大牧温泉観光旅館
静寂の自然の中での一夜が明け、窓を開けると、今朝も柔らかい初春の日差しが渓谷を照らして
いる。
静かだ、まさに無音の世界だ。
時折その静寂を破るのは、山から雪崩落ちる土砂まじりの雪の塊の音だ。
その緑色の川では、雪崩落ちた雪の塊が流れる中、カワアイサが数羽、行ったり来たりしている。
対岸の崖近くではオシドリが、1羽の♀を2羽の♂が追い回している。狭い谷間の上空では、サ
シバの「ピィークィッ」という声が響き渡る。
この声を聞いて、かって奄美大島へ行った際にリーダーの安西氏が「キッスミー」と聞きなしを
されていたことを思い出す。たしかあの時氏は結婚前ではなかったのではと、突然のように過去
のことが甦る。
その他の野鳥の囀りが谷間に響くので、朝食前に散歩がてら探鳥に出掛ける。
今年の初認、オオルリをはじめカワガラス、キセキレイ、エナガ、ヤマガラ、カケスなどを楽しむことができた。
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朝食は『箱膳』の他、次々にお菜が出され、ついつい食べ過ぎてしまう。
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帰りの遊覧船は、我々以外のグループも乗船する
ので、ほぼ満員の状態だった。
スーツケースは船着場まで仲居さんが運んでくれ
る。
遊覧船は到着の際と同じように、旅館を再度見渡
すように上流に向かって進んでから、小牧ダムへ
向かう。
小さな桟橋に仲居さん方が並んで見送ってくれる。
「またのお出をお待ちしておりまぁーす」との声
が耳に残る。
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川面には、昨日より多くのカモたちが見られる。マガモ、カルガモ、コガモ、オカヨシガモ、ヒ
ドリガモなどのほか、急な斜面で餌を漁っているカモシカも……。
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小牧ダムで待ち受けていたバスに乗る。昨日の座席は最後尾だったが、今日は最前列になっている。
昨日のコースを逆戻りして【砺波IC】から北陸道に入り、【金沢森本IC】で降りる。
ガイドさんの情報によると、金沢の桜は満開になっているという。一昨日に開花したばかりなのに3日で満開になるとは今年の桜の咲き方は異常
だ。
それはともかく、我々にとっては嬉しいことだ。車窓から見える市内の桜もなるほど見頃になっている金沢城趾に近くなると、車の渋滞が激しく
なる。城趾のお堀通りの桜が見事だ。
バスはそのお堀通りから蓮池門通りに入り、蓮池門で停車、我々はここから『兼六園』に入る。
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兼六園
石川県金沢市にある兼六園は水戸の偕楽園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の1つに数えられる、
池泉回遊式庭園の大名庭園です。
兼六園の名称は宋代の詩人、李格非の洛陽名園記に記されている「宏大」「幽邃」「人力」「蒼古」
「水泉」「眺望」の六つを兼ね備えている名園ということから、松平定信が名付けたと言われてい
ます。
延宝4年(1676)、に加賀藩5代藩主、前田綱紀が金沢城内に蓮池御亭と称する別荘を建て、周辺を
庭園として整備したのが始まりとされ、その後、11代藩主治脩、12代藩主齊広、13代藩主齊泰が
主に作庭に力を注ぎ、齊泰の代になってようやく現在に近い形になったとされます。
写真は徽軫(ことじ)灯籠といった兼六園を代表する景観の1つで、燈篭の足が琴柱に似ているこ
とから名付けられ、高さは2.67mあります。
また、兼六園には霞ヶ池や鶺鴒島、根上松、瓢池、翠滝、黄門橋などの名所があり、そのそれぞれ
が四季が変わるたび桜や新緑、紅葉、雪吊りなど多くの見所があり、特に高低差を利用して幽玄な
雰囲気から広大に視野を広げさせるなどの演出も施されています。
園内からの城下町への眺望も素晴らしく、庭園と遠望の対比も面白いかもしれません。
兼六園は国特別名勝に指定されています。 【兼六園パンフより】
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我々は園内ガイドの案内に従って、園内を一周す
ることになる。
霞ヶ池から始まり、市内の眺望台、唐崎松、地蔵
堂、明治記念之標、菊桜や根上松を見て、今盛り
の梅林から栄螺(さざえ)山を回り、獅子巌を経
て出発点に戻る。
この間約40分。ユーモアたっぷりのガイドにすっ
かり笑わされる。
残りの自由時間に梅林付近まで戻って、ゆっくり
と花々を楽しむ。
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混雑し始めた兼六園を後にして、昼食場所の『料亭・秋月』へ。ここで『加賀会席』を味わう。
加賀料理
加賀百万石の伝統が育んできた金沢の食文化。四季折々の豊かな自然に恵まれてきたこの地だからこそ
「加賀料理」として独特の進化をとげています。
「加賀料理」とは、地元でとれた食材を日常的に美味しく食べるために工夫されてきた郷土料理の
こと。
「じぶ煮」や「かぶら寿し」など素朴で庶民的な加賀料理も、九谷焼や金沢漆器などの華やかな器
に盛り付けられることで、華麗な「加賀料理」として演出されてきました。
器によって目で味わい、舌で味わう、この絶妙な関係が加賀料理の魅力なのです。
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加賀野菜
城下町金沢には藩政時代から受け継がれてきた四季折々の特産野菜があります。
主に金沢で昭和20年以前から生産されている野菜15品目が「加賀野菜」ブランドとして認定されて
います。
近年、その個性的な味覚に首都圏での認知度も高まっています。
◆さつまいも ◆たけのこ ◆せ り ◆赤ずいき ◆くわい
◆金沢春菊 ◆加賀太きゅうり ◆打木赤皮甘栗かぼちゃ ◆金時草 ◆加賀つるまめ
◆金沢一本太ねぎ ◆源助だいこん ◆ヘタ紫なす ◆二塚からしな ◆加賀れんこん 【金沢美味紀行より】
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昼食後は古都の風情を残す花町『ひがし茶屋街』へ。
この茶屋街の中程では、兼六園でも写真を撮っていた新婚カッブルが、スタッフに囲まれてポーズを取り、カメラに収まっている。我々が通るの
にもお構いなしなので、街並を撮るのに苦労するほどだった。
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ひがし茶屋街
ひがし茶屋街は金沢百万石の城下町の風情を現在最もとどめている街の1つです。
金沢市には3箇所の茶屋街があり、ひがし茶屋街の他に、にし茶屋街、主計町茶屋街があります。それぞれが当時の景観をとどめていて修景計画
も着々と進んでいます。
ひがし茶屋街はそのうちでも最大規模を誇り、現在でも8件が営業していて、芸子さんや芸者さんが20名ほどいるそうです。町の中には笛や太鼓
三味線などの音が流れ、昔からの景観とあわせてなんとも言えない雰囲気があります。
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金沢の町割りが進む中、文政3年(1820)に茶屋
と呼ばれる遊郭を整備したのが始まりで「東廓」
などと呼ばれ歓楽街として栄え、時には文化人達
の社交場にもなりました。
茶屋様式と言われる建物が軒を連ね、特に「志摩」
や「懐華樓」などは江戸時代当時をよく伝えてお
り文化財にも指定されています。
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二番丁では大方の建物の修景が終わり、石畳や電柱の地中化、街路等のデザイン化なども随時行われています。
重要伝統的建造物群保存地区に指定されている中の3分2が、明治初期までに建てられた建物で埋め尽くされています。
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またこの茶屋街と並行して流れる浅野川沿いの桜
並木も今を盛りとなっているので、お勧めですと
案内される。
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これで今日の観光は終了、後は『千里浜なぎさドライブウエイ』を通り、『和倉温泉』へ向かうことになる。
この頃から雲が多くなり、日差しも陰って気温が低くなってきた。
寒々とした海岸線に打ち寄せる波を見ながらのドライブは、流れ着いたゴミが目立ち、快適というよりは何とも侘しさを感じさせるものとなった
もっともこのゴミは、海水浴シーズンを前に清掃されるそうだが、ハングル文字の物も多く、地元ではその対策に苦慮しているとのことであった
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千里浜なぎさドライブウエイ
千里浜(ちりはま)なぎさドライブウェイは、石川県羽咋郡宝達志水町今浜から同県羽咋市千里浜
町に至る延長約8kmの観光道路である。
日本で唯一、一般の自動車やバスでも砂浜の波打ち際を走ることができる数少ない道路として広く
知られている。そのため、砂浜でありながら道路標識が設置されている。
一般の自動車や大型車が走行できる理由は、この海岸の砂が特別細かく締まっている(水分を吸っ
て固くなる)ため、普通の砂浜のように沈まないためである。
砂浜が締まっている理由は、河口より約 40km南西に位置する手取川、千里浜周辺の大海川や宝達
川が運搬した土砂が沿岸流(対馬海流)や北西の季節風によって運ばれ、なおかつ羽咋市の北にあ
る滝崎が土砂をUターンさせ千里浜に堆積させたためである。 【ウイキペディア】より
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この後は宿泊先の和倉温泉へ向かう。
宿泊先は日本一の宿といわれる『加賀屋』。
加賀屋
屋号は、創業者の小田與吉郎が加賀国津幡(現在の石川県河北郡津幡町)の出身であることに由来する和倉温泉の筆頭旅館の地位を占め地上20階
約1,300名の収容人員を持つ全国最大級の旅館。
1977年(昭和52年)1月より、旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(全国の旅館業者の中から選定)の総合部門
1位として認定・表彰されている。
この年以降「32年連続」で加賀屋が総合「1位」を連続受賞中。
NECビッグローブ社が運営する第4回「みんなで選ぶ温泉大賞」においても、加賀屋は初回から連続して総合一位を受賞中。
【ウイキペディア】より
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バスが着くと、大勢の仲居さんたちがお出迎え。
ロビーで支配人から歓迎の挨拶があって、各人の部屋へ案内される。
我々の部屋は『雪月花』の15階、残念ながら海が一部しか見えない。
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客室・雪月花 【加賀屋パンフより】
雪を楽しみ、月を観、花を愛でる。
春は花、夏ほととぎす、秋は月、冬雪さえてすずしかりけり。
四季のある国に生まれた幸福にひたりたい。
純和風空間で過ごす最良のひととき、季節のささやきに耳を傾け、日本の心に触れてください。
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早速、係の仲居さんがお菓子と抹茶を持って来る。
館内のイベントや店舗の案内、食事時間などの説明を受ける。
コルセットをしているので、部屋食はお膳ではなくテーブルに代えてもらうよう
依頼する。
その後、16時30分からの館内の案内に参加することにする。
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その案内は、1グループ10人ほどで、何組かに分かれて説明を受ける。
参考として『館内は美術館』というパンフレットが配られる。
先ず 1階から 12階の吹き抜けにある加賀友禅の〈四季の花〉、これで30数人分の着物ができるというから大変大きな織物だ。
4階にある能舞台は、加賀宝生流のために造られたとのことだが、このところ使用頻度が少なくなったので、現在は結婚式に利用しており、予約
で混み合っているとのことだ。
3階のギャラリーには人間国宝の作品が並び、各階のエレベーターホールの前には九谷焼や輪島塗、加賀友禅の作品などがが飾られている。
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18階の特別フロアには、日本画家・
加山又造画伯の
『花月』(左の画像)が飾られている。
最後に1階に戻り、フロント・カウンターの小西啓介作、輪島塗『瑞鳥の図』や、先代女将のため
の茶室『慈孝庵』の襖の書、横西霞亭の書『禅語・唐詩選』の説明を受け、1時間余りの案内が終
わる。
これほどまでの人間国宝を含めた美術品のある旅館も稀有のことだが、収蔵品も多いので、順次展
示品を替えて宿泊客に見て頂くとのことに、この旅館の圧倒的な集客力の一端を見せられた思いだ
*
夕食の時間も迫っていたので、急いで汗を流し、食卓につく。
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先ず目に付いたのは、あすなろの葉の上にある小さな和
紙に包まれたもの。
[日本三大珍味 能登名産
干くちこ]とある。
中を開けると飴色の小さな干物が入っている。
その説明書きによると、
〈糸ほどしかないナマコの卵巣を何本も何本も重ね、陰干
しにして作られるのが干くちこ真冬の能登・七尾湾でご
くわずかしか生産されず、まろやかで深みのある香ばしい独特の風味はまさに筆舌しがたい天恵・希有の趣です
添えてある葉は石川県の県木アテ、別名あすなろで、その葉を少し財布の中に入れておくと当てにしなかったお金が入ってくるといいつたえがあ
る縁起の良い葉です〉とある。
乾杯のビールを飲んで、口に入れたが、あまりに小さくて説明書のような風味は感じられなかった。
アテの葉は、仲居さんの勧めもあって戴いて帰ることにする。
この時期食卓に必ず載るのがホタルイカの酸味噌掛け、旬の物とあって美味だ。その他[いしるドレッシング]による赤西貝(昭和天皇がお代わ
りを注文したという)、梅貝、鳥貝と旬野菜、のど黒温泉蒸し、加賀野菜の小坂蓮根五郎島金時芋添えなどをゆっくりと味わう。
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20時30分から一階の『芸術座』で ‘ 歌謡ショー ’があるというので覗いてみる。観客席は桟敷になっており、既に半分ほどが埋まっている。
初めに五人による日本舞踊があり、次いで男性歌手による歌謡曲。
地元の民謡があると思っていたので、これには期待外れ。30分ほどで終わったのでかえってよかった。
その他ラテン音楽ショーや有料の歌劇ショーなどが催されていたが、長い一日の疲れもあって、部屋へ戻る。
就寝前に再度温泉に浸かる。ここの浴衣は2枚準備されており、寝る前に新しい浴衣を着るようになっているのも1つの心配りだ。
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9.00. 大牧温泉(庄川峡遊覧船)→ 9.30. 小牧ダム(バス)→ 10.05. 砥波I .C. → 10.20. 金沢森本 I .C.→ 10.40. 兼六園 11.50. → 12.05.
料亭・秋月(昼食)12.50. → 13.05. ひがし茶屋街・浅野川桜並木 13.45. → 14.25. 千里浜なぎさドライブウエイ 14.55. → 15.35.
和倉温泉・加賀屋 泊