「宅建試験受験講座」37回目
権利関係37
民法12:「不動産登記法4」:「登記手続」
…………………………
民法
第10章 不動産登記法
第4項 登記手続
第1 はじめに
1 既に勉強しましたように,不動産登記とは土地・建物(不動産)の物
理的現況と権利関係を法務局(登記所)に存在する登記簿に登記する
ことです。
2 そして,法務局は,土地の登記簿と建物の登記簿をそれぞれ別々に置
いているのですが,不動産の権利者はその登記簿に自分の権利を登記
することにより,その権利を第三者に対抗することができ,自分の権
利が保護されることとなります。
3 したがって,土地や建物の売買等を取り扱う宅地建物取引士は,顧客
のためにも,不動産登記の手続の仕方を理解しておき,売買等が成立
した場合には,顧客に対し,登記手続のことも説明する必要がありま
す。
4 したがって,宅建試験でも不動産登記の手続の仕方について,出題さ
れることがあります。
5 そこで,ここでは,不動産登記の手続について勉強することと致しま
す。
第2 申請主義(不動産登記法第16条)
1 まず,不動産登記簿に登記をするのは,法務局(登記所)の登記官で
すが,登記官は,原則として,
①当事者から登記申請があった場合,又は
②法令の規定に基づき,官庁もしくは公署から登記の嘱託があった場
合,
でなければ登記簿に登記をすることができません。
これを登記における「申請主義」といいます。
…………………………
★不動産登記法第16条1項
(当事者の申請又は嘱託による登記)
①登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事
者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、
することができない。
…………………………
2 当事者からの登記申請によって登記が為される場合
(1)例えば,Aが自己所有の甲建物をBに売却した場合,甲建物に関し,
AからBへの所有権移転登記をするには,法務局に対して,BとAの
共同申請による所有権移転登記申請がなければ,登記官はその登記を
することができない,ということです。
(2)仮に,国としては,その事実を知っていたとしても,BとAによる
所有権移転登記申請がなければ,登記官はその登記をすることがで
きないのです。
3 法令に基づく官庁もしくは公署から登記の嘱託があった場合
(1)例えば,前記の例で,Aが自己所有の甲建物を国に売却した場合,
甲建物に関し,Aから国への所有権移転登記をすることになります
が,この場合の登記申請方法は,不動産登記法第116条第1項に
より,法務局に対して,国とAによる共同申請による所有権移転
登記申請となるのではなく,国から登記所(法務局)への嘱託登記
申請という方法によることになります。
…………………………
★不登記法第116条1項(官庁又は公署の嘱託による登記)
①国又は地方公共団体が登記権利者となって権利に関す
る登記をするときは、官庁又は公署は、遅滞なく、登
記義務者の承諾を得て、当該登記を登記所に嘱託しな
ければならない。
…………………………
(2)これは,私人間の登記申請の場合は,登記申請の真正を担保するた
めに,前述のように,登記権利者と登記義務者の共同申請という方
法によらなければならないのですが,登記権利者が国の場合は,国
は信憑性が高いので,共同申請という方法ではなく,国による嘱託
申請というより簡易な方法によることができるとしている,という
ことです。
(3)なお,ここで,「官庁」とは「国の機関」のことであり,「公署」と
は「地方公共団体の機関」のことです。
4 職権で登記が認められる場合(不登法第28条)
(1)以上のように,登記は,原則として,当事者の申請によるか,
特別規定がある場合の官庁又は公署の嘱託申請によるかは別とし
て,申請によらなければならないのですが,例外として,登記官が
職権で登記をすることができる場合があります。
(2)例えば,不動産登記法第28条に規定されている「表示に関する登
記」は,登記官が職権ですることができます。
…………………………
★不動産登記法第28条(職権による表示に関する登記)
表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。
…………………………
ア 表示に関する登記とは,既に「講座35:不動産登記法:第2項不
動産登記法各論:第1号表示に関する登記の各論」の所で勉強しま
したように,土地,建物の物理的現況の登記で,権利に関する登記
の前提として,最初にしなければならない登記のことであり,不動
産の最初の権利者からみれば,権利に関する登記をするための準備
的登記ですが,国家からみれば,今,現在,国内にはどれだけの土
地,建物が存在するかを把握して,不動産の秩序を維持したり,
不動産税を課すための重要な資料です。
イ そこで,当事者には表示に関する登記を申請する義務を課して,そ
れをおこたった場合には,過料に処せられる旨の規定も置いていま
すが,それでも,個人が建物を新築したり,権利の対象となる土地
を最初に取得したりした場合に,その建物,土地について,表示に
関する登記(表題登記)をしていないということは,あり得ますの
で,そのような建物や土地を国が発見した場合には,国家が不動産
の秩序の維持・管理のために,その建物,土地については,表示に
関する登記を職権ですることができる,としているのです。
(3)また,権利に関する登記でも,登記官の職権による登記が,不動産
登記法で認められている場合があります。
ア 例えば,Aが自己の甲建物をBに売却して,BとAの共同でAから
Bへの所有権移転登記申請をしたところが,登記官が誤って,
AからCへの所有権移転登記をしてしまったとします。
イ この場合には,登記官は甲建物の所有権者をBに職権で更正しなけ
ればならないのです(不動産登記法第67条2項)。
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★不動産登記法第67条2項(登記の更正)
①登記官は、権利に関する登記に錯誤又は遺漏があることを発見し
たときは、遅滞なく、その旨を登記権利者及び登記義務者(登記
権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人。第三
項及び第七十一条第一項において同じ。)に通知しなければなら
ない。ただし、登記権利者、登記義務者又は登記名義人がそれぞ
れ二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りる。
②登記官は、前項の場合において、登記の錯誤又は遺漏が登記官の
過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する
法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなけれ
ばならない。ただし、登記上の利害関係を有する第三者(当該登
記の更正につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を
含む。以下この項において同じ。)がある場合にあっては、当該
第三者の承諾があるときに限る。
…………………………
ウ 登記官は,自分が誤ったのであるから,当事者の手を煩わすことな
く,自分の職権で更正しなければならないのです。
エ なお,この場合,登記官は職務行為を誤っているのであり,公的
データである記録の更正ですから,監督機関である法務局又は地方
法務局の長の許可を得て更正しなければなりません。
☆第3 登記申請の方法
1 それでは,話は変わりまして,当事者が登記申請をする場合に,そ
の申請方法は,どのようになっているのでしょうか。
2 まず,不動産登記法は平成16年に全面的に改正されました。
(1)そして,改正前の旧不動産登記法時代には,登記申請は,原則とし
て,登記所に出頭して申請しなければならない,とされていました。
(2)そして,これを当時は「当事者出頭主義」と言っていました。
☆ 3 現行不動産登記法上の登記申請の方法
これに対して,現在の不動産登記法では,次の3つの方法による登記
申請が認められています。
☆ (1)窓口申請
登記申請書を登記所の窓口に提出する方法による申請です。
☆ (2)郵送申請
登記申請書を郵送することによる登記申請をする方法です。
☆ (3)電子申請(オンライン申請ともいう)
電子情報処理組織(いわゆる「インターネット」)を使用して登
記の申請に必要な情報を登記所に送信する方法により,登記申請
をすること。
4 このように,現在の不動産登記法では,(1)(2)の書面による登記
申請以外に,(3)の電子情報処理組織による登記申請も認められて
います。このように登記申請の方法も,インターネットシステムの発
展にあわせて,便利になってきているのです。
5 なお,登記申請の方法は,上記の3つだけですから,申請人が法務局
(登記所)の窓口に行って,登記申請を口頭で申し立てる「口頭申請」
は,認められません。
第4 登記申請の要式主義
1 次に,申請人は,登記申請をする場合には,一定の情報を法務局(登
記所)に提供しなければなりません(不動産登記法第18条)。
2 例えば,所有権移転登記の申請をする場合には,
(1)登記申請書に,①登記の目的,②原因,③権利者,義務者,④添付
情報,⑤代理人,⑥申請日,⑦申請法務局,⑧物件の表示,等を記
載し,
(2)添付情報欄には,登記識別情報,登記原因証明情報,代理権限証明
情報,印鑑証明書,住所証明情報等を記載し,そこに記載した情報
を申請書に添付して提供しなければなりません。これを登記申請の
要式主義といいます。
3 これは,申請方法が書面申請であっても,電子申請(オンライン申請)
であっても同じです。
4 なぜならば,登記官は,不動産申請があった場合,登記申請書(申請
情報)に記載されている事項,添付されている書類に基づいて,登記
できるか否かを審査し,合格すれば,登記簿に記載しますし,不合格
の場合は,その登記申請を却下しなければなりません。
5 したがって,登記申請には,申請方法のいかんに関係なく,一定の情
報の情報の記載が要求されているのです。
☆第5 共同申請主義(不動産登記法第60条)
☆ 1 次に,登記申請は誰がしなければならないかですが,権利に関する
登記の登記申請は,原則として,登記権利者と登記義務者が共同して
しなければなりません(不動産登記法第60条)。
これを「共同申請主義」といいます。
…………………………
★不動産登記法第60条(共同申請)
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、
登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
…………………………
2 ここで,登記権利者とは,権利に関する登記をすることにより,登記
上直接に利益を受ける者のことであり(不登法第2条12号),登記義
務者とは、権利に関する登記をすることにより,登記上直接に不利益
を受ける登記名義人のことです(不登法2条13号)。
3 ですから,不動産の売買の場合の所有権移転登記申請の場合は,買主
が登記権利者で,売主が登記義務者になり,その所有権移転登記申請
は,買主と売主が共同してしなければならないのです。
4 それでは,なぜ買主の単独による所有権移転登記申請は認められず,
買主と売主の共同申請でしなければならないのかですが,
(1)登記申請があった場合の登記官の審査は,登記申請書によってのみ
行う書面審査です。
(2)したがって,例えば,売主を法務局(登記所)に呼び出して,その
者から事情を聴くということは行いません。
故に,登記申請書は,その書面の中で真実性が担保されたものでな
ければなりません。
(3)そこで,所有権移転登記申請の場合であれば,登記上直接に不利益
を受ける登記名義人である売主も登記義務者として,買主(登記権
利者)と共同して,登記申請人に加わっておれば,登記官は,その
申請書をみて,「売主は自己に不利益な登記事項を自らが認めて(自
白)登記申請をしているわけであるから」,この登記申請は真実で
あると判断できます。
(4)このような理由から,権利に関する登記の申請は,原則として,
共同申請になっているのです。
☆第6 単独申請ができる場合
1 登記申請の共同申請は,以上のような理由によるわけですから,
登記申請事項に登記により不利益を受ける相手方がおらず,相手方の
自白を必要としない場合等には,例外的に,単独で申請することがで
きます。
2 具体的には,次の場合です。
☆(1)登記手続を命じる確定判決による登記の場合(不登法第63条1項)
ア 「確定判決による登記」とは,例えば,BがAから甲建物を購入
して,所有権移転登記申請をする場合に,Aがその申請に協力して
くれない場合は,BはAを被告として裁判所に,所有権移転登記
手続請求の訴えを提起して,裁判所から「Aは,甲建物につき,B
に対して所有権移転登記手続をせよ。」との判決を得て,その判決
が確定した場合には,登記義務者Aが所有権移転登記の登記義務者
として,登記申請に協力してくれなくても,買主Bはその判決正本
とその判決の確定証明書を提供(添付)して,単独で所有権移転登
記申請をすることができる,ということです。
イ この場合は,登記義務者Aの登記申請意思は,「Aは,甲建物につ
き,Bに対して所有権移転登記手続をせよ。」という判決主文の中
に擬制されているので,その判決正本とその判決の確定証明書を
提供(添付)すれば,買主(登記権利者)Bが単独で登記申請を
することができる(不登法第63条1項),としているのです。
ウ なお,ここで注意していただきたいのは,「登記手続を命じる確定
判決」でなければならないということです。したがって,Bの
「所有権を確認する確定判決」では,Bは単独で登記申請をするこ
とはできません。
エ ところで,裁判所の調停や和解や認諾で被告や相手方が登記手続を
認めた場合には,調停調書や和解調書や認諾調書は,債務名義とな
りますから,登記手続を命ずる確定判決と同様に取り扱かわれ,
それらの手続で債務名義を得た者は,それらの調書正本を提供して,
単独で登記申請をすることができます。
☆(2)相続,合併による登記
☆ ア 甲建物の所有者Aが死亡し,Aの相続人がBの場合,Bは甲建物に
つき,単独で,相続を原因とする所有権移転登記申請をすることと
なります。
☆ イ ところで,この場合,登記義務者となるべき登記名義人のAは死亡
していませんので,相続人Bは相続を証明する情報を提供(添付)
して,単独で所有権移転登記申請をすることができるのです。
ウ なお,この場合に注意して頂きたいのは,Aが死亡して相続人が
BとCの場合ですが,この場合,BとCが申請人となって,所有権
移転登記申請をすることはできますが,BかCが一人で申請するこ
ともできます。
エ 相続財産につき,相続を原因とする所有権移転登記をすることは,
共有物の保存行為に当たるからです(民法第252条ただし書)。
ただし,その場合は,自分の相続分(持分)だけではなく,他の
相続人の相続分(持分)についても申請しなければなりません。
☆ オ 次に,「会社の合併」も合併存続会社が合併消滅会社から承継した
不動産につき,単独で所有権移転登記申請をすることができます。
カ 会社合併は,合併存続会社が合併消滅会社の財産を包括承継し,
合併消滅会社は,消滅してないからです。
☆(3)登記名義人の氏名若しくは名称や住所の変更・更正の登記
(不登法第64条1項)
☆ ア 例えば,甲建物の登記名義人(所有権者)大阪花子が,結婚して
その氏名が東京花子に変わったので,氏名変更登記をする場合です。
☆ イ この場合,氏名の変更は,登記名義人だけの問題であり,そのこと
が,他の者の利害に関係することは全くありませんので,登記名義
人が単独で申請することができるのです。
☆ ウ また,更正の登記とは,登記申請をする時点で,もともと誤ってい
た氏名や住所を正しい氏名や住所に更正することですが,この場合
も同様です。
☆ エ なお,ここで「氏名」とは,登記名義人が個人の場合のことであり,
「名称」とは,登記名義人が法人の場合のことです。
第7 登記申請に必要な情報又は書面
1 それでは,登記申請には,どのような情報(書面申請の場合は書面)
を法務局に提供しなければならないのでしょうか。
2 要約しますと,次の情報を法務局に提供しなければなりません。
①登記申請情報(不登法第18条),
②登記識別情報(不登法第22条),
③登記原因証明情報(不登法第61条)
3 登記申請情報(不登法第18条)
(1)登記申請情報とは,電子申請(オンライン申請)の場合の言い方で
あり,書面申請の場合の「申請書」相当するものです。
(2)そして,そこには,不動産が識別できようにするために,物件の表
示が記載されていなければなりませんし,申請人が特定するために,
登記権利者・登記義務者の氏名や名称が記載されていなければなり
ませんし,何の登記の申請で登記事項が分かるように,登記の目的
や登記の原因等が記載されていなければなりません。
4 登記識別情報(不登法第22条)
(1)次に,登記申請には,原則として,登記名義人(登記義務者)の登
記識別情報を提供(添付)しなければなりません。
(2)登記識別情報とは,権利に関する登記をしたときに,新たに登記名
義人となる申請人に,登記所から通知される「ローマ字と算用数字
を組合わせた12桁の情報」です。
(3)実は,平成16年に不動産登記法が全面的に改正されるまでは,登
記申請をするときは,登記権利者は申請書副本を提出して,登記官
は登記が済めば,その副本に「登記済み」の認証をして登記権利者
(登記名義人)に交付して,次に,登記名義人が登記義務者として
登記申請をするときには,その登記済証(「権利証」ともいう)を
提供(添付)して,本人確認をする方法がとられていました。
(4)しかし,平成16年に不動産登記法が全面的に改正され,電子申請
(オンライン申請)の方法が採用されましたので,従来の登記済証
の方法は廃止され,登記官は登記済証の代わりに登記権利者(登記
名義人)に登記識別情報を通知し,その者が登記義務者として登記
申請をするときには,本人確認のために,その登記識別情報を登記
申請のときに提供(添付)しなければならない,ということにした
のです。
(5)それでは,権利に関する登記の申請のときには,登記義務者(登記
名義人)が登記識別情報を添付しなければならない理由は何かです
が,登記官は登記申請を審査するとき,申請情報と添付情報によっ
てのみしなければならず,登記義務者を登記所に呼び出して,審尋
することはできませんので,「登記名義人と登記義務者が一致して
いることの確認」,つまり,「本人確認」のために,登記義務者(登
記名義人)は,登記識別情報を提供しなければならないことになっ
ているのです。
5 登記原因証明情報(不登法第61条)
(1)登記原因証明情報とは,登記原因を証明する書面等のことです。
(2)例えば,売買を原因とする所有権移転登記申請の場合でしたら,
売買契約書等です。
(3)これは,登記原因の真実性担保し,虚偽の登記を防止するために,
登記申請の時には,提供しなければならないのです。
(4)もし,登記申請書に登記原因は記載するけれども,その原因を立証
する登記原因証明情報は提供しなくても良いということになれば,
虚偽の登記が容易になり,登記の信用性がなくなり,不動産取引は
混乱してしまいますので,権利に関する登記の登記申請人は,原則
として,登記申請情報とあわせて登記原因証明情報を提供しなけれ
ばならないのです。
☆第8 代理権の消滅に関する特則
1 不動産取引においては,売主から買主への所有権移転登記手続は,
司法書士に委任するので通例です。
2 ところで,甲建物につき,司法書士Cは売主A,買主Bから登記申請
手続の委任を受けたが,登記が為されるまでに売主Aが死亡してしま
いました。この場合,司法書士CはAの代理人として,登記申請をす
ることができるのでしょうか。
☆ 3 この点については,次のようになります。
(1)まず,委任による代理権は,民法第111条1項の規定により,原
則として,本人の死亡により消滅します。
☆ (2)しかし,登記申請の委任の場合は,不動産登記法第17条1号の規
定により,本人(売主A)が死亡しても,代理人(司法書士C)の
代理権は消滅しません。
☆ (3)したがって,司法書士Cは,ABから委任を受けた登記申請をする
ことができます。
(4)もし,この場合に,司法書士CがAから受けた委任による代理権が
消滅するとしたら,甲建物については,AからAの相続人への相続
による所有権移転登記をして,Aの相続人からBへの所有権移転登
記をしなければならないことになります。
(5)それでは,手続がとても煩雑になりますので,登記手続の場合には,
本人が死亡しても,代理権は消滅しないことにしているのです。
…………………………
☆民法第111条1項(代理権の消滅事由)
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
(1)本人の死亡
…………………
☆不動産登記法第17条1号(代理権の不消滅)
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる
事由によっては、消滅しない。
(1)本人の死亡
…………………………
第9 問題と解答
問題1 不動産登記の申請に関し,次の各肢の記述は,正しいか,誤っている
か。
(1)登記の申請を共同してしなければならない共同申請のケースにおいて,
申請人の一方に対し登記手続を命ずる判決があり,その判決が確定した
ときには,他方の申請人は,判決正本と判決確定証明書を提供して,単
独で登記申請することができる,との記述は正しいか,誤っているか。
(1)の解答:正しい。
ア まず,本文「第5共同申請主義(不動産登記法第60条)」の所で勉
強しましたように,権利に関する登記の申請は,原則として,登記権
利者および登記義務者が共同してしなければなりません(共同申請主
義,不登法60条)。
イ しかし,これには,例外があり,本文「第6単独申請ができる場合」
3の(1)で勉強しましたように,登記手続を命じる確定判決による
登記の場合(不登法第63条1項)には,その判決を得た原告は,そ
の判決正本と判決確定証明書を提供して,単独で登記申請ができます。
ウ よって,本股の記述は正しい。
(2)相続又は法人の合併による権利の移転の登記は,登記権利者が単独
で申請することができる,との記述は正しいか,誤っているか。
(2)の解答:正しい。
ア (1)の場合と同様,権利の移転の登記は,登記権利者と登記義務者
で共同申請するのが原則です。
イ しかし,本文「第6単独申請ができる場合,2の(2)相続,合併に
よる登記」の所で勉強しましたように,相続,合併の場合は,登記義
務者に相当する者,会社が死亡し,又は消滅して存在しませんから,
登記権利者が単独で申請することができるのです。
ウ よって,本股の記述は正しい。
(3)登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は
更正の登記は,登記名義人が単独で申請することができる,との記述
は正しいか,誤っているか。
(3)の解答:正しい。
ア 既に勉強しましたように,登記申請は登記権利者と登記義務者で共同
申請するのが原則です。
イ ただし,本文「第6単独申請ができる場合,2の(3)登記名義人の
氏名や住所の変更・更正の登記」の所で勉強しましたように,登記名
義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登
記は,登記名義人が単独で申請することができます。
ウ 登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更は,登記名義人だけの
問題であり,そのことが,他の者の利害に関係することは全くないか
らです。
エ よって,本股の記述は正しい。
(4)所有権の登記の抹消は,所有権の移転の登記の有無にかかわらず,
現在の所有権の登記名義人が単独で申請することができる,との記述
は正しいか,誤っているか。
(4)の解答:誤っている。
ア 本文「第6単独申請ができる場合」の所で勉強したように,単独で登
記申請することができる登記には,所有権の登記の抹消は入っていま
せんので,所有権の登記の抹消登記申請は,原則どおり,登記権利者
と登記義務者の共同申請となります。
イ 例えば,甲建物につき,AからBへと所有権移転登記がなされていて,
その所有権の登記の抹消ということになれば,それにより,登記簿上,
現在の登記名義人Bが不利益を受け,Aが利益を受けることになりま
すから,この所有権の登記の抹消申請は,Aが登記権利者,Bが登記
義務者の共同申請となります。
ウ よって,本股の記述は誤っている。
問題2 不動産登記の申請に関し,次の各肢の記述は,正しいか,誤っている
か。
(1)委任による登記申請の代理権は,本人の死亡によって消滅しない,
との記述は正しいか,誤っているか。
(1)の解答:正しい。
ア 本股については,本文「☆第8代理権の消滅に関する特則,3の(2)」
で勉強しましたように,通常の場合は,本人が死亡すれば,委任によ
る代理人の代理権は消滅するのですが,登記申請の代理権の場合は,
本人の死亡によって消滅しません。
イ よって,本股の記述は正しい。
(2)権利に関する登記の申請は,申請人又はその代理人が登記所に出頭し
てしなければならず,郵送による登記申請をすることはできない,
との記述は正しいか,誤っているか。
(2)の解答:誤っている。
ア 登記申請の方法については,本文「☆第3登記申請の方法」の所で
勉強しましたように,①窓口申請②郵送申請③電子申請(オンライン
申請ともいう)があり,
イ 登記所に出頭してする申請,つまり,窓口申請だけではない。
ウ よって,本股の記述は誤っている。
(3)登記の申請は,登記権利者及び登記義務者が共同してするのが原則
であるが,相続による登記は,登記権利者のみで申請することができ
る,との記述は正しいか,誤っているか。
(3)の解答:正しい。
ア 登記の申請は,本文「☆第5共同申請主義(不動産登記法第60条)」
の所で勉強しましたように,共同申請でするのが原則であるが,
イ 本文「☆第6単独申請ができる場合,2の(2)」で勉強しましたよ
うに,相続による登記は相続人(登記権利者)が単独で申請すること
ができる。登記名義人である被相続人は死亡しているからです。
ウ よって,本股の記述は正しい。
(4)登記権利者及び登記義務者が共同して申請することを要する登記に
ついて,登記義務者が申請に協力しない場合には,登記権利者が登記
義務者に対し登記手続を求める旨の判決を得れば,その登記義務者の
申請は要せず,登記権利者が単独で申請することができる,との記述
は正しいか,誤っているか。
(4)の解答:正しい。
ア 本文「☆第6単独申請ができる場合,2の(1)」で勉強しましたよ
うに,登記手続を命じる確定判決による登記申請の場合(不登法第63
条1項)は,登記権利者が単独で登記申請をすることができる。
イ 登記義務者の登記申請意思は,判決の主文の記述に擬制されている
からである。
ウ よって,本股の記述は正しい。
☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎
★それでは,「宅建試験受験講座」37回
権利関係37:民法12:「不動産登記法4」
「登記手続」
はここまでと致します。
★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
★次回は,権利関係38:民法13:「抵当権」
です。
★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
ということでお願い致します。
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