goo blog サービス終了のお知らせ 

秋風

アキバ系評論・創作

月下の舞姫vol.24

2012-09-30 00:43:07 | Weblog
「ばか! いいかげんにしてよ!」
あゆは武道で鍛えた腹式呼吸を活かした大声で一喝する。
教室に居合わせた全員がびっくりして息を飲む。
ややあって固まっていた嵩は捨て台詞ひとつ無く黙って教室の外に出る。
はぁーっと息を吐くクラスメイト一同の中であゆだけは警戒を緩めない。
「ごめんね、あゆ」
「恵子は謝ることない」早口で開けっぱなしの教室の引き戸を睨むあゆ。
「何?」
洸も釣られて引き戸を注視した時、不意に廊下で非常ベルが鳴る。
「くそっ!」という声とバンッ! と何か鉄板を蹴飛ばすような音が聞こえる。
「来る!」
あゆは注意喚起のつもりで叫んだが女子を中心にパニック状態になる。
恵子や洸はあゆを信じ比較的冷静だが近くの席の女子数名があゆにすがり付く。
「何とかしてよ!」「ちょっ、離して」
頭ひとつ低いあゆは途端に身動きが取れなくなる。
不意にあゆ達が注視していた教壇寄りの引き戸ではなく後ろの引き戸が荒々しく開き消火器を持った崇が乱入して来る。
非常ベルはずっと鳴り続け初音ミク的な合成音声が警告音声を全館放送する。
「消火器が取り外されました、―――」場所はあゆ達の居る教室前である事を告げる。

都立秋葉原高等学校は近代的な高層ビルの中にあるので消火器ひとつとってみてもホルダーから外されると同時に先ずそのフロアの非常ベルが鳴り一定時間が過ぎても消火器が戻されないと全館放送が自動的に流れる。
この段階ではまだ火事とは放送させず消火器が取り外された事だけが伝えられる。
消火器がホルダーから取り外されると同時に防災センターの警報が鳴り、そこに詰めている警備員は監視カメラや各種センサーで真報(本当の火事)かどうか確かめつつ少なくとも1名は現場に赴く。
「こちらは防災センターです、ただいまの非常ベルは、あー……火事ではないようですがー?」
モニター越しでは状況がよく解らないのか警備員による間の抜けた全館放送が流れる。
崇は何か叫びながらあゆを中心とした女子数人に迫り消火器を噴射する。教室全体に女子の絶叫が響く。
周りの女子に力一杯しがみつかれ耳元で絶叫されあゆは身動きが出来なくなったが取り合えず何とかしゃがみこんだ。しかし目が開けられない、息も苦しい。咳き込んでしまう。
「なにやっとんじゃ? コラ!」
先ず先程の年配同級生が駆けつける。次いで近くの教室の先生や生徒が戸口まで入ってくる。後から後から何だ何だと詰め掛ける野次馬生徒と教室から出ようとする生徒で収集が付かなくなる。

駆けつけた警備員も人だかりに阻まれ教室内の状況が把握できない旨を防災センターに伝える。
その防災センターもマッチの火ひとつでも見逃さない熱源センサーが反応していないのに消火器が噴射されている状況が理解できず的確な指示が送れないでいる。
たまたま防災センターに詰めていた警備員の資質が低く消火器噴射=火災の図式から離れられないでいる。

「離せおっさん!」
「お前こそやめろ! コラ!」
ふたりが掴み合いになる。消火器は噴射が終わり床に転がっている。
「あーやめなさい、ふたりとも」
最初に近くの教室からから駆け付けた年配の教師が独り言のように諌めるが役に立たない。
女子生徒はともかく男子生徒も遠巻きに見ているだけである。なぜならある危惧があったからである。
「何やっている?」「離れなさい!」
他の教師と警備員が生徒を掻き分け入ってくる。
「てめーらじゃまんすんなああ! このくそアマぶっ殺してやる!」
男子生徒の危惧が現実となり崇がついにナイフを振り回す。以前のペン型ナイフのような小さなものではなく鞘付きの果物ナイフで恐らくは家庭科室から持ち出した物だと思われた。今は男子でも必修で家庭科がある。

「一線を越えたわね!」
あゆが咳き込みながらも立ちはだかる。全身消火剤で真っ白である。
「おまえのせいでもうメチャクチャだよ!」
「ばか! 自業自得でしょ」
年配同級生があゆと怒鳴り合って気が逸れている崇を殴る、果物ナイフが転がりあゆがすかさず蹴飛ばして教室の隅に送る。警備員が飛びかかり身柄を確保しようとしてまた掴み合いになる。
警備員は学校側からの要請により警棒は持たされていなくまた荒っぽい事もしないよう言われていてどうしても手際が悪くなる。
バチッバチッという音が響き警備員が弾かれたように倒れる。
「スタンガン?」
あゆが叫ぶ。教室の生徒教師が怖じ気づいて包囲網が緩む。
あゆは胸に挿してある丈夫なボールペン、タクティカルペンを右手に握り覚悟を決めて向かい合う。左手には例のフットスプレー。
(もうツボ押しじゃダメだ、目潰しのつもりで、でも私に出来る?)
バチッバチッと放電させながら迫る崇の目はもう正気じゃない。
不意に崇が姿勢を崩す。スプレーを噴射しつつ首筋にペンを突き立てようと肉薄すると崇の影にからサヨリが現れる。
サヨリは崇の後ろから無造作に近寄り膝の裏を蹴飛ばして姿勢を崩したところだった。サヨリはそのまま崇の髪の毛を掴み後ろに仰向けに引き倒すと鳩尾の上を踵で力一杯踏みつけ胸骨を纏めて4対8本折った。
胸骨は救急救命の世界では意識不明かどうかの確認でペンなどでゴリゴリ擦って確かめたりに利用されるくらい痛みを感じやすいポイントでそこを一気に折られるのは激痛である。
声も出ないくらい痛がりのたうつ崇の喉を踏みつけながらサヨリはあゆと目を合わせる。
「おまたせ」

月下の舞姫vol.23

2012-09-26 00:19:07 | Weblog
「「「あ、メールだ」」」
13:10から始まる昼間部1時限目は14:00に終了する。その終了チャイムと共に昼間部2時限目の必修英語Aが臨時休講となった事を伝えるメールがその講義を取っている生徒全員に配信される。
一年前期の必修講義なので今この教室に居るほぼ全員が該当する。
「やったぁ! あのセンセ厳しいんだもん」
「(正)担任だからって威張ってんじゃねーよな」
あゆ達の正担任の男性教師はあまり生徒から人気がなく教室のあちこちから休講を喜び人格を非難する声が上がる。
「あゆ、何、変な顔しているの?」
恵子があゆの顔を覗きこむ。
「崇谷家との最終和解会議がもつれているのかも?」
「祟るわねー」
洸が会話に加わる。
「うちもアニメショップでイタタタなお客さん居るじゃない? 女性店員へのストーカーとか」
「何それ、体験談?」
恵子が笑いながら応える。
「ううん、先輩でね、小銭のお釣りを相手の手を握るように渡す人がいてさ」
「ああ、それはだめよね、三次元の女の子に縁のない人相手には」
あゆは自分の家の店と客層が被るので思わず頭を抱える。
「あれ、うちはそうしているけど? そうするようお祖父ちゃんが言うよ」
「恵子のところはお酒を出す店への卸売りや通販中心で店頭で買うのはほとんど近所のお得意様だけでしょ? 店頭は平和よね」
あゆは恵子の店で扱う珍しい地酒等の通販システムはあゆとその父で構築したので内情をよく知っている。
「ああそうか、そうよね。昔立ち飲みコーナーがあった頃はやっちゃばの勤め帰りの人がクダ巻いてお祖母ちゃんが大変だったって言ってたな」
「やっちゃばか、懐かしいな俺ちょっと出入りしていたんだ」
昼間部夜間部ならどこのクラスにも少数居る年配同級生が不意に話しかける。
「ああ、急に話しかけてごめんな、じゃ行くわ、俺は三年目なんだが単位(取得)不足で一年目の子の教室にも出入りしてんだ」
「「「がんばってねー」」」
自分の娘世代に見送られて気分よく他の教室に向かう彼であった。
そして入れ替わりにあゆと同年代男子生徒が入る。
「酒屋が手を握ってお釣り渡すのはアル中で手が震えるお客さん、うちの養分になってくれてありがとうって意味だろうが!」
「嵩谷君!」
あゆが反射的に勢いよく立ち上がる。



のんびり書いていると……

2012-09-16 23:51:32 | Weblog
社会が大きく動いてしまったりPCやスマートフォンの画期的新製品が出たりして作品内齟齬が生じてしまいます。急がねば。明日からまた頑張る。

といいつつiPhone5か来月発表の噂があるiPad miniか悩んでしまいます。

自分が買う分ではなく、あゆやサヨリに持たせるガジェットの話ですよw




作品舞台

2012-09-11 23:41:25 | Weblog
都立秋葉原高等学校は勿論架空の学校です。
位置的にはヨドバシカメラ秋葉原店の近くの富士ソフトビル辺りをイメージしています。
台東区の秋葉原から徒歩5分ですね。

いっそ秋葉原UDXビルの位置に学校もテナントも住居も全て纏めたらとも考えましたがw
マクロス艦内みたいですね。

月下の舞姫vol.22

2012-09-10 23:59:37 | Weblog
「あゆーっ、さっきそっくりな娘と歩いていたけど誰?」
「あの制服、私らの(出身中学)よね?」
あゆが教室に入ると仲のいい洸(ひかる)と恵子が駆け寄る。ふたりとも身長が160cm台後半で142cmのあゆより25cmくらいも高い。
洸は秋葉原のアニメショップでアルバイトをしている。モデル体形でアイドル店員らしくクラスの男子にも人気が高い。クラス委員に立候補してなったが新入学早々アルバイトで休みがちで一昨日の『嵩谷の乱』(クラスの男子命名)の顛末は昨日恵子に聞いて知った。出身中学は地元で生粋の秋葉っ子でもあり危険なヲタクの探知能力がある。あゆと恵子とは高校の入学式で知り合い仲良くなった。

恵子はあゆと同じ中学出身。昨日休んだ授業のノートのコピーを持ってきてくれた。授業をバイキング料理のように任意に選択する単位制高校ではあるが初年度前期はほとんど必修授業なのでノートのコピーが一般的な全日制高校のように普通にできたが来年はこうはいかないかも知れない。
恵子はずっと陸上部なだけあってスリムで引き締まった体形をしている。また家業の酒屋をよく手伝っているがそれで学校を休むことはない。

「あの子は秋月サヨリといって遠縁かな?」
「なんで疑問形なのよ?」
洸が笑いだす。
「え? おじさまの隠し子?」
恵子が変な深読みをして小声で囁く。
「話せば長くなるけど東南アジアの日系人でたぶん遠縁、制服は私のを貸したのよ」
「「ふぅん?」」
あゆは周りで他のクラスメイトが聞いている状況を考慮した。
詳しく話すと昨日の警察沙汰の事まで話さないといけないので説明をはしょったが恵子と洸は客商売で培った勘が働いたのかその時はそれ以上聞かなかった。
あゆは大人の対応が出来るふたりに感謝した。

単位制三部制高等学校昼間部は13時から始まるが最初の5分はSHR(ショートホームルーム)で教室のモニター等を通じて伝達事項などがある。今日は特に何もなかった。
更に5分後から50分の授業10分の休み時間と続き4時限目が終わるのは
17時で30分後には同じ教室で夜間部が始まるので速やかに移動しなければならない。

月下の舞姫vol.21

2012-09-10 00:10:35 | Weblog
「わぁー、屋上って気持ちいいね! 普段から解放すればいいのに」
「安全管理上そうはいかなのよ、怖いでしょ?」
あゆが通っている単位制三部制の都立秋葉原高等学校をサヨリが見学する事になりあゆの副担任が案内する事になった。
あゆの母は店舗を開店させるべく戻った。
弁護士とあゆの父は最後の詰めとして崇谷家側と正担任を交え和解交渉をしている。

あゆが屋上の低い手すりを掴みながらやや身をのりだしつつ思わず歓声を上げる。
サヨリはあゆのスカートのベルトを掴みバックアップしながら遠くを見ている。
副担任の女の先生は高いところが苦手らしく三歩離れたところから背を向けて答える。手にはマスターキー用大型キーホルダーを握っている。まるでホテルの客室キーだ。
「怖くないですよ、サヨリは……本職のパイロットが怖いはずないか」
「地上から約300フィート、天気もよく気流も安定してて飛行日より」
秋葉高は30階建ての高層ビルの中にあるが普段は誰も屋上に出られない。
サヨリはあゆと一緒に屋上ヘリポートの中心に立ち間合いを計っている。緊急用ヘリコプター発着の為に高いフェンスなどがない。
「も、もういいでしょ? 次はどこを見たいですか? 秋月さん達」
副担任はそこから一刻も早く離れたいのか学校案内パンフレットを取り出す。
「屋上塔屋の屋上が見たいです、Googleマップの航空写真を見ると何かオブジェっぽいものが有りますよね?」
あゆが更に高見を目指す。
「日本の高性能な避雷針を見たいです」
サヨリは更にその上を目指す。
「き、企業秘密です!」
副担任が悲鳴を上げる。
「うち都立じゃないですか」
「PMC(民間武装警備会社)の装備?」
「秋月のあゆさんの方はそろそろ授業ですから教室に行きましょう!」






仙台

2012-09-08 23:44:46 | Weblog
急用で仙台まで行ってきました。
そこは地下鉄泉中央駅の向こうで海岸から離れていて地盤がしっかりしている新興住宅地で先の311大震災でも比較的被害が少なかったエリアだそうです。

それでもよく見ると家々や道路に修理跡が散見されました。

バス代と地下鉄代で仙台駅まで往復千円くらいするしバスは一時間に4本くらいです。
なのでそれまでは静かだけどちょっと不便だよね的な評価だったそうですが震災後は再評価され人気が高くなり新築ラッシュだどうです。
関東大震災後の田園調布みたいですね。

家庭菜園とかも盛んで色々聞いて来ました。それ系も創作に盛り込みたいですね。

ちょっとお休みしてしまいましたが月下の舞姫もまた再開します。

では今夜はこれで。

コミPo!

2012-09-05 23:22:13 | Weblog
簡単そうで意外に難しい。
使いこなせればいいのでしょうが。



例えばサヨリが指鉄砲を突きつけたポーズですがもっと腕を下にしたいのですが調整が効かない?
今調べていますが。

QUMARION(クーマリオン)
http://www.clip-studio.com/quma/

これが使えてポーズの微調整が可能ならいいのですが。

日々是精進ですね。