彼女は、病気がちで、しかも赤ちゃんがいる。だから、外出、仕事など、人生に充実感を与えてくれそうな、ほとんどのことができない。例えば、興味あるコンサートが開催されていても、その場所まで行く体力が無いので行けない。それに、見たい映画には行けない。レンタルショップでDVDを借りるだけだ。
したいことができないストレスを、日記としてノートにびっしりと書く。その文章は整理されていない、段落はないし、時間が前後する。内容も、脈絡がない。
しかしその日記に書いて、思いを吐き出すと彼女はホッとする。ベッドに寝付いたり、体が難儀ながらも必死でする子供の世話で一日が終わってしまうはずの彼女だが、そのノートには一日何ページも彼女の字で埋まっていく。
書きまくった後、彼女は子供の寝ている隙を見つけて読みまくる。図書館で借りたり、アマゾンで買った小説を、あたかも何か読むことの果てにゴールがあるかのように読みまくる。病気、育児、書くこと、読むこと。これが彼女の本質なのである。