超久しぶりの「変人寮」のお話です。
私が学生時代に住んでいた寮は、とにかく変人ぞろい。
でも、隣の部屋の同級生の「モッチモチ」は普通だった。
いつもニコニコしていて、穏やかでいい子だった。
そう、最初は「普通の子」だったの。
お隣の部屋だったし、同じ年ということでよく遊びに行って夜遅くまでおしゃべりをしてたの。
でもある時からだんだん部屋にぬいぐるみが増えてきたのね。
もともと乙女チックな彼女だったから、この古くて狭くて汚い無味閑散とした寮の部屋に潤いがほしくて、かわいらしいぬいぐるみを置きたいという気持ちはわからなくもない。
変人ばかりの寮の中でぬいぐるみに癒しを求める気持ちもわからなくもない。
でも、その増え方は尋常ではなく、自分のプライベートスペースはカーテンで区切られたベッドの中だけなんだけど、そのベッドは「あなた一体どこに寝るの?」ってくらいぬいぐるみでいっぱい。
ベッドに収まりきらないぬいぐるみたちはどんどん部屋の公共スペースにも侵食し始めて、同室の子たちもちょっと困っていたっけ。
で、そのたくさんのぬいぐるみの中でもモッチモチが一番かわいがっていたぬいぐるみ。
確か、赤いマントを身にまとい、頭には葉っぱが乗っていたような…。
どうなの?
これはかわいいのか?
いや、はっきり言ってかわいくないだろう?
で、どれくらいモッチモチがフーちゃんをかわいがっていたかというと、モッチーのお部屋に遊びに行くと、フーちゃんのお茶まで用意されて一緒になって語らわされるという事態。
そう、モッチモチは、まるで我が子のようにフーちゃんをかわいがっていたの。
みんな閉口…。
そんなある日の朝。
私が洗面所で半分寝た状態でゴシゴシ歯磨きをしていた時。
モッチモチが笑顔で話しかけてきたの。
モッチモチ「おはよう ウフ♪」
私「おはよ…」 ゴシゴシ
モッチモチ「ねえねえ、えびふらいちゃん、相談があるの。」
私「なに…?」ゴシゴシ
モッチモチ「えびふらいちゃんは、いつも帰省するときぬいぐるみってどうしてる?」
???ぬいぐるみをどうしてるかって…???
大体ぬいぐるみなんて持ってないけど、帰省するならベッドに並べて置いときゃいいんじゃないの?
私は寝ぼけていたし、歯磨きをしていたのでしゃべることもできず適当にモッチーの言うことを聞き流していたの。
そしたらモッチモチが朝なのに熱く語り始めた。
フーちゃん置いて行くのはかわいそうだから、連れて帰ろうかと思うの。
(連れて帰る?めんどくせ…。
まあそれならバッグに入れたらいいじゃん?)ゴシゴシ
でも、バッグの中に詰め込むのはかわいそうじゃない?
(えっ??バッグに入れなくてどうする?)ゴシゴシ
バッグに入れたらかわいいフーちゃんがつぶれちゃう~
(だからって、女子大生がこのキツネを新幹線にだっこして帰るとでも…?)ゴシゴシ
私は歯磨きをしながらモッチモチの悩みを聞いていたんだけど、その時、私が歯ブラシをのどの奥まで突っ込んで「おえ~っ」ってなるくらいびっくりしたセリフがモッチーから飛び出した。
「だから、私、フーちゃんの分の席の券も買おうと思って」
はぁ~~~?
目が覚めた~~~~っ!!