古文書を読んで感じたこと

遠い時代の肉声

牛方騒動 12

2011-03-31 00:36:46 | 講座(古文書)

(資料コピーではこの前にある三行ほどが
 真っ黒で判読できないので飛ばす)

一旦治郎平を見込参り候事故
大津屋咄しも不致候てハ嘉兵衛殿ニ跡ニて
何と被申候ても又入組候ては迷惑ニ候間
右の始末相咄其上の事ニ致度と
直ニ大津や御相談ニ成候処兎角無之趣
弥々同人半兵衛殿ぇ五ヶ年の間運一ヶ年ニて貸遣し
忠七殿と仲間ニて山半店ニて問屋商賣被致候

 一度は(問屋を)治郎平にと内々決めたことでもあり
 それを大津屋へ話もせずにやることは
 嘉兵衛殿から後で何を云われるかわからない
 それが元でまた入り組みになっては難義になる
 半兵衛がやることになった経緯を話して
 了解を得た上のことにしたい とすぐに大津屋へ話に行く
 大津屋では何の障りもないとのことであり
 いよいよ半兵衛に五年間問屋株を貸し渡し
 忠七殿と仲間で山半で問屋商売をやってもらうことになった
 
夫より廿五日、半兵衛殿より兵右衛門殿ぇ
御ほときの手紙貰ひ勘兵衛を以馬込へ申遣候

 8月25日 半兵衛殿から馬籠大脇殿へ
 丸八と牛方紛争解決方についての大脇殿の手紙に対し
 勘兵衛をもって使者に立てる(後述)

尤奥牛弥右衛門・徳音寺弥吉
追々深切ニ被成下候間
勘兵衛を以是迄の次第申遣候
并ニ右ニ付問屋山半へ相譲候次第
御同人衆始奥牛一統ぇ申遣候

 奥牛の弥右衛門と徳音寺の弥吉には
 (峠牛との紛争中)友好的な行動をしていただいたので
 問屋を山半で引き継ぐことになった経緯について
 勘兵衛を挨拶に派遣した(持参の手紙後述)
 勿論、同人衆をはじめ奥牛一統へも挨拶を行った

尚又當宿両問屋衆并ニ庄屋殿ぇ
半兵衛殿・忠七殿を以右の次第相達置申候

 なお、中津川宿の両問屋衆と庄屋へは
 半兵衛殿と忠七殿が説明と挨拶に出掛けた




此日御手紙被下
御深切ニ巨細被仰聞候ニ付
又立戻御勘考ニ相随可申様相談仕直し候処へ
瀬戸物商人五七人相見申候ニハ
是迄御世話相成候段重々難有候へ共
新規問屋相立申度候間
一礼ニ相見へ候迚打揃口上相述候
夫より段々内輪問合申候処
とふしても杢右衛門方并ニ
宮様の店ニて問屋いたし候事不承知ニ付
尚又熟談仕候処
暫相休誰そへまかせ候方可然と評定仕候
段々御配意被成下候へ共
時節至来致方無之次第ニ付
相休申候御勘考相省短慮の様ニ當候得共
無余儀候間宜御賢察可被下候
尚勘兵へよりいさゐ可申上候間
宜御聞取可被下候 不備
 八月廿五日     羽間半兵衛
  大脇兵右衛門様
右書状勘兵衛殿へ持遣し候


 お手紙を下され
 ご親切に詳細にご指示をいただきました
 大脇様の考えに基づいて相談をし直している所へ
 瀬戸物屋衆数名がやってきました
 これまで大変お世話になりありがとうございます
 私共は中津川に問屋を新規に立てたいと考えており
 ご挨拶にお伺いいたしました とて
 一同揃って口上を述べられました
 どうしてそのようなことになったのか
 瀬戸物屋衆の内情を伺いましたところ
 杢右衛門方(丸八)や宮様(初出で誰か不詳)に
 問屋を続けてもらう事にはどうしても不賛成だと云われます
 丸八側は再び親類衆で熟談しました
 丸八は暫く休業し、誰かに問屋商売を任せるという方向で
 瀬戸物屋の納得を求めようとの意見もありましたが
 この情勢では納得が得られそうにないと考えられます
 短慮のようですが休業の話ははぶき
 問屋は山半にしたいと思いますので
 よろしくご賢察の程お願いします
 なお詳しくは勘兵衛からお聞き下さい
  8月25日 羽間半兵衛
   大脇兵右衛門様
 この書状は勘兵衛に持たせました


奥牛弥右衛門殿始弥吉殿始
追々深切ニ致呉候間
前々始末始 問屋商賣相休
同家半兵衛方へかし渡候訳
是迄懇意ニ被成下候段御礼并ニ
右の始末御咄旁々態々官兵衛遣し候

 奥牛弥右衛門殿・弥吉殿はじめ
 (今回の峠牛騒動について)
 追々深切にして下さったので
 前々からの経緯や問屋商売を休業すること
 半兵衛(山半)へ問屋株を貸し渡すわけ
 是迄の懇意付き合いについてのお礼
 など諸々の経緯を説明するため
 勘兵衛を遣いに出した

弥右衛門殿・弥吉殿・安左衛門殿
右三人ぇ相咄候処
奥牛衆被申口

 弥右衛門殿・弥吉殿・安左衛門殿へ
 話をしたところ三人の衆が云われるには

峠牛共少々訳有之候間
何卒已来問屋株は何方ぇ譲引仕候共
是迄通りニ取廻し候様の書付
并ニ新規問屋よりも書付御貰ひ被下
内々ニて弐通被下候様御願申上度旨

 峠牛どもに対して少々訳があるので
 問屋株をどなたに譲られても
 これまで通り牛方仕事をさせてやってほしい
 仕事継続の約束書および新規問屋にも
 その継続を約束する書き付けを貰いたい
 内々で二通作っていただき
 一通は私の方(奥牛)が頂きたい
 
勘兵衛申ハ夫は結構の御勘考
右躰の書付は此方ニてものそミ候処ニ候間
兎角なく呑込可申候
引取次第旦那へ相咄相達置可申候と申置候よし
仍て、左の通相認置申候

 それは構わないと勘兵衛は答えた
 この様な取り替せ書類については
 此方(勘兵衛=丸八側)でも残したいと同意した
 帰り次第旦那(杢右衛門)へ話をすると云い残して帰る
 依て左の通り認めた

 差入申一札の事
我等方問屋従先年仕来 
貴方様方ニも往古より渡世被致
相互ニ懇意詰来候処
此已来万一右問屋株譲渡等致候共
其當人ぇ右の一札差入置候訳
且幾々相互ニ実意正敷
牛方中ニ取廻し候儀急度可申伝候。
為後日仍之如件
     十八屋杢右衛門
宮越牛方衆中

     差入れ申す一札の事
 我等方問屋(丸八)は先年より続けてきました
 あなた方も昔から牛方運送で渡世され
 お互いに懇意にやってきました
 今後万一問屋株を譲渡することがありましても
 右の一札を差し入れたわけ
 そして将来お互い実意正直をもって
 牛方の取りまわしをすることなど
 必ず申し伝えます
 後日のため認めます
       十八屋杢右衛門
 宮越牛方衆中




なおこの書き付けには続きがありますが
入手した資料コピーはここまでしかありません
途中で申し訳けありませんが
今回で終了させていただきます
長文にお付き合いいただきありがとうごさいました