追悼詩「ダイバ川の別れ」わが心のレリーフに刻む

2024-02-19 20:44:25 | 
一日たりともあなたを忘れたことはありません
あなたとは今も現在進行形です

    ダイバ川の別れ


マッチュ・クーヴォさんが指さしたあたりに
土筆がまとまって背を伸ばしている
土手のベンチに腰掛けて
ぼくらは数冊の詩誌を開いていた
見ず知らずの者同士を引きあわせたのは
詩の言葉の力だった
運命が
真新しい地図をぼくに開き
ダイバ川のほとりに引き寄せてくれた

マッチュさんが情熱を注いでいる三都交流朗読会
明日の開催をひかえて
マッチュさんの瞳が輝いている
行動する勇気が人の心を動かす
才能だけじゃダメなんだ
僕は彼のいくつかの実績にうなづいた

近所の老人に声をかけられて話している間
ぼくはマウント・フジを眺めていた
ここ数日で頂上のあたりは
白衣のような雪になっている

明日はいい会になるといいね
言葉に感情をのせようとすると
上滑りして溺れてしまうんだよ
感情に言葉をのせるほうがいいんだ
どう思う?
ぼくは なんとなくわかる としか応えられなかったが
詩は繰り返し声を出して読む
というマッチュさんの口癖が理解できた

ふざけながら遊歩道を歩いてくる
集団下校の子どもたち
ハコネ・マウンテンからの風がひんやりとしている

では明日 
握手をして立ち上がった
ぼくはあの場所にゆき
土筆を数本摘み
ハンカチでくるんだ
振り返ると
雄大なマウント・フジを背に
家の前でマッチュさんがまだ立っている
ぼくはさっき握った手のぬくもりを振った
Good Luck
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京大衆歌謡楽団in道明寺 | トップ | 花散る(前の)里 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

」カテゴリの最新記事