ちくわブログ

ちくわの夜明け

慙愧

2007-05-18 00:29:04 | 映画制作
嫌われてもいいから、本気でぶつかって、この人からいろいろなものを引き出したい。
そう思わせ、それに応えてくれる年配者はなかなかいない。世代間が断絶されているようなこの社会において、それは難しく、かつ願うだけ無理なことなのかもしれない。

でも奇跡的にそういう人に巡り会えたら、それはなによりの財産だと思う。
長く生きてるだけで偉いなんて思ってる人は、無視すればいい。本気でぶつかって、それに本気でぶつかり返してくれる人。

全共闘時代、党派の指導者の立場にあったその人に、ある日、なんの気なしに聞いてみた。「同時代に生きてたら、ゲバ棒ぶんぶん殴り合ってたかもしれませんね」するとその人はこう言った。
「いや、俺だったらお前を子分にする」と。

今まで自分の考えを率直に、そして時には本気で怒りながらガンガンぶつけ、何度も何度も凄まじい口論を繰り広げたこの未熟な若者に対して。
それからわたしは「この人はそうだ」と、思うようになった。
そこに至るまでは数ヶ月なんて関係じゃない。3年もかかった。


先日、その方に映画の協力依頼に行ってきました。
企画書とも言えない大まかな概要をしるしたテキスト、そしてインタビューをしたい人のメモを持って。
快く協力を請けていただき、その方が権利を有する貴重な当時のドキュメント映像を使用する許可もいただいた。

気にかかるのは・・・
あれは酒が入っていたからなんだろうか、と思う。
それじゃあそろそろ帰りますか、という段になって「しかし・・・」と一言の後、沈黙が続いた。
長い沈黙。今まで見たことのないような表情、雰囲気。「しかしね。君がインタビューに挙げた人たちや僕なんて、いい加減な奴らだよ」
なんのことだろうか、と思った。
その後話してくれたのは当時の、未遂に終わったある計画のことだった。

「悲壮」という言葉が頭をよぎった。この人は今までも、そしてこれからもこの思いを引きずって生きていくのか。
指導者ゆえの・・・末端で死んだり生きたりしていったはらからへの思い。

「たて飢えたる者よ」の高揚は、扇動する者がもっとも強いのかもしれない。末端で血まみれになる実行者は、対立する者への憎しみで血を滾らし、高揚するものなのかも・・・


老境にさしかかったその人や、その人たちに、今になってこの若造が何か聴くのは残酷で、おこがましいことなのかもしれません。でも、謙虚なフリや、分かったようなフリして彼らから何も引き出さないのは、かつて「当時のことが総括できてない」と逃げ回っていた彼らと同じくらい無責任なことだと思うのです。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 時間は自分で作りましょう。 | トップ | 目ピンク »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (男ガール)
2007-05-24 14:11:55
「その方」が所属していた党派を知る者として、そしてその党派や他党派の歴史を多少なりとも知る者として
その方が言った「いい加減な奴ら」という言葉が凄く重く、いろんな意味合いを含めた言葉なんだと感じてしまう。
「未遂の計画」というのが何のことかは解らないけど、想像はできる。

「引き出さない」のではなくて、「引き出せない」と思っていたのは、やはり謙虚なフリだと。
ホントにそう思う。
鈍感のフリをするか、もしくは謙虚さのリミッターをカットしないと出来ないことだと。

しかし
前々から誰か「その役」をやるのか?(できるのか?)と思ってたこと。
それが赤目さんだったとは!
アンタ…すげーのよ!? 他に日本にいねーのよ。
何か協力できることがあれば言ってくださいね。

俺なんてウンコですけどぉ。


返信する
そもそも (赤目)
2007-05-26 01:50:22
会ったばかりの頃は団塊世代への不信感で、敵愾心むき出しにしてかかってましたので・・・その時の俺にとっては、怒りの矛先は即ち「総括すべき人たち」へ向けられていました。それと同時に妙な、憧れみたいなものも持ってましたけど。

でも今回、はじめて微妙な部分に触れたような気がしてちょっとひるみました。「おれ、こんなことやっていいのかな」と。
でも本当に、今、やらないとだめなような気がするんです。相手の方々にとっても、俺にとっても、今だと思うんです。

おー。
俺ってすごいんですか。すげえなぁ。うすうすそうじゃないかと・・・やっぱ俺様だなぁ。
協力していただけるんならガンガンして下さい。よろしくお願いします。とりあえず企画書固まったら送りますね。

ウンコにだってできることはあるさ・・・きっと。
返信する

コメントを投稿

映画制作」カテゴリの最新記事