[行進]
子持ちの女を羨ましく思った独身女が、ペンギンを飼うようになった。
給料の大半は、ペンギンの餌代と製氷代に消えている。
圧巻はペンギンを連れた朝の行進だ。まだ人通りも、車も少ない通り
を、二十羽近いペンギンを率いて歩いて行く。
現在卵をあたためている八羽のペンギンが、卵を孵し、その親子も行
列に加わるようになれば、相当大きな行進になる。
女がペンギンを連れて行進するときほど、喜色を露わにすることはない。
そしてこんな采配を振るうのだ。
「はい、みんな、ペンギンについて歩きなさい」
これを見た子供の親たちは大変だ。我が子が女にさらわれてしまうと、
真剣に悩みはじめるのだ。
おわり