●司法書士試験
○留置権3-留置権の効力
問題1 留置権者は,債権の弁済を受けないまま留置物の一部を債務者に引
き渡した場合であっても,債権全額の弁済を受けるまでは,留置物の
残部につき留置権を主張することができる。
問題1 正しい。
(1)留置権は担保物権であり,民法第296条が「留置権者は、債権の全部
の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使するこ
とができる。」と規定しており,不可分性を有する。
(2)したがって,留置物の一部について留置権が消滅しても,留置物の残
部につき,債権全額の留置権を行使することができる。
(3)よって,本股は正しい。
問題2 動産留置権と動産質権は,いずれも被担保債権全額の弁済を受ける
まで目的動産を留置することができる権利である。
問題2 正しい。
(1)留置権については,民法第296条が「留置権者は、債権の全部の弁済を
受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができ
る。」と規定しており,動産留置権についても被担保債権全額の弁済を
受けるまでは目的動産を留置することができる。これを留置権の不可
分性という。
(2)質権については,民法第347条(質物の留置)が「質権者は、前条に
規定する債権(元本,利息等の債権)の弁済を受けるまでは、質物を
留置することができる。」旨規定しており,動産質権は,被担保債権全
額の弁済を受けるまで目的動産を留置することができる。
(3)よって,本股は正しい。
問題3 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産から生じた果実につき
優先弁済を受けることができる権利である。〔14-10-エ〕
問題3 正しい。
(1)留置権は,本来,留置的効力で,優先的効力は有さない。
(2)しかし,目的物を占有留置する関係で,目的物から生じた果実につい
ては,民法第297条1項が「①留置権者は、留置物から生ずる果実を
収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当す
ることができる。」と規定しており,目的動産から生じた果実につき
優先弁済権を有する。
(3)そして,質権については,民法第350条が留置権に関する民法第297
条を準用しているので,動産質権も目的動産から生じた果実につき
優先弁済権を有する。
(4)よって,本股は正しい。
問題4 留置権者が債務者の承認を得ずに留置物を第三者に貸貸した場合,
その賃料は弁済に充当できず,不当利得として返還することを要す
る。(3-3-1)
問題4 正しい。
(1)留置権者は,留置物を留置する権利は有するが,債務者の承諾なくし
てその物を使用したり,賃貸したりする権利は有しない。
(2)したがって,本問のように留置物を第三者に賃貸して賃料を受領した
場合は,その賃料は,留置権者としては,法律上の原因なくして得た
利得ということになり,不当利得である。
(3)故に,留置権者はその賃料をその留置物の所有者に返還しなければな
らない(民法第703条)。
(4)よって,本股は正しい。
問題5 賃貸借終了後,借家人が修繕費を担保するために家屋を留置してい
る場合,保存行為として当該家屋を使用したことの対価は不当利得
として所有者たる債務者に返還することを要しない。〔3-3-2〕
問題5 まちがい。
(1)まず,家屋の修繕費は,物の保存に必要な費用であるから,必要費で
ある。
(2)そして,借家人が賃借家屋に必要費を支出した場合には,その支出し
た必要費を所有者から償還してもらう必要費償還請求権を有し,その
償還請求権に基づき,家屋を留置することができる(大判昭10.5.13)。
(3)そして,その留置期間中その家屋を使用することは,保存行為(民法
第298条2項ただし書)として,許される。
(4)それでは,賃借人はその使用に対する対価の支払いはしなくてもよい
のかであるが,現実にその家屋を使用しているわけであるから,それ
は支払わなければならない。
(5)そして,賃借人のその使用は,賃貸借という法律上の原因のない利得
ということができるから,賃借人は賃料相当損害金を不当利得として
所有者である債務者に支払わなければならない。
(6)よって,本股はまちがいである。
問題6 甲が乙から自動車を買い受けたが,その自動車を占有する丙が,乙に
対するその自動車の修繕代金債権に基づき留置権を行使した場合に
おいて,丙が甲の承諾を得ることなく勝手にその自動車を使用して
いるときは,甲は,丙に対し留置権の消滅を請求することができる。
問題6 正しい。
(1)民法第298条により,留置権者はその留置物を善管注意義務によって
占有しなければならず,留置物を使用してはならず,これに違反した
場合には,債務者は留置権の消滅を請求することができる。
(2)ところでこの債務者とは,当該留置物の所有者の意味であるから,本
問のようにその自動車を買い受けて所有者となった甲は,丙に対し留
置権の消滅を請求することができる。
(3)よって,本股は正しい。
★民法第298条(留置権者による留置物の保管等)
①留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなけれ
ばならない。
②留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、
又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な
使用をすることは、この限りでない。
③留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消
滅を請求することができる。
問題7 「留置物の使用の承諾は,留置物に関する債務者の処分行為の一つで
ある。したがって,留置物の所有権が債務者から第三者に移転した場
合において,新所有者が留置物の所有権取得について対抗要件を具
備するよりも前に留置権者が債務者から留置物の使用の承諾を受け
ていたときは,新所有者は,留置権者に対し,留置物の使用を理由に留
置権の消滅請求をすることはできない。」という見解がある。
次のアからオまでの記述のうち,この見解と矛盾するものの組合せ
は,後記1から5までのうちどれか。〔14-13〕
ア 留置物の使用の承諾は,留置権者の果実収取権を確定的なもの
とする意味を有する。
●債務者が留置権者に留置物の使用を承諾するというこ
とは,留置権者の果実取得権の前提である「目的物の
占有」を債務者が争わないことを意味するが,
●そのことと,本問の「新所有者が対抗要件を具備する
前に,旧所有者が留置物の使用の承諾をしていた場合
は,新所有者は留置権の消滅を請求することができな
い,」との見解とは,別の次元の事柄であり,
●相矛盾するものではない。
イ 留置物の使用の承諾は,意思表示のほかに格別の要件を必要としな
い。
●本肢の記述は,民法第298条2項の「留置物の使用の承
諾」の法的性質に関する記述であり,
●本問の新所有者が対抗要件を具備する前に,旧所有者が留置
物の使用の承諾をしていた場合は,新所有者は留置権の消
滅を請求することができない,」との見解と相矛盾するも
のではない。
ウ 留置権の本来的な効力は,留置権者が被担保債権の弁済を受けるま
で留置物の引渡しを拒むことができるということにあるから,留置
物の使用の承諾は,債権的な効力を有する。
●留置物の使用の承諾が債権的効力であるとすると,留
置物の使用の承諾は,留置権者と債務者間のみの効力
となり,新所有者である第三者を拘束しない。
●よって,本股は本問の見解と矛盾する。
エ 債務者は,留置物の所有権を第三者との関係で確定的に失った
後も,留置権者に対して留置物の使用の承諾をすることができ
る。
●本問は,「新所有者が留置物の所有権取得について対抗
要件を具備するよりも前に」「留置権者が債務者から
留置物の使用の承諾を受けていたとき」の見解であ
るのに対して,
●本肢は,「債務者が所有権を第三者との関係で確定的に
失った後も」つまり,第三者が対抗要件(登記)を具備
した後も,債務者は債務者は留置物の使用の承諾をする
ことができるとの見解である。
●よって,両者は相矛盾する。
オ 留置権者が承諾の範囲を超えて留置物を使用した場合には,承
諾を与えた債務者は,留置権の消滅請求をすることができる。
●本肢の記述は,留置権者が承諾の範囲を超えて使用した
場合はどうなるかの問題であり,本問とは次元が異なり
●両者は相矛盾する関係にはない。
●以上,アからオまでの肢の検討の結果と,本問解答肢を対照した
結果,正解肢は4である。
1アイ 2アオ 3イウ 4ウエ 5エオ
問題7 正解4
問題8 留置権者が留置物の占有を継続している間は,被担保債権の消滅時
効は,進行しない。(61-2-5)
問題8 まちがい。
(1)被担保債権の消滅時効は,その債権の行使により中断する。
(2)ところで,留置権者の「留置物に対する留置権の行使」と留置権者が
債務者に対して有している「債権の行使」とは別であり,留置物の占
有を継続していても,被担保債権の消滅時効は進行する(民法第300
条)。
(3)よって,本股はまちがいである。
問題9 留置権者は,目的物を競売に付する権利を有しない。(13-9-ア)
問題9 まちがい。
(1)留置権は,民法上,優先弁済権が認めておらず,目的物の価値を支
配権を有さない。
(2)しかし,民事執行法195条は、留置権者に競売権を与えており,留置権
者は,目的物を競売に付する権利を有する。
(3)よって,本股はまちがいである。
(4)なお,民事執行法が留置権者に競売権を与えている趣旨は,留置権者
が、永く債権の弁済を受けずに,いつまでも目的物を留置しておくことの
不都合を解消するためのものであり,民事執行法が留置権者に優先弁
済権を認めたものではない。
(5)したがって,留置権者がこの競売権を行使した場合にも,留置権者は
その換価金から優先弁済を受ける権利はなく,その換価金の上に留置
権が存在する,にとどまる。
問題10 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産の滅失によって債務者
が取得すべき金銭その他の物に対して代位することができる権利
である。〔14-10-オ〕
問題10 まちがい。
(1)留置権には,物上代位性がないので,留置権は,目的物の滅失による
債務者が取得すべき金銭その他の物に対して代位しない。
(2)これに対して,質権には物上代位権がある(民法第350条,同第304条)。
(3)よって,本股はまちがいである。
…………………………以上
○留置権3-留置権の効力
問題1 留置権者は,債権の弁済を受けないまま留置物の一部を債務者に引
き渡した場合であっても,債権全額の弁済を受けるまでは,留置物の
残部につき留置権を主張することができる。
問題1 正しい。
(1)留置権は担保物権であり,民法第296条が「留置権者は、債権の全部
の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使するこ
とができる。」と規定しており,不可分性を有する。
(2)したがって,留置物の一部について留置権が消滅しても,留置物の残
部につき,債権全額の留置権を行使することができる。
(3)よって,本股は正しい。
問題2 動産留置権と動産質権は,いずれも被担保債権全額の弁済を受ける
まで目的動産を留置することができる権利である。
問題2 正しい。
(1)留置権については,民法第296条が「留置権者は、債権の全部の弁済を
受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができ
る。」と規定しており,動産留置権についても被担保債権全額の弁済を
受けるまでは目的動産を留置することができる。これを留置権の不可
分性という。
(2)質権については,民法第347条(質物の留置)が「質権者は、前条に
規定する債権(元本,利息等の債権)の弁済を受けるまでは、質物を
留置することができる。」旨規定しており,動産質権は,被担保債権全
額の弁済を受けるまで目的動産を留置することができる。
(3)よって,本股は正しい。
問題3 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産から生じた果実につき
優先弁済を受けることができる権利である。〔14-10-エ〕
問題3 正しい。
(1)留置権は,本来,留置的効力で,優先的効力は有さない。
(2)しかし,目的物を占有留置する関係で,目的物から生じた果実につい
ては,民法第297条1項が「①留置権者は、留置物から生ずる果実を
収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当す
ることができる。」と規定しており,目的動産から生じた果実につき
優先弁済権を有する。
(3)そして,質権については,民法第350条が留置権に関する民法第297
条を準用しているので,動産質権も目的動産から生じた果実につき
優先弁済権を有する。
(4)よって,本股は正しい。
問題4 留置権者が債務者の承認を得ずに留置物を第三者に貸貸した場合,
その賃料は弁済に充当できず,不当利得として返還することを要す
る。(3-3-1)
問題4 正しい。
(1)留置権者は,留置物を留置する権利は有するが,債務者の承諾なくし
てその物を使用したり,賃貸したりする権利は有しない。
(2)したがって,本問のように留置物を第三者に賃貸して賃料を受領した
場合は,その賃料は,留置権者としては,法律上の原因なくして得た
利得ということになり,不当利得である。
(3)故に,留置権者はその賃料をその留置物の所有者に返還しなければな
らない(民法第703条)。
(4)よって,本股は正しい。
問題5 賃貸借終了後,借家人が修繕費を担保するために家屋を留置してい
る場合,保存行為として当該家屋を使用したことの対価は不当利得
として所有者たる債務者に返還することを要しない。〔3-3-2〕
問題5 まちがい。
(1)まず,家屋の修繕費は,物の保存に必要な費用であるから,必要費で
ある。
(2)そして,借家人が賃借家屋に必要費を支出した場合には,その支出し
た必要費を所有者から償還してもらう必要費償還請求権を有し,その
償還請求権に基づき,家屋を留置することができる(大判昭10.5.13)。
(3)そして,その留置期間中その家屋を使用することは,保存行為(民法
第298条2項ただし書)として,許される。
(4)それでは,賃借人はその使用に対する対価の支払いはしなくてもよい
のかであるが,現実にその家屋を使用しているわけであるから,それ
は支払わなければならない。
(5)そして,賃借人のその使用は,賃貸借という法律上の原因のない利得
ということができるから,賃借人は賃料相当損害金を不当利得として
所有者である債務者に支払わなければならない。
(6)よって,本股はまちがいである。
問題6 甲が乙から自動車を買い受けたが,その自動車を占有する丙が,乙に
対するその自動車の修繕代金債権に基づき留置権を行使した場合に
おいて,丙が甲の承諾を得ることなく勝手にその自動車を使用して
いるときは,甲は,丙に対し留置権の消滅を請求することができる。
問題6 正しい。
(1)民法第298条により,留置権者はその留置物を善管注意義務によって
占有しなければならず,留置物を使用してはならず,これに違反した
場合には,債務者は留置権の消滅を請求することができる。
(2)ところでこの債務者とは,当該留置物の所有者の意味であるから,本
問のようにその自動車を買い受けて所有者となった甲は,丙に対し留
置権の消滅を請求することができる。
(3)よって,本股は正しい。
★民法第298条(留置権者による留置物の保管等)
①留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなけれ
ばならない。
②留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、
又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な
使用をすることは、この限りでない。
③留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消
滅を請求することができる。
問題7 「留置物の使用の承諾は,留置物に関する債務者の処分行為の一つで
ある。したがって,留置物の所有権が債務者から第三者に移転した場
合において,新所有者が留置物の所有権取得について対抗要件を具
備するよりも前に留置権者が債務者から留置物の使用の承諾を受け
ていたときは,新所有者は,留置権者に対し,留置物の使用を理由に留
置権の消滅請求をすることはできない。」という見解がある。
次のアからオまでの記述のうち,この見解と矛盾するものの組合せ
は,後記1から5までのうちどれか。〔14-13〕
ア 留置物の使用の承諾は,留置権者の果実収取権を確定的なもの
とする意味を有する。
●債務者が留置権者に留置物の使用を承諾するというこ
とは,留置権者の果実取得権の前提である「目的物の
占有」を債務者が争わないことを意味するが,
●そのことと,本問の「新所有者が対抗要件を具備する
前に,旧所有者が留置物の使用の承諾をしていた場合
は,新所有者は留置権の消滅を請求することができな
い,」との見解とは,別の次元の事柄であり,
●相矛盾するものではない。
イ 留置物の使用の承諾は,意思表示のほかに格別の要件を必要としな
い。
●本肢の記述は,民法第298条2項の「留置物の使用の承
諾」の法的性質に関する記述であり,
●本問の新所有者が対抗要件を具備する前に,旧所有者が留置
物の使用の承諾をしていた場合は,新所有者は留置権の消
滅を請求することができない,」との見解と相矛盾するも
のではない。
ウ 留置権の本来的な効力は,留置権者が被担保債権の弁済を受けるま
で留置物の引渡しを拒むことができるということにあるから,留置
物の使用の承諾は,債権的な効力を有する。
●留置物の使用の承諾が債権的効力であるとすると,留
置物の使用の承諾は,留置権者と債務者間のみの効力
となり,新所有者である第三者を拘束しない。
●よって,本股は本問の見解と矛盾する。
エ 債務者は,留置物の所有権を第三者との関係で確定的に失った
後も,留置権者に対して留置物の使用の承諾をすることができ
る。
●本問は,「新所有者が留置物の所有権取得について対抗
要件を具備するよりも前に」「留置権者が債務者から
留置物の使用の承諾を受けていたとき」の見解であ
るのに対して,
●本肢は,「債務者が所有権を第三者との関係で確定的に
失った後も」つまり,第三者が対抗要件(登記)を具備
した後も,債務者は債務者は留置物の使用の承諾をする
ことができるとの見解である。
●よって,両者は相矛盾する。
オ 留置権者が承諾の範囲を超えて留置物を使用した場合には,承
諾を与えた債務者は,留置権の消滅請求をすることができる。
●本肢の記述は,留置権者が承諾の範囲を超えて使用した
場合はどうなるかの問題であり,本問とは次元が異なり
●両者は相矛盾する関係にはない。
●以上,アからオまでの肢の検討の結果と,本問解答肢を対照した
結果,正解肢は4である。
1アイ 2アオ 3イウ 4ウエ 5エオ
問題7 正解4
問題8 留置権者が留置物の占有を継続している間は,被担保債権の消滅時
効は,進行しない。(61-2-5)
問題8 まちがい。
(1)被担保債権の消滅時効は,その債権の行使により中断する。
(2)ところで,留置権者の「留置物に対する留置権の行使」と留置権者が
債務者に対して有している「債権の行使」とは別であり,留置物の占
有を継続していても,被担保債権の消滅時効は進行する(民法第300
条)。
(3)よって,本股はまちがいである。
問題9 留置権者は,目的物を競売に付する権利を有しない。(13-9-ア)
問題9 まちがい。
(1)留置権は,民法上,優先弁済権が認めておらず,目的物の価値を支
配権を有さない。
(2)しかし,民事執行法195条は、留置権者に競売権を与えており,留置権
者は,目的物を競売に付する権利を有する。
(3)よって,本股はまちがいである。
(4)なお,民事執行法が留置権者に競売権を与えている趣旨は,留置権者
が、永く債権の弁済を受けずに,いつまでも目的物を留置しておくことの
不都合を解消するためのものであり,民事執行法が留置権者に優先弁
済権を認めたものではない。
(5)したがって,留置権者がこの競売権を行使した場合にも,留置権者は
その換価金から優先弁済を受ける権利はなく,その換価金の上に留置
権が存在する,にとどまる。
問題10 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産の滅失によって債務者
が取得すべき金銭その他の物に対して代位することができる権利
である。〔14-10-オ〕
問題10 まちがい。
(1)留置権には,物上代位性がないので,留置権は,目的物の滅失による
債務者が取得すべき金銭その他の物に対して代位しない。
(2)これに対して,質権には物上代位権がある(民法第350条,同第304条)。
(3)よって,本股はまちがいである。
…………………………以上