●司法書士試験・宅建試験
○先取特権1-先取特権の意義・種類
問題1 先取特権は,優先弁済的効力を有しない。
問題1 まちがい。
(1)先取特権は,優先弁済権ある担保物権である。
(2)したがって,債権の弁済が得られないときは,先取特権の
目的物から優先して弁済を受けられる。
(3)よって,本肢はまちがいである。
問題2 不動産売買の先取特権者が,当該先取特権の目的不動産
についてなされた賃貸借の賃料を差し押さえた場合,先取特
権の効力は,その賃料に及ぶ。
問題2 正しい。
(1)先取特権は,物上代位性を有し,先取特権の目的不動産が
賃貸借された場合には,その賃料につき物上代位すること
ができ,その賃料を差し押さえた場合には,先取特権の効
力は,その賃料に及ぶ(民法第304条)。
(2)よって,本股は正しい。
問題3 乙は甲の所有するゴッホの絵を盗みだし,第三者に売却
することをもくろんで,事情を知らない丙に傷んだ箇所の
修復を依頼した。丙は,修復作業を終えたところ,甲から絵
の返還請求を受けた。この場合,丙は,動産保存の先取特権
を有することを理由として,甲に絵の返還を拒むことができる。
問題3 まちがい。
(1)民法第311条により,動産保存の先取特権は,「債務者の特
定の動産」について成立する。
(2)ところで,本問の場合,丙にゴッホの絵の修理を依頼した
のは,甲ではなく乙であるから,修理代金の債務者は乙で
あり,ゴッホの絵はその乙の物ではないから,絵について
は,動産保存の先取特権は成立しない。
(3)よって,本股はまちがいである。
(4)なお,本問の場合,丙の修理代金はその絵に関して生じた
債権であるから,丙は民法第295条1項の留置権に基づい
て返還を拒むことができる。
問題4 甲に対して貸金債権を有している乙は,その支払を命ず
る確定判決に基づき,甲宅に備え付けられた甲所有の高級
タンスを差し押さえて競売した。その後競売代金につき,債
権者AからEが,配当要求してきた。この場合乙に優先する
ものを選んだ場合,その組合せとして最も適切なものはど
れか。
●まず,本問では,乙の債権は貸金債権であるから,
これは一般債権である。
●そして,設問は乙に優先するものの組合せというこ
とであるから,乙の一般債権に優先する債権者を選
べば良い。
A 甲の指示でタンスを搬入中,甲の過失で傷害を負ったが,まだ
その損害賠償金の支払を受けていない者
●この場合の負傷者の損害賠償請求債権は,運送費用
ではないから「運送に関する債権」とはいえず,一
般債権である。
●したがって,Aの者は乙に優先しない。
B 甲にタンスを月賦で売り渡したが,代金の支払を受けていない者
●タンスの売買代金債権は,民法第311条5号の「動
産の売買代金債権」に当たり,その売買の目的物で
あるタンスについては,動産の先取特権が成立する。
●したがって,Bの者は乙に優先する。
C 甲居住の家屋の賃貸人で,甲から1年分の賃料を受け取って
いない者
●不動産の賃貸借の賃料債権は,民法第311条1号の
「不動産賃貸借債権」に当たり,その家屋内に置い
ている動産に対しては,動産の先取特権が成立する。
●よって,Cの者は乙に優先する。
D 甲から依頼されてタンスの修理をしたが,費用の支払を受け
ていない者
●タンスを修理した者の修理代金は,民法第306条1
号の「共益費」に当たり,一般の先取特権が成立する。
●したがって,乙に優先する。
E 甲から依頼を受けてタンスの購入の代理人となったが,委任
事務に関して要した費用の償還を受けていない者
●委任事務費用については,先取特権は成立しない。
●したがって,Eの者は乙に優先しない。
● 以上,検討の結果,乙に優先するのは,BCDの者であり,
正解は4である。
1AB 2AD 3CE 4BCD 5BDE
問題4 正解4
問題5 不動産賃貸の先取特権は,賃借人が第三者から預かって
賃借不動産内に保管している動産には及ばない。
問題5 まちがい。
(1)不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃
貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産に
ついて存在する。」と規定している。
(2)したがって,不動産賃貸の先取特権の及ぶ範囲は,原則と
して、債務者である賃借人が所有する動産である。
(3)それでは,賃借人が第三者から預かって賃借不動産内に保
管している動産には及ぶことはないかであるが,民法第
319条は,民法第192条の動産の即時取得の制度を不動産
賃貸の先取特権にも準用している。
(4)したがって,賃借人が第三者の物を賃借不動産内で保管し
ている場合に,賃貸人がその動産を賃借人(債務者)の物
であると信じ,信じたことに過失がなかった場合には,賃
貸人の不動産賃貸の先取特権は,その物にも及ぶ。
(5)よって,本肢は間違いである。
問題6 抵当不動産の第三取得者は,抵当不動産について有益費
を支出したときは,その不動産上に不動産保存の先取特権
を有する。
問題6 まちがい。
(1)有益費とは,目的物の価値の増加のために支出された費用
のことであるが,抵当不動産の第三取得者が抵当不動産に
有益費を支出した場合については,民法第391条が,「抵
当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受け
ることができる。」旨規定しています。有益費の支出は,
他の債権者の利益にもなっているからです。
(2)したがって,有益費用の支出は,民法第326条の「不動産
保存の先取特権」となるわけではありません。
(3)よって,本肢は間違いである。
(4)なお,不動産保存の先取特権の「不動産の保存費用」とは,
①物体としての不動産の滅失や毀損を防ぐための修理工事
に要した費用とか,②その不動産の権利の保存費用です。
問題7 不動産工事の先取特権は,工事の費用の全額につきその
不動産上に存在する。
問題7 まちがい。
(1)不動産工事の先取特権については,民法第327条が次のよ
うに規定しています
★民法第327条
①不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をす
る者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その
不動産について存在する。
②前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増
加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
……
(2)したがって,不動産工事の先取特権は,①不動産工事によ
って不動産の価額が増加し,かつ,その増加が現存する場合
に限り、②その不動産の増価額についてのみ,不動産工事の
先取特権が成立するのです。
(3)よって,本肢は間違いです。
…………………………以上
○先取特権1-先取特権の意義・種類
問題1 先取特権は,優先弁済的効力を有しない。
問題1 まちがい。
(1)先取特権は,優先弁済権ある担保物権である。
(2)したがって,債権の弁済が得られないときは,先取特権の
目的物から優先して弁済を受けられる。
(3)よって,本肢はまちがいである。
問題2 不動産売買の先取特権者が,当該先取特権の目的不動産
についてなされた賃貸借の賃料を差し押さえた場合,先取特
権の効力は,その賃料に及ぶ。
問題2 正しい。
(1)先取特権は,物上代位性を有し,先取特権の目的不動産が
賃貸借された場合には,その賃料につき物上代位すること
ができ,その賃料を差し押さえた場合には,先取特権の効
力は,その賃料に及ぶ(民法第304条)。
(2)よって,本股は正しい。
問題3 乙は甲の所有するゴッホの絵を盗みだし,第三者に売却
することをもくろんで,事情を知らない丙に傷んだ箇所の
修復を依頼した。丙は,修復作業を終えたところ,甲から絵
の返還請求を受けた。この場合,丙は,動産保存の先取特権
を有することを理由として,甲に絵の返還を拒むことができる。
問題3 まちがい。
(1)民法第311条により,動産保存の先取特権は,「債務者の特
定の動産」について成立する。
(2)ところで,本問の場合,丙にゴッホの絵の修理を依頼した
のは,甲ではなく乙であるから,修理代金の債務者は乙で
あり,ゴッホの絵はその乙の物ではないから,絵について
は,動産保存の先取特権は成立しない。
(3)よって,本股はまちがいである。
(4)なお,本問の場合,丙の修理代金はその絵に関して生じた
債権であるから,丙は民法第295条1項の留置権に基づい
て返還を拒むことができる。
問題4 甲に対して貸金債権を有している乙は,その支払を命ず
る確定判決に基づき,甲宅に備え付けられた甲所有の高級
タンスを差し押さえて競売した。その後競売代金につき,債
権者AからEが,配当要求してきた。この場合乙に優先する
ものを選んだ場合,その組合せとして最も適切なものはど
れか。
●まず,本問では,乙の債権は貸金債権であるから,
これは一般債権である。
●そして,設問は乙に優先するものの組合せというこ
とであるから,乙の一般債権に優先する債権者を選
べば良い。
A 甲の指示でタンスを搬入中,甲の過失で傷害を負ったが,まだ
その損害賠償金の支払を受けていない者
●この場合の負傷者の損害賠償請求債権は,運送費用
ではないから「運送に関する債権」とはいえず,一
般債権である。
●したがって,Aの者は乙に優先しない。
B 甲にタンスを月賦で売り渡したが,代金の支払を受けていない者
●タンスの売買代金債権は,民法第311条5号の「動
産の売買代金債権」に当たり,その売買の目的物で
あるタンスについては,動産の先取特権が成立する。
●したがって,Bの者は乙に優先する。
C 甲居住の家屋の賃貸人で,甲から1年分の賃料を受け取って
いない者
●不動産の賃貸借の賃料債権は,民法第311条1号の
「不動産賃貸借債権」に当たり,その家屋内に置い
ている動産に対しては,動産の先取特権が成立する。
●よって,Cの者は乙に優先する。
D 甲から依頼されてタンスの修理をしたが,費用の支払を受け
ていない者
●タンスを修理した者の修理代金は,民法第306条1
号の「共益費」に当たり,一般の先取特権が成立する。
●したがって,乙に優先する。
E 甲から依頼を受けてタンスの購入の代理人となったが,委任
事務に関して要した費用の償還を受けていない者
●委任事務費用については,先取特権は成立しない。
●したがって,Eの者は乙に優先しない。
● 以上,検討の結果,乙に優先するのは,BCDの者であり,
正解は4である。
1AB 2AD 3CE 4BCD 5BDE
問題4 正解4
問題5 不動産賃貸の先取特権は,賃借人が第三者から預かって
賃借不動産内に保管している動産には及ばない。
問題5 まちがい。
(1)不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃
貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産に
ついて存在する。」と規定している。
(2)したがって,不動産賃貸の先取特権の及ぶ範囲は,原則と
して、債務者である賃借人が所有する動産である。
(3)それでは,賃借人が第三者から預かって賃借不動産内に保
管している動産には及ぶことはないかであるが,民法第
319条は,民法第192条の動産の即時取得の制度を不動産
賃貸の先取特権にも準用している。
(4)したがって,賃借人が第三者の物を賃借不動産内で保管し
ている場合に,賃貸人がその動産を賃借人(債務者)の物
であると信じ,信じたことに過失がなかった場合には,賃
貸人の不動産賃貸の先取特権は,その物にも及ぶ。
(5)よって,本肢は間違いである。
問題6 抵当不動産の第三取得者は,抵当不動産について有益費
を支出したときは,その不動産上に不動産保存の先取特権
を有する。
問題6 まちがい。
(1)有益費とは,目的物の価値の増加のために支出された費用
のことであるが,抵当不動産の第三取得者が抵当不動産に
有益費を支出した場合については,民法第391条が,「抵
当不動産の代価から、他の債権者より先にその償還を受け
ることができる。」旨規定しています。有益費の支出は,
他の債権者の利益にもなっているからです。
(2)したがって,有益費用の支出は,民法第326条の「不動産
保存の先取特権」となるわけではありません。
(3)よって,本肢は間違いである。
(4)なお,不動産保存の先取特権の「不動産の保存費用」とは,
①物体としての不動産の滅失や毀損を防ぐための修理工事
に要した費用とか,②その不動産の権利の保存費用です。
問題7 不動産工事の先取特権は,工事の費用の全額につきその
不動産上に存在する。
問題7 まちがい。
(1)不動産工事の先取特権については,民法第327条が次のよ
うに規定しています
★民法第327条
①不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をす
る者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その
不動産について存在する。
②前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増
加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。
……
(2)したがって,不動産工事の先取特権は,①不動産工事によ
って不動産の価額が増加し,かつ,その増加が現存する場合
に限り、②その不動産の増価額についてのみ,不動産工事の
先取特権が成立するのです。
(3)よって,本肢は間違いです。
…………………………以上
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