進化する魂

フリートーク
AKB48が中心。
気の赴くままに妄想をフル活用して語ります。

そろそろ「努力が報われるかどうか」などという古めかしい議論は卒業すべきではないか

2012-11-14 09:34:29 | AKB48_オピニオン




『不思議の国のアリス』にこんな話がある。


アリス:すみません、私はどちらの道へ行ったらよいか教えていただけませんか?
 
チェシャ猫:そりゃ、おまえがどこへ行きたいと思っているかによるね。 

アリス:どこでも構いません。

チェシャ猫:それなら、どっちの道でも構わないよ。

アリス:どこかに着きさえすれば・・・。

チェシャ猫:そりゃ、きっと着くさ。着くまで歩けばの話だけど。


非常によくできた話である。

一般的に、このアリスとチェシャ猫とのやりとりは「目的」の重要性について語る時に使われるものだ。

「目的地もないのに道を選べるはずがない。」という思考は実に論理的である。

それゆえ、人は目的地を求めてやまない。

自己同一性を保つために、自分の立ち位置の論理的な基礎づけが欲しくなるからだ。

逆説的に言えば、目的地ゆえに道を選ぶのではなく、道を選びたいがゆえに目的地を求めると言えるのではないか。

そのような考え方には、大きな危険性がはらんでいる。



そもそも、世の中には、この考え方だけではまかりならぬ時が多々あるものだ。

例えば、「イノベーション」がそれである。

多くのイノベーション過程は、「探索」や「探求」と呼ばれる実に不確実なものである。

それはイノベーションがもたらす利益が今ここに存在しない「新しい価値」であるために、

探しているうちは、それが何かを知らない状態であるからだ。

野中郁次郎さんは「製品開発とは知識創造のプロセスである」と言った。

これは日本の製造業(とりわけトヨタをはじめとする自動車産業)の組織を研究して得た知見である。

考えてみれば当たり前のことである。

世にない新しい商品を出すということは、世にない新しい価値を作るということであり、

その開発以前には、存在しない価値なのであるから、その商品そのものの意味も、その商品を作るプロセスも、あらゆる作業も、

それらの価値は最後まで確定しない状況にある。

そして、動機がなんにせよ、辿り着く場所は想定したものと異なることが多い。

辿り着いたものと、目的地は異なる場合が多いということだ。


このことを、よく理解している人物が少なくとも2人いた。

第2次世界大戦中、ヨーロッパ戦線の連合国最高司令官をつとめ、後の第34代アメリカ大統領となるドワイト・D・アイゼンハワーと、世界に冠たるTPS(トヨタ生産方式)の生みの親、大野耐一である。

アイゼンハワーはこう言った。


戦いに備えるにあたり、計画が役に立たないということは常にわかっていた。

しかし、計画を立てるというプロセスは不可欠なのである。


また、大野耐一はこう言う。

計画というものは非常に変わりやすい。

世の中はなかなか計画通りにはいかないもので、情勢によって、計画の中身はどんどん変えて行かざるを得ない。

いっぺん計画を立てたらこれを変えれない、という考え方では企業の存続すらおぼつかなくなる。

ちょうど人間の体の背骨は、しっかりした背骨ほどよくしない曲がる、と言われている。

この弾力性が大事なのであって、どこか故障が起きてギブスをはめるようでは肝心の背骨も硬直して働きを止めてしまう。

いっぺん立てた計画はなにがなんでもやるというのは、ちょうどギブスをはめた人間みたいで健康体ではない。



ここまで述べれば、もはや多くを語る必要もないのだが、ふと気づくはずだ。

これは製品開発だけに当てはまることではなく、

「生きる」ということ自体が知識創造のプロセスであるということを。

人生は知識創造のプロセスである。

生きることはわからなくて当たり前であり、わからないものをわかるようになるために、わかりたいがために、今日を明日を生きるのだ。

人生が知識創造のプロセスであれば、今日と明日は必ず違ったものになる。

それは、昨日の自分と今日の自分が異なるように、今日の自分と明日の自分は必ず異なったものになるからだ。

明日自分が理解するであろうことを、今日わかるわけがない。

学ぶ前に、学んだ後のことがわかるわけがないという単純な理屈である。


人生を理解し得ると思って生きてはならない。

人生の可能性を狭めるからだ。

人生は進化し得るものである。

「努力が報われるかどうか」などということを議論していると、チェシャ猫に笑われるだけだ。


アントニオ猪木と、魯迅の名言で本エントリをしめることにしよう。


この道を行けばどうなるものか

危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし

踏み出せばその一足が道となり その一足が道となる

迷わず行けよ 行けばわかるさ

(アントニオ猪木が1998年の引退挨拶に使われた言葉、出典は一休宗純とも清沢哲夫とも言われている)



希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えぬ。

それは地上の道のようなものである。

地上にはもともと道はない。

歩く人が多くなれば、それが道となるのだ。

(魯迅)




ちなみに、上記の認識に基づいて当Blogでは過去にこんな提案をしている。

AKB48第2章はリーン・スタートアップで
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/658a3ded9e7797b628f17c244da952b9

「リーン(Lean)」とは、TPS(トヨタ生産方式)を研究して作られた開発思考のことである。

MITで開発された「リーン生産方式」が有名である。


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4 コメント

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あえて提唱したい (ムー)
2012-11-15 11:43:18
少なくとも昨日より進歩している点でなにかを始めるのに遅すぎることはない。ということですね。やれば自分自身は一歩でもすすみます。人に勝つかは別にして。

私があえて提唱したいのは皮算用でいいから夢想することです。彼女達はやってるとして、最近の子供のなかにはそれができない人が多いようです。定期テストの予定も把握していないとかが普通でしたから。
覆るけどそれでも将来予測して備える。それを無駄とは思わない。一人でもそういう意識が持てるようになりたいですね。
返信する
夢想 (advanced_future)
2012-11-16 10:02:44
自己アイデンティティ(自己同一性)の一貫性を保っているものが何なのかを考えると、
自我というものが実に曖昧だと気づくわけですが、
それで自己崩壊する厨二病もいれば、それゆえ自己の可能性に目覚める人もいるわけです。

世によく言われているように、既存の思考フレームワーク「物語」が喪失し続けていく現代において、
自己アイデンティティを基礎づけていたものの崩壊が止まらないわけで、
それに伴って多くの人の自己アイデンティティが氷解し続けています。
今、そこで自己を再構築できる人と、そうでない人との差が激しくなってきていると考えています。

多くの人は、その構造を理解せぬまま、自己アイデンティティの崩壊を不可抗力として
なす術もなく受け止めるしかなく、
AKB48は、まさにそのような状況において颯爽と物語を提供するストーリーテラーとして現れたと私は思います。
つまり、AKB48が提唱する世界観・物語が受け入れられブレイクした背景には、
時代の流れという環境的要因も大きいのではないかと。

しかし、この時代のうねりを前にして、少年少女に個々人で向い立てというには、無理があると私は思います。
北欧型というには単純化しすぎかもしれませんが、大人たち、社会の力を持って
子供たちを育んでいくという発想が日本ではあまりに欠けています。
教育というのはある面では洗脳でもあるわけですが、これを恐れて自由という名の美名の下で放置するというのは
大人としての責任放棄であると私は考えております。

大人は「正しい価値」を教える必要はないのです。
子供たちにを、幾つかの価値観が共存する環境に置いて育てるべきです。
幾つかの価値観が共存すれば、それを止揚する必要性に迫られますので、
子供たちの中で小さなイノベーションが起きます。
これによって、きっと子供たちは大人たちを超える価値観を身に着けることができる、
「多様性とイノベーション」と私は夢想します。

正しさを知らぬ大人たちが増えたとしても大いに結構であります。
唯一絶対の正しさなど存在しないということさえ理解していれば。
その多様性が新しい時代を切り開く原動力になるものと、思います。

当Blogでは以前から、AKB48が教育の観点でやれることはあると主張するものですが、
AKB48第2章では、是非ともより一層の哲学の昇華を目指して欲しいと思うのであります。

いや、夢想です(笑)
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Unknown (ムー)
2012-11-17 01:58:55
たしかに個々人に自己アイデンティティを保てと要求するのは難しいですよね。特にそういう問題にぶつかる中学生以上は先生が教科性で人をあまり見れないという構造的な問題もありますし。

ただ、「希望」を見せ続ける存在はそれだけで思っている以上に稀有なのかもしれませんね。
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未来 (advanced_future)
2012-11-17 18:01:25
>ムーさん
コメントありがとうございます。

>希望

私個人の考えなのですが、「未来」が必要です。
未来があるからこそ、希望があります。
今、日本はみんなで「未来がない」と言い合っています。
これでは希望を持てるはずがありません。
「未来」を創りましょう!

そのためにできることは、私にも、みんなにも、AKB48にもあります!


就職できなくて自殺?そんなもので人が自殺できるわけがない。
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/ff517254427156b918df6a027d288721
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