「宅建試験受験講座」34回目
権利関係34
民法9-7:
「物権変動7:「各種不動産物権変動の原因と登記との関係
その4「相続による物権変動と登記との関係」(重要)
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民法
第9章 物権変動7
第7項 相続による物権変動と登記との関係
第1号 はじめに
1 この項では,不動産物権変動の原因の一つである相続と登記との関係
を勉強します。
2 通常,人間は,一生の中で一度は相続に出くわします。
3 そして,不動産取引においては,取引に相続が絡んでくることが,良
くあります。
4 したがいまして,不動産取引では,相続に関する知識は重要となりま
すし,宅建試験でも相続に関する問題は,良く出題されます。
5 「相続と登記」との関係は,そういう観点から,しっかり勉強するこ
とが大切です。
第2号 相続とは
1 父が死亡すると,父の不動産の所有権は,母と子などが引き継ぎ
ます。これを相続といいます。
2 ある者が死亡した場合に誰が相続人となるかについては,
(1)まずその者の配偶者が相続人になります(民法第890条)。
★民法第890条(配偶者の相続権)
被相続人の配偶者は,常に相続人となる。
(2)また,子も相続人となります(民法第887条1項)。
★民法第887条1項(子の相続権)
①被相続人の子は,相続人となる。
(3)そして,配偶者や子の相続分は幾らかについては,子及び配偶者が
相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各2分の
1です(民法第900条)
★民法第900条1項(法定相続分)
①同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号
の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配
偶者の相続分は,各二分の一とする。
(4)さて,相続についての詳しい勉強は,後日,相続の単元でやるこ
ととしまして,ここでは,相続も物権変動という面からみれば,死
亡した人(被相続人)の物の所有権が相続人に移転するという,物
権変動ですから,相続による宅地建物(不動産)所有権の取得者
(相続人)は,それを他の者に主張するには,対抗要件としての登
記を必要とするかについて,勉強しておく必要がありますし,ここ
ではその勉強を致します。
(5)そして,相続による物権変動といっても,そのケースは一つでは
なく,複数ありますし,ケース・ケースにより結論が異なります
から,今から,ケース分けして勉強することとします。
第3号 相続による各種の物権変動と登記との関係
第1 共同相続人間の場合
1 事例1
①甲土地の所有者Aが死亡しました。
②そして,甲土地をAの配偶者Bと子Cが各2分の1を相続しまし
た。
③この場合,BないしCは,相手方に自分の相続した所有権持分を相
手方に主張するには,登記が必要なのでしょうか。
2 結論
(1)この場合,BもCも登記は必要ではありません。
(2)BもCも共に,自らが相続した甲土地の所有権持分を登記なくして,
相手方に主張することができます。
3 理由
(1)BもCも共にAの相続人です。
(2)そして,複数の者が共に相続した場合のことを「共同相続」と
いいますが,これは,被相続人の財産を相続人らが共同して包括
承継したということです。
(3)ところで,自らが取得した不動産に関する物権を第三者に対して主
張(対抗)するには,民法第177条により登記が必要なのですが,
(4)民法第177条の第三者とは,「当事者及びその包括承継人以外の
者であって,登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者」
のことです(判例)。
(5)そして,相続人は,包括承継人であり,民法第177条の登記を
必要とする第三者には当たりませんから,登記が無くても,自らが
相続した所有権を他の相続人に主張(対抗)することはできるので
す。
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★民法第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平
成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の
定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗
することができない。
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☆第2 被相続人から権利譲渡を受けていた者と相続人との関係
1 事例2
甲土地
A─――――─―─―─―─→B
| ①売買
| ②A死亡
|
↓ ③C相続
C
①Aは甲土地をBに売却しました。しかし,登記はAのままでした。
②その後,Aは死亡し甲土地をCが相続しました。
③この場合,BがCに対して,甲土地の所有権を主張(対抗)する
には,登記が必要なのでしょうか。
2 結論
(1)この場合,登記は必要ではありません。
(2)Bは,Cに対して,登記なくして,甲土地の所有権を主張する
ことができます。
3 理由
(1)まず,Aが生存中に甲土地をBに売却した時点で,甲土地の所
有権は,Bに移転します(民法第176条)。
(2)その後,Aが死亡することにより,CがAを相続しました。
☆ (3)ここで,BがCに甲土地の所有権を主張するのに,登記が必要かで
すが,事例1で勉強しましたように,「当事者及びその包括承継人」
に主張するには,登記は必要ではありません。
(4)したがって,この場合は,Bは,Cに対して,登記なくして,甲土
地の所有権を主張することができます。
☆(5)相続人(包括承継人)は,民法第177条の「第三者」に当た
らないというのは,そういうことを意味するのです。
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「試し読み」のページはここまでと致します。
これ以降の講義内容は,末尾の電子書籍「宅建試験受験講座」で
購読できます(購読料10円)。
なお,その講義内容の概略は,以下のとおりです。
☆第3 被相続人から権利譲渡を受けていた者と相続人から権利譲渡を受け
た者との関係
☆第4 共同相続人の一人から権利譲渡を受けた者と他の共同相続人との関
係
☆第5 共同相続後,遺産分割協議により単独所有者となった者と他の相続人
から権利譲渡を受けた者との関係
☆第6 相続放棄をした相続人から譲渡を受けた者と他の相続人との関係
☆第4号 問題と解説
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★それでは,「宅建試験受験講座」34回
権利関係34:民法9-7:「物権変動7」
「相続による物権変動と登記との関係」
はここまでと致します。
★文章中の「☆」マークはポイント事項です。
★次回は,権利関係35:民法10
「不動産登記法」です。
★本書の転記・転載,著作権侵害・違反行為は厳禁
ということでお願い致します。
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