goo blog サービス終了のお知らせ 

宅建試験・司法書士試験勉強会

宅建試験・司法書士試験勉強のブログです。
宅建試験・司法書士試験受験者・受験志望
者の学習の一助になれば幸いです。

●司法書士試験:留置権3-留置権の効力

2011-03-19 12:10:53 | 資格試験
●司法書士試験
○留置権3-留置権の効力

問題1 留置権者は,債権の弁済を受けないまま留置物の一部を債務者に引
    き渡した場合であっても,債権全額の弁済を受けるまでは,留置物の
    残部につき留置権を主張することができる。
問題1 正しい。
(1)留置権は担保物権であり,民法第296条が「留置権者は、債権の全部
   の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使するこ
   とができる。」と規定しており,不可分性を有する。
(2)したがって,留置物の一部について留置権が消滅しても,留置物の残
   部につき,債権全額の留置権を行使することができる。
(3)よって,本股は正しい。

問題2 動産留置権と動産質権は,いずれも被担保債権全額の弁済を受ける
     まで目的動産を留置することができる権利である。
問題2 正しい。
(1)留置権については,民法第296条が「留置権者は、債権の全部の弁済を
   受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができ
   る。」と規定しており,動産留置権についても被担保債権全額の弁済を
   受けるまでは目的動産を留置することができる。これを留置権の不可
   分性という。
(2)質権については,民法第347条(質物の留置)が「質権者は、前条に
   規定する債権(元本,利息等の債権)の弁済を受けるまでは、質物を
   留置することができる。」旨規定しており,動産質権は,被担保債権全
   額の弁済を受けるまで目的動産を留置することができる。
(3)よって,本股は正しい。

問題3 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産から生じた果実につき
     優先弁済を受けることができる権利である。〔14-10-エ〕
問題3 正しい。
(1)留置権は,本来,留置的効力で,優先的効力は有さない。
(2)しかし,目的物を占有留置する関係で,目的物から生じた果実につい
   ては,民法第297条1項が「①留置権者は、留置物から生ずる果実を
   収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当す
    ることができる。」と規定しており,目的動産から生じた果実につき
   優先弁済権を有する。
(3)そして,質権については,民法第350条が留置権に関する民法第297
   条を準用しているので,動産質権も目的動産から生じた果実につき
    優先弁済権を有する。
(4)よって,本股は正しい。

問題4 留置権者が債務者の承認を得ずに留置物を第三者に貸貸した場合,
     その賃料は弁済に充当できず,不当利得として返還することを要す
     る。(3-3-1)
問題4 正しい。
(1)留置権者は,留置物を留置する権利は有するが,債務者の承諾なくし
   てその物を使用したり,賃貸したりする権利は有しない。
(2)したがって,本問のように留置物を第三者に賃貸して賃料を受領した
   場合は,その賃料は,留置権者としては,法律上の原因なくして得た
   利得ということになり,不当利得である。
(3)故に,留置権者はその賃料をその留置物の所有者に返還しなければな
   らない(民法第703条)。
(4)よって,本股は正しい。

問題5 賃貸借終了後,借家人が修繕費を担保するために家屋を留置してい
     る場合,保存行為として当該家屋を使用したことの対価は不当利得
     として所有者たる債務者に返還することを要しない。〔3-3-2〕
問題5 まちがい。
(1)まず,家屋の修繕費は,物の保存に必要な費用であるから,必要費で
   ある。
(2)そして,借家人が賃借家屋に必要費を支出した場合には,その支出し
   た必要費を所有者から償還してもらう必要費償還請求権を有し,その
   償還請求権に基づき,家屋を留置することができる(大判昭10.5.13)。
(3)そして,その留置期間中その家屋を使用することは,保存行為(民法
   第298条2項ただし書)として,許される。
(4)それでは,賃借人はその使用に対する対価の支払いはしなくてもよい
   のかであるが,現実にその家屋を使用しているわけであるから,それ
   は支払わなければならない。
(5)そして,賃借人のその使用は,賃貸借という法律上の原因のない利得
   ということができるから,賃借人は賃料相当損害金を不当利得として
   所有者である債務者に支払わなければならない。
(6)よって,本股はまちがいである。

問題6 甲が乙から自動車を買い受けたが,その自動車を占有する丙が,乙に
     対するその自動車の修繕代金債権に基づき留置権を行使した場合に
     おいて,丙が甲の承諾を得ることなく勝手にその自動車を使用して
     いるときは,甲は,丙に対し留置権の消滅を請求することができる。
問題6 正しい。
(1)民法第298条により,留置権者はその留置物を善管注意義務によって
占有しなければならず,留置物を使用してはならず,これに違反した
場合には,債務者は留置権の消滅を請求することができる。
(2)ところでこの債務者とは,当該留置物の所有者の意味であるから,本
   問のようにその自動車を買い受けて所有者となった甲は,丙に対し留
   置権の消滅を請求することができる。
(3)よって,本股は正しい。
★民法第298条(留置権者による留置物の保管等)
   ①留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなけれ
    ばならない。
   ②留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、
    又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な
    使用をすることは、この限りでない。
   ③留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消
    滅を請求することができる。

問題7 「留置物の使用の承諾は,留置物に関する債務者の処分行為の一つで
     ある。したがって,留置物の所有権が債務者から第三者に移転した場
     合において,新所有者が留置物の所有権取得について対抗要件を具
     備するよりも前に留置権者が債務者から留置物の使用の承諾を受け
     ていたときは,新所有者は,留置権者に対し,留置物の使用を理由に留
     置権の消滅請求をすることはできない。」という見解がある。
      次のアからオまでの記述のうち,この見解と矛盾するものの組合せ
     は,後記1から5までのうちどれか。〔14-13〕
    ア 留置物の使用の承諾は,留置権者の果実収取権を確定的なもの
       とする意味を有する。
         ●債務者が留置権者に留置物の使用を承諾するというこ
          とは,留置権者の果実取得権の前提である「目的物の
          占有」を債務者が争わないことを意味するが,
         ●そのことと,本問の「新所有者が対抗要件を具備する
          前に,旧所有者が留置物の使用の承諾をしていた場合
          は,新所有者は留置権の消滅を請求することができな
          い,」との見解とは,別の次元の事柄であり,
         ●相矛盾するものではない。
    イ 留置物の使用の承諾は,意思表示のほかに格別の要件を必要としな
      い。
        ●本肢の記述は,民法第298条2項の「留置物の使用の承
          諾」の法的性質に関する記述であり,
        ●本問の新所有者が対抗要件を具備する前に,旧所有者が留置
          物の使用の承諾をしていた場合は,新所有者は留置権の消
          滅を請求することができない,」との見解と相矛盾するも
          のではない。
    ウ 留置権の本来的な効力は,留置権者が被担保債権の弁済を受けるま
      で留置物の引渡しを拒むことができるということにあるから,留置
      物の使用の承諾は,債権的な効力を有する。
         ●留置物の使用の承諾が債権的効力であるとすると,留
          置物の使用の承諾は,留置権者と債務者間のみの効力
          となり,新所有者である第三者を拘束しない。
         ●よって,本股は本問の見解と矛盾する。
    エ 債務者は,留置物の所有権を第三者との関係で確定的に失った
      後も,留置権者に対して留置物の使用の承諾をすることができ
      る。
         ●本問は,「新所有者が留置物の所有権取得について対抗
          要件を具備するよりも前に」「留置権者が債務者から
          留置物の使用の承諾を受けていたとき」の見解であ
          るのに対して,
         ●本肢は,「債務者が所有権を第三者との関係で確定的に
          失った後も」つまり,第三者が対抗要件(登記)を具備
          した後も,債務者は債務者は留置物の使用の承諾をする
          ことができるとの見解である。
         ●よって,両者は相矛盾する。
    オ 留置権者が承諾の範囲を超えて留置物を使用した場合には,承
      諾を与えた債務者は,留置権の消滅請求をすることができる。
         ●本肢の記述は,留置権者が承諾の範囲を超えて使用した
          場合はどうなるかの問題であり,本問とは次元が異なり
         ●両者は相矛盾する関係にはない。
    ●以上,アからオまでの肢の検討の結果と,本問解答肢を対照した
     結果,正解肢は4である。
    
      1アイ  2アオ  3イウ  4ウエ  5エオ
問題7 正解4


問題8 留置権者が留置物の占有を継続している間は,被担保債権の消滅時
     効は,進行しない。(61-2-5)
問題8 まちがい。
(1)被担保債権の消滅時効は,その債権の行使により中断する。
(2)ところで,留置権者の「留置物に対する留置権の行使」と留置権者が
   債務者に対して有している「債権の行使」とは別であり,留置物の占
   有を継続していても,被担保債権の消滅時効は進行する(民法第300
   条)。
(3)よって,本股はまちがいである。

問題9 留置権者は,目的物を競売に付する権利を有しない。(13-9-ア)
問題9 まちがい。
(1)留置権は,民法上,優先弁済権が認めておらず,目的物の価値を支
    配権を有さない。
(2)しかし,民事執行法195条は、留置権者に競売権を与えており,留置権
   者は,目的物を競売に付する権利を有する。
(3)よって,本股はまちがいである。
(4)なお,民事執行法が留置権者に競売権を与えている趣旨は,留置権者
   が、永く債権の弁済を受けずに,いつまでも目的物を留置しておくことの
   不都合を解消するためのものであり,民事執行法が留置権者に優先弁
   済権を認めたものではない。
(5)したがって,留置権者がこの競売権を行使した場合にも,留置権者は
   その換価金から優先弁済を受ける権利はなく,その換価金の上に留置
   権が存在する,にとどまる。

問題10 動産留置権と動産質権は,いずれも目的動産の滅失によって債務者
     が取得すべき金銭その他の物に対して代位することができる権利
     である。〔14-10-オ〕
問題10 まちがい。
(1)留置権には,物上代位性がないので,留置権は,目的物の滅失による
   債務者が取得すべき金銭その他の物に対して代位しない。
(2)これに対して,質権には物上代位権がある(民法第350条,同第304条)。
(3)よって,本股はまちがいである。
…………………………以上

●司法書士試験:留置権2-留置権の成立要件2

2011-03-18 10:56:35 | 資格試験
●司法書士試験
○留置権2-留置権の成立要件2

問題1 動産留置権は被担保債権の弁済期が到来する前は成立しないが,動
    産質権は被担保債権の弁済期が到来する前であっても成立する。
問題1 正しい。
(1)留置権については,民法第295条1項但書が,債権が弁済期前には,
   留置権は成立しない旨規定している。
(2)これに対して,動産質権については,民法第344条が,質権は,設定
   契約をして,債権者に目的物を引き渡したときに成立する旨規定して
   いる。
(3)よって,本股は正しい。

問題2 留置物に有益費を支出し,それを担保するために当該物を留置して
     いる場合において,その有益費について期限の許与があったとして
     も留置権は消滅しない。
問題2 まちがい。
(1)留置権は,民法第295条1項但書により,債権の弁済期前には,成立
   しない。
(2)ところで,留置権者が留置物について有益費を支出したときは,所有
   者はその有益費を償還しなければならないが,その償還の期限につい
   ては、民法第299条2項ただし書で,所有者の請求により,裁判所は、
   相当の期限を許与することができる。
(3)そして,裁判所の期限の許与があった場合は,許与された弁済期まで
   は弁済期でなくなるから,いったん成立した留置権は消滅することに
   なる。
(4)よって,本股はまちがいである。

問題3 動産留置権は目的動産の占有を取得しなければ成立しないが,動産
     質権はその設定契約をもって成立し,目的動産の占有の取得はその
     対抗要件である。
問題3 まちがい。
(1)留置権は,目的物を占有していることが成立要件であるから,動産留
   置権は目的動産の占有を取得しなければ成立しない。
(2)これに対して,質権の成立要件は,①質権設定契約と②債権者への目
   的物の引渡しである。
(3)したがって,動産質権において,目的動産の占有は,成立要件であり
   対抗要件ではない。
(4)よって,本股はまちがいである。

問題4 他人の建物を不法に占拠した者は,所有者の明渡請求に対し,その建
     物につき支出した有益費の償還請求権に基づいて,その建物を留置
     することはできない。
問題4 正しい。
(1)民法第295条2項により,占有が不法行為によって始まった場合には、
   留置権は成立しない。
(2)よって,本股は正しい。

問題5 建物の賃借人が,賃料不払のために契約を解除された後に,権原がな
     いことを知りながら有益費を支出した場合,(A)占有が不法行為に
     よって始まった場合と同様の状況にあるので,(B)賃借人は,その建
     物について留置権を行使することができない。
問題5 正しい。
(1)民法第295条2項により,占有が不法行為によって始まったものであ
   る場合には、目的物に関する債権を有している場合であっても、留置権
   は成立しない。不法な占有者に留置権を認めることは,公平ではない
   からである。
(2)そして,本問の場合,債務不履行による契約解除後の占有は,不法な
   占有であり,不法な占有中に支出した有益費の償還請求権も,(1)
   に当てはまり,留置権は成立しない。
(3)よって,本股は正しい。
…………………………以上

●司法書士試験:留置権2-留置権の成立要件1

2011-03-17 12:30:05 | 資格試験
●司法書士試験
○留置権2-留置権の成立要件1

問題1 不動産については,留置権は成立しない。
問題1 まちがい。
(1) まず,留置権の成立要件は,次の4事項である。
   ①留置権者が債権を有しており,その債権が留置権の目的物に関して
     生じたものであること(民法295条1項本文)。
   ②留置権者が他人の物(目的物)を占有していること(同)。
   ③債権が弁済期にあること(同条1項但書)。
   ④占有が不法行為によって始まったものでないこと(同条2項)。
(2)そして,留置権の目的物は,他人の物であればよく,動産でも不動産
   よい。
(3)よって,本股はまちがいである。

問題2 土地の貸借人は,借地権の期間満了に基づく賃貸人の明渡請求に対
      し,借地上の建物の買取請求権を行使した場合でも,その建物を留
      置することができない。
問題2 まちがい。
(1)土地の借地人は,借地権の存続期間が満了し、契約の更新がないときは、
   借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権限により土地に付属さ
   せた物を時価で買い取ることを請求することができます(借地借家法
   13条1項、旧借地法4条2項)。これを建物買取請求権といいます。
(2)そして,賃借人は、この建物の買取代金債権に基づいて建物について留
   置権を行使することができます。
(3)よって,本股はまちがいです。
(4)なお,この場合,土地はどうなるのかについては,判例は,建物買取
   代金債権に基づいて建物を留置することができるときは、その反射的
   効果として敷地も留置することができる,と判示しています。(大判
   S18.2.18)。

問題3 必要費償還請求権のために建物を留置している留置権者が,その建
     物のために更に必要費を支出した場合で.あっても,後者の必要費
     償還請求権のために留置権を主張することはできない。
問題3 まちがい。 
(1)まず,留置権者が留置物につき,必要費を支出した場合どうなるかに
   ついては,民法第299条1項が「留置権者は、留置物について必要費
   を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。」と規
   定しており,所有者にその償還を請求することができます。
(2)そして,この必要費償還請求権はその建物に関して生じた債権です
    から,それを被担保債権として,建物につき留置権が成立します。
(3)それでは,留置後に支出した必要費の償還請求権についても留置権が
   成立するかであるが,最初の留置は適法行為であり,適法行為中に生
   じた必要費ですから,その償還請求権についても留置権は生じる,と
   するのが判例です(最判昭33.1.17)。
(4)よって,本股はまちがいである。

問題4 造作買取請求権を行使した建物の貸借人は,造作代金の提供がなさ
     れない場合でも,当該建物につき留置権を主張することはできない。
問題4 正しい。
(1)まず,建物の賃借人は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳・
   建具その他の造作がある場合には、建物の賃貸借が期間の満了又は解
   約の申入れによって終了したときには、建物の賃貸人に対して、その造
   作を時価で買い取るべきことを請求することができる(借地借家法33
   条1項前段、旧借家法5条前段)。これを造作買取請求権という。
(2)それでは,建物の賃借人は賃貸借契約が終了したときに,この造作買
   取請求権を被担保債権として,建物に対して留置権を行使できるかで
   あるが,判例はできないと判示している(大判S6.1.17、最判S29.1.14)。
(3)まず,造作買取代金債権は、 造作に関して生じたものであるから、
   造作については留置権を行使することができるが,建物に関して生じ
   た債権ではないから,建物については留置権を主張することはできな
   いのである。
(4)よって,本股は正しい。
(5)このように,造作買取請求権で建物を留置できるかの問題では,「造
   作」と「建物」は異なることを理解することがキーポイントである。
(6)なお,学説では,造作買取請求権は,造作物を建物から分離しない状
   態で建物の価値を維持しようとする趣旨であるから,造作買取請求権
   による建物の留置は認められる,との説が通説である。
(7)しかし,司法書士試験は,条文と判例で解答するのが通常です。

問題5 土地が二重譲渡され第2の買主へ所有権移転登記がされた場合,第1
     の買主は,第2の買主からの土地明渡請求に対して,自己への所有権
     移転が履行不能となったことを理由として得た損害賠償債権をもっ
     て当該土地につき留置権を主張することができる。
問題5 まちがい。
(1)最高裁判決は,不動産の二重売買において、第2買主に所有権移転登記
   がなされ,第2買主が完全な所有権を取得した場合に、第1買主は,
   自らへの債務不履行による損害賠償請求債権に基づきその不動産を留
   置できるかについては,それはできない。第2買主に対して留置権を
   主張することはできない,と判示している(最判S43.11.21)。
(2)なぜならば,目的物に対して留置権が成立するには、債権が留置権の目
   的物に関して生じたものでなければならない(民法295条1項本文)。
(3)ところが,この場合の債務不履行に基づく損害賠償請求債権は、もとも
   と,建物という目的物自体の取得を目的とした売買債権が,債務不履
   行により,その態様を変じたものであり、必要費償還請求権などのよ
   うに,その物に関して生じた債権とはいえないからである。
(4)よって,本股はまちがいである。
(5)このように,ここでは,「その物に関して発生した債権」と「その物
   自体の取得を目的とした債権」を区別して考え,後者は前者には入ら
   ないと介している所がキーポイントである。

問題6 賃貸借契約の目的物である土地が譲渡された場合,借地人は,土地の
     譲受人に対し借地権を対抗することができないときであっても,
     (A)借地権は土地に関して生じた債権であるので,(B)留置権を行
     使して土地の明渡しを拒絶することができる。
問題6 まちがい。
(1)賃借土地が譲渡された場合に,賃借人が土地の譲受人(新地主)に賃
   借権を対抗するためには,通常,賃借権の登記をするか,賃借土地上
   の自己の建物の保存登記をして,借地権の対抗要件を具備しておく必
   要がある。
(2)ところが,そのいずれの登記も具備していない場合に,新地主に対し
   て,借地権を被担保債権として,借地につき留置権を行使できるかで
    あるが,それはできない。
(3)なぜならば,賃借権は、賃借物(この場合は土地)を目的として成立し
   ており,物自体を目的とした債権であり、物に関して生じた債権とは
    いえないからである。
(4)よって,本股はまちがいである。

問題7 乙所有の建物を丙から買い受けた甲は,乙の明渡請求に対し,丙に対
     する履行不能による損害賠償請求権に基づいて,その建物を留置す
     ることはできない。
問題7 正しい。
(1)他人の物の売買における買主は、その所有権を移転すべき売主の債務
    の履行不能による損害賠償請求債権をもって、所有者の目的物返還請
    求に対し、留置権を行使することができるかであるが,最高裁判決は,
    買主は留置権を主張することは許されないと,判示している(最判
    S51.6.17)。
(2)なぜならば,買主甲の損害賠償請求債権は,他人の物を売却した丙に
   対するものであり,甲が真の所有者乙の返還請求に対して,留置権を
   行使しても,丙の損害賠償債務の履行を間接的に強制するという関係
   は生じない。つまり,留置と履行との間に牽連関係が存在しない。
(3)したがって,この場合の履行不能による損害賠償債権は,建物に関し
   て生じたものであるとは言い得ず,第三者所有物売買の履行不能によ
   る損害賠償請求権に基づいて,その建物を留置することはできない。
(4)よって,本股は正しい。
…………………………以上

●司法書士試験:地役権5-地役権の取得・消滅

2011-03-15 21:06:56 | 資格試験
●司法書士試験
○地役権5-地役権の取得・消滅

問題1 同一の承役地の上に数個の用水地役権を設定することができる。 
問題1 正しい。
(1)用水地役権は,排他的権利ではないので,同一の承役地の上に数個の用
   水地役権を設定することができる(民法第285条2項)。
(2)よって,本股は正しい。

問題2 地役権を設定するためには,要役地と承役地が隣接地であることを
    要しない。
問題2 正しい。
(1)地役権とは,地役権者が、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地
   を自己の土地の便益に供する権利です(民法第280条)。
(2)したがって,この要件さえ満たしていれば,要役地と承役地が隣接し
   ていることは,必ずしも要件ではない。
(3)よって,本股は正しい。

問題3 地役権についても存続期間を定めることができる。
問題3 正しい。
(1)地役権の存続期間については,民法上は規定がない。
(2)ところで,地役権は設定行為により定まる権利であるから,当事者間
   で期間を定めることができる。
(3)よって,本股は正しい。

問題4 土地の所有者が隣地の一部を長期間通行することを継続しただ
     けでは,時効により通行地役権を取得することはできない。
問題4 正しい。
(1)地役権も時効により,取得する。
(2)ところで,地役権の時効取得については,民法第283条が「地役権は、
   継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、
   時効によって取得することができる。」と規定しており,「継続的、
   かつ、表現の地役権」に限り時効取得される。
(3)ここで,継続的とは、通路を開設した通行地役権のように、地役権の
   内容が間断なく継続する地役権のことである。
(4)表現的とは、地役権の内容の実現が外部から認識できる地役権のこと
   である。
(5)そして,「隣地の一部を長期間通行することを継続しただけ」では,
   継続的かつ表現とはいえない。
(6)したがって,本問の場合は,時効により通行地役権を取得することは
   できない。
(7)よって,本股は正しい。

問題5 甲土地を所有するAは,Bが所有する乙土地を通行する権利を有し
     ている。Bが乙土地の所有権を第三者に譲渡した場合に,Aが,乙土
     地の譲受人に対し,この通行権を主張することができないことがあ
     るかは,この通行権が通行地役権であるか相隣関係に基づく囲繞地
     通行権であるかによって結論が異なる。
問題5 正しい。
(1)地役権も不動産に関する物権であるから、これを第三者に対抗するた
   めには,原則として,登記を必要とする(民法第177条)。
(2)これに対して,囲繞地通行権の場合は,所有権の内容として,囲繞地
   には,当然認められている権利なので,これを第三者に対抗するには,
   登記は必要ではない。
(3)したがって,第三者への対抗要件の関係では,通行地役権と囲繞地通
   行権では結論が異なる。
(4)よって,本股は正しい。

問題6 甲土地を所有するAは,Bが所有する乙土地を通行する権利を有し
     ている。第三者が乙土地の所有権を時効取得した場合に,Aの通行権
     が消滅することがあるかは,この通行権が通行地役権であるか相隣
     関係に基づく囲繞地通行権であるかによって結論が異なる。
問題6 正しい。
(1)通行地役権の場合において,承役地が時効取得された場合は,原則と
   して,通行地役権は消滅する。時効取得は原始取得だからである。
(2)これに対して,囲繞地通行権は,所有権の内容として,囲繞地所有者
   に当然認められている権利であるから,乙土地の所有者が誰であって
   も当然に認められる。
(3)したがって,結論が異なる。
(4)よって,本股は正しい。

問題7 地役権者がその権利の一部に関して地役権を行使すれば,権利を行
     使していない部分についても時効により消滅しない。
問題7 まちがい。
(1)地役権は,消滅時効により,一部消滅するかについては,民法第293
   条の規定により,一部消滅する。
   ★民法第293条
     地役権者がその権利の一部を行使しないときは、その部分のみ
     が時効によって消滅する。
(2)よって,本股はまちがいである。
…………………………以上

●司法書士試験:地役権4-地役権の効力

2011-03-14 11:04:58 | 資格試験
●司法書士試験
○地役権4-地役権の効力

問題1 甲土地を所有するAは,Bが所有する乙土地を通行する権利を有し
    ている。Bが乙土地の通行を妨害する場合に,Aが,その妨害の除去
    を請求することができるかは,この通行権が通行地役権であるか相
    隣関係に基づく囲繞地通行権であるかによって結論が異なる。
問題1まちがい。
(1)通行地役権は物権であるから,物権的請求権として,妨害排除請求権が
   ある。
(2)囲繞地通行権の場合は,所有権の1内容としての権利であるから,所有
   権に基づく妨害排除請求権が認められる。
(3)したがって,両者の間で結論は異ならない。
(4)よって,本股はまちがいである。

問題2 通行地役権を設定した承役地の所有者が,設定行為により地役
     権者に対して負担している通路開設義務は,その所有者からそ
     の承役地の所有権を譲り受けた者もまたこれを負担する。
問題2正しい。
(1)通行地役権は,物権であり,債権ではないので,人的関係のない権利
   であり,原則として,承役地所有者は,要役地所有者の通行を認める
   という消極的義務を負うだけである。
(2)しかし,本問のように,承役地の譲渡人が特約により通路開設義務を
   負担している場合には,その承役地の譲受人(特定承継人)は,その
   義務を承継するかについては,
(3)民法第286条が「設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者
   が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕
   をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その
   義務を負担する。」と特別に規定している。
(4)したがって,本問の場合,承役地の譲受人は通路開設義務を負担する。
(5)よって,本股は正しい。


問題3 通行地役権が設定されている承役地の所有者は地役権者がその
     地役権の行使のために開設した通路を使用することができない。
問題3まちがい。
(1)通行地役権が設定されている承役地の所有者は地役権者がその地役
   権の開設した通路を使用できるかについては,
(2)民法第288条(承役地の所有者の工作物の使用)が,
   ①承役地の所有者は、地役権の行使を妨げない範囲内において、
     その行使のために承役地の上に設けられた工作物を使用する
     ことができる。
   ②前項の場合には、承役地の所有者は、その利益を受ける割合に
     応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない。
   と規定している。
(3)よって,本股はまちがいである。
…………………………以上