●司法書士試験
○留置権4-留置権の消滅
問題1 甲は乙からその所有にかかる自動車の修理を請け負い,
これを完成したが,乙が支払期日の経過後も修理代金を支
払わないので,自動車の占有を継続した。甲のために自動車
を保管していた者が,乙に自動車を返還しても,甲が返還を
承諾していないときは,甲の留置権は消滅しない。(58-9-5)
問題1 まちがい。
(1)留置権は,目的物の占有が成立要件であり,かつ存続要件
である(民法第295条)。
(2)そして,この場合の占有は,代理占有でもよいが,その代
理占有も喪失すれば,その時点で留置権は消滅する。
(3)本問の場合は,自動車保管者が自動車を乙に返還した時点
で,甲は自動車の占有を喪失し,留置権は消滅する。
(4)よって,本股はまちがいである。
問題2 留置権の目的物をその所有者が留置権者に無断で持ち出
した場合でも留置権者が占有回収の訴えを提起したとき
は,留置権は消滅しない。〔4-9-1〕
問題2 正しい。
(1)留置権は,目的物を占有していることが成立要件であり,
占有を失ったときには,消滅する(民法第302条)。
(2)しかし,占有権は,それを奪われた場合でも,占有回収の
訴えを提起したときは,占有が継続したものとみなされ(
民法第203条ただし書),留置権は消滅しない。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,留置権者は留置権という担保物権に基づいて占有(留
置)しているので,所有者といえどもそれを無断で持ち出
した場合は,占有の侵害となる。
問題3 留置権者が債務者の承諾を得て留置物を賃貸した場合に
は,留置権は消滅しない。〔61-2-4〕
問題3 正しい。
(1)留置権は目的物を占有していることが,成立要件であり,
かつ,存続要件である。
(2)ところで,この場合の「占有」は代理占有でも良い(民法
第302条)し,賃貸人は賃借人を介して代理占有している
ので,留置権は消滅しない。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,本問の場合,留置権者は債務者の承諾を得て,賃貸
しているので,債務者は留置権の消滅請求をすることはで
きない。
問題4 甲から船舶を買い受けた乙が,売買契約解除後,修繕費用
償還請求権に基づき船舶を留置した場合において,乙が
甲の承諾を得ることなく,その船舶を遠方に航行させた
ときは,甲は,乙に対し,留置権の消滅を請求することが
できる。(60-22-3)
問題4 正しい。
(1)留置権者は,原則として,債務者の承諾を得ることなく,
留置物を使用することができないが,例外として,保存行
為としての使用は許される(民法第298条2項)。
(2)そこで,本問の「船舶を遠方に航行させること」は,保存
行為としての使用に当たるかであるが,それは目的物の維
持管理の範囲を超えており,保存行為としての使用には当
たらない(最判昭30.3.4)。
(3)したがって,本問の場合は,債務者甲は留置権の消滅請求
をすることができる(民法第298条2項)。
(4)よって,本股は正しい。
問題5 甲が乙に対する修繕代金債権に基づいて乙の時計を留置
している場合において,甲が乙の承諾を得ることなく,そ
の時計を丙に質入れしたときは,たとえ,甲が直ちに債務
を弁済してその時計を丙から取り戻したとしても乙は,
甲に対し,留置権の消滅を請求することができる。〔60-22-4〕
問題5 正しい。
(1)留置権者が,債務者の承諾を得ることなく,目的物を担保
に提供したときは,債務者は留置権の消滅請求をすること
ができる(民法第298条2項,3項)。
(2)ところで,承諾のない担保提供の状態が解消されている場
合でも,債務者は留置権の消滅請求をすることができるか
であるが,最高裁判決は,留置権の消滅請求は,違反行為
が終了したか否か,これによって債務者が損害を受けたか
否かに関係なく,違反行為があればできる,旨判示してい
る(最判昭38.5.31)
(3)よって,本股は正しい。
問題6 債務者の承諾なくして留置権者が勝手に留置物を貸貸し
た場合,留置権は消滅する。〔2-4-3〕
問題6 まちがい。
(1)留置権者は,債務者の承諾を得ることなく勝手に,留置物
を賃貸することはできない(民法第298条2項)。
(2)そして,留置権者が,それに違反して,留置物を勝手に賃
貸した場合には,債務者は、留置権の消滅を請求すること
ができる(民法第298条3項)のであり,当然に留置権が
消滅するのではない。
(3)よって,本股はまちがいである。
問題7 債務者は,相当の担保を提供して留置権の消滅を請求す
ることができる。(4-9-2)
問題7 正しい。
(1)民法第301条により,債務者は、相当の担保を供して、留
置権の消滅を請求することができる。
(2)僅少な債務のために高価な物が留置されるような場合には,
債務者にとって酷になるので,民法は,代わり担保の供与
により,留置権が消滅する制度を設けているのである。
(3)よって,本股は正しい。
…………………………以上
○留置権4-留置権の消滅
問題1 甲は乙からその所有にかかる自動車の修理を請け負い,
これを完成したが,乙が支払期日の経過後も修理代金を支
払わないので,自動車の占有を継続した。甲のために自動車
を保管していた者が,乙に自動車を返還しても,甲が返還を
承諾していないときは,甲の留置権は消滅しない。(58-9-5)
問題1 まちがい。
(1)留置権は,目的物の占有が成立要件であり,かつ存続要件
である(民法第295条)。
(2)そして,この場合の占有は,代理占有でもよいが,その代
理占有も喪失すれば,その時点で留置権は消滅する。
(3)本問の場合は,自動車保管者が自動車を乙に返還した時点
で,甲は自動車の占有を喪失し,留置権は消滅する。
(4)よって,本股はまちがいである。
問題2 留置権の目的物をその所有者が留置権者に無断で持ち出
した場合でも留置権者が占有回収の訴えを提起したとき
は,留置権は消滅しない。〔4-9-1〕
問題2 正しい。
(1)留置権は,目的物を占有していることが成立要件であり,
占有を失ったときには,消滅する(民法第302条)。
(2)しかし,占有権は,それを奪われた場合でも,占有回収の
訴えを提起したときは,占有が継続したものとみなされ(
民法第203条ただし書),留置権は消滅しない。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,留置権者は留置権という担保物権に基づいて占有(留
置)しているので,所有者といえどもそれを無断で持ち出
した場合は,占有の侵害となる。
問題3 留置権者が債務者の承諾を得て留置物を賃貸した場合に
は,留置権は消滅しない。〔61-2-4〕
問題3 正しい。
(1)留置権は目的物を占有していることが,成立要件であり,
かつ,存続要件である。
(2)ところで,この場合の「占有」は代理占有でも良い(民法
第302条)し,賃貸人は賃借人を介して代理占有している
ので,留置権は消滅しない。
(3)よって,本股は正しい。
(4)なお,本問の場合,留置権者は債務者の承諾を得て,賃貸
しているので,債務者は留置権の消滅請求をすることはで
きない。
問題4 甲から船舶を買い受けた乙が,売買契約解除後,修繕費用
償還請求権に基づき船舶を留置した場合において,乙が
甲の承諾を得ることなく,その船舶を遠方に航行させた
ときは,甲は,乙に対し,留置権の消滅を請求することが
できる。(60-22-3)
問題4 正しい。
(1)留置権者は,原則として,債務者の承諾を得ることなく,
留置物を使用することができないが,例外として,保存行
為としての使用は許される(民法第298条2項)。
(2)そこで,本問の「船舶を遠方に航行させること」は,保存
行為としての使用に当たるかであるが,それは目的物の維
持管理の範囲を超えており,保存行為としての使用には当
たらない(最判昭30.3.4)。
(3)したがって,本問の場合は,債務者甲は留置権の消滅請求
をすることができる(民法第298条2項)。
(4)よって,本股は正しい。
問題5 甲が乙に対する修繕代金債権に基づいて乙の時計を留置
している場合において,甲が乙の承諾を得ることなく,そ
の時計を丙に質入れしたときは,たとえ,甲が直ちに債務
を弁済してその時計を丙から取り戻したとしても乙は,
甲に対し,留置権の消滅を請求することができる。〔60-22-4〕
問題5 正しい。
(1)留置権者が,債務者の承諾を得ることなく,目的物を担保
に提供したときは,債務者は留置権の消滅請求をすること
ができる(民法第298条2項,3項)。
(2)ところで,承諾のない担保提供の状態が解消されている場
合でも,債務者は留置権の消滅請求をすることができるか
であるが,最高裁判決は,留置権の消滅請求は,違反行為
が終了したか否か,これによって債務者が損害を受けたか
否かに関係なく,違反行為があればできる,旨判示してい
る(最判昭38.5.31)
(3)よって,本股は正しい。
問題6 債務者の承諾なくして留置権者が勝手に留置物を貸貸し
た場合,留置権は消滅する。〔2-4-3〕
問題6 まちがい。
(1)留置権者は,債務者の承諾を得ることなく勝手に,留置物
を賃貸することはできない(民法第298条2項)。
(2)そして,留置権者が,それに違反して,留置物を勝手に賃
貸した場合には,債務者は、留置権の消滅を請求すること
ができる(民法第298条3項)のであり,当然に留置権が
消滅するのではない。
(3)よって,本股はまちがいである。
問題7 債務者は,相当の担保を提供して留置権の消滅を請求す
ることができる。(4-9-2)
問題7 正しい。
(1)民法第301条により,債務者は、相当の担保を供して、留
置権の消滅を請求することができる。
(2)僅少な債務のために高価な物が留置されるような場合には,
債務者にとって酷になるので,民法は,代わり担保の供与
により,留置権が消滅する制度を設けているのである。
(3)よって,本股は正しい。
…………………………以上
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます