あそこに誰かが生きている。 How goes it with you?

日々の感想。

旅の記憶。

自由時間。

そして、
今後の話。

小さな旅(最終回)

2017-01-26 00:35:55 | Travel (Okinawa)



雲行きが怪しくなり

始めたので、

途中でタクシーを拾い

友達の実家に戻った。



帰り支度を済ませると、

居間にて親父さんに

お世話になったお礼をして

家を出る。



玄関先では親父さんに

「いつでも来なよ」と言われたのが、

切ないくらいに嬉しく、

帰るのが億劫になるほどだった。



外は小雨がぱらつき始め、

いよいよ台風が近づいて

きている様に思われる。



モノレールに揺られ、

那覇空港に着く頃には

風雨は激しくなり、

飛行機が飛ぶかどうか、

不安が脳裏に浮かんだけれど、

空港内の電光掲示板には

欠航の二文字は表示されて

いなかった。



離陸までは若干の猶予があり、

とりあえずチェックインを

済ませて、空港内の

土産屋を回ることとする。



紅芋タルト、岩塩、海ぶどう。


土産としては一番ポピュラーな

物ばかりを買い漁る。


あの人にもあげた方がいいかな?


そんな疑問が頭の中を巡るが、

とりあえず購入することにした。


こういう自分が何となく

嫌いだ。


買い物が終わり、

ロビーのソファーに腰掛けると

友達からの電話が入ったので

出てみると、

「後ろ」と一言。


スマホを耳に当てたまま

言われた通りに後ろを振り向くと、

満面の笑みで友達が立っている。


僕もつられて笑顔になる。


「恋人かよ」

僕は恥ずかしいのやら

嬉しいのやら分からないままに

そんな台詞を友達に飛ばし、

唐突の再会を喜んだ。




友達はわざわざ仕事を

抜け出して来てくれたらしく、

僕を送ったら仕事に戻るとのことだ。



親父さんといい、

こいつといい、

なんてできた人間なんだと、

たわいもない話をしながらも

胸に沁みる思いだった。



空港内のアナウンスから

僕の乗る飛行機の搭乗準備が

完了したとの放送が流れ、

僕は友達に礼を言い、

搭乗ゲートに向かった。


後ろでは友達が大きく

手を振って、

送り出してくれている。


僕も手を振り返し、

お互い笑顔で別れた。





飛行機の座席に座り、

窓から外を眺めて見ると、

空には黒雲が広がっていた。


来るときの僕だったら、

飛行機への懸念で気が気では

なかったであろうはずが、

いまはそのような状況に

好奇心すら覚えている。




脳裏に沖縄の

青空が色濃く広がり、

太陽が眩しいくらいに

木々を照らしている。


そんな情景が、

この悪天候の不安を

吹き飛ばしてくれて

いるのかもしれない。



飛行機は風で

揺れされながらも

無事に滑走路から飛び立ち、

小さな旅に終わりを告げた。








おわり

小さな旅(5)

2017-01-24 00:30:15 | Travel (Okinawa)



白の軽自動車の中で、

友達とあくびが重なる。


車は那覇の街を抜け、

糸満市に向かっている。


台風の影響なのか、

太陽は雲に隠れ、

昼間なのに薄暗く感じる。



昨日は深夜3時頃まで

宴は続き、

友達と一緒に帰路に着いた。



現在の時間は、

午前11時過ぎ。


予定より2時間ほど

遅れてしまったが、

これも致し方ない。



道路脇にはサトウキビが

風で靡いている光景が見え、

その先に目的地の

ひめゆりの塔があった。



駐車場の周りには、

場所に不似合いな

お土産やさんが並び、

その横を通ってひめゆりの塔の

敷地に入る。



入口に献花用の花束が

売られていたので、

ひと束購入して

献花台に供え、

手を合わせた。


目の前にある慰霊碑と

防空壕は、

そこに存在していた

悲惨な惨状を

連想させるのには

充分過ぎるものだった。



周りには青々とした木々が

生い茂り、

かつての悲劇を

見守っている。



資料館には高校のときに

見学したので、

今回は献花だけとした。



再び車に乗り込み、

次の目的地に向かおうと

したとき、

友達のスマホが鳴り響く。


電話は仕事先からで、

急な仕事が入ったとのことだった。



車は急ぎ、

那覇市に戻り、

ショッピングセンターが

立つ場所で友達と別れた。



僕はひとり、

広い道路の歩道を歩きながら

いまから行く場所に若干の

畏怖を感じていた。


歩道を歩いて行くと、

一階部分にコンビニがある

ビルがあり、その横に

隠れるようにして、

それは存在していた。



小さな丘。


その表現があまりにも

似合う場所で、

横の階段を少し登ると

直ぐに頂上に着いてしまう。



安里52高地。

英名シュガーローフ。

地獄の丘。


沖縄戦の中で、

たった7日間の間に

米兵、日本兵、民間人、

約5000人が亡くなった場所。



頂上に着くと、

中心に貯水池のタンクがあり、

周りを柵が囲んでいる。


その周りには砂地の歩道が

ぐるりと囲んでいて、

隅の方にポツンと説明文が

記載された石碑が佇んでいる。





何故に争いは起こるのか?

憎しみあおうと

人間が人間を殺める

理由などあるはずがない。


悲惨な現実から

目を背けているだけかも

知れないけれど、

そのことを強く思い、

それと同時に

あの時、この場所で

全てが終わってしまった

人々の無念が心に

突き刺さる気がした。



石碑の反対側からは

那覇の街並みが展望でき、

戦時写真などで見ることができる

あの光景はどこにも

残ってはいなかったけれど、

薄暗い空があの時を

再現しているかの様な

雰囲気を出していた。






その後、

どこに向いてすればいいのか、

分からないままに手を合わせ、

その場を後にした。



先ほど通って来た道には、

老若男女、

様々な人々が従来していて、

当たり前のことだけれど

皆、普通に生活をしている。


ごく当然な風景に、

人という生き物の

計り知れない強さを

いま、感じる。






つづく

小さな旅(4.5)

2017-01-21 06:28:51 | Travel (Okinawa)




民宿からは再び、

ワンボックスで

船着き場まで送ってもらう。


民宿を出る間際に聴いた

風鈴の優しい音色が脳裏に

残っている。





フェリーは13時頃に

出航し、防波堤では

僕が泊まった民宿の男性と、

他の民宿の方が手を振って

送り出してくれた。



1日しかいなかったのだけれど、

その光景に胸が締め付けられる。



ひとつの優しさが、

人を幸せにすることの

素晴らしさを

学ばせていただいた。



台風が近づいている

関係なのか、

若干の高波の中を

フェリーは進み、

慶良間諸島の島々を

徐々に通り過ぎていく。



いつしか島々は

小さくなり、

僕はデッキから客室に

下りて、広い海を眺めながら

浅い眠りに着いた。




那覇市の泊港に着く

アナウンスで目を覚まし、

到着すると同時に

空腹を覚えたので、

泊港2階の食堂にて

遅い昼食にすることにした。


食堂の壁には定食らしき

メニューが貼ってあるのだが、

全くもって何の料理なのか

不明だった。


最初、その中で唯一わかる

マグロ定食にしようとしたのだけど、

せっかくなので未知の味に

挑戦してみようと、

イカ墨汁という物を頼んでみた。


イカ墨とあったので多少の

想像はしていたが、

運ばれて来た料理は

想像を超えるインパクトだった。





黒の部分はイカ墨、

その他にイカと

ほうれん草らしき

野菜が入っていて、

見た目はあれだけど、

食べてみると想像以上に

美味しい。


ただ、食べ終わったあとの

口周りや歯が真っ黒になっていて、

口を濯ぐのが大変だった。


泊港を出てからは、

歩いて友達の実家に行き、

荷物を置かせてもらい、

再度外に出た。


家には誰も居らず、

合鍵で入った。


息子の友達というだけで、

合鍵を渡してしまう親父さんに、

沖縄の人の心情を感じた気がした。



遠くの空に、

巨大で薄暗い入道雲が見え、

雨が近づいていることを

告げている。


夕方からはまた、

友達と呑む約束なので、

それまで天気が持ってくれればと、

願いながら

高架下を歩いて行く。






つづく














小さな旅(4)

2017-01-19 06:22:48 | Travel (Okinawa)




目覚めは清々しく、

窓を開けて広がる青空は

普段より、一層開放感を

感じるさせる。



食堂で焼き魚の

朝食を食べ終わると、

一通り帰り支度を済ませて

民宿を出た。



民宿からレンタルのママチャリを

借りることができたので、

今日は島の反対側に

行くことにする。


船着き場から多少進むと、

阿嘉大橋の向こうに慶良間島を

望むことができ、

その奥には外地島があるのだか

僕の位置からは見ることは

叶わなかった。



遠くから見る慶良間島は、

急な山裾に道路が外周を

囲うようにして伸びており、

山々は緑で覆われている。



それを横に見ながら、

昨日来た岩場を通り過ぎると、

左には大岳と中岳の全貌が

見えて来る。


こちらも深い緑で覆われているが、

本州の山の緑とは

似ても似つかぬ様子を

醸し出している。



道は一車線で、

周りは赤や黄色の花々が

咲き乱れていたが、

花に疎い僕は

その美しさだけで

充分満足できた。





道は途中から小高い坂に

差し掛かり、

息を切らせながら登り切ると、

真下に群青色と瑠璃色に別れた

西浜ビーチを望むことができた。


坂を降りながら吹き抜ける風が

汗を拭い切ってくれる。


降りきり、

平坦な道を進むと

左側にダイビング用の

レンタル店があり、

そこでシュノーケルとゴーグル、

フィンを1500円で借りる。



そのままビーチへの

階段を降りながら、

横にあったパラソルとサマーベッド

もレンタルして、

真っ白なビーチに突き立てる。





観光シーズンではないので、

ビーチに人はあまりいなく、

プライベートビーチの様なものだった。



空には若干の雲が揺らいでいる。




早速、ゴーグルなどの装備をして

海に入ると、

海中は純白の世界が広がっていた。


所々に珊瑚礁の岩場があり、

周りにはカラフルな魚達が群がっている。


珊瑚礁も多種多様な姿をしていて、

見ていて飽きがこない。


海中散歩を

1時間ほどしていると、

さすがに疲れを感じ、

浜に上がり、

サマーベッドに横たわった。





爽やかな風が心地よく、

自分でも贅沢しているな〜と、

思ってしまうほどの

時間とロケーションを満喫する。



30分程休み、

最後にもう一度海に潜り直して、

西浜ビーチを後にした。




再び自転車にまたがり、

来る途中に見つけた

小高い丘を登ると、

遠くを展望できる

場所に着くことができた。





海を眺めながら

タバコを薫せ、

下り坂を降りると

右に島の小学校があり、

ごく平凡な作りなのだけど、

雰囲気からか、

それまでも違った景観を

作り出している。



その先は民宿近くに道が

抜けており、

そのまま民宿でシャワーを浴びて、

帰りのフェリーを待つことにした。







つづく

小さな旅(3.5)

2017-01-17 06:25:51 | Travel (Okinawa)



釣り人は50代ぐらいの

男性で、地元は東京だと言い、

度々時間ができるとこの島に

遊びに来るらしい。


その後、男性とは

たわいもない話を

してから別れた。


7月初旬にも関わらず、

日差しは強く、暑さと開放感から

上着を脱ぎ捨て

上半身裸になっている。


近場の浜辺で

腰を落ち着かせながら、

青々とした海と空を

眺めていると、

自分が今どこにいるのか

忘れてしまいそうになる。


いや、

忘れた方がいいのかも知れない。


いろいろな思考が現れては

消えていく。


どれぐらいの時が過ぎたのか、

気がつくと空がオレンジ色に

変わり始めている。


遠くの地平線で太陽が

沈もうとしている。


その光景に、

再び思考の海に浸かりそうに

なったのだけれど、

なんとか抑えて

来た道を戻り始めた。


道端の雑草が太陽の光を

反射して黄金色に靡いている。



風は身体を心地よく

通り過ぎて行く。



民宿に着くと、

すぐに夕食となり、

名前は忘れたけど地魚の煮付けを

中心とした料理がテーブルに並んだ。






初めての味だったけれど、

僕の舌に合っていて美味かったし、

一緒に飲んだオリオンビールが

格別だった。



ほろ酔い気分でシャワーを

浴びて部屋に戻り、

畳に寝転びながら板目の

天井をボーと眺め、

暫しの間無の状態に入る。



再び起き上がり

携帯で時間を確認すると、

午後8時を過ぎていた。



若干酔いに足りなさを感じ、

食堂でオリオンビールの缶を

二本購入してから暗い夜道に繰り出した。



建物の明かりが少ないことと、

空気が澄んでいることによって、

空には幾万もの星が広がっている。


前浜ビーチに着くと、

さらに月光が海に反射していて

辺りを優しく照らしていた。



僕は砂浜に寝転ぶ。



波の音と風の音が

混じりあう神秘的な時間を

過ごしていると、

頭上の方から砂を踏む音が

聞こえてきた。


人が来たかなと、

思ったのだけれど

足音が妙に軽やかだったので

振り向いて見ると、

10m程先に鹿が二頭歩いている。


鹿も僕に気がついたのか

足を止め、暗闇に光る眼光が

四つこちらを向く。


向いたといっても一瞬で、

すぐに首の向きを変えて

遠くに行ってしまった。


後で民宿の方に聞くと、

鹿はケラマジカと言い、

この島特有の鹿と言うことだった。


暗くて毛色などは

確認出来なかったが、

あの眼光は

生命を感じさせるには十分な

迫力があった。



ケラマジカが去ってから、

オリオンビールを飲み干し、

若干の肌寒さを覚えたので

民宿に戻り、

そのまま良く乾いた

布団に潜り込むようにして、

深い眠りに落ちて行った。






つづく