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宅建試験・司法書士試験勉強会

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「宅建試験受験講座」37回:権利関係37:民法12:「不動産登記法4」:「登記手続」

2015-09-28 20:54:13 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」37回目
 権利関係37 
 民法12:「不動産登記法4」:「登記手続」

…………………………
民法
第10章 不動産登記法
第4項  登記手続
 第1 はじめに
  1 既に勉強しましたように,不動産登記とは土地・建物(不動産)の物
    理的現況と権利関係を法務局(登記所)に存在する登記簿に登記する
    ことです。
  2 そして,法務局は,土地の登記簿と建物の登記簿をそれぞれ別々に置
    いているのですが,不動産の権利者はその登記簿に自分の権利を登記
    することにより,その権利を第三者に対抗することができ,自分の権
    利が保護されることとなります。
  3 したがって,土地や建物の売買等を取り扱う宅地建物取引士は,顧客
    のためにも,不動産登記の手続の仕方を理解しておき,売買等が成立
    した場合には,顧客に対し,登記手続のことも説明する必要がありま
    す。
  4 したがって,宅建試験でも不動産登記の手続の仕方について,出題さ
    れることがあります。
  5 そこで,ここでは,不動産登記の手続について勉強することと致しま
    す。

 第2 申請主義(不動産登記法第16条)
  1 まず,不動産登記簿に登記をするのは,法務局(登記所)の登記官で
    すが,登記官は,原則として,
    ①当事者から登記申請があった場合,又は
    ②法令の規定に基づき,官庁もしくは公署から登記の嘱託があった場
     合,
    でなければ登記簿に登記をすることができません。
        これを登記における「申請主義」といいます。
   …………………………
    ★不動産登記法第16条1項
     (当事者の申請又は嘱託による登記)
     ①登記は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事
      者の申請又は官庁若しくは公署の嘱託がなければ、
      することができない。
      …………………………
  2 当事者からの登記申請によって登記が為される場合
  (1)例えば,Aが自己所有の甲建物をBに売却した場合,甲建物に関し,
    AからBへの所有権移転登記をするには,法務局に対して,BとAの
    共同申請による所有権移転登記申請がなければ,登記官はその登記を
    することができない,ということです。
  (2)仮に,国としては,その事実を知っていたとしても,BとAによる
     所有権移転登記申請がなければ,登記官はその登記をすることがで
     きないのです。
  3 法令に基づく官庁もしくは公署から登記の嘱託があった場合
  (1)例えば,前記の例で,Aが自己所有の甲建物を国に売却した場合,
     甲建物に関し,Aから国への所有権移転登記をすることになります
     が,この場合の登記申請方法は,不動産登記法第116条第1項に
     より,法務局に対して,国とAによる共同申請による所有権移転
     登記申請となるのではなく,国から登記所(法務局)への嘱託登記
     申請という方法によることになります。
  …………………………
   ★不登記法第116条1項(官庁又は公署の嘱託による登記)
    ①国又は地方公共団体が登記権利者となって権利に関す
     る登記をするときは、官庁又は公署は、遅滞なく、登
     記義務者の承諾を得て、当該登記を登記所に嘱託しな
     ければならない。
   …………………………
  (2)これは,私人間の登記申請の場合は,登記申請の真正を担保するた
     めに,前述のように,登記権利者と登記義務者の共同申請という方
     法によらなければならないのですが,登記権利者が国の場合は,国
     は信憑性が高いので,共同申請という方法ではなく,国による嘱託
     申請というより簡易な方法によることができるとしている,という
     ことです。
  (3)なお,ここで,「官庁」とは「国の機関」のことであり,「公署」と
     は「地方公共団体の機関」のことです。
  4 職権で登記が認められる場合(不登法第28条)
  (1)以上のように,登記は,原則として,当事者の申請によるか,
     特別規定がある場合の官庁又は公署の嘱託申請によるかは別とし
     て,申請によらなければならないのですが,例外として,登記官が
     職権で登記をすることができる場合があります。
  (2)例えば,不動産登記法第28条に規定されている「表示に関する登
     記」は,登記官が職権ですることができます。
     …………………………
     ★不動産登記法第28条(職権による表示に関する登記)
        表示に関する登記は、登記官が、職権ですることができる。
     …………………………
   ア 表示に関する登記とは,既に「講座35:不動産登記法:第2項不
     動産登記法各論:第1号表示に関する登記の各論」の所で勉強しま
     したように,土地,建物の物理的現況の登記で,権利に関する登記
     の前提として,最初にしなければならない登記のことであり,不動
     産の最初の権利者からみれば,権利に関する登記をするための準備
     的登記ですが,国家からみれば,今,現在,国内にはどれだけの土
     地,建物が存在するかを把握して,不動産の秩序を維持したり,
          不動産税を課すための重要な資料です。
   イ そこで,当事者には表示に関する登記を申請する義務を課して,そ
     れをおこたった場合には,過料に処せられる旨の規定も置いていま
     すが,それでも,個人が建物を新築したり,権利の対象となる土地
     を最初に取得したりした場合に,その建物,土地について,表示に
     関する登記(表題登記)をしていないということは,あり得ますの
     で,そのような建物や土地を国が発見した場合には,国家が不動産
     の秩序の維持・管理のために,その建物,土地については,表示に
     関する登記を職権ですることができる,としているのです。
  (3)また,権利に関する登記でも,登記官の職権による登記が,不動産
     登記法で認められている場合があります。
   ア 例えば,Aが自己の甲建物をBに売却して,BとAの共同でAから
     Bへの所有権移転登記申請をしたところが,登記官が誤って,  
     AからCへの所有権移転登記をしてしまったとします。
   イ この場合には,登記官は甲建物の所有権者をBに職権で更正しなけ
     ればならないのです(不動産登記法第67条2項)。
   …………………………
    ★不動産登記法第67条2項(登記の更正)
     ①登記官は、権利に関する登記に錯誤又は遺漏があることを発見し
      たときは、遅滞なく、その旨を登記権利者及び登記義務者(登記
      権利者及び登記義務者がない場合にあっては、登記名義人。第三
      項及び第七十一条第一項において同じ。)に通知しなければなら
      ない。ただし、登記権利者、登記義務者又は登記名義人がそれぞ
      れ二人以上あるときは、その一人に対し通知すれば足りる。
     ②登記官は、前項の場合において、登記の錯誤又は遺漏が登記官の
      過誤によるものであるときは、遅滞なく、当該登記官を監督する
      法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなけれ
      ばならない。ただし、登記上の利害関係を有する第三者(当該登
      記の更正につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を
      含む。以下この項において同じ。)がある場合にあっては、当該
      第三者の承諾があるときに限る。
      …………………………
   ウ 登記官は,自分が誤ったのであるから,当事者の手を煩わすことな
     く,自分の職権で更正しなければならないのです。
   エ なお,この場合,登記官は職務行為を誤っているのであり,公的 
     データである記録の更正ですから,監督機関である法務局又は地方
     法務局の長の許可を得て更正しなければなりません。

☆第3 登記申請の方法
  1 それでは,話は変わりまして,当事者が登記申請をする場合に,そ
    の申請方法は,どのようになっているのでしょうか。
  2 まず,不動産登記法は平成16年に全面的に改正されました。
  (1)そして,改正前の旧不動産登記法時代には,登記申請は,原則とし
     て,登記所に出頭して申請しなければならない,とされていました。
  (2)そして,これを当時は「当事者出頭主義」と言っていました。
☆ 3 現行不動産登記法上の登記申請の方法
    これに対して,現在の不動産登記法では,次の3つの方法による登記
    申請が認められています。
☆ (1)窓口申請
      登記申請書を登記所の窓口に提出する方法による申請です。
☆ (2)郵送申請
            登記申請書を郵送することによる登記申請をする方法です。
☆ (3)電子申請(オンライン申請ともいう)
      電子情報処理組織(いわゆる「インターネット」)を使用して登
      記の申請に必要な情報を登記所に送信する方法により,登記申請
      をすること。
  4 このように,現在の不動産登記法では,(1)(2)の書面による登記
    申請以外に,(3)の電子情報処理組織による登記申請も認められて
    います。このように登記申請の方法も,インターネットシステムの発
    展にあわせて,便利になってきているのです。
  5 なお,登記申請の方法は,上記の3つだけですから,申請人が法務局
    (登記所)の窓口に行って,登記申請を口頭で申し立てる「口頭申請」
    は,認められません。

 第4 登記申請の要式主義
  1 次に,申請人は,登記申請をする場合には,一定の情報を法務局(登
    記所)に提供しなければなりません(不動産登記法第18条)。
  2 例えば,所有権移転登記の申請をする場合には,
  (1)登記申請書に,①登記の目的,②原因,③権利者,義務者,④添付
     情報,⑤代理人,⑥申請日,⑦申請法務局,⑧物件の表示,等を記
     載し,
  (2)添付情報欄には,登記識別情報,登記原因証明情報,代理権限証明
     情報,印鑑証明書,住所証明情報等を記載し,そこに記載した情報
     を申請書に添付して提供しなければなりません。これを登記申請の
     要式主義といいます。
  3 これは,申請方法が書面申請であっても,電子申請(オンライン申請)
        であっても同じです。
  4 なぜならば,登記官は,不動産申請があった場合,登記申請書(申請
    情報)に記載されている事項,添付されている書類に基づいて,登記
    できるか否かを審査し,合格すれば,登記簿に記載しますし,不合格
    の場合は,その登記申請を却下しなければなりません。
  5 したがって,登記申請には,申請方法のいかんに関係なく,一定の情
    報の情報の記載が要求されているのです。

☆第5 共同申請主義(不動産登記法第60条)
☆ 1 次に,登記申請は誰がしなければならないかですが,権利に関する
    登記の登記申請は,原則として,登記権利者と登記義務者が共同して
    しなければなりません(不動産登記法第60条)。
    これを「共同申請主義」といいます。
     …………………………
    ★不動産登記法第60条(共同申請)
      権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、
      登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
    …………………………
  2 ここで,登記権利者とは,権利に関する登記をすることにより,登記
    上直接に利益を受ける者のことであり(不登法第2条12号),登記義
    務者とは、権利に関する登記をすることにより,登記上直接に不利益
    を受ける登記名義人のことです(不登法2条13号)。
  3 ですから,不動産の売買の場合の所有権移転登記申請の場合は,買主
    が登記権利者で,売主が登記義務者になり,その所有権移転登記申請
    は,買主と売主が共同してしなければならないのです。
  4 それでは,なぜ買主の単独による所有権移転登記申請は認められず,
    買主と売主の共同申請でしなければならないのかですが,
  (1)登記申請があった場合の登記官の審査は,登記申請書によってのみ
     行う書面審査です。
  (2)したがって,例えば,売主を法務局(登記所)に呼び出して,その
     者から事情を聴くということは行いません。
     故に,登記申請書は,その書面の中で真実性が担保されたものでな
     ければなりません。
  (3)そこで,所有権移転登記申請の場合であれば,登記上直接に不利益
     を受ける登記名義人である売主も登記義務者として,買主(登記権
     利者)と共同して,登記申請人に加わっておれば,登記官は,その
     申請書をみて,「売主は自己に不利益な登記事項を自らが認めて(自
     白)登記申請をしているわけであるから」,この登記申請は真実で
     あると判断できます。
  (4)このような理由から,権利に関する登記の申請は,原則として,
     共同申請になっているのです。

☆第6 単独申請ができる場合
  1 登記申請の共同申請は,以上のような理由によるわけですから,
    登記申請事項に登記により不利益を受ける相手方がおらず,相手方の
    自白を必要としない場合等には,例外的に,単独で申請することがで
    きます。
  2 具体的には,次の場合です。
 ☆(1)登記手続を命じる確定判決による登記の場合(不登法第63条1項)
     ア 「確定判決による登記」とは,例えば,BがAから甲建物を購入
     して,所有権移転登記申請をする場合に,Aがその申請に協力して
     くれない場合は,BはAを被告として裁判所に,所有権移転登記
          手続請求の訴えを提起して,裁判所から「Aは,甲建物につき,B
     に対して所有権移転登記手続をせよ。」との判決を得て,その判決
     が確定した場合には,登記義務者Aが所有権移転登記の登記義務者
     として,登記申請に協力してくれなくても,買主Bはその判決正本
     とその判決の確定証明書を提供(添付)して,単独で所有権移転登
     記申請をすることができる,ということです。
   イ この場合は,登記義務者Aの登記申請意思は,「Aは,甲建物につ
     き,Bに対して所有権移転登記手続をせよ。」という判決主文の中
     に擬制されているので,その判決正本とその判決の確定証明書を
     提供(添付)すれば,買主(登記権利者)Bが単独で登記申請を
     することができる(不登法第63条1項),としているのです。
   ウ なお,ここで注意していただきたいのは,「登記手続を命じる確定
     判決」でなければならないということです。したがって,Bの
     「所有権を確認する確定判決」では,Bは単独で登記申請をするこ
     とはできません。
   エ ところで,裁判所の調停や和解や認諾で被告や相手方が登記手続を
     認めた場合には,調停調書や和解調書や認諾調書は,債務名義とな
     りますから,登記手続を命ずる確定判決と同様に取り扱かわれ,
     それらの手続で債務名義を得た者は,それらの調書正本を提供して,
     単独で登記申請をすることができます。
 ☆(2)相続,合併による登記
 ☆ ア 甲建物の所有者Aが死亡し,Aの相続人がBの場合,Bは甲建物に
     つき,単独で,相続を原因とする所有権移転登記申請をすることと
     なります。
 ☆ イ ところで,この場合,登記義務者となるべき登記名義人のAは死亡
     していませんので,相続人Bは相続を証明する情報を提供(添付)
     して,単独で所有権移転登記申請をすることができるのです。
   ウ なお,この場合に注意して頂きたいのは,Aが死亡して相続人が
     BとCの場合ですが,この場合,BとCが申請人となって,所有権
     移転登記申請をすることはできますが,BかCが一人で申請するこ
     ともできます。
   エ 相続財産につき,相続を原因とする所有権移転登記をすることは,
     共有物の保存行為に当たるからです(民法第252条ただし書)。
     ただし,その場合は,自分の相続分(持分)だけではなく,他の
     相続人の相続分(持分)についても申請しなければなりません。
 ☆ オ 次に,「会社の合併」も合併存続会社が合併消滅会社から承継した
     不動産につき,単独で所有権移転登記申請をすることができます。
   カ 会社合併は,合併存続会社が合併消滅会社の財産を包括承継し,
          合併消滅会社は,消滅してないからです。
 ☆(3)登記名義人の氏名若しくは名称や住所の変更・更正の登記
     (不登法第64条1項)
 ☆ ア 例えば,甲建物の登記名義人(所有権者)大阪花子が,結婚して
          その氏名が東京花子に変わったので,氏名変更登記をする場合です。
 ☆ イ この場合,氏名の変更は,登記名義人だけの問題であり,そのこと
     が,他の者の利害に関係することは全くありませんので,登記名義
     人が単独で申請することができるのです。
 ☆ ウ また,更正の登記とは,登記申請をする時点で,もともと誤ってい
     た氏名や住所を正しい氏名や住所に更正することですが,この場合
     も同様です。
 ☆ エ なお,ここで「氏名」とは,登記名義人が個人の場合のことであり,
     「名称」とは,登記名義人が法人の場合のことです。

 第7 登記申請に必要な情報又は書面
  1 それでは,登記申請には,どのような情報(書面申請の場合は書面)
    を法務局に提供しなければならないのでしょうか。
  2 要約しますと,次の情報を法務局に提供しなければなりません。
    ①登記申請情報(不登法第18条),
    ②登記識別情報(不登法第22条),
        ③登記原因証明情報(不登法第61条)
  3 登記申請情報(不登法第18条)
  (1)登記申請情報とは,電子申請(オンライン申請)の場合の言い方で
     あり,書面申請の場合の「申請書」相当するものです。
  (2)そして,そこには,不動産が識別できようにするために,物件の表
     示が記載されていなければなりませんし,申請人が特定するために,
     登記権利者・登記義務者の氏名や名称が記載されていなければなり
     ませんし,何の登記の申請で登記事項が分かるように,登記の目的
     や登記の原因等が記載されていなければなりません。
  4 登記識別情報(不登法第22条)
  (1)次に,登記申請には,原則として,登記名義人(登記義務者)の登
     記識別情報を提供(添付)しなければなりません。
  (2)登記識別情報とは,権利に関する登記をしたときに,新たに登記名
     義人となる申請人に,登記所から通知される「ローマ字と算用数字
     を組合わせた12桁の情報」です。
  (3)実は,平成16年に不動産登記法が全面的に改正されるまでは,登
     記申請をするときは,登記権利者は申請書副本を提出して,登記官
     は登記が済めば,その副本に「登記済み」の認証をして登記権利者
     (登記名義人)に交付して,次に,登記名義人が登記義務者として
     登記申請をするときには,その登記済証(「権利証」ともいう)を
          提供(添付)して,本人確認をする方法がとられていました。
  (4)しかし,平成16年に不動産登記法が全面的に改正され,電子申請
     (オンライン申請)の方法が採用されましたので,従来の登記済証
     の方法は廃止され,登記官は登記済証の代わりに登記権利者(登記
     名義人)に登記識別情報を通知し,その者が登記義務者として登記
     申請をするときには,本人確認のために,その登記識別情報を登記
     申請のときに提供(添付)しなければならない,ということにした
     のです。
  (5)それでは,権利に関する登記の申請のときには,登記義務者(登記
     名義人)が登記識別情報を添付しなければならない理由は何かです
     が,登記官は登記申請を審査するとき,申請情報と添付情報によっ
     てのみしなければならず,登記義務者を登記所に呼び出して,審尋
     することはできませんので,「登記名義人と登記義務者が一致して
     いることの確認」,つまり,「本人確認」のために,登記義務者(登
     記名義人)は,登記識別情報を提供しなければならないことになっ
     ているのです。
  5 登記原因証明情報(不登法第61条)
  (1)登記原因証明情報とは,登記原因を証明する書面等のことです。
  (2)例えば,売買を原因とする所有権移転登記申請の場合でしたら,
     売買契約書等です。
  (3)これは,登記原因の真実性担保し,虚偽の登記を防止するために,
     登記申請の時には,提供しなければならないのです。
  (4)もし,登記申請書に登記原因は記載するけれども,その原因を立証
     する登記原因証明情報は提供しなくても良いということになれば,
     虚偽の登記が容易になり,登記の信用性がなくなり,不動産取引は
     混乱してしまいますので,権利に関する登記の登記申請人は,原則
     として,登記申請情報とあわせて登記原因証明情報を提供しなけれ
     ばならないのです。

☆第8 代理権の消滅に関する特則
  1 不動産取引においては,売主から買主への所有権移転登記手続は,
    司法書士に委任するので通例です。
  2 ところで,甲建物につき,司法書士Cは売主A,買主Bから登記申請
    手続の委任を受けたが,登記が為されるまでに売主Aが死亡してしま
    いました。この場合,司法書士CはAの代理人として,登記申請をす
    ることができるのでしょうか。
☆ 3 この点については,次のようになります。
  (1)まず,委任による代理権は,民法第111条1項の規定により,原
     則として,本人の死亡により消滅します。
☆ (2)しかし,登記申請の委任の場合は,不動産登記法第17条1号の規
     定により,本人(売主A)が死亡しても,代理人(司法書士C)の
     代理権は消滅しません。
☆ (3)したがって,司法書士Cは,ABから委任を受けた登記申請をする
     ことができます。
  (4)もし,この場合に,司法書士CがAから受けた委任による代理権が
     消滅するとしたら,甲建物については,AからAの相続人への相続
     による所有権移転登記をして,Aの相続人からBへの所有権移転登
     記をしなければならないことになります。
  (5)それでは,手続がとても煩雑になりますので,登記手続の場合には,
     本人が死亡しても,代理権は消滅しないことにしているのです。
   …………………………
     ☆民法第111条1項(代理権の消滅事由)
       代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
        (1)本人の死亡
          …………………
          ☆不動産登記法第17条1号(代理権の不消滅)
       登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる
       事由によっては、消滅しない。
        (1)本人の死亡
   …………………………

 第9 問題と解答
問題1 不動産登記の申請に関し,次の各肢の記述は,正しいか,誤っている
    か。
 (1)登記の申請を共同してしなければならない共同申請のケースにおいて,
   申請人の一方に対し登記手続を命ずる判決があり,その判決が確定した
   ときには,他方の申請人は,判決正本と判決確定証明書を提供して,単
   独で登記申請することができる,との記述は正しいか,誤っているか。
 (1)の解答:正しい。
  ア まず,本文「第5共同申請主義(不動産登記法第60条)」の所で勉
    強しましたように,権利に関する登記の申請は,原則として,登記権
    利者および登記義務者が共同してしなければなりません(共同申請主
    義,不登法60条)。
  イ しかし,これには,例外があり,本文「第6単独申請ができる場合」
    3の(1)で勉強しましたように,登記手続を命じる確定判決による
    登記の場合(不登法第63条1項)には,その判決を得た原告は,そ
    の判決正本と判決確定証明書を提供して,単独で登記申請ができます。
  ウ よって,本股の記述は正しい。

 (2)相続又は法人の合併による権利の移転の登記は,登記権利者が単独
    で申請することができる,との記述は正しいか,誤っているか。
 (2)の解答:正しい。
  ア (1)の場合と同様,権利の移転の登記は,登記権利者と登記義務者
    で共同申請するのが原則です。
  イ しかし,本文「第6単独申請ができる場合,2の(2)相続,合併に
    よる登記」の所で勉強しましたように,相続,合併の場合は,登記義
    務者に相当する者,会社が死亡し,又は消滅して存在しませんから,
    登記権利者が単独で申請することができるのです。
  ウ よって,本股の記述は正しい。

 (3)登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は
    更正の登記は,登記名義人が単独で申請することができる,との記述
    は正しいか,誤っているか。
 (3)の解答:正しい。
    ア 既に勉強しましたように,登記申請は登記権利者と登記義務者で共同
    申請するのが原則です。
  イ ただし,本文「第6単独申請ができる場合,2の(3)登記名義人の
    氏名や住所の変更・更正の登記」の所で勉強しましたように,登記名
    義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登
    記は,登記名義人が単独で申請することができます。
  ウ 登記名義人の氏名若しくは名称又は住所の変更は,登記名義人だけの
    問題であり,そのことが,他の者の利害に関係することは全くないか
    らです。
  エ よって,本股の記述は正しい。

 (4)所有権の登記の抹消は,所有権の移転の登記の有無にかかわらず,
    現在の所有権の登記名義人が単独で申請することができる,との記述
    は正しいか,誤っているか。
 (4)の解答:誤っている。
  ア 本文「第6単独申請ができる場合」の所で勉強したように,単独で登
    記申請することができる登記には,所有権の登記の抹消は入っていま
    せんので,所有権の登記の抹消登記申請は,原則どおり,登記権利者
    と登記義務者の共同申請となります。
  イ 例えば,甲建物につき,AからBへと所有権移転登記がなされていて,
        その所有権の登記の抹消ということになれば,それにより,登記簿上,
    現在の登記名義人Bが不利益を受け,Aが利益を受けることになりま
    すから,この所有権の登記の抹消申請は,Aが登記権利者,Bが登記
    義務者の共同申請となります。
  ウ よって,本股の記述は誤っている。
    

問題2 不動産登記の申請に関し,次の各肢の記述は,正しいか,誤っている
    か。
 (1)委任による登記申請の代理権は,本人の死亡によって消滅しない,
    との記述は正しいか,誤っているか。
 (1)の解答:正しい。
  ア  本股については,本文「☆第8代理権の消滅に関する特則,3の(2)」
    で勉強しましたように,通常の場合は,本人が死亡すれば,委任によ
    る代理人の代理権は消滅するのですが,登記申請の代理権の場合は,
    本人の死亡によって消滅しません。
  イ よって,本股の記述は正しい。

 (2)権利に関する登記の申請は,申請人又はその代理人が登記所に出頭し
    てしなければならず,郵送による登記申請をすることはできない,
    との記述は正しいか,誤っているか。
 (2)の解答:誤っている。
   ア 登記申請の方法については,本文「☆第3登記申請の方法」の所で
    勉強しましたように,①窓口申請②郵送申請③電子申請(オンライン
    申請ともいう)があり,
  イ 登記所に出頭してする申請,つまり,窓口申請だけではない。
  ウ よって,本股の記述は誤っている。

 (3)登記の申請は,登記権利者及び登記義務者が共同してするのが原則
    であるが,相続による登記は,登記権利者のみで申請することができ
    る,との記述は正しいか,誤っているか。
 (3)の解答:正しい。
    ア 登記の申請は,本文「☆第5共同申請主義(不動産登記法第60条)」
        の所で勉強しましたように,共同申請でするのが原則であるが,
  イ 本文「☆第6単独申請ができる場合,2の(2)」で勉強しましたよ
    うに,相続による登記は相続人(登記権利者)が単独で申請すること
    ができる。登記名義人である被相続人は死亡しているからです。
  ウ よって,本股の記述は正しい。

 (4)登記権利者及び登記義務者が共同して申請することを要する登記に
    ついて,登記義務者が申請に協力しない場合には,登記権利者が登記
    義務者に対し登記手続を求める旨の判決を得れば,その登記義務者の
    申請は要せず,登記権利者が単独で申請することができる,との記述
    は正しいか,誤っているか。
 (4)の解答:正しい。
  ア 本文「☆第6単独申請ができる場合,2の(1)」で勉強しましたよ
    うに,登記手続を命じる確定判決による登記申請の場合(不登法第63
    条1項)は,登記権利者が単独で登記申請をすることができる。
  イ 登記義務者の登記申請意思は,判決の主文の記述に擬制されている
        からである。
  ウ よって,本股の記述は正しい。
☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎
    ★それでは,「宅建試験受験講座」37回
     権利関係37:民法12:「不動産登記法4」
     「登記手続」
          はここまでと致します。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,権利関係38:民法13:「抵当権」
     です。
    ★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
     ということでお願い致します。   
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「宅建試験受験講座」36回:権利関係36:民法11:「不動産登記法3」:仮登記

2015-09-06 16:42:34 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」36回目
 権利関係36 
 民法11:「不動産登記法3」仮登記
…………………………
民法
第10章 不動産登記法3
第3項  仮登記
 第1 仮登記とは
  1 不動産の本登記をするのに必要な要件が備わらない場合に,将来の本
   登記の順位を保全するために,あらかじめする登記を仮登記といいます。
  2 本登記と仮登記
  (1)まず,不動産登記法は,権利に関する登記には,本登記だけではな
     く,仮登記の制度も設けています。
  (2)本登記とは
   ア 本登記とは,実体法上,不動産に関する物権の変動が確定的に生
     じ,かつその物権変動を登記するのに必要な不動産登記手続法上
     の要件も備わっていて,その物権変動の登記として,本格的,終
     局的になされる登記のことです。
   イ たとえば,Aが甲建物をBに3000万円で売却して,登記原因
     証明情報としての売買契約書等を添付して,所有権移転登記をし
     たとします。
   ウ この場合,AからBへの所有権移転の効果は,売買契約のときに
     確定的に生じていますし(民法第176条),登記申請手続は登
     記原因である売買契約書等の情報を添付してなされていますの 
     で,本登記です。
   エ なお,本登記のことを終局登記とも言います。最終的な登記とい
     う意味です。
☆ (3)仮登記ができる場合
   ア これに対して,仮登記は,以下の3つの場合にすることができる。
     ①不動産に関する物権の変動は確定的に生じているが,本登記をす
      るための登記識別情報又は第三者の許可、同意若しくは承諾を証
      する情報を提供することができないので,本登記(終局登記)を
      することができない場合(不動産登記法第105条1号,不動産登
       記規則第175条),
     ②確定的権利変動はまだ生じていないが、将来権利変動を生じさせ
      る請求権はすでに存在しており,それを保全しようとする場合(不
      動産登記法第105条2号)
          ③権利変動が始期付き又は停止条件付その他将来確定すべきもので
      ある場合(不動産登記法第105条2号の類推適用)
   イ これらの場合には,権利は確定的には生じていないので,本登記は
     できないが,将来確定的権利になるであろうという具体的期待権は
     存在しているので,その期待権を法によって保護するために,仮登
     記が認められているのです。
   ウ そして,将来,その仮登記により本登記をした場合には,仮登記の
     順位が本登記の順位となり,その権利は保護されるのです。
     これが,今から勉強する「仮登記の順位保全の効力」ということで
     す。
   オ つまり,仮登記は,将来なされる本登記の順位を保全するために,
     予備的になされる登記,仮になされる登記ですから「仮登記」と
     呼ばれているのです。
  3 仮登記の順位保全の効力    
  (1)それでは,仮登記をすれば,どのような効力があるのでしょうか。
  (2)まず,仮登記には本登記と違い,権利の対抗力はありません。
  (3)仮の予備的な登記だからです。
  (4)しかし,将来,本登記の要件が備わったときには,その仮登記に 
     基づいて本登記ができますし,本登記をした場合には,既に為さ 
     れている仮登記の順位が,本登記の順位となります(不動産登記 
     法第106条)。これを,仮登記の順位保全の効力といいます。
  (5)したがって,仮に,A仮登記後に,別のB本登記がなされ,その 
     後でA仮登記に基づきC本登記がなされた場合には,C本登記が 
     B本登記に優先します(不動産登記法第106条)。
  (6)つまり,仮登記に基づき本登記をした権利者は,その仮登記後に 
     登記をした第三者の権利が,自分の権利と抵触している場合には,
     その権利を否定することができるのです。
  (7)このように,ある権利につき直ちに本登記はできないが,仮登記は
     できる場合には,仮登記をしておけば,順位保全効力により,権利
     が保護されますから,不動産取引の現場で,このような場面に直面
     した場合は,顧客のために,仮登記を速やかに済ませておくことが
     大切なのです。
  (8)そういう実務上の必要性もあって,宅建試験でも仮登記から問題が
     出題される場合があります。
☆ 4 仮登記の申請手続
  (1)仮登記の申請は,本登記申請と同様,原則とし,登記権利者と登 
     記義務者の共同申請によります。
  (2)なお,この場合でも,本登記申請とは異なり,登記義務者の登記識
     別情報を提供する必要はありません(不動産登記法107条2項)。
  (3)登記義務者の登記識別情報は,本登記の時に提供すれば良い,とい
     うことにしているのです。
☆ (4)また,仮登記の登記義務者の承諾があるときは,その承諾証明情 
     報を提供して(添付して),仮登記権利者が単独で仮登記の申請を
     することができます(不動産登記法107条1項)。
  (5)仮登記は,対抗力を有さず,予備的・一時的な登記であり,後に 
     本登記がなされるわけですから,その申請手続を簡易化している 
     のです。
☆ (6)なお,仮登記申請の要件は備えているが,仮登記の登記義務者が 
     共同申請も拒否し,承諾もしない場合には,仮登記の登記権利者 
     は,裁判所に仮登記仮処分申請をして,裁判所の仮登記仮処分命令
     を得て,その決定書の正本を提供して(添付して),単独で仮登記
     申請をすることができます(不動産登記法107条1項,同108条)。
☆ 5 仮登記に基づく本登記手続(不動産登記法第109条)
  (1)仮登記は,本登記をする要件が揃えば,その仮登記に基づいて本登
     記をすることができます。仮登記は本登記のための予備的・一時的
     登記であり,本登記が対抗要件を備えた終局的登記だからです。
  (2)ところで,仮登記に基づく本登記の手続は,仮登記された権利が 
     所有権である場合と所有権以外の権利である場合とで異なりま  
     す。
  (3)所有権の仮登記に基づく本登記手続の場合(不登法第109条1項)
   ア この場合は,登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要な 
     場合は,その第三者の承諾がなければ,本登記申請をすることは
     できません。
   イ 所有権の仮登記に基づいて本登記が実行されると,利害関係人 
     の権利に関する登記は,登記官によって職権で抹消されるから 
     です。
   ウ そして,登記官は,利害関係人本人の承諾がないのに,その利害
     関係人の登記を職権で抹消することはできないからです。
   エ したがって,利害関係人の承諾が貰えないときは,裁判所に利 
     害関係人を被告として,本登記手続としての所有権移転登記手 
     続をすることについての利害関係人の承諾を求める訴訟を提起 
     して,裁判で承諾に換わる判決をもらって,それを利害関係人
     の承諾に代わる情報として提供する方法があります。
☆ (4)所有権以外の権利の仮登記に基づく本登記手続の場合
   ア この場合には,不動産登記法第109条1項の登記上の利害関係を
     有する第三者の承諾は不要です。
   イ 所有権以外の権利は,同一不動産上に2個以上が併存することは
     可能ですから,その仮登記に基づいて本登記が為されても,それ
     により第三者の登記が登記官によって職権で抹消されることはない
     からです。
☆ 6 仮登記の抹消手続(不動産登記法第110条)
  (1)仮登記がなされた後で,仮登記原因の不存在が判明したり,仮登記
     原因が無効になったり,取り消れた等の場合には,仮登記は抹消さ
     れなければなりません。
  (2)それでは,その抹消手続は,どのようにしなければならないのでし
     ょうか。
  (3)原則
   ア まず,仮登記の抹消手続では,抹消登記権利者は仮登記義務者であ
     り,抹消登記義務者は仮登記権利者です。
   イ そして,原則として,両者が共同して仮登記の抹消登記申請をし
     なければなりません(不動産登記法第60条)。
  (4)例外
     ただし,次の場合には,単独で申請することができます(不動産登
     記法第110条)。
   ア まず,仮登記名義人は,登記識別情報(従来の「登記済証」「権
     利証」)を添付すれば,単独で,仮登記の抹消登記申請をするこ
     とができます。自らが為した自らの仮登記だからです。
   イ ただし,この場合でも,仮登記の抹消について,登記上の利害関係
     人がいるときは,登記上の利害関係人の承諾またはそれに対抗する
     ことができる裁判があったことを証する情報の提供が必要です。
     (不動産登記法第68条)
☆  ウ 次に,仮登記の登記上の利害関係人は,仮登記名義人の承諾がある
     とき,または仮登記名義人の承諾に代わる裁判の決定書の正本を
     提供したときには,単独で仮登記の抹消を申請することができます。
   エ 仮登記名義人の承諾は,共同申請に準ずることができるからです。
☆  オ なお,ここでの「登記上の利害関係人」とは,仮登記が本登記とな
     ると自己の権利が否定されたり不利益を受けたりする者のことであ
     り,仮登記義務者もこの「登記上の利害関係人」に含まれています。
☆  カ したがって,仮登記においては,仮登記義務者も「仮登記名義人の
     承諾を証する情報または登記名義人に対抗できる裁判の決定書の正
     本」を添付すれば,仮登記抹消の登記申請を単独で申請することが
     できるのです。

 第2 問題と解答

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    ★それでは,「宅建試験受験講座」35回
     権利関係35:民法10-3:「不動産登記法3」
     「仮登記」
          はここまでと致します。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,権利関係35:民法10-4:「不動産登記法4」
     「登記手続」です。
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「宅建試験受験講座」35回:権利関係35:民法10:「不動産登記法」2

2015-08-31 19:57:13 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」35回目
 権利関係35 
 民法10:「不動産登記法」2
…………………………
民法
第10章 不動産登記法(重要)
第2項 不動産登記法各論 
第2号 権利に関する登記の各論
 第1 権利に関する登記
 1 権利に関する登記の意義
 (1)権利に関する登記とは,不動産に関する物権の取得・喪失,変更に
    関する登記をすることであり,具体的には,権利の客体である不動
    産についての権利の保存,設定,移転,変更,処分の制限又は消滅
    を登記することです(不動産登記法第2条4号,第3条)。
 2 権利に関する登記の趣旨
 (1)既に勉強しましたように,民法は不動産に関する物権の取得・喪失,
    変更は,登記をしなければ,それを第三者に対抗(主張)することが
    できない,と定めています(民法第177条)。
 (2)ということは,世の中で,不動産の権利(所有権等)について,ど
    ちらの権利が優先するかが問題となった場合には,登記の有無,登
    記の先後によって判断するということです。
 (3)したがって,国は登記制度を設けて,誰でも,不動産に関する権利を
    登記することができるようにしているのです。
 (4)そして,不動産の権利者は,その権利を登記して,世の中に公示する
    ことにより,自分の権利を保全することができるようにしているので

    す。
 3 権利に関する登記の種類
 (1)権利に関する登記の種類は,所有権保存登記,所有権移転登記,抵
    当権設定登記,抵当権抹消登記など,登記を対抗要件とする不動産
    に関する権利の取得,喪失,変更の登記に及びますから,沢山あり
    ます。
 (2)しかし,宅建試験では,司法書士試験とは異なり,その全てから出
    題されているわけではありませんから,時間の関係で,勉強対象を
    絞ることも大切です。
 4 所有権保存登記
 (1)不動産の権利に関する登記の基本は,所有権の登記です。
 (2)そして,ある不動産について初めて行う権利の登記が,所有権保存
    登記です。
 (3)たとえば,建物を新築した場合,
    ①まず,権利の客体となる建物の存在を公示するために,表示に関
     する登記である「建物表示登記」が行われ,
    ②次に,その建物の所有権者は誰かを公示するために,権利に関す
     る登記である「所有権保存登記」が行われます。
 (4)所有権保存登記の手続(不動産登記法第74条)
  ☆ ア 所有権の保存登記は,所有者等が単独で申請することができます。
☆ イ そして,所有権保存登記のできる申請権者は,その不動産の
    ①表題部所有者,
☆   ②表題部所有者の相続人その他の一般承継人,
    ③所有権を有することが確定判決で確定した者,
    ④収用により所有権を取得した者,
    です。
 (5)所有権保存登記の登記義務
  ア なお,所有権保存登記の場合は,登記申請人に登記義務はありませ
    ん。
  イ 前回勉強しましたように,表示に関する登記の場合は,登記申請人
    に申請義務がありますが,権利に関する登記の場合は,登記申請人
    に申請義務はありません。
  ウ ただし,登記をしなければ,その権利は対抗要件を具備することが
    できず,その結果,権利者が損失を被るときがあります。
  エ したがって,権利者は権利に関する登記を速やかにする方が得策で
    す。
  オ つまり,民法は,権利に関する登記については,権利者に登記義務を
    与えるのではなく,権利者が登記をすることにより自らの権利が保護
    されるというようにすることにより,権利者が自発的に登記申請をす
    ることを促しているのです。
☆5 権利に関する登記手続
☆(1)権利に関する登記申請手続は,法令に別段の定めがある場合を除き,
    登記権利者と登記義務者の共同申請でしなければなりません(不動
    産登記法第60条)。
 (2)たとえば,AがBに甲建物を売却して,AからBに所有権移転登記申
    請手続をする場合には,AとBの共同申請でしなければならないので
    す。
 (3)共同申請とすることにより,登記により不利益をうけるAの自白が
    認定でき,所有権移転原因である売買の真実性が担保されるからで
    す。
 (4)そして,登記手続では,登記をすることにより登記簿上,不利益を
    受ける者のことを登記義務者といい,利益を受ける者のことを登記
    権利者といいます。
 (5)なお,権利に関する最初の登記である所有権保存登記は,表題部所
    有者等が単独ですることができるのですが,これはその人が権利に
    関する登記の最初の人ですから,登記簿上,登記義務者が存在しな
    いからなのです。
 6 登記申請情報の作成及び提供
☆(1)不動産登記をする場合の登記申請情報は,原則として,登記の目的及
    び登記原因に応じて,1つの不動産ごとに作成して提供しなければな
    りません。
☆(2)ただし,同一の登記所の管轄区域内にある2つ以上の不動産につい
    て申請する場合に,①登記の目的並びに②登記原因及びその日付が
    同一であるときなどの場合は,例外として,1つの申請情報で申請
    することができます(不動産登記令第4条)。
 (3)申請当事者の利便のためです。
 (4)なお,登記申請情報とは,オンラインによる登記の申請情報のことで
    あり,従前の書面申請の時代の「登記申請書」に相当するものです。
  7 登記された権利の優先力
 (1)まず,登記された権利と登記されていない権利が存在する場合は,
    登記された権利が優先(勝つ)します(民法第177条)。
 (2)たとえば,Aが甲建物をまずBに売り,次にCに売って,Cが登記
    を備えたとします。
 (3)この場合,1つの甲建物の上に2つの所有権が,共存することはで
    きませんから,Bの所有権が勝つのか,Cの所有権が勝つのかが問
    題となります。
 (4)そして,Bの所有権は登記されていなくて,Cの所有権は登記され
    ていますから,Cの所有権が優先(勝つ)します。
 (5)したがって,Cが甲建物の所有者となるということです。
 (6)Bが自分が先に買ったのだから,自分が優先する,と言ってもそれ
    は認められない,ということです。
 8 登記された権利相互間の優先順位
 (1)次に,物権によっては,1つの不動産に2つ以上の物権をつけるこ
    とができる場合があります。
 (2)たとえば,まず,AがBよりお金を借りて自分の甲建物に抵当権設
    定契約をして,次にAがCよりお金を借りて甲建物に抵当権設定契約
    をしたとします。この場合には,抵当権は排他的権利ではありません
    から,同一の不動産の上に2つでも3つでも共存できます。
 (3)それでは,この場合に,Bの抵当権が優先するのか,Cの抵当権が
    優先するのかが問題となります。
 (4)そして,不動産登記法は,登記した権利相互間の優先順位は,登記
    の前後による,と規定しています(不動産登記法第4条1項)。
 (5)故に,この場合に,Cの方が先に抵当権設定登記をしていて,Bの
    抵当権設定登記が後であった場合には,Cの抵当権の方がBの抵当
    権に優先します。
 (6)Bが契約をしたのは,自分の方が先であると主張してもそれは認め
    られません。
 (7)したがって,実務で,抵当権設定契約をしたときには,速やかに登記
    手続も済ませておくことが大切です。
 9 主登記と付記登記
 (1)権利に関する登記には,順位番号があります。
 (2)そして,独立の順位番号をもってされる登記のことを「主登記」とい
    い,不動産登記は,主登記でされるのが原則です。
 (3)例えば,甲土地の甲区1番の所有権者AからBが甲土地を買い受けた
    場合のAからBへの所有権移転登記は,甲区1番にではなく,次の甲
    区2番に独立して「所有権移転」としてされます。
 (4)これに対して,甲区2番の所有権者Bの住所が変更された場合の住所
    変更登記は甲区3番にされるのではなく,同じ甲区2番に「付記1号」
    「2番登記名義人住所変更」としてされます。
    そして,この登記のことを付記登記といいます。
 (5)このように「付記登記」というのは,既になされている権利に関する

    主登記の変更などする場合の登記であり,主登記の枠内で,付記番号
    をつけて為される登記のことです。
 (6)そして,上記の場合には,権利の主体者はBであることに変わりがあ
    りませんし,そのBの住所が変更されただけのことですから,Bの主
    登記の所に付記登記として,住所変更登記をするのです。
 (7)そうすることにより,主登記との同一性や関連性をわかりやすく公示
    できます。
 (8)そして,その付記登記も主登記の順位を確保することができるのです。

 第2 問題と解答
問題1 不動産登記の申請に関する次の記述は,正しいか誤っているか。
 (1)権利に関する登記申請手続は,法令に別段の定めがある場合を除き,
    登記権利者と登記義務者が共同して申請しなければならない,との
    記述は正しいか誤っているか。
 (1)の解答:正しい。
  ア 本文「5権利に関する登記手続」の(1)で勉強したように,権利に
    関する登記は,原則として,登記権利者と登記義務者が共同して申請
    しなければならない(不動産登記法第60条)。
  イ 登記原因の真実担保のためである。
  ウ よって,本肢は正しい。

 (2)表題部に所有者として記録されている者の相続人は,所有権保存登
    記の申請をすることができる,との記述は正しいか誤っているか。

 (2)の解答:正しい。
  ア 本文「(4)所有権保存登記の手続(不動産登記法第74条)イ②
    で勉強したように,表題部に所有者として記録されている者の相続人,
    その他の一般承継人は,所有権保存登記の申請権者である。
  イ よって,本肢は正しい。

 (3)不動産登記の登記申請情報は,同一の登記所の管轄区域内にある2
    つ以上の不動産について申請する場合は,登記原因及びその日付が
    同一であるときには,登記の目的が異なっていても,1つの申請情
    報で申請することができる,との記述は正しいか誤っているか。  
 (3)の解答:誤っている。
  ア 本文「登記申請情報の作成及び提供」(2)で勉強したように,
    同一の登記所の管轄区域内にある2つ以上の不動産について,1つの
    申請情報で申請することができるのは,①登記の目的並びに②登記原
    因及びその日付が同一であるときである。
  イ 本肢の場合は,登記の目的が異なっているので,1つの申請情報では
    申請することはできない。
  ウ よって,本肢は誤っている。

 (4)表題部所有者Aが甲土地をBに売却した場合,所有権の保存の登記の
    申請は,BではなくAが単独でする,との記述は正しいか,誤ってい
    るか。
 (4)の解答:正しい。
  ア 本文「(4)所有権保存登記の手続(不動産登記法第74条)」アイ
    ①で勉強したように,所有権の保存登記は,表題部所有者が単独でする。
  イ よって,本股の記述は正しい。
  ウ なお,Bへの登記は,Aの所有権保存登記が終了してから,AとBが
    共同して,AからBへの所有権移転登記をすることとなる。

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    ★以上,「宅建試験受験講座」35回
     権利関係35:民法10:「不動産登記法」2
     「権利に関する登記の各論」でした。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,「不動産登記法」3「仮登記」です。
    ★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
     ということでお願い致します。   
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「宅建試験受験講座」35回:権利関係35:民法10:不動産登記法

2015-07-23 22:25:11 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」35回目
 権利関係35 
 民法10:「不動産登記法」(重要)

…………………………
民法
第10章 不動産登記法
第1項 不動産登記法総論
第1 はじめに
 1 前回までに,不動産の物権変動,たとえば土地や建物の所有権移転な
   どを第三者に対抗するためには,登記が必要であることを勉強しまし
   た。
 2 実は,国民に全面的に所有権等の権利を認め,不動産の物権変動を第三
   者に対抗するためには登記が必要である,とする民法が制定されたのは
   明治29年であり,それを受けて,国民各人の不動産を国家が公示する
   ための不動産登記法が初めて制定されたのは,それより3年後の明治3
   2年です。
 3 その結果,不動産は,独立して誕生したときには,登記をしなければな
   らず,その不動産の所有権等を取得したときにも登記をすることとなり,
   不動産取引においては,登記は最も日常的な業務であり,宅地建物取引
   士にとっては,不動産登記に関する知識は最も重要な知識です。
 4 そこで,宅建試験においても,不動産登記に関する問題は良く出題され
   ますし,重要な単元です。
 5 ところで,不動産登記法は民法の特別法ですが,民法第177条を根拠
   とした特別法ですから,本講座の分類としては「民法編」に入れて,勉
   強することと致します。
 6 それでは,不動産登記法の勉強を始めます。

第2 不動産登記とは
 1 まず,不動産とは土地と建物のことです。
 2 そして,不動産登記とは,世の中の土地と建物(以下「物件」という場
   合もある)につき,所有権者等が法務局(登記所)に対し,登記申請を
   して,法務局(登記所)が,各不動産毎に登記記録(登記簿)を作成す
   ることです。

第3 不動産登記の目的
 1 それでは,この不動産登記をすることの目的ですが,それは,世の中に
   多数存在する土地と建物の存在とその土地と建物の権利関係を登記し
   て,広く国民に公示することにより,
 (1)個人の権利の面から見れば,権利が第三者に対する対抗要件を備え,
    権利を保全するためであり,
 (2)取引の面から見れば,取引の安全と円滑に資するためです(不登法第
    1条)。
 (3)したがって,不動産の登記簿は誰でも自由に見る(閲覧)ことができ
    ますし,誰でも自由に不動産の登記簿謄本の請求をすることができま
    す。この点は,個人の戸籍謄本や住民票とは異なります。

第4 不動産登記の仕組み
 1 それでは,不動産登記は,どのような仕組みになっているのでしょ 
   うか。
 2 まず,不動産とは土地と建物であり,土地と建物は別々の不動産ですか
   ら,法務局(登記所)の不動産登記簿には,土地登記簿と建物登記簿
   の2種類があります。
 3 そして,我が国は,国家の制度として,不動産については,登記制度を
   とっていますので,社会に権利の客体となる一筆の土地や一棟の建物が
   誕生した時には,所有権者は,まずその土地や建物を特定するための「表
   示に関する登記申請」をしなければなりません。
 (1)例えば,建物を新築したときは,建物の表示に関する登記である「建
    物表題登記」の申請を1ヶ月以内にしなければなりません。
 (2)また,例えば,未登記の道路につき,払下げをうけて,自分のもの
    になったときは,1ヶ月以内に土地の表示に関する登記である「土地
    表題登記」の申請をしなければなりません。
 4 これらの表示に関する登記の申請を怠ると,過料の制裁があります。
 5 つまり,土地,建物については,一筆の土地や一棟の建物が権利の客体
   として誕生した時に,その所有者からその物件の物理的現況をまず登記
   申請してもらい,法務局(登記所)が,一筆の土地,一棟の建物毎に登
   記記録を作成し,その登記記録の表題部にそれを記録して,登記簿を作
   成して(一不動産一登記記録主義),爾後,その土地や建物の権利変動
   はそれぞれの登記簿に記録してゆき,その登記記録を見れば,その土地
   の所在や面積や権利変動の経過や現在の所有者等が分かる仕組みになっ
   ているのです。

第5 登記記録の作成方法
 1 まず,現代は,コンピーター時代と言われますように,世の中の各
   種事務は,コンピューターで行われる時代となっています。
 2 そして,登記事務においても,平成17年3月7日施行の新しい不動
   産登記法では,コンピューターで行うことが規定されています。
 3 それにより,従来は,登記用紙に登記事項を手で記載して作成されてい
   た登記記録が,コンピューターの磁気ディスクをもって整理されるよう
   になりました。
 4 登記記録の作成方法についても,時代と共にそのように変化してきてい
   ます。
 5 そして,今日では,登記記録を記録した磁気ディスクを登記簿と呼ぶこ
   とになっています(不登法第2条9号)。
 6 それでは,登記記録の勉強に入ります。

第6 登記記録の仕組み
 1 まず,不動産には土地と建物があります。
 2  それに対応して,法務局(登記所)には,不動産登記につき,土地登記
   簿と建物登記簿があります。
 3 そして,土地の登記記録は土地登記簿で,建物の登記記録は建物登記簿
   で作成されます。
 4 それを前提として,登記記録は,1筆(1区画)の土地又は1個の建物
   ごとに作成されます。(一不動産一登記記録主義)
 5 そして,各登記記録は,表題部と権利部に区分して作成されます。
 (1)ここで,表題部とは,それぞれの不動産の表示に関する登記,つま
    り,物理的現況が記録される部分のことであり,
 (2)権利部とは,それぞれの不動産の権利に関する登記が記載される部
    分のことです。
 6 表題部の記録事項は,土地と建物で次のようになります。
 (1)土地登記記録の表題部の記録事項は,
    土地の所在,地番,地目,地積(土地の面積),登記原因及びその日
    付,登記の日付,所有者です。
 (2)建物登記記録の表題部の記録事項は,
    建物の所在,家屋番号,種類,構造,床面積,登記原因及びその
    日付,登記の日付,所有者です。
 7 権利部の記録事項
 (1)権利部の登記記録は,更に,甲区と乙区に分けられ,
   ①甲区には,所有権に関する登記事項が
   ②乙区には,所有権以外の権利に関する登記事項が
    記録されることになっています。
 (2) 権利部の甲区の記録事項
   ア ここには,所有権に関する登記事項が記録されます。
   イ その不動産につき,所有者は誰で,いつ,どんな原因(売買,相続
     など)で,その所有権を取得したのかとか,所有権に関する登記の
     種類などが甲区に記録されます(所有権保存,所有権移転,所有権
     に関する仮登記,所有権に関する差押え,所有権に関する仮処分な
     ど)。
 (3)権利部の乙区の記録事項
   ア ここには,所有権以外の権利に関する登記事項が記録されます。
   イ 抵当権や地上権や地役権などに関する登記事項がここに記録されま
     す。
   ウ たとえば,抵当権であれば,抵当権の設定原因及びその日付,抵
     当権の被担保債権額,利息,債務者,抵当権者等は乙区に記録され
     ます。
 (4)このように,登記記録を甲区と乙区に分けて,まず,甲区に所有権
    に関する登記事項を記録し,乙区には所有権以外の権利に関する登記
    事項が記録するというようにしているのは,不動産上の権利では,「所
    有権」が中心的権利であり,それ以外の権利は所有権を前提とした権
    利ですから,登記記録を見やすくするために,まず,甲区に所有権に
    関する登記事項を記録し,次に,乙区に所有権以外の権利に関する登
    記事項を記録するようにしているのです。
 8 表題登記と権利部の登記との関係
 (1)土地や建物が,権利の客体として新しく誕生したときには,法務局(登
    記所)には,その物件の登記記録は,未だ存在しておらず,その物件
    は未登記物件の状態です。
 (2)ところが,我が国は,土地,建物については登記制度を採用していま
    すので,未登記物件のまま放置しておくことは許されません。
 (3)そこで,新しく誕生した土地や建物の所有者は1か月以内に,当該物
    件の表示に関する登記,つまり,登記簿の最初の1ページ目の表題部
    に最初に記録される表題登記の申請をしなければなりません。
 (4)そして,法務局(登記所)は,その申請に基づき,まず,新しい登記
    記録の表題部を記録し,その物件の登記簿を作成します。そして,そ
    の後に,当該不動産につき,所有権移転等の権利に関する登記申請が
    あった場合には,当該登記記録の権利部に記録することになります。
 (5)したがって,表題登記は不動産につき,最初にしなければならない登
    記であり,かつ,権利部の登記をする前にはしておかなければならな
    い登記です。つまり,表題登記は権利の登記の前提となる登記です。
 (6)そして,権利に関する登記は,権利者が対抗要件を取得するための登
    記ですから,義務的登記ではありませんが,表題登記は不動産物件の
    存在を社会に公示するための登記であり,国家はその登記により新し
    い不動産の誕生を知り,不動産税を課すことになりますから,表題登
    記は,公益的観点から物件の所有者に登記申請義務が課せられている
    登記です。
 (7)なお,余談になりますが,権利に関する登記を取り扱う職業者は,司
    法書士ですが,表示に関する登記を取り扱う職業者は,土地家屋調査
    士です。
 (8)しかし,宅地建物取引業においても,取り扱う対象が不動産登記です
    から,不動産登記法は重要なのです。 

第2項 不動産登記法各論
第1号 表示に関する登記の各論
    それでは,ここから,不動産登記法の各論に入ります。
    まず,初めに「表示に関する登記」の各論から勉強します。
 第1 表示に関する登記
   1 表示に関する登記の意義
 (1)表示に関する登記とは,不動産の物理的現況に関する登記であり,
    登記記録の最初の1ページ目の「表題部」に記録される登記のことで
    す。
 (2)それでは,「表示に関する登記」は,なぜ,登記記録の最初の「表題
    部」に記録されるのかといいますと,
  ア われわれは,不動産は,登記をしなければならないことを勉強しまし
    た。それは,換言すれば,土地,建物については,一筆一筆の土地,
    一棟一棟の建物が登記簿を持っていなければならないという事です。
  イ そして,その登記簿を見れば,その所有者が誰かということはもちろ
    んですが,その前に,土地であれば,どこに所在する何㎡の土地かと
    か,建物であれば,どこに所在するどのような建物かということが特
    定されていて,他の土地や建物と区別ができて,混乱しないようにし
    ておかなければなりません。この特定ができていないと,世の中には,
    無数の土地や建物があるわけですから,土地や建物をめぐる社会秩序
    が混乱してしまいます。
  ウ そこで,登記記録の一番最初に,「表題部」という欄を設けて,そこ
    には,各不動産の物理的現況を記載して,他の不動産と区別できるよ
    うにしているのです。
  エ つまり,登記記録の最初の「表題部」に各不動産の「物理的現況」を
    記載するということは,その事によりその不動産を特定し,他の不動
    産と区別できるようにして,不動産をめぐる社会秩序の混乱を防止し,
    社会秩序を維持しているということです。
☆ オ したがって,土地や建物が権利の客体として新しく誕生したときには,
    所有者は,1か月以内に表題部の登記の申請をしなければなりません
    し,
  カ 法務局は,当事者から表題部の登記の申請があった場合には,登記官
    は,表題部の登記を行うために,土地や建物の現地におもむき,当事
    者から指示説明を受け,現地調査を行い,登記の申請に間違いがない
    か否かをチェックしなければなりません。それは,申請の正確性の確
    認のためであると同時に,不動産をめぐる社会秩序を正確に維持する
    ためでもあります。
  キ そして,登記官は,現地調査をして,申請内容に間違いがなければ,
    不動産登記記録の最初の表題部に,各不動産の物理的現況を記録して
    登記簿を起こします。
  ク そして,以後,申請される権利に関する登記をその登記記録の権利部
    に記録してゆくことになります。
 (3)したがって,「表示に関する登記」は,「権利に関する登記」の前
    提となるものです。
 (4)なお,表題部に最初にされる登記のことを「表題登記」ともいます。

 2 表示に関する登記の登記事項(表題部の登記事項)
 (1)土地登記記録の表題部登記事項は,具体的には,土地の所在・地番・
    地目・地積・原因及びその日付・登記の日付・所有者です。
 (2)建物登記記録の表題部登記事項は,区分建物でない通常の建物の場合
    は,建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積・原因及びその日付
    ・登記の日付・所有者です。
 (3)これらは,いずれも権利の客体としての土地や建物を他の土地や建物
    と区別するために,これだけの事項は必要である,という観点から表
    題部登記事項とされているのです。

 3 表示に関する登記の効力
 (1)前述のように,表示に関する登記,つまり,土地,建物の表題部の登
    記は,権利の対象としての土地,建物を特定し,それらの物件が存在
    していることを世の中に公示する働きをしています。
 (2)ところで,この表題部の登記の登記事項には,「所有者」も含まれて
    います。そこで,この表題部の登記にも「対抗力」が認められるかが
    問題となります。
 (3)そして,表題部の登記(表題登記)には,「対抗力」は認められない,
    と解されています。
  ア なぜならば,登記に対抗力が認められているのは,民法第177条に,
    「不動産に関する物権の得喪及び変更は,登記をすれば,第三者に対
     抗することができる。」と定めているからなのですが,この条文の
    文言から分かりますように、対抗力が認められているのは,「不動産
    に関する物権の得喪及び変更の登記」,つまり,権利に関する登記で
    あり,
  イ 表示に関する登記,つまり,表題部の登記(表題登記)は不動産の物
    理的現況に関する登記であり,ここに記載されている「所有者」とい
    うのは,その土地や建物を特定するための要素としての「所有者」で
    あり,「物権の得喪及び変更という権利に関する登記」の所有権者で
    はないからです。
  ウ なお,「所有者」が表題部の登記の登記事項にあがっているのは,日
    本は私有財産制社会ですから,誰が所有者かは,その土地や建物を特
    定するための重要な要素だからなのです。
 (4)以上により,表題部に記載されている「所有者」の登記は,原則とし
    て,民法第177条の物権変動の対抗要件としての登記の効力は有し
    ません。
 (5)ただし,判例は,例外的に,表題部に記載されている「所有者」に,
    権利の対抗力を認めている事案があります(最判昭和50.2.13)
        それは,次のような事案です。
  ア まず,建物所有を目的とする借地権者(地上権者,賃借人)は,
    土地につき借地権(地上権,賃借人)の登記をしていなくても,借地
    の上に登記がされている建物を所有するときは,これをもって第三者
    に対抗することができる(借地借家法第10条1項,旧建物保護ニ関
    スル法律一条)と定めて,借地権者を保護しています。
  イ この場合において,土地が売却され,借地権者は建物の表題登記はし
    ているが,権利に関する登記はしていない場合に,土地の買主から借
    地権者に対して,建物収去土地明渡請求があった場合に,借地権者は
    建物を収去して土地を明け渡さなければならないか。
  ウ この事案において,最高裁は,
     「借地権者が自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有
      する場合もまた「登記シタル建物ヲ有スルトキ」にあたり、当該
      借地権は対抗力を有するものと解する」旨,判示しています。
  エ つまり,土地の借地権者の借地上の建物の表示登記の所有者は,借地
    借家法第10条1項の「借地権者が登記されている建物を所有すると
    き」という場合の「登記」に該当し,借地を買い受けた者に対しても,
    借地権を対抗できると判示しているのです。

 4 表示に関する登記の登記申請義務
☆(1)不動産の表示に関する登記の手続は,その不動産の所有者等に登記
    申請義務があります。
  ア なお,その申請義務には,申請期間がつけられているものがありま
    す。
  イ たとえば,土地については,新たに生じた土地や表題登記がない土地
    を取得した者は,その土地の所有権を所得した日から1か月内に表示
    に関する登記,つまり,表題登記の申請をしなければなりません
    (不動産登記法第36条)
☆ ウ また,建物については,その建物の所有者は,建物を新築したときか
    ら1ヶ月以内に建物の表題登記を申請しなければなりません。
    (不動産登記法第47条)
☆ エ また,建物が滅失したときは,表題部所有者又は所有権の登記名義人
    は,滅失の日から1ヶ月以内に建物滅失の登記申請をしなければなり
    ません(不動産登記法第57条)
  オ そして,表題登記の申請人は,申請義務を怠った時は、所定の過料に
    処せられることになっています。(不動産登記法第164 条)。
  カ これは,日本は不動産につき,登記制度を採用していますので,権利
    の客体となる土地,建物については,まず,所有者等にその不動産の
    表示に関する登記申請を義務づけ,現地の不動産の現況が正確に登記
    簿に記録されるようにして,その登記簿を公示することにより,取引
    の面では,不動産取引の安全,円滑をはかり,国家の租税の面では,
    不動産税を正確に徴収することができるようにしているのです。
☆(2)ところで,権利に関する登記の申請手続は,所有者等に登記申請義
    務はありません。ただし,その登記をしなければ,所有者等はその
    権利の対抗要件を具備することができず,その結果,損失を被るこ
    とがある。したがって,所有者等はすすんで登記をする,という構
    図を取っています。
 (3)なお,不動産の表示に関する登記の手続は,例外的に,当事者の申
    請を補充したり,報告的な登記をする場合などには,登記官が職 
    権で登記できる場合があります。登記制度を維持するためには,
    権利の客体である不動産の物理的状況を正確に公示する必要がある
    からです(不登法第28条)。

 5 不動産の表示に関する登記の種類
 (1)建物に関する表示登記には,建物の新築・増築・滅失の登記,建物
    の分割・区分・合併の登記,建物の合体の登記があります。
 (2)土地に関する表示登記には,土地の分筆・合筆の登記等の創設的・
    形成的登記と土地の地目変更の登記等の報告的登記とがあります。

第2 問題と解答
問題1 不動産登記法の申請義務に関する次の記述は,正しいか誤っているか。
(1)建物を新築した場合,当該建物の所有者は,新築工事が完了した時か
   ら,1か月以内に,所有権の保存の登記の申請をしなければならない,
   との記述は正しいか誤っているか。
(1)の解答:誤っている。
  ア 本文第2項「表示に関する登記の各論」「4表示に関する登記の登記
    申請義務」で勉強しましたように,建物を新築した場合には,1か月
    以内に,建物の表示に関する登記,つまり,表題登記の申請をしなけ
    ればなりません。
  イ ところで,所有権保存登記は,権利の登記の最初の登記であり,表示
    登記ではありません。
  ウ そして,前記4の(2)で勉強しましたように,権利に関する登記に
    は,所有者等に登記申請義務はありません。
  エ よって,本股の記述は誤っている。

(2)所有権の登記名義人が住所を移転した場合の登記名義人の住所変更登
   記は,住所を移転したときから1か月以内にしなければならない,と
   の記述は正しいか誤っているか。
(2)の解答:誤っている。
  ア 所有権登記名義人の住所変更登記は,権利に関する登記であり,表示
    に関する登記ではない。
  イ そして,権利に関する登記には,所有者等に登記申請義務はありませ
    ん。
  ウ よって,本股の記述は誤っている。

(3)所有権の登記名義人が死亡し,相続が開始した場合の相続人の所有権
   移転登記申請は,相続開始の時から1か月以内にしなければならない,
   との記述は正しいか誤っているか。
(3)の解答:誤っている。
  ア 所有権登記名義人の死亡による相続人の所有権移転登記申請は,権
    利に関する登記であり,表示に関する登記ではない。
  イ そして,権利に関する登記には,所有者等に登記申請義務はない。
  ウ よって,本股の記述は誤りである。

(4)建物が滅失した場合,表題部所有者または所有権の登記名義人は,滅
   失のときから,1か月以内に,建物滅失登記を申請しなければならな
   い,との記述は正しいか誤っているか。
(4)の解答:正しい。
  ア 建物滅失登記は,表示に関する登記であり,本文「4表示に関する登
    記の登記申請義務」で勉強したように,表題部所有者または所有権の
    登記名義人に建物滅失登記の申請義務があり,同人らは,不動産登記
    法第57条により,滅失の日から,1か月以内に,当該建物の滅失の
    登記申請しなければならない。
  イ よって,本股の記述は,正しい。
 ★本問の解き方
    ①まず,各股の登記は,権利に関する登記か,表示に関する登記かを判
   断する。
  ②権利に関する登記については,登記義務は生じない,との知識で解く。
………………
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「宅建試験受験講座」34回:権利関係34:民法9-7:「物権変動7:「相続と登記との関係」

2015-07-14 19:45:30 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」34回目
 権利関係34 
 民法9-7:
「物権変動7:「各種不動産物権変動の原因と登記との関係
        その4「相続による物権変動と登記との関係」(重要)

…………………………
民法
第9章 物権変動7
第7項 相続による物権変動と登記との関係
第1号 はじめに
  1 この項では,不動産物権変動の原因の一つである相続と登記との関係
    を勉強します。
  2 通常,人間は,一生の中で一度は相続に出くわします。
  3 そして,不動産取引においては,取引に相続が絡んでくることが,良
    くあります。
  4 したがいまして,不動産取引では,相続に関する知識は重要となりま
    すし,宅建試験でも相続に関する問題は,良く出題されます。
  5 「相続と登記」との関係は,そういう観点から,しっかり勉強するこ
    とが大切です。
第2号 相続とは
  1 父が死亡すると,父の不動産の所有権は,母と子などが引き継ぎ
    ます。これを相続といいます。
  2 ある者が死亡した場合に誰が相続人となるかについては,
  (1)まずその者の配偶者が相続人になります(民法第890条)。
      ★民法第890条(配偶者の相続権)
       被相続人の配偶者は,常に相続人となる。
  (2)また,子も相続人となります(民法第887条1項)。
          ★民法第887条1項(子の相続権)
       ①被相続人の子は,相続人となる。
  (3)そして,配偶者や子の相続分は幾らかについては,子及び配偶者が
     相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各2分の
     1です(民法第900条)
      ★民法第900条1項(法定相続分)
       ①同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号
        の定めるところによる。
        一 子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配
          偶者の相続分は,各二分の一とする。
  (4)さて,相続についての詳しい勉強は,後日,相続の単元でやるこ
     ととしまして,ここでは,相続も物権変動という面からみれば,死
     亡した人(被相続人)の物の所有権が相続人に移転するという,物
     権変動ですから,相続による宅地建物(不動産)所有権の取得者
     (相続人)は,それを他の者に主張するには,対抗要件としての登
     記を必要とするかについて,勉強しておく必要がありますし,ここ
     ではその勉強を致します。
  (5)そして,相続による物権変動といっても,そのケースは一つでは
     なく,複数ありますし,ケース・ケースにより結論が異なります
     から,今から,ケース分けして勉強することとします。

第3号 相続による各種の物権変動と登記との関係
 第1 共同相続人間の場合
  1 事例1
    ①甲土地の所有者Aが死亡しました。
    ②そして,甲土地をAの配偶者Bと子Cが各2分の1を相続しまし
     た。
    ③この場合,BないしCは,相手方に自分の相続した所有権持分を相
     手方に主張するには,登記が必要なのでしょうか。
  2 結論
  (1)この場合,BもCも登記は必要ではありません。
  (2)BもCも共に,自らが相続した甲土地の所有権持分を登記なくして,
     相手方に主張することができます。
  3 理由
  (1)BもCも共にAの相続人です。
  (2)そして,複数の者が共に相続した場合のことを「共同相続」と
     いいますが,これは,被相続人の財産を相続人らが共同して包括
     承継したということです。
  (3)ところで,自らが取得した不動産に関する物権を第三者に対して主
     張(対抗)するには,民法第177条により登記が必要なのですが,
  (4)民法第177条の第三者とは,「当事者及びその包括承継人以外の
     者であって,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者」
     のことです(判例)。
  (5)そして,相続人は,包括承継人であり,民法第177条の登記を
     必要とする第三者には当たりませんから,登記が無くても,自らが
     相続した所有権を他の相続人に主張(対抗)することはできるので
     す。
   …………………………
             ★民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
         不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平
         成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の
         定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗
         することができない。
      …………………………
☆第2 被相続人から権利譲渡を受けていた者と相続人との関係
  1 事例2
          甲土地
            A─――――─―─―─―─→B
            |       ①売買
        |       ②A死亡
            |
            ↓      ③C相続
            C

    ①Aは甲土地をBに売却しました。しかし,登記はAのままでした。
    ②その後,Aは死亡し甲土地をCが相続しました。
    ③この場合,BがCに対して,甲土地の所有権を主張(対抗)する
     には,登記が必要なのでしょうか。
  2 結論
  (1)この場合,登記は必要ではありません。
  (2)Bは,Cに対して,登記なくして,甲土地の所有権を主張する
      ことができます。
  3 理由
  (1)まず,Aが生存中に甲土地をBに売却した時点で,甲土地の所
     有権は,Bに移転します(民法第176条)。
  (2)その後,Aが死亡することにより,CがAを相続しました。
☆ (3)ここで,BがCに甲土地の所有権を主張するのに,登記が必要かで
     すが,事例1で勉強しましたように,「当事者及びその包括承継人」
     に主張するには,登記は必要ではありません。
  (4)したがって,この場合は,Bは,Cに対して,登記なくして,甲土
     地の所有権を主張することができます。
 ☆(5)相続人(包括承継人)は,民法第177条の「第三者」に当た
     らないというのは,そういうことを意味するのです。
…………………………
  「試し読み」のページはここまでと致します。
  これ以降の講義内容は,末尾の電子書籍「宅建試験受験講座」で
  購読できます(購読料10円)。
  なお,その講義内容の概略は,以下のとおりです。

☆第3 被相続人から権利譲渡を受けていた者と相続人から権利譲渡を受け
    た者との関係
☆第4 共同相続人の一人から権利譲渡を受けた者と他の共同相続人との関
    係
☆第5 共同相続後,遺産分割協議により単独所有者となった者と他の相続人
    から権利譲渡を受けた者との関係
☆第6 相続放棄をした相続人から譲渡を受けた者と他の相続人との関係
☆第4号 問題と解説
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    ★それでは,「宅建試験受験講座」34回
     権利関係34:民法9-7:「物権変動7」
     「相続による物権変動と登記との関係」
          はここまでと致します。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,権利関係35:民法10
     「不動産登記法」です。
    ★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
     ということでお願い致します。   
☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎


「宅建試験受験講座」33回:権利関係33:民法9-6:「物権変動6:「時効取得と登記との関係」

2015-07-10 16:21:36 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」33回目
 権利関係33 
 民法9-6:
「物権変動6:「各種不動産物権変動の原因と登記との関係
        その3「時効取得による物権変動と登記との関係」
…………………………
民法
第9章 物権変動6
第6項 時効取得による物権変動と登記との関係
第1号 はじめに
  1 この章では,不動産物権変動の原因には,売買だけではなく,各種の
    原因があることを勉強し,前々回は「①詐欺による意思表示の取消と
    登記との関係」,前回は,「②契約解除による物権変動と登記との関係」
    を勉強しました。
  2 そして,今回は,「③時効取得による物権変動と登記との関係」を勉
    強します。
第2号 時効とは
  1 ところで,この項の勉強に当たっては,「時効」の意味を理解してお
    かなければなりませんので,まず,最初に,時効の意義から勉強を
    開始することと致します。
  2 時効とは,一定の期間,一定の事実状態が継続することにより,
    権利を取得したり,権利が消滅したりする制度であり,権利を取得す
    る場合を取得時効といい,権利が消滅する場合を消滅時効といい
    ます。
  3 そして,不動産の物権変動の原因としては,所得時効が問題となりま
    すので,ここでは,それを勉強することに致します。
  4 そして,所有権の取得時効については,民法第162条が,次の
    ように規定しています。
    …………………………
         ★民法第162条(所有権の取得時効)
      ①二十年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人
       の物を占有した者は,その所有権を取得する。
      ②十年間,所有の意思をもって,平穏に,かつ,公然と他人の
       物を占有した者は,その占有の開始の時に,善意であり,か
       つ,過失がなかったときは,その所有権を取得する。
    …………………………
  5 ここで,分かりますように,取得時効には,10年間で所有権を
    取得する場合と20年間で所有権を取得する場合があり,前者を短
    期取得時効といい,後者を長期取得時効といいます。
第3号 時効取得による物権変動と登記との関係
  1 それでは,時効取得により不動産の所有権を取得した場合,その
    権利を主張するには,登記が必要かどうかの勉強に入ります。
  2 ここは,取得時効完成前の当事者や第三者との関係と取得時効完
    成後の第三者との関係で結論が異なります。
  3 そして,不動産取引では,時効の絡んだ場面に出くわす事もあります
    ので,ここも興味を持って勉強すると良いと思います。
 第1 取得時効完成前の当事者と時効取得者との関係
  1 事例1
      自称の所有者
           A─――――─―─→B
      甲土地  ①売買
      真の所有者C
 
    (1)BはAから,甲土地を買い,引渡も受けました。
  (2)売買契約の際,Aは甲土地は自分の物であるといい,Bはそれ
     を信じて買い,15年間甲土地を占有(支配)し続けています。
  (3)ところが,16年目にAの兄CがBに対して,甲土地は自分の物
     であり,弟のAが勝手に売ったものであるから,返還してくれ,
     と言ってきました。
  (4)そこで,Bは自分は既に10年以上,甲土地を自分が所有者と
     して占有(支配)してきているので,仮に甲土地がCの物であった
     としても,自分が時効取得していると,短期取得時効を援用(主張)
     しました。
  (5)ところで,甲土地の登記は,未だAのままで,Bは登記を受けてい
     ませんでした。
  (6)この場合,BのCに対する時効取得の主張は認められるのでしょう
     か。
  (7)判例によれば,Bは登記を受けていなくても,時効取得による
     所有権をCに主張することができます。
  2 解説
  (1)この事例では,Bは15年間甲土地を占有し続けているということ
     ですから,Bに10年間の占有継続によって成立する「短期取得時
     効」が成立していないかを検討します。
  (2)前記民法第162条第2項の短期取得時効の成立要件は,
     ①所有の意思をもって占有していること
     ②平穏かつ公然と占有していること
     ③他人の物を占有していること
     ④10年間継続して占有していること
     ⑤占有開始時に善意,無過失であること
          です。
  (3)そこで,Bの甲土地の占有が,これらの短期取得時効の成立要件を
     満たしているかを検討します。
   ア BはAから甲土地を自分の物にする意思で買っていますから①の
     「所有の意思ある占有」の要件を満たしています。
   イ 次に,Bは,甲土地を暴行や強迫によって占有していませんし,ま
     た,自己の占有を隠匿していませんので,②の「平穏かつ公然と占
     有する」の要件も満たしています。
   ウ 次に,甲土地の真実の所有者はAではなく,Cであるということで
     すから,Bの占有は,「他人の物の占有」であり,③の要件も満た
     しています。
      エ 次に,Cは甲土地を15年間占有していますから,④の「10年間
     継続して占有」の要件も満たしています。
     オ 最後に,Bは甲土地をAから購入する際に,Cのことは全く知らず,
     甲土地の所有者はAであり,自分はそのAから買ったから,甲土地
     の所有権は自分にあると信じており,そう信じていることに過失は
     ありませんので,Bの占有は⑤の「善意,無過失」の要件も満たし
     ています。
  (4)以上により,Bの占有は,短期取得時効の成立要件を全て満たして
     おり,Bには甲土地につき,短期取得時効が完成しています。
  (5)そして,時効が完成すれば,時効の完成によって利益を受けるBは,
     時効を援用して,時効の利益を受けることができます(民法第14
     5条)。
  (6)ここで,時効の援用とは,時効の完成によって利益を受ける者が,
     時効によって利益を失う者に対して,時効の利益を受ける旨の意思
     表示をすることです。本件事例でいえば,甲土地につき,BがCに
     対して,取得時効の利益を受ける旨の意思表示をすることです。
  (7)時効取得者Bは,この時効の援用の意思表示をすることにより,甲
    土地の所有権を原始取得するのです。
  (8)逆に言えば,Bの時効は完成していても,Bがその時効の援用をしな
     ければ,Bが甲土地の所有権を取得するということはありません。
    ところで,ここでの勉強は,時効取得と登記との関係ですから,「時
    効の援用」については,深入りしないこととして,時効の援用の意思
    表示をして,Bが甲土地を時効取得したことを前提として,勉強をす
    すめます。
 (9)それでは,Bは時効により取得した甲土地の所有権を原所有権者で
    あったCに対抗するには,登記を備えていなければならないのでしょ
    うか。
 (10)備えている必要は,ありません。
    この場合,Bは時効により取得した甲土地の所有権を,登記を備えて
    いなくても,Cに対抗(主張)することができるのです。
 (12)Bが時効により甲土地の所有権を取得したということは,
  ア 時効完成前の所有者Cから時効により所有権を取得したBに所有権が
    順次移転したことを意味します。
  イ そうすると,時効完成前の所有者Cは第三者ではなく,前所有者とい
    うことになります。
  ウ そうすると,民法第177条からも,前所有者に所有権を対抗(主張)
    する場合には,登記は必要ありませんから,
  エ 事例1の場合は,Bは登記を備えていなくても,時効取得による所有
    権をCに主張することができる,という結論になるのです。
    …………………………
     ★民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
        不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成
       十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定める
       ところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することが
       できない。
    …………………………

 第2 取得時効完成前の第三者と時効取得者との関係
  1 事例2
                  ①売買
        A─―――――──→B
           A─――――─―─→C
      甲土地 ②売買            
  (1)BはAから,甲土地を買い,登記は受けていなかったが,引渡は受
     けて,以後,甲土地を平穏,公然かつ善意,無過失に占有してきて
     いる。
  (2)Aは,Bに売却した5年後,甲土地をCにも売却し,登記をCに
     移転した。
  (3)その後,AがBに売却して11年目にCがBに対して,甲土地は,
     自分の物であるから,引き渡してくれ,と言ってきた。
  (4)そこで,Bは自分は既に10年以上,甲土地を自分が所有者と
     して平穏,公然かつ善意,無過失に占有してきているので,仮に甲
     土地がCの物であったとしても,自分は甲土地を時効によって取得
     していると,短期取得時効を援用して,甲土地の引渡を拒否した。
  (5)この場合,BのCに対する時効取得の主張は認められるか。
  (6)認められます。Bの短期取得時効は完成しており,Bは時効を援用
     していますで,Bが甲土地の所有権を時効取得したからです。
  (7)それでは,Bは,登記を備えていなくても,時効により取得した甲
     土地の所有権をCに対して,主張(対抗)することができるのでし
     ょうか。これがここの勉強のテーマです。
  (8)そして,判例によれば,Bは登記を備えていなくても,時効により
     取得した甲土地の所有権をCに対して,主張(対抗)することがで
     きます。
  2 解説
  (1)この場合も,事例1の場合と同じく,Bは短期取得時効の成立要件
     を満たした上で,その時効を援用したわけですから,それを前提と
     して勉強を進めてゆきます。
  (2)Bは時効の援用により,甲土地の所有権を原始的に取得します。
     「原始的に取得する」とは,Bの時効完成時に甲土地上に存在して
     いたもろもろの権利は消滅して,Bは,Bの所有権のみが存在する
     甲土地の所有権を取得するという意味です。
  (3)したがって,事例2の場合は,Bの取得時効の完成時の甲土地の
     所有権者はCですから,Bが時効を援用することにより,Cの所有
     権は消滅し,Cは無権利者となり,Bが甲土地の所有権者となった
     ということです。
  (4)ということは,権利の移転の面から見れば,Bの時効取得により,
     甲土地の所有権がCからBに移転したことを意味します。
  (5)そうすると,時効完成時の所有者Cは第三者ではなく,前所有者と
     いうことになります。
  (6)そして,事例1でも勉強しましたように,民法第177条により,
     前所有者に所有権を対抗(主張)する場合には,登記は必要ありま
     せんから,この事例2の場合も,Bは登記を備えていなくても,時
     効取得による所有権をCに主張することができるのです。

 第3 取得時効完成後の第三者と時効取得者との関係
    1 事例3
             ①売買
     A─――――――──―─―──→B
         A─――――─―─――──―─→C
    甲土地   ②時効完成後に売買          

  (1)BはAから,甲土地を買い,引渡も受けたが,登記は受けてい
     なかった。
  (2)しかし,Bは10年間,平穏,公然かつ善意,無過失に甲土地を占
     有してきている。
  (3)Aは甲土地をBに売却してから後,12年目にCにも甲土地を
     売却し,登記をCに移転した。
  (4)そこで,CはBに対して,甲土地は,自分の物であるから,引
     き渡してくれ,と言ってきた。
  (5)これに対して,Bは自分は既に10年以上,甲土地を自分が平穏,
     公然かつ善意,無過失に占有してきているので,時効取得を援用し
     て,Cに対して,甲土地は自分の物であると主張した。
  (6)この場合,BはCに対して,登記なくして,甲土地の時効取得を主
     張(対抗)することができるか。
  (7)判例は,この場合は,BはCに対して,登記なくして,甲土地の時
     効取得を主張(対抗)することができない,としています。
  2 解説
  (1)この事例3と前項の事例2の違いはどこにあるかといえば,
     事例2では,Cは時効完成前の登場者ですが,事例3では,Cは時
     効完成後の登場者です。
  (2)そのことにより,結論が異なるのであり,ここでは,その理由を
     勉強することになります。
  (3)まず,Aから甲土地を買い受けたBは,速やかに登記を受けておれ
     ば,登記のある完全な所有権を取得しますので,以後,Cと甲土地
     をめぐってトラブルになることはありませんでした。
  (4)ところが,登記がAに残っていたばっかりに,12年目後に,Aは
     甲土地をCに売却して,登記もCに移転しました。
  (5)ということは,甲土地は,AからBとCに二重に譲渡され,Cが登
     記を備えましたから,民法第177条により,Cが完全な所有者に
     なるということになります。
  (6)ところが,甲土地の占有の関係では,Bが10年以上,平穏,公然
     かつ善意,無過失に占有してきていますから,Bは甲土地につき,
     時効取得を主張して,Cに対抗できないかが問題になるのです。
  (7)そして,既に勉強してきましたように,Bの時効完成時に,Cが
     甲土地の所有権者だったら,Cの所有権はBの時効取得により,
     消滅しますから,Bは登記がなくてもCに対抗できます。
  (8)しかし,この事例3の場合は,CはBの時効完成後に,Aから甲土
     地を買っていますから,Cの所有権は,Bの時効の完成によって
     は消滅しません。
  (9)そして,判例は,この場合は,甲土地の所有権がAからBへ,A
     からCへと二重に譲渡された場合と類似していると解して,Aと
     Cいずれか先に登記を備えた者が優先し,完全な所有権者となる
     と解しています(民法第177条)。
  (10)したがって,不動産の取得時効完成後に現れた第三者に対して,
     時効取得を主張する場合は,登記が必要です。
   ア それでは,時効の起算点を遅らせて,時効完成後の第三者を時効
     完成前の第三者とすることは,できないかが問題となりましたが,
     それはできない,というのが判例です。
   イ なぜならば,時効制度は公的制度ですから,私人が自己に都合良
     く変えるということはできない,と解するのです。
   ウ なお,判例は,時効完成後の第三者との関係では,その第三者が
     登記をした後に,引続き取得時効完成に必要な期間占有が継続し
     た場合は,新たな取得時効が完成し,その第三者に登記なくして
     対抗することができる,としています。

 第4 時効取得と登記との関係のまとめ
    以上勉強してきました所をまとめますと,次のようになります。
☆ 1 時効完成前の当事者,時効完成前の第三者に対しては,時効による
    所有権取得を登記なくして,対抗(主張)することができる。
☆ 2 これに対して,時効完成後の第三者に対しては,時効による所有権
    取得を対抗(主張)するには,登記が必要である。

 第5 問題と解説
 問題1 次の各記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤っている
     か。
  (1)Aが所有する甲土地をBに売却して,甲土地の引渡はしたが,移転
     登記はしていなかった。その後,Bの取得時効が完成後に,Aは甲
     土地をCに売却して,登記をCに移転した。この場合,Bは登記が
     なくてもCに対して,甲土地の所有権を主張することができるとの
     記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤っているか。
  (1)の解答:誤っている。
   ア 本股のCは,時効完成後の第三者であり,
   イ 事例3で勉強したように,時効によって所有権を取得した者は,登
     記なくしては,登記を備えた時効完成後の第三者にその権利の取得
     を主張することができず(民法177条,判例),登記を備えた時効
     完成後の第三者Cが,甲土地の所有権者となる。
   ウ よって,本股の記述は誤っている。

  (2)Aが所有する甲土地をBに売却して,甲土地の引渡はしたが,移転
     登記はしていなかった。その後,Bの取得時効が完成する前に,A
     は甲土地をCに売却して,登記をCに移転した。この場合,Bは取
     得時効が完成すれば,登記がなくても,時効を援用して,Cに対し
     て,甲土地の所有権を主張することができるとの記述は,民法の規
     定及び判例によれば,正しいか誤っているか。
  (2)の解答:正しい。
   ア 本股のCは,時効完成前の第三者であり,
      イ 事例2で勉強したように,Bが時効を援用すれば,Cの所有権は,
     消滅し,Bが所有権者となり,BはCに対して,登記が無くても
     その所有権を主張することができる。
   ウ よって,本股の記述は正しい。
☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎☆◎
    ★それでは,「宅建試験受験講座」33回
     権利関係33:民法9-6:「物権変動6」
     「時効取得による物権変動と登記との関係」
          はここまでと致します。
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「宅建試験講座」32回:民法9-5:「物権変動5:「契約解除による物権変動と登記」

2015-04-26 17:14:13 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」32回目
 権利関係32 
 民法9-5:
「物権変動5:「各種不動産物権変動の原因と登記との関係
        その2「契約解除による物権変動と登記との関係」
…………………………
民法
第9章 物権変動5
第5項 契約解除による物権変動と登記との関係
第1号 はじめに
  1 今回は,「②契約解除による物権変動と登記との関係」の勉
    強です。

第2号 契約解除による物権変動と登記との関係
   甲土地 ①売買              ②売買
    A─――――─―─→B─―――――─――→C
       ③契約解除
☆第1 契約解除者と契約解除前の第三者との関係
  1 事例1
  (1)まず,AはBに甲土地を売却しました。
  (2)次に,BはCに甲土地を売却しました。
  (3)次に,AはBが甲土地の売買代金を支払わないので,AB間の甲土
     地の売買契約を解除しました。
  (4)この場合,Aは,Cに対して,Bとの売買契約の解除を対抗(主張)
     することができるのでしょうか。
  (5)これが,契約解除者と契約解除前の第三者との関係の問題です。
  (6)そして,この場合の判例の結論を先にいいますと,
☆  ア Cが登記を受けている場合は,AはCに売買契約の解除により取り
     戻した所有権を対抗(主張)することができない。
     Cの立場からすると,Cは自らの所有権をAに対抗することができ
     る。
☆  イ しかし,Cが登記を受けていない場合は,AはCに売買契約の解除
     により取り戻した所有権を対抗(主張)することができる。
     Cの立場からすると,Cは自らの所有権をAに対抗することができ
     ない。
  2 解説
  (1)それでは,この場合,何故,(6)の結論になるのかを勉強しまし
     ょう。
  (2)まず,この場合は,AがBとの売買契約を解除する前に,BはCに
     甲土地を売却していますので,Cは契約解除前の第三者ということ
     になります。
  (3)したがって,この場合の契約解除者Aと第三者Cとの関係は,Aか
     らB,BからCと目的物が順次売買された場合の前者と後者の関係
     ですから,民法第177条の二重譲渡の場合の対抗要件の問題では
     なく,民法第545条1項の契約が解除された場合は,その契約解
     除の効果はどこまで及ぶのかの問題となります。そして,民法第5
     45条1項は次のように規定しています。
    …………………………
     ★民法第545条1項(解除の効果)
      ①当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,
       その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし,第三者の
       権利を害することはできない。
    …………………………
  (4)上記民法第545条1項は,まず,契約が解除されると,当事者双
     方は原状回復義務を負うことを規定しています。
    アこの意味は,契約が解除されると,契約は無効となり,無かった
     ことになりますので,当事者は双方とも,契約をしたことにより
     履行していた物を相手方に返還して,契約の前の状態(原状)に
     戻さなければならない義務を負うということです。
    イ例えば,事例1でいえば,Bは甲土地をAに返還しなければならな
     いし,また,Bか登記も受けていた場合には,登記もAに返還し
     なければならないということです。
    ウまた,Bは売買代金は支払っていないということですが,手付金
     をいくらか渡していた場合には,AはBに手付金を返還して,契
     約前の状態(原状)に戻さなければならないということです。
  (5)しかし,民法第545条1項は,ただし書で「ただし,第三者の権
     利を害することはできない。」と規定しています。
 
  (6)それでは,民法第545条1項ただし書の「第三者」とは,どうい
     う第三者なのでしょうか。
    ア同条文は,「第三者の権利を害することはできない。」と,単純に
     規定しているだけです。
    イしたがって,条文の文章上(文理上)は,第三者は,善意・悪意
     を問わず,また,登記の有無を問わず,保護されることになりそ 
     うです。
 ☆  ウしかし,判例は,ここの第三者とは,「登記を備えた第三者」で
      なければならない,としています。
 ☆  エ判例が,そのように解釈している理由は,民法第545条1項ただ
      し書の,契約を解除した者が害することができない第三者とは,
      「権利を有する第三者」のことであり,ある第三者が権利を有す
      る第三者といい得るためには,その第三者本人が自分は権利者だ
      と言っているだけではなく,他人から見ても権利者であることが
      分かる第三者である必要があり,そのためには,「登記を備えた
      第三者」でなければならない,としているのです。
        
   (7)したがいまして,民法第545条1項ただし書の「第三者」とは,
      先にも勉強しましたが,判例によって補足されており,次のよう
      になります。
    ア 解除権者Aは,第三者Cが登記を受けている場合は,AはCの権
      利を害することができない(民法第545条1項,判例)。
      つまり,Aは売買契約の解除によって自らに回復した甲土地の所
      有権をCに対して,主張することができない。その結果、Cが甲
      土地の所有権者となる。
    イ しかし,Cが登記を受けていない場合は,AはCに売買契約の
      解除を主張(対抗)することができる。その結果,Aが甲土地の
      所有権者となる。
  3 結論
  (1)以上勉強してきた所から分かりますように,契約解除者と契約解
     除前の第三者との関係は,次のような結論になります。    
 ☆(2)契約を解除した者が,契約解除前の第三者に対して,契約解除後
     の自らの所有権を主張(対抗)する場合,第三者が登記を備えてい
     れば,その主張は認められない(民法第545条1項,判例)。
     第三者が所有権を解除者に対抗することができ,第三者が所有権
     者として,保護される。
 ☆(3)しかし,第三者が登記を備えていなれば,契約解除者の主張は認
     められ。第三者は保護されない(民法第545条1項,判例)。
     つまり,第三者はその所有権を契約解除者に対抗することはできな
     い。その結果,契約解除者が所有権者となる。
 ☆(4)この場合,第三者の善意,悪意は関係がない。
 ☆(5)それでは,第三者が背信的悪意者の場合はどうなるのでしょうか。
   ア その場合は,第三者が仮に登記を備えていても,契約解除者はその
     背信的悪意者である第三者に対して,自らの権利を主張(対抗)す
     ることができ,その主張は認められる。
   イ 民法は,信義則を原則としており,それに反する背信的悪意者は保
     護にあたいしないからです。

 第3 契約解除者と契約解除後の第三者との関係
  1 事例2
  (1)AはBに甲土地を売却しました。
  (2)次に,AはBが甲土地の売買代金を支払わないので,甲土地の売
     買契約を解除しました。
  (3)その後で,BはCに甲土地を売却しました。
  (4)この場合,Aは,Cに対して,登記なくして,Bとの売買契約の
     解除を対抗(主張)することができるのでしょうか。
  (5)Aは,登記なくして,CにAB間の売買契約の解除を対抗(主張)
     することはできません。
  2 解説 
  (1)この場合は,AがBとの売買契約を解除した後で,Bは甲土地
     をCに売却しています。つまり,Cは契約解除後の第三者です。
  (2)したがって,この場合には,
   ア AがBとの売買契約を解除した時点で,甲土地の所有権はB
     からAに復帰して,AはBに対して甲土地の返還請求権を有
     します。
   イ また,その後,Aに登記が復帰する前に,BがCに甲土地を売却す
     ることにより,Cも甲土地の所有権を有し,CはBに対して甲土地
     の引渡請求権を有します。
   ウ 故に,この場合は,BがAとCとに二重に譲渡したのと類似(似た)
     の法律関係となり,民法第177条の問題となります。
☆ (3)したがって,解除者Aと第三者Cの関係は,先に登記を具備した者
     が勝ち,完全な所有権者となります。
  3 結論
☆ (1)以上のように,契約解除者と契約解除後の第三者との関係は,民法
     第177条の対抗要件としての登記の具備の問題となる。
  (2)したがって,契約を解除した者が,契約解除後の第三者に対して,
     契約解除によって自らに復帰した所有権を対抗(主張)するために
     は,登記を備えていなければならない。
☆ (3)また,逆に,第三者が契約解除者に対して,自らの所有権を対抗(主
     張)するためには,登記を備えていなければならない。なお,この
     場合,第三者は悪意であっても,登記を備えていれば,自らの所有
     権を対抗することができる。
  (4)したがって,契約解除者と契約解除後の第三者といずれが優先する
     かについては,登記を先に具備した者が優先し,その者が完全な
     所有権者となる。
☆ (5)ただし,第三者が背信的悪意者の場合は,,契約を解除した者は,
     登記がなくても,その者に自らの所有権を対抗することができる。
         民法は,信義則を原則としており,それに反する背信的悪意者は保
     護していないからです(判例)。

第4 問題と解説

   問題と解説は,下記電子書籍「宅建試験受験講座」で勉強してください。

   
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    ★それでは,「宅建試験受験講座」32回
     権利関係32:民法9-5:「物権変動5」
     「契約解除による物権変動と登記との関係」
          はここまでと致します。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,権利関係33:民法9-6
     「時効取得による物権変動と登記との関係」
     です。
    ★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
     ということでお願い致します。   
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宅建試験受験講座31回:権利関係31:民法9-4:「物権変動4:「詐欺による取消と登記との関係」

2015-04-21 20:47:10 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」31回目
 権利関係31 
 民法9-4:
「物権変動4:「各種不動産物権変動の原因と登記との関係
        その1 詐欺による意思表示の取消と登記との関係」
…………………………
民法
第9章 物権変動4
第4項 詐欺による意思表示の取消と登記との関係
第1号 はじめに
  1 不動産物権変動の原因には,売買だけではなく,各種の原因があり
    ます。
  2 そして,実際に,不動産取引を見てみますと,売買により不動産の
    所有権が移転する場合だけではなく,①詐欺による意思表示の取消
    しにより,所有権が移転する場合とか,②契約解除により所有権が移
    転する場合とか,④時効により所有権が移転する場合とか,⑤相続に
    より所有権が移転する場合などがあります。
  3 そして,不動産物権変動の第三者への対抗要件は,原則として,登記
    ですから,それらの物権変動を第三者に対抗(主張)するには,どの
    場合には登記が必要で,どの場合には登記が必要ではないのかを勉強
    しておく必要があります。
  4 そこで,本項では,それらの関係を順番に勉強してゆきます。
  5 まず,最初に,不動産の売買契約の意思表示が,詐欺を理由に取り消
    された場合はどうなるのかを勉強することと致します。

第2号 詐欺による取消しと登記との関係
    甲土地
    A─――――─―─→B─―――――─――→C
 第1 詐欺による取消しと取消前の第三者との関係
  1 事例1
  (1)BはAを騙しました。
   (2)その結果,AはBに甲土地を買り,登記もBに移転しました。
  (3)次に,Bは甲土地をCに売り,登記も移転しました。
  (4)その後,AはBに騙されたことを知り,AB間の売買契約を詐欺に
     よる意思表示を理由に取り消しました(民法第96条)。
  (5)そして,Aは,Bとの間の売買契約の取消しを理由に,Cに対して
     甲土地の明渡しを請求しました。
  (6)この場合,AのCに対する明渡請求は認められるのでしょうか。
     逆言すれば,Cは甲土地をAに明渡さなければならないのでしょ
     うか。
  2 解説
  (1)まず,この場合のCは,AがAB間の売買契約を詐欺による意思表
     示を理由に取り消す前に,Bから甲土地を買い受けていますので,
     Cは取消前の第三者です。  
☆ (2)次に,甲土地は,AからB,BからCへと順次譲渡されています
     ので,AとCの関係は,二重譲渡における譲受人同士の関係ではな
     く,順次譲渡における譲渡人と転得者の関係です。
☆ (3)したがって,この場合のAとCの関係は,登記の具備の優劣により
     により権利関係が確定する場合ではなく,民法第96条3項によっ
     て,権利関係が確定する場合になります。
  (4)そこで,民法第96条を見てみることにします。
     …………………
      ★民法第96条(詐欺又は強迫)
         ①詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
        ②相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場
         合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、
         その意思表示を取り消すことができる。
        ③前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意
          の第三者に対抗することができない。
          …………………
  (5)この民法第96条1項で分かりますように,詐欺により(「騙され
     て」という意味です。)売買等の意思表示を為した者は,その意思
     表示を取り消すことができます。
          本事例で言えば,Bに騙されて「売る」という意思表示をしたAは,
          Bに対して,その「売る」という意思表示を取り消すことができま
     す。
    アそして,取り消せば,Aの「売る」という意思表示はなかったこと
     になりますから,ABの売買契約も無かったことになり,甲土地の
     所有権はAに帰ります。
    イそこで,AはCに対して,甲土地の所有権を主張することができる
     のでしょうか。逆言すれば,Bから甲土地を買ったCは,甲土地に
     つきAの所有権を認めなければならないのでしょうか。
☆ (6)この点については,民法第96条3項が,「詐欺による意思表示の
     取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」と規定して
     います。
☆     アその意味は,C(第三者)が,AはBに騙されて甲土地を売るとい
     う意思表示をしたという事実を知らなかった場合は,Cは善意です
     から,AはCに対して,所有権を主張(対抗)することはできない。
☆   イしかし,C(第三者)が,AはBに騙されて甲土地を売るという意
     思表示をしたという事実を知っていた場合,つまり,Cが悪意の場
     合は,AはCに対して,所有権を主張(対抗)することができる,
     という意味です。
    ウ民法は,AとCのどちらを優先して保護すべきかを考えた場合,
    (ア)Cが悪意の場合は,CはAB間の契約は取り消されるかも知れ
       ないということを承知で,騙したBから買っているので,この
       場合は,Aを保護するのが妥当である。
    (イ)しかし,Cが善意の場合は,騙されたという落ち度のあるAと
       何も知らない通常の取引者であるCとを比較した場合,Cを保
       護するのが妥当である,との価値判断で,前記ア,イのように
       定めているのです。
 3 結論
      以上の解説をここでまとめておきます。
☆(1)詐欺による取消と取消前の第三者との法律関係は,登記により決まる
    のでなく,民法第96条(の詐欺による意思表示の取消)の適用によ
    り決まる。
☆(2)つまり,詐欺による意思表示(法律行為)の取消権者は,その取消し
    を,取消前の善意の第三者には,対抗(主張)することができない。
☆(3)しかし,詐欺による意思表示(法律行為)の取消権者は,その取消し
    を,取消前の悪意の第三者には,対抗(主張)することができる。
 4 試験対策
   したがいまして,試験対策としましては,
 (1)その問題が,詐欺による意思表示(法律行為)の取消の問題か否かを
    判断して,
 (2)そうであれば,その第三者が取消前の第三者か否かを判断して,
 (3)そうであれば,その第三者が善意か,悪意かを判断して,
 (4)第三者が善意であれば,第三者が勝ち,取消権者は負け。
 (5)第三者が悪意であれば,第三者は負け,取消権者が勝ち。
    と手順になります。

 第2 詐欺による取消しと取消後の第三者との関係
    1 事例2
  (1)BはAを騙しました。
   (2)その結果,AはBに甲土地を買り,登記もBに移転しました。
  (3)間もなく,AはBに騙されたことを知り,AB間の売買契約を詐欺
     による意思表示を理由に取り消しました(民法第96条)。
  (4)その後,Bは甲土地をCに売りました。
  (5)この場合,AがCに対して,自己の所有権を対抗(主張)するため
     には,Aは登記を具備していなければならないのでしょうか。
  2 解説
  (1)この事例2の場合は,事例1の場合と異なり,CはAが詐欺による
     意思表示を取り消した後で登場してきた第三者だということです。
  (2)つまり,BからCへの売買契約よりも前に,AはBとの売買契約を
     詐欺による意思表示を理由に取り消しており,Cは取消し後の第三
     者になります。
  (3)そして,この場合の取消権者Aと第三者Cとの法律関係は,どうな
     るかですが,
   ア まず,AがBとの間の売買契約を取り消した時点で,売買契約は無
     効となりますので,甲土地の所有権は,BからAに復帰します。
     イ そして,Aが所有権復帰と同時に登記も受けておけば問題はないの
     ですが,登記をBに放置している間に,BがCに甲土地を売ったと
     します。
   ウ そうしますと,この場合の甲土地をめぐる所有権は,BからAへの
     詐欺取消による所有権復帰(「復帰的物権変動」ともいいます。)と,
     BからCへの売買による所有権移転とが,二重譲渡されたのと類似
     の状態(同じような状態)となります。
   エ したがって,この場合は,民法第177条が類推適用(準用)され,
     AとCの関係は,先に登記を備えた者が自らの所有権を相手に対抗
     (主張)することができて,その者が所有権者となる,ということ
     になります。
  3 結論
☆ (1)詐欺による取消権者と,取消し後の第三者との関係は,対抗関係と
     なり,民法第177条が適用され,先に登記を備えた者が相手方に
     対して,所有権を対抗(主張)することができる。
  (2)したがって,取消権者が先に登記を具備すれば,取消権者が所有権
     者となり,
☆ (3)取消し後の第三者が,先に登記を具備すれば,その第三者が所有権
     者となる。
第3 問題と解答
問題1 不動産の物権変動の対抗要件に関する次の各記述は,民法の規定
    及び判例によれば,正しいか誤っているか。
 (1)Aが甲土地をBに売却し,不動産売買契約に基づく所有権移転登記が
    なされた後に,売主Aが当該契約に係る意思表示を詐欺によるものと
    して適法に取り消した場合,売主Aは,その旨の登記をしなければ,
    当該取消後に甲土地を買主Bから買い受けて所有権移転登記を経た第
    三者Cに所有権を対抗できない,との記述は,民法の規定及び判例に
    よれば,正しいか誤っているか。
 (1)の解答:正しい。
  ア 本股は,詐欺による取消しと取消後の第三者との関係である。
  イ そして,本文第2項で勉強したように,この場合は,民法177条が
    適用され,取消権者が取消後の利害関係を有する第三者にその所有権
    を対抗するには,登記が必要である。
  ウ したがって,取消後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記
    を経た第三者に対しては取消権者は.その所有権を対抗することがで
    きない。
  エ よって,本股の記述は正しい。

 (2)Aが甲土地をBに売却し,不動産売買契約に基づく所有権移転登記が
    なされた。Bは甲土地をCに転売した。その後で,売主AがAB間の
    売買契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した。
    ところで,甲土地をBから買い受けたCは,AがBに騙されて甲土地
    をBに売却した事実は知らなかった。この場合,売主Aは,登記をす
    れば,第三者Cに甲土地の所有権を主張することができる,との記述
    は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤っているか。
 (2)の解答:誤っている。
  ア 本股の場合,CはBが詐欺による取消をする前に利害関係を持つに至
    った第三者である。
  イ そして,詐欺による取消権者と取消前の第三者の関係は,本文の第2
    で勉強したように,甲土地がA→B→Cと移転した順次譲渡(移転)
        の関係であるから,対抗要件としての登記の理論によって解決される
    のではなく,詐欺による意思表示の取消の第三者効によって解決され
    る(民法第96条3項)。
  ウ そうすると,本股の場合,CはBの詐欺については善意であるから,
    Aの詐欺による取消の効果はCには及ばず,AはCにその所有権を主
    張することができない。
  エ よって,本股の記述は誤っている。

 (3)(2)の事例において,Cが,AはBに騙されて甲土地をBに売却し
    た事実を知っていた場合には,Aは,Cに対して,甲土地の所有権を
    主張することができる,との記述は,民法の規定及び判例によれば,
    正しいか誤っているか。
 (3)の解答:正しい。
  ア この場合には,本文第2で勉強したように,民法第96条3項の反対
    解釈により,詐欺による意思表示の取消は,取消前の悪意の第三者に
    は,対抗(主張)することができます。
  イ よって,本股の記述は正しい。

 (4)Aが甲土地をBに売却し,Bに所有権移転登記がなされた。その後で,
    売主Aが当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り
    消した。一方,買主Bは,Aに取り消された後に,甲土地を第三者C
    に売却し,Cに所有権移転登記もした。そして,CはAがAB間の売
    買契約の意思表示を詐欺を理由に取り消したことは知っていたけれ
    ども,甲土地は自分が探していた土地に条件が一致したので買って,
    登記の移転も受けたものだった。この場合,AはCに所有権を対抗で
    きない,との記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤って
    いるか。
 (4)の解答:正しい。
  ア 本股のCは,AがAB間の売買契約の意思表示を詐欺による意思表示
    として取り消した後に,甲土地につき利害関係を有するに至った第三
    者である。したがって,(1)の問題と同じく,詐欺による取消権者
    と取消後の第三者との関係に関する問題である。
  イ そして,本文第2項で勉強したように,この場合のAとCとの関係は,
    二重譲渡類似の関係であり,民法第96条ではなく,民法177条が
    適用され,取消権者が取消後の利害関係を有する第三者にその所有権
    を対抗するためには,第三者より先に登記を備えていることが必要で
    ある。
  ウ ところが,本股の場合,第三者Cが先に登記を具備しているので,A
    はCに対して,その所有権を対抗することができない。
  エ よって,本股の記述は正しい。
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    ★それでは,「宅建試験受験講座」31回
     権利関係31:民法9-4:「物権変動4」
     「詐欺による意思表示の取消と登記との関係」
          はここまでと致します。
        ★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
        ★次回は,権利関係32:民法9-5
     「契約解除による物権変動と登記との関係」
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「宅建試験受験講座」30回:権利関係30:民法9-3:「物権変動3:不動産物権変動の対抗要件の要否」

2015-04-19 20:46:21 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」30回目
 権利関係30 
 民法9-3:
「物権変動3:不動産物権変動の対抗要件と相手方の主観的要素との関係」
…………………………
民法
第9章 物権変動3
第3項 不動産物権変動の対抗要件と相手方の主観的要素との関係
 第1 はじめに
  1 前回は,不動産物権変動を第三者に対抗(主張)するには,登記が
    必要であるけれども,無権利の第三者や不法占拠の第三者などに主
    張する場合は,登記は必要ない,ということを勉強しました。
  2 それでは,不動産物権変動を悪意の第三者に対抗(主張)する場合
    にも登記は必要なのでしょうか。今回はこの点を学習致します。
  3 なお,前回の学習のポイントは,第三者が登記の欠缺を主張する正
    当な利益を有する者か否かの判断であったのに対し,今回の学習の
    ポイントは,第三者が善意か悪意か背信的悪意者かという第三者の
    主観的状態によって,登記が必要か否かを判断する点にあります。
 第2 事例1 
  1 まず最初に,AはBに甲土地を売買しました。
  2 次に,AはCにも甲土地を売買しました。
  3 ところで,Cは甲土地が既にBに売却されていることは知りませんで
    した。
  4 この場合,BがCに対して,甲土地の所有権を対抗(主張)するた
    めには,登記が必要なのでしょうか。
 第3 事例2
  1 まず最初に,AはBに甲土地を売買しました。
  2 次に,AはCに甲土地を売買しました。
  3 この時,Cは甲土地が既にBに売られていることを知っていました。
  4 この場合,Bが悪意のCに対して,甲土地の所有権を対抗(主張)
    するためには,登記が必要なのでしょうか。
    なお,民法で「悪意」とは,あることを知っているという意味であり,
    ここで,「悪意のC」とは,BがAから既に甲土地を買っていること
    を知っているC,という意味です。
 第4 事例3
  1 まず最初に,AはBに甲土地を売買しました。
  2 次に,AはCに甲土地を売買しました。
  3 この時,Cは甲土地が既にBに売られていることを知っていただけで
    はなく,買主Bを害する目的で,Aから甲土地を買いました。
  4 この場合,BがCに対して,甲土地の所有権を対抗(主張)するた
    めには,登記が必要なのでしょうか。
 第4 各事例の検討
  1 事例1について
  (1)このパターンは,①A→B,②A→Cという二重譲渡で,Cは2
     番目の買主ですが,1番目のA→Bへの売買の事実を知らない(善
     意)わけですから,Cは,その気持ち(主観的要素)に何ら問題の
     ない買主です。
  (2)したがって,BとCのいずれか先に登記を受けた方が対抗力ある
     所有権を取得することになります。
  (3)故に,BがCに対して,甲土地の所有権を対抗(主張)するため
     には,登記が必要です。
  (4)なお,民法では,法律上問題となる事実を知らないことを「善意」
     といいます。逆に,知っていることを「悪意」といいます。これは,
     事例2の所でも勉強しました。

  2 事例2について
  (1)事例2と1の違いは,2番目の買主Cが1番目のAからBへの売
     買契約の事実を知っていた(悪意であった)点にあります。
  (2)この場合,甲土地はBが先に買っているし,そのことをCは知っ
     りながら買っているわけですから,先に買ったBはCに対して,
     登記がなくても「甲土地は,自分のものだ」と主張できないかが,
     問題となります。
  (3)そして,この点については,Cが先にBが買っていることを知っ
     ていながら買うということは道義的には好ましくないかもしれな
     いけれども,売主Aは自分に登記がある間は,B以外の者に売る
     こともできるし,今日の自由競争社会では,CはBが先に買ってい
     ることを知っていたとしても,法律上は,買うことができるとされ
     ています。
  (4)そして,BとCのどちらが優先するかは,登記を先に具備した者が
     優先する,とされています。
  (5)したがって,事例2の場合には,Bが悪意のCに対して,甲土地の
     所有権を対抗(主張)するためには,Cよりも先に甲土地の登記を
     所得する必要があります。
  (6)なお,この理屈は,民法第177条の解釈の問題のとしては, 
     「民法第177条の第三者には,悪意の第三者も含まれる。」と
     いうことです。

☆ 3 事例3について
  (1)事例2と3の違いは,2番目の買主Cが事例2では,1番目のA
     からBへの売買契約の事実を単に知っていた(悪意)だけである
     のに対して,事例3の場合は,2番目の買主Cは単に知っていただ
     けではなく,1番目の買主Bを害する目的を持っていた点にありま
     す。
☆ (2)このように,単に知っている(悪意)だけではなく,それにプラ
     スして前の買主を害する目的を持って行為をしている者のことを
     民法では「背信的悪意者」といいます。
  (3)そして,2番目の買主がこのような背信的悪意者である場合には,
     1番目の買主は,その者に対して,登記がなくても自己の所有権
     を主張することができるのではないかが問題となります。
  (4)そして,この点については,今日の社会が自由競争社会ではあっ
     ても,このような「あくどい悪意者」(背信的悪意者)は信義則
     に反していますので,そのような者を保護することは間違っている
     と考え,1番目の買主は,背信的悪意者に対しては,登記がなく
     ても自らの所有権を対抗(主張)することができる,と解してい
     ます(判例)。
  (5)したがって,事例3の場合は,Cは背信的悪意者ですから,Bは
     Cに対して,登記がなくても,甲土地の所有権を対抗(主張)する
     ことができます。
  (6)なお,以上の理屈は,民法第177条の解釈の問題のとしては,
      「民法第177条の第三者には,背信的悪意者は含まれない。」
     ということです。

 第5 背信的悪意者に当たる具体的場合
  1 ところで,背信的悪意者は,民法の条文に具体的に規定されているの
    ではなく,判例や学説により出来上がった条文解釈理論です。
  2 そして,現在では次のような第三者が背信的悪意者に当たると解さ
    れています。
☆ (1)第1の買主を害する目的で買った第2の買主
     上記事例3のCのような場合です。
☆ (2)第1の買主から登記移転手続を依頼されていた者が,その登記移
     転手続をしないで,自らが第2の買主となって自分に移転登記を
     した者
☆ (3)第1の買主の登記手続きを詐欺や強迫で妨害した第2の買主

 第6 第3者の善意,悪意,背信的悪意と登記の関係のまとめ
  1 物権変動における所有権等を第三者に対抗(主張)するためには,
    原則として,登記が必要です。この原則を第三者の主観的状態 
    により整理すると次のようになります。
  (1)自らの所有権を「善意の第三者」に対抗(主張)する場合には,そ
     の所有権の登記が必要である。
  (2)自らの所有権を「悪意の第三者」に対抗(主張)する場合にも,そ
     の所有権の登記が必要である。
☆☆(3)ただし,自らの所有権を「背信的悪意者である第三者」に対抗(主
     張)する場合には,登記なくして,自らの所有権を主張(対抗)す
     ることができる。

第7 問題と解答
問題1 Aは甲土地をBに売却した。しかし,Bは未だ所有権移転登記を受
    けていなかった。
 (1)この事例で,CがAB間の売買とBが未だ登記を受けていないことを
    聞きつけ,自分が買ってBに高値で売って儲けようと思い,Aから
    甲土地を買い,登記も受けた。この場合,BはCに対し,登記なく
    して甲土地の所有権を対抗することができない,との記述は,民法の
    規定及び判例によれば,正しいか誤っているか。
 (1)の解答:誤っている。
   ア本文事例3で学習したように,不動産の第1の買主は,第2の買主が
    背信的悪意者の場合は,登記無くして,自分の所有権を対抗(主張)
    することができる(判例)。
   イそして,本肢の場合,Cは,AB間の甲土地売買の事実を知ってお
    り悪意であるばかりでなく,Bを害して自分が利得する目的で甲土
    地をAから買っているので,単なる悪意者ではなく,背信的悪意者で
    ある。
   ウしたがって,BはCに対して,登記なくして,甲土地の所有権を対抗
    (主張)することができる。
   エよって,本股の記述は誤っている。

 (2)本問事例において,BがAから買い受けた後に,BがCに甲土地を仮
    装譲渡して,登記はCが受けた。この場合,BはCに対して登記が無
    くても所有権を対抗することができる,との記述は,民法の規定及び
    判例によれば,正しいか誤っているか。
 (2)の解答:正しい。
   ア前回学習したとおり,不動産の仮装譲渡の譲受人は,無権利者であり,
    所有者はその者に対しては,登記なくして所有権を主張することがで
    きる。
   イこの理屈は,第1の買主から仮装譲渡を受けた者が,登記を受けて
    いても,同じである。
   ウしたがって,本肢の場合,仮装譲渡を受けたCは無権利者であり,B
    はCに対して,登記無くして,所有権を対抗(主張)することができ
    る。
   エよって,本股の記述は正しい。

 (3)本問事例において,BがAから甲土地を購入した後で,CがBを強迫
    して,Bの登記申請を妨害して,CがAから甲土地を購入して登記も
    受けた。この場合,BはCに対して,登記無くして所有権を対抗する
    ことができる,との記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか
    誤っているか。
 (3)の解答:正しい。
   アCは,第1の買主Bの登記手続を強迫で妨害した第2の買主であり,
    背信的悪意者である。
   イそして,第1の買主は,背信的悪意者に対しては,登記なくして所
    有権を対抗(主張)することができる。
   ウよって,本股の記述は正しい。

 (4)本問事例において,BがCに登記手続を依頼していたところ,CはB
    への登記手続をせずに,自らが甲土地を買い自己名義に登記手続をし
    た。この場合,BはCに対して登記がなくても所有権を対抗すること
    ができる,との記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか
    誤っているか。
 (4)の解答:正しい。
   アCは,第1の買主Bから登記移転手続を依頼されていた者である。
   イにもかかわらず,その登記移転手続をしないで,自らが第2の買主と
    なって,自分に移転登記をしており,本文で勉強したように,Cは背
    信的悪意者である。
   ウしたがって,BはCに対して,登記無くして自己の所有権を対抗(主
    張)することができる。
   エよって,本股の記述は正しい。
 …………………………
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   ★今回は,ここまでです。
   ★次回は,「物権変動4:物権変動の原因と登記との関係」
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「宅建試験受験講座」29回目:権利関係29 :民法9-2: 物権変動2:登記の要否

2015-04-18 21:16:09 | 宅建試験

「宅建試験受験講座」29回目
 権利関係29 
 民法9「物権変動2:登記の必要な場合と登記の不要な場合」
…………………………
 権利関係第29回 
民法
第9章 物権変動2
第2項 不動産物権変動を第三者に主張(対抗)するときに,登記が必要な場
    合と必要でない場合
 第1 はじめに
  1 前回は,「物権変動」の意味を勉強し,不動産物権変動を第三者に対
    抗(主張)するためには,その物権変動が「対抗要件」を備えてい
    なければならないことを勉強しました。
  2 そして,不動産の物権変動の対抗要件は,「登記」であり,土地や
    建物を買っても登記を受けていなければ,第三者に対抗できないこ
    とも勉強しました。
  3 それでは,土地や建物を買っても,登記がなければ,売主以外のす
    べての第三者に対抗できないのでしょうか。換言すれば,登記がな
    ければ対抗できない第三者と登記がなくても対抗できる第三者とが
    あるのでしょうか。今回の勉強のテーマは,それです。
 第2 登記がなければ対抗できない第三者の範囲について
  1 事例1
  (1)Aは甲建物をBに売却しました。
  (2)BはAから甲建物の引渡しは受け,引越もしましたが,登記はまだ
     受けていませんでした。
  (3)翌朝,Bが目覚めて外に出たら,その家について何の権利も有し
     ていない隣のCが甲建物はAの建物だ,あなたは出て行って下さい,
     と言いました。
  (4)Bは,登記をまだ受けていないのですが,Cに対して,自分が甲建
     物の所有者であることを主張できるのでしょうか,できないのでし
     ょうか。
  2 事例2
   (1)Aは甲建物をBに売却しました。
  (2)BはAから甲建物の引渡しは受けたが,まだ引越しはしておらず,
     登記もまだ受けていませんでした。
  (3)ある日,Bが甲建物に行ったら,何の権利も有していないCがこ
     こが空屋だったので住んでいると言って,住んでいました。
  (4)そこで,BがCに甲建物は自分の建物だから立ち退いて,明け渡し
     てくれと言いました。
     ところが,CはBに対して,あなたは登記を未だ備えていないので,
     私に対して所有権を主張することはできない。私はあなたに言われ
     て出て行く必要はない,と反論してきました。
  (5)この場合,Bは,登記をまだ受けていないので,Cに対して,甲
     建物の所有権者は自分であると主張できないのでしょうか。
  3 事例3
  (1)Aは甲建物をBに売却し,Bは甲建物の引渡を受けました。しかし,
     登記は,まだAのままです。
  (2)次に,Aは甲建物をCに売却して,Cが登記を受けました。
  (3)ある日,Cが甲建物に来て,自分はAから甲建物を買い受け,登
     記も受けている。あなたは甲建物から退去して,甲建物を明け渡し
     てくれと言いました。
  (4)Bは,自分は甲建物の所有者である。甲建物から出て行かない,
     と主張した。
  (5)Bは甲建物から出て行かなくても良いのでしょうか。
  …………………………
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   「宅建試験受験講座」29回目:権利関係29
    民法9-2: 物権変動2:登記の要否
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   ★次回は民法9-3「物権変動3:不動産物権変動と悪意の第三者」
    です。
…………………………


「宅建試験受験講座」28回:権利関係28:民法9:民法第9章「物権変動1」:物権変動総論

2015-04-12 20:47:44 | 宅建試験

民法
第9章 物権変動1(重要)
第1項 物権変動総論
 第1 はじめに
  1 宅地建物取引は,主に土地建物の売買とか賃貸借です。
  2 そして,これらの取引においては,権利としては,主に物権(ぶっ
    けん)と債権(さいけん)が関係してきます。
  3 たとえば,AがBに甲土地を売買するということは,甲土地の所有
    権という物権がAからBに移転することです。
  4 また,AがBに乙建物を賃貸借するということは,Aの乙建物の上
    にBの賃借権という債権が発生することです。
  5 そこで,今日からは,「物権変動」について,勉強します。
 第2 物権とは?
  1 物権とは,物を直接,排他的に支配する権利のことです。
  2 直接支配する権利とは,権利者が他人を介することなく,直接に物
    を支配することができる権利ということです。
  3 排他的に支配する権利とは,他人を排除して権利者が物を支配する
    ことのできる権利という意味です。
  4 そして,この直接,排他的に物を支配する物権の代表は所有権です。
  5 これらのことは,今から学習する「物権変動」の前提として,押さ
    えておくと理解しやすいです。
 第3 物権変動とは
  1 物権変動とは,物権の発生,変更,消滅のことです。
  2 また,物権を取得する権利主体者から見れば,物権の取得,喪失(そ
    うしつ)(失うこと),変更(内容が変わること)のことです。
  3 宅地建物取引で考えれば,売主Aが買主Bに土地や建物を売れば,
    売主Aは売った土地や建物の所有権を失いますし,買主Bは買っ 
    た土地や建物の所有権を取得します。そして,所有権が売主Aから
    買主Bへ移転することを所有権の移転(権利の移転)といいますし,
    これは物権の変動の代表例です。
  4 それでは,上記,売主Aと買主Bの売買において,物権変動,所有
    権移転はいつ起こるのでしょうか。売主Aはいつ所有権を失い,買
    主Bはいつ所有権を取得するのでしょうか。
  5 この点は,ちゃんして決めておかないと実際取引でも困りますし,
    トラブルの原因となりますので,大切です。
  6 そこで,民法第176条は,次のように定めています。
     ★民法第176条(物権の設定及び移転)
       物権の設定及び移転は,当事者の意思表示のみによって,その
       効力を生ずる。
 第4 物権の変動時期
  1 民法第176条の規定で分かりますように,所有権の移転などの物権
    の変動は,当事者の意思表示のみによって,その効力が発生します。
  2 たとえば,売主Aが買主Bに土地や建物を売ったとすれば,
  (1)AB間で「売りましょう」「買いましょう」という意思表示が合致
     して,売買契約が成立したときに,AからBに所有権が移転します。
  (2)買主Bが売買代金を支払ったときとか,売主Aが買主Bに登記を
     移転したときとか,目的物を引き渡したときではありません。
☆ 3 実際の取引において,当事者間で,これと異なる特別の約束(特約)
    をしている場合は別ですが,そうでない場合は,
   ●物権変動は,当事者の意思表示のみによって生じます。

 第5 物権変動の対抗要件
  1 事例
  (1)売主Aは甲建物をBに売却しました。
  (2)更に,Aは甲建物の登記が自分にあるので,これをCに売却しま
     した。
  (3)そして,甲建物の登記はCが取得しました。
  (4)この場合,甲建物の所有権者はBになるのでしょうか,Cになる
     のでしょうか。
  2 この場合の所有権者は,Cになります。
  (1)まず,Aから甲建物を先に買ったのはBです。
  (2)そして,前記のように,物権変動は意思表示のみにより生じます
     から,その時点で一応Bは所有権者になります。
  (3)それでは,Bはその後で甲建物を買ったCに対して,自分が所有
     権者であることを主張してその人に勝つことができるのでしょう
     か。
  (4)この点について,民法は,自分の取得した権利を売主ではない第
     三者に主張して勝つためには,単にその権利を取得するだけでは
     なく,その権利が第三者に主張して勝つための要件も備えていな
     ければならないというルール,決まりを定めています。
  (5)そして,そのルール,決まりの事を「権利変動の対抗要件」と呼
     んでいます。
  (6)そして,動産の物権変動の対抗要件は「その物の所持」ですが(民
     法第178条),不動産の物権変動の対抗要件は,民法第177条に
     より,「登記」です。
  (7)そして,宅地建物取引の対象である,土地,建物は民法第86条1
     項により,不動産です。この点は,今後の勉強の基礎であり,重要
     ですから,まず,条文で確認しておきます。
            ★民法第86条(不動産及び動産)
        ①土地及びその定着物は、不動産とする。
        ②不動産以外の物は、すべて動産とする。

  (8)次に,不動産の物権変動の対抗要件は,「登記」ですから,それを
     中心に勉強してゆきます。
      ★民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
       不動産に関する物権の得喪及び変更は,不動産登記法(平成十
       六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めると
       ころに従いその登記をしなければ,第三者に対抗することがで
      きない。
  (9)したがって,前例の場合,Bは直接の売主であるAに対しては,
     自分が所有者であるということを主張できます。
  (10)しかし,売主ではない第三者Cに対しては,不動産物権変動の
     対抗要件である登記を備えていませんので,自分が所有権者であ
     ることを主張(対抗)することはできません(主張して,勝つこ
     とができません)。
  (11)これに対して,CはAから甲土地の所有権を買い,その所有権
     は対抗要件である登記も備えていますので,その所有権を第三者
     Bに主張(対抗)することができます(主張して,勝つことがで
     きます)。
  (12)したがって,甲建物の所有者はCである,という結論になるの
     です。
  (13)この事例のように,売主が同じ不動産を別々の人にそれぞれ売るこ
     とを二重譲渡といいますが,この場合は,売買の前後によって 
     ではなく,先に登記を備えた者が権利者となります(勝ちます)。
  (14)これを,二重譲渡の場合は,先に登記を備えた者が優先する(完全
     な所有権者となる)といいます。
   (15)なお,この場合に売主Aは甲建物をBに売却したときに甲建物につ
     いては,所有権を失い無権利者となり,その後で,Cに売却しても
     Cは無権利者Aから購入しているので,無権利者ではないか,とい
     う疑問が生じますが,Aが甲建物をCに売却した時点では,未だ登
     記はAに残っており,Aに登記が残っている間は,Aは完全な無権
     利ではなく,甲建物をB以外の者に売ることはできるので,Aから
     Cへの売却も有効であり,先に登記という対抗要件を具備したCの
     所有権がBの所有権に優先し,Cが所有権者となると解されていま
     す。
  (15)このような考え方は,AB間で甲建物の売買契約が成立することに
     よって,甲建物の所有権はBに移転するけれども,Bに登記が移転
     するまでは,その移転は完全な移転ではなく,不完全な移転なので
     AはB以外のCにも甲建物を売ることができるのだ,ということで
     すから,「不完全物権変動説」といいますが,これが,通説判例で
     あり,不動産取引もこの考え方で為されていますし,試験問題も通
     説判例を前提に出題されていますので,ここの物権変動の学習もそ
     れを前提に学習していきます。
  
 第6 売買の各関係と対抗関係
  1 それでは,不動産の売買で対抗関係となる場合と,ならない場合をま
    ず勉強いたします。
  2 売買には,①当事者間の関係,②転々譲渡の関係,③二重譲渡の関係
    がありますが,それらと対抗関係となるか否かについては,
    次のようになります。
☆  (1)当事者間の関係
       売主    甲建物売買          買主
       A ─―――――─―――――→B 
     ア AはBに甲建物を売買した。
     イ この場合,AとBは,対抗関係にはならない。
     ウ したがって,BはAに登記を備えていなくても所有権を主張で
       きます。
  (2)転々譲渡の関係
           売主  ①甲建物売買   買主 ②甲建物売買     買主
      A─―――――──―→B─―――――─――→C
     アAは甲建物をBに売り,それをBがCに売った場合のAとCの関
      係はどうでしょうか。
     イこれは,順々に売買がなされた場合ですから,AとB,BとC,
      AとC,いずれの関係も対抗関係にはなりません。
     ウしたがって,CはAに対して,登記なくして所有権を主張
      できます。
  (3)二重譲渡の関係
                │─―――――─―――→B買主
                │   ①甲建物売買
     A─―│
                │─―――――─―――→C買主
                │  ②甲建物売買
      アAは,まず,甲建物をBに売り,自らに登記のある間に,更に
       甲建物をCにも売った。
      イこの場合,BとCは対抗関係になる。
      ウそして,BCのどちらが優先して所有権者になるか(勝つか)
       については,先に登記を備えた者が勝ち,完全な所有権者とな
       る。
            エなお,ここで,「対抗関係」という言葉は,BとCの所有権が
       対立,抗争する関係にあるという意味もあり,「対立,抗争す
       る関係」を省略して「対抗関係」といっています。
      オしたがって,この場合は,BもCも一応所有者となります。そ
       して,両者の所有権が対立抗争し紛争状態になりますから,民
       法は,先に登記をした方が優先します,完全な所有権を所得し
       ますというル-ルを定めて,この問題を解決しているのです。
 第7 まとめ
  1 まず,物権変動は,意思表示のみで生じる。
☆   ただし,当事者間で物権変動の時期について,特約がある場合には,
    その特約に従う。
  2 次に,前項で生じた物権変動を第三者に対抗するためには,対抗
    要件を備えていなければならない。
  3 そして,不動産の所有権などの物権変動の対抗要件は,登記である。
  4 したがって,不動産の二重譲渡では,先に登記を備えた者が最終的に
    所有者となる。

第8 問題と解説
問題1Aは甲土地をBに売却した。その売買契約においては,Bが売買代
   金を全額支払ったときに,所有権がAからBに移転するとの特約が為
   されていた。
 (1)この場合,AからBへの所有権移転登記が完了していない場合は,
    BがAに代金を全額支払ったとしても,BはAに所有権の移転を
    主張することはできない,との記述は,民法の規定及び判例によれば,
    正しいか誤っているか。
 (1)の解答:誤っている。
  ア まず,本肢は,所有権移転の時期について,AB間でBが売買代
    金を全額支払ったときに,所有権がAからBに移転すると特約して
    いるので,その特約に従わなければならない。
  イ そうすると,BがAに代金を全額支払ったときは,BはAに所有
    権の移転を主張することができる。
  ウ その点については,AからBへの所有権移転登記が完了している
    か否かとは関係がない。
  エ また,AとBの関係は,売買契約当事者間の関係であるから,登記が
    完了していなくても,買主Bは売主Aに所有権を主張することができ
    る。
  オ よって,本股の記述は誤っている。

 (2)本問事例において,AがBとの売買契約締結前に,Cに甲土地を
    売却し,Cから売買代金全額を受領していた。この場合,登記が依
    然Aにあった場合でも,BはAから所有権を取得することはできな
    い,との記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤っている
    か。
 (2)の解答:誤っている。
  ア この場合は,甲土地は,AからC,AからBへと二重譲渡された
    場合であり,BとCのうち,先に登記を備えた者が完全な所有権者と
    なり,勝つ。
  イ ところで,AとBとの関係では,BはAに登記があるうちに甲土地を
    Aから買っているわけですから,BはAに対して,所有権移転登記請
    求をすることができます。
  ウ したがって,本股のように,「BはAから所有権を取得することはで
    きない」ということはありません。
  エ よって,本股の記述は誤っている。

 (3)本問事例において,甲土地はAがBに売却する以前に,CがAか
    ら賃借し,Cがその上に建物を建て,その建物の登記も済ませてい
    た。この場合,BはAに甲土地の売買代金を全額支払った後であれ
    ば,Aから甲土地の所有権移転登記を受ける前でも,BはCに対し
    て自分が甲土地の所有権者であることを主張することができる,との
    記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいか誤っているか。
 (3)の解答:誤っている。
  ア まず,AとBは,Bが甲土地の売買代金を全額支払ったときに,
    所有権がAからBに移転するとの特約の下に,売買契約を為し,A
    はBに売買代金全額を支払ったということであるから,甲土地の所
    有権はBに移転している。
  イ それでは,CはBが登記無くして所有権を主張(対抗)することがで
    きる第三者かであるが,土地の上に建物を建て,その建物の登記をし
    ている土地賃借人に対しては,土地所有者は登記無くしては,その所
    有権を主張(対抗)することができない(判例)。
  エ よって,本股の記述は誤っている。

問題2 Aは自己所有の甲土地をBに売却し引き渡したが,Bはまだ,所有
    権移転登記を受けていない。

 (1)この場合,CがAB間の売買の事実を知らずに甲土地を買い受け,
    所有権移転登記を受けた場合,CはBに対して甲土地の所有権を主
    張することができる,との記述は,民法の規定及び判例によれば,正
    しいか誤っているか。
 (1)の解答:正しい。
  ア 本肢は,不動産の二重譲渡の事例であり,この場合は先に登記を
    取得した者が優先する。契約の前後や売買代金の支払いの前後や
    引渡の前後ではない。
  イ そして,本肢では,Cが先に登記を受けているので,CはBに優
    先し,甲土地の所有権を主張することができる。
  ウ よって,本股の記述は正しい。

 (2)本問事例において,CがAB間の売買の事実を知りながら,甲土地を
    買い受け,所有権移転登記を受けた場合,CはBに対して甲土地の所
    有権を主張することができない,との記述は,民法の規定及び判例に
    よれば,正しいか誤っているか。
 (2)の解答:誤っている。
   ア 不動産の二重譲渡においては,後の買主は先の売買の事実を知り
    ながら買い受けた場合でも,先に登記を受ければ,対抗要件のある
    所有権を取得する。
   イ 後の買主が,先の売買の事実を単に知っていた(悪意)というだ
    けでは,権利が否定される理由にはならないからである。
   ウ よって,本股の記述は誤っている。
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    「宅建試験受験講座」28回目:権利関係28
   民法9: 物権変動1:総論


 
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  ●次回は民法9「物権変動2:登記の要否」です。
 


「宅建試験受験講座」27回目:権利関係27:民法8:民法第8章「担保責任」

2015-02-03 16:59:08 | 宅建試験

  ●はじめに
 ①宅建試験は,学歴,年齢,性別に関係なく誰でも受験できる
   国家試験です。これは,万人を人材とし,万人により社会を
   建設しようという日本の良き伝統の表れです。
 ② そこで,電子書籍版「宅建試験受験講座」を万人に利用し
   ていたただけたらと思い,GOOブログに掲載させて頂くこ
   とと致しました。
 ③今回(27回目)の学習テーマは,民法第8章「担保責任」
   です。
 ③「担保責任」という言葉も,日常生活では,聞き慣れない
   言葉ですが,
 ④例えば,AがBに土地を100坪あると言って売却したとこ
   ろが,土地は95坪しかなかったとします。そうしますと,
   売主Aは土地の面積は100坪あることを「担保」して売り,
   買主Bは100坪あることを前提とした値段で買っているわ
   けですから,5坪不足していることによる法律関係はどうな
   るのでしょうか。
 ⑤また,AがBに建物を売ったとします。そして,BはAに売
   買代金を支払い,Aからその建物の引渡しを受けたところが,
   その建物は白蟻に食われ,居住には危険な状態だったとしま
   す。この場合は,Aはどのような責任を負い,Bはどのよう
   な請求ができるのでしょうか。
 ⑥担保責任の問題は,土地や建物の取引を業とする宅建業者に
   とっては,大変重要な問題であり,宅建試験にも良く出題さ
   れます。
 ⑦この単元では,次の勉強を致します。
    民法
  第8章 売主の担保責任(重要)
    第1項 売主の担保責任の総論
   第1 売主の担保責任とは?
      第2 担保責任制度の準用範囲
      第3 担保責任の種類
      第4 権利の瑕疵による担保責任(追奪担保責任)とは?
  ☆第2項 権利の全部が他人に属する場合の売主の担保責任
   第1 事例
    ☆第2 他人の権利を売買の目的とすることができるのか。
    ☆第3 他人の権利を売買した場合の売主の担保責任
     第4 買主に代金減額請求権は発生するか。
      第5 権利の行使期間の定めはあるか。
 ☆第3項 他人の権利を知らずに売却した売主の解除権
    第4項 問題と解説
    第5項 権利の一部が他人に属する場合の売主の担保責任
      第1 事例
    ☆第2 買主の代金減額請求権
    ☆第3 買主の契約解除権
      第4 買主の損害賠償請求権
      第5 権利の行使期間
    ☆第6 売主に過失は必要か。
      第7 問題と解説
  第6項 数量指示売買における数量不足・一部滅失の場合の
      売主の担保責任
      第1 事例
      第2 数量指示売買における売主の担保責任一般
    ☆第3 売主の担保責任
        1  代金減額請求権
        2 契約解除権
        3 損害賠償請求権
    ☆第4 権利の行使期間
      第5 問題と解説
    第7項 抵当権等による制限のある場合の売主の担保責任
      第1 事例
     第2 売主の担保責任
        1 買主に発生する請求権
      ☆2 買主の契約解除権
     ☆3 買主の損害賠償請求権
      ☆4 買主の費用償還請求権
    ☆第3 問題と解説
   第8項 地上権等による制限の場合の売主の担保責任
      第1 事例
      第2 売主の担保責任
    1 買主に発生する請求権
    2 買主の契約解除権
        3 買主の損害賠償請求権
      第3 問題と解説
    第9項 物の瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
   第1 はじめに
      第2 物の瑕疵とは?
    ☆第3 物の「隠れた瑕疵」とは?
    ☆第4 売主の担保責任の内容
    1 買主に発生する権利
        2 具体的事例による解説
    ☆第5 買主の契約解除権(民法第566条1項)
    1から3 買主の要件の総論
    ☆ 4 買主の善意
    ☆ 5 買主の無過失
    ☆ 6 買主がその瑕疵があることにより,契約をした目的
      を達成ることができなかった場合
    ☆第6 買主の損害賠償請求権
    ☆第7 売主に過失は必要か。
   ☆第8 契約解除権,損害賠償請求権の行使期間
    ☆第9 「売主の瑕疵担保責任」免除特約は有効か。
  ☆第10 建物の瑕疵と土地の瑕疵の区別について
    ☆第11 問題と解説
    ☆第12 担保責任等に関する総合問題と解説
    …………………
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  「宅建試験受験講座」27回目:権利関係27
   民法8: 担保責任
      (購読料:50円)
      (一部無料の試し読みページ有り)
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   ●次回は民法9「物権変動」です。


権利関係3回目-虚偽表示

2010-08-12 18:27:26 | 宅建試験
権利関係3回目
第4項 虚偽表示(きょぎひょうじ)(民法94条)
 第1 虚偽表示とは?
  1 虚偽表示とは,相手方と通謀(つうぼう)(共謀)(「あい通じて」
    という意味です。)して,虚偽(きょぎ=うその意味です。)の意
    思表示をした場合のことです。これを虚偽表示とか通謀虚偽表示(つ
    うぼうきょぎひょうじ)と言います。
  2 意思表示は,本来,それぞれが自分で自主的に本心からの意思(真意)
    を,相手方に表示するものです。
  3 したがって,相手方と通じて,しかも,本心(真意)からではない
   「うその意思を表示」した場合に,そのような意思表示による契約
    は有効かどうかが問題となるわけです。
  4 なお,この虚偽表示による売買契約は,債権者の差押えをまぬがれ
    るために自分の土地を他人に売ったように仮装(かそう,かりによそ
    おうことです。)する場合によく使われます。
 第2 虚偽表示の効果
    それでは,虚偽表示により契約を仮装した場合,どうなるのでしょうか。
  1 当事者間での効力
 (1)図式       
                   ↓―― 合意を仮装(かそう)
  甲土地             |
  売主A――――――――――――→←――――――――――― 買主B
      ①Aは売ると仮装         ②Bは買うと仮装
       (本心は売らない)       (本心は買わない)

 (2)虚偽表示の場合,契約当事者双方とも,本心(真意)は売ったり,
   買ったりする意思がないのですから,この契約は当事者間では無効で
   す。
 (3)無効とは,最初から,契約としての効力を生じないという意味です。
 (4)なお,「詐欺による意思表示」のところでは,「取消し」という言
    葉が出てきましたが,「取消し」と「無効」の違いは,
   ①取消しとは,最初,契約は有効に成立するが,後で取り消したら,
    契約は効力がなくなる,という意味で,
   ②無効とは,最初から契約は効力が生じないという意味です。
 2 第三者との関係はどうなるか
 (1)図式
   甲土地
   売主A――――――→買主B――――――→第三者C
      ①仮装売買          ②売買
 (2)図のように,まず,売主Aと買主Bとの間で「虚偽表示としての売
    買契約」がなされ,その後Bが,AからBへの虚偽の売買契約書や
    虚偽の登記を利用して,その土地をCに売った場合,AはCに対し
    て,AB間の売買は虚偽の売買で無効であり,その土地の所有権は
    自分にあるからその土地を返してくれと主張できるかが問題となり
    ます。
 (3)第三者Cが善意の場合
  ア 第三者Cが,AB間の売買契約は仮装であるという事実を知らなか
    った場合(これを「善意」といいます。)は,Aは自らの所有権を
    Cに対抗する(主張する)ことができません。
  イ この場合,Bの登記などを信頼して,Bと売買契約をしたCには何
    ら落ち度がないにもかかわらず,AにはBとあい通じて,虚偽の売
    買契約書を作成したり,Bを登記名義人とする虚偽の登記を仮装(か
    そう,「いつわりよそおう」こと)したという責任があるからです。
  ウ そして,この第三者Cの「善意」は,契約の時に,善意であればよ
    く,契約後に悪意(ABの仮装を知ること)となっても,「善意の
    第三者」として保護されます。
  (ア)Cが善意か悪意かの判断は,契約時を基準として判断するという
    のが,民法のルールなのです。
  (イ)したがって,第三者Cは,Bと売買契約をするときに,AB間の
    売買契約は虚偽表示によるものであるということを知らなかったと
    きは,契約の後で,AB間の売買契約は虚偽表示によるものである
    ということを知ったとしてもCは保護され,所有権者となります。
  エ また,この第三者Cは,「善意」であれば良く,「無過失」(落度
    のないこと)であることは要求されません。相手側のAとBに「虚偽
    の外観」(うその外観)を作り出したという強い責任があるからで
    す。
 (4)第三者Cが悪意の場合
  ア 第三者Cが,AB間の売買契約は仮装であるという事実を知ってい
    た場合(これを「悪意」と言います。)は,AはCに自らの所有権
    を対抗する(主張する)ことができます。
  イ その結果,AはCに対して甲土地の返還を請求できます。
  ウ Cは,AB間の売買が仮装(かそう)であることを知っているわけ
    ですから,Aの犠牲のもとにCを保護する必要はないからです。
第3 転得者に対する効果-転得者が善意の場合
 1 それでは,悪意の第三者Cが善意の転得者Dに売却した場合,Dは
   どうなるのでしょうか。
 2 図式                     悪意           善意
   売主A―――――→買主B――――→第三者C――――→転得者D
   甲土地 ① 虚偽表示     ②売買         ③売買

 3 上の図のように,AB間で売買を仮装し,Bが悪意の第三者Cにその
   土地を売買し,Cが更に善意のD(転得者)に売買した場合,AはD
   に対して,虚偽表示による無効を対抗(主張)できるか,という問題
   です。
 (1)まず,AはCに対しては,Cが悪意ですから,AB間の売買契約は
    虚偽表示により無効であることを対抗(主張)できます。
 (2)それでは,Aは第三者Cより買い受けたD(転得者)に対して無効
    を主張(対抗)できるのでしょうか。
 (3)転得者Dは,AB間の売買契約が虚偽表示による仮装のものだとい
    うことを知らない(善意)ので,Dには対抗できません。つまり,
    転得者Dが善意の場合は,転得者が甲土地の所有権者となります。
 4 ただし,転得者Dが悪意の場合,第三者Cも転得者Dも悪意の場合は,
   AはDに自らの所有権を主張することができます。
 (1)つまり,Dは甲土地の所有権者とはなりません。
 (2)このように,第三者Cが悪意の場合,C以後の転得者が所有権を取
    得するかどうかは,その転得者が善意か悪意かにより決まります。
 (3)そして,このような理論を「相対主義」といっています。
 5 ところで,法律用語の問題として,転得者とは第三者から目的物を取
   得した者のことです。
第4 第三者が善意で,転得者が悪意の場合は,どうか。
 1 図式                      善意           悪意
   売主A―――――→買主B――――→第三者C――――→転得者D
      ① 虚偽表示      ②売買         ③売買
 2 この場合,Aは,善意の第三者Cが現れた時点で,虚偽表示による無
   効をCに主張(対抗)することができません。
 3 ということは,その時点でAの「虚偽表示による無効を主張(対抗)
   する権利」(追求力)は消滅し,Cが完全な権利者となります。
 4 そして,転得者Dは完全な権利者たるCから買っていますから,仮
   に,AB間の売買が虚偽表示てるあることを知っていたとしても,完
   全な権利を取得します(判例)。
 5 したがって,AはDに対して「虚偽表示による無効」を対抗(主張)
   することはできません。
 6 このように考えるのが,一般的です。
 7 転得者が登場してきた場合のまとめ
 (1)第三者が悪意でも,転得者が善意の場合は,転得者が所有権を取得
    する。
 (2)第三者が善意の場合は,転得者が悪意でも,転得者が所有権を取得
    する。
………………
★今回は,ここまでと致します。
★転記・転載,著作権違反行為は厳禁ということでお願い致します。