくモデルをしてて休憩で布を被ってるのだろう。顔だけ出している。

モデルとして裸体をさらしているであろう彼女がむしろその身体を隠していることで本来の自分が出ているかのよう。

まっすぐな瞳が印象に残りました。


「裸婦」

背景と後ろに持ったジュイ布の花模様があってこのオダリスクが生きてくるなあと。

裸体の乳白色は澄んだものではなくちょっとぼやけている。

背景と拮抗するのにそうしたのであろうか。

存在の重さ、神秘性が増しているように思えてくる。


「戦う人々」

この裸体の男性のシリーズは3点展示されていてどれも鉛筆で描かれているのだけど墨の濃淡かのような影の落とし込みが美しい。

特に筋骨隆々した感じにぴったりとはまっている。


「ペッチ=ブルント伯爵と伯爵夫人、その子どもたち」

肖像画だけどもこの白すぎる肌が異様。

ぬいぐるみやおもちゃがひとよりもむしろ生々しいことの妙。



第5章:新たなる旅立ち―マドレーヌとともに

「眠れる女」

乳白色の裸体画ではこれが抜きん出てるかなあと。

画面構成が素晴らしい。

画面上方の黒のきめ細やかな塗り。均一なトーンで塗り込められていて無駄がない。

このおかげでその乳白色の肌のキレイに見えることったら。

シーツのこれでもかとやりすぎなくらいのしわしわもまた裸体を美しく魅せるのに手伝っている。


「横たわるマドレーヌ」

このアングルがお見事!ものすごく生っぽくて艶やか。

少し上向いた顎、波打つ髪。ただただ見てて美しい。



藤田が交遊した芸術家たち

アンリ・ルソー「待ち伏せる虎」

植物の緑の生き生きとした下に小さく虎が。

でもなんだか顔がひしゃげててしかも金髪のロンゲみたいで妙。

江戸絵画の虎の妙さ加減ともまた違って妙でおかしかった。


マリー・ローランサン「花をもつ若い女」

パッと見て花ばかり。あれ?タイトルにある若い女が見つからない。

だまし絵ほどのギミックはないのだけども色にまぎれて一瞬わからない。

左下に彼女はいました。


ジェール・パスキン「果物籠を持つジュヌヴィエーヴ」

瑞々しいタッチ。柔らかく優しいイメージが印象的。


モイーズ・キスリング「ル・ベック少年の肖像」

やはりキスリングといえば目です。

でもいつも見るのは女性の肖像。

この目は少年にも有効でした。純真ですね。バックは緑の森なのだけども周辺は水色に落としてる。


アリス・プラン(キキ・ド・モンパルナス)「水兵」

なんとあのキキの作品!

絵を描き始めて一年ほどで個展も開催していたとのこと。

味があっていいなあと。


あっという間の二時間。

そうそう書いてませんでしたが10分ほどの映像もよくて通して見ちゃいました。

やはりフジタは見るべきところが多いですね。心の美術タンク、満タンって感じです。

6/23まで。

藤田嗣治画集 素晴らしき乳白色
藤田 嗣治
講談社

藤田嗣治「異邦人」の生涯 (講談社文庫)
近藤 史人
講談社

藤田嗣治画文集 「猫の本」
藤田 嗣治
講談社

腕一本・巴里の横顔 (講談社文芸文庫)
藤田 嗣治
講談社

藤田嗣治 作品をひらく -旅・手仕事・日本-
林 洋子
名古屋大学出版会

藤田嗣治―ポストカードブック (ちいさな美術館)
藤田 嗣治
青幻舎
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