ブンブンプロジェクト

ビキニ核実験で被曝したマーシャル諸島・ロンゲラップ環礁の人々との交流、再定住・生活に関する支援活動を行っています。

「福竜丸だより」記事

2005-11-14 11:13:18 | 関連情報
 第五福竜丸記念館ニュース「福竜丸だより」に、以下の記事を掲載させていただきました。長いですが、転載させていただきます。ご了承下さい。
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揺れる心を理解し、
ロンゲラップ島民の帰島・再定住への道を支援
 
 今年七月三一日から八月七日にかけ、私たちブンブンプロジェクトのメンバー3名と高田純・札幌医大教授は、マーシャル諸島共和国の首都・マジュロを訪問し、ビキニ水爆実験で被曝したロンゲラップ島民との交流を深めました。今回は、一九九九年に実施したロンゲラップ島の残留放射能調査結果の公式報告会を開くとともに島民の前歯の残留放射能調査を行うこと、今後の科学調査活動について相談することが目的でした。
 
ロンゲラップ島の放射能を調査

 ロンゲラップ島民は、一九五四年のビキニ水爆実験によって汚染された島を離れ、いまだに他の島で暮らしています。
 ロンゲラップの人たちが故郷に帰り、自立した生活と文化を取り戻すためには、島が安全で安心できる場所だということが証明されなくてはなりません。しかし、島民はアメリカのデータや判断を信用していません。そこで、私たちは、島民が帰島の是非を判断する材料として、利害関係がない科学者の客観的データが必要だと考え、高田教授と共同で残留放射能調査を始めました。一九九九年七月の第一回目のロンゲラップ島現地調査では、表土の放射線量調査やクローンアップ工事中の労働者の体内被曝量調査などを行いました。結果は、「現時点ではロンゲラップ本島の残留放射能のレベルは低く、再定住は可能」というものでした。ただし、環礁内の他の島からヤシの実やヤシガニを獲り、魚や放し飼いにしてある豚、鶏を日常的に食べた場合の調査を行う必要がある、という意見が付けられました。
 そして、今年1月、ロンゲラップ選出国会議員のアバッカ・アンジャインさんから、高田教授の現地調査を継続して欲しいとの要請があり、今回の私たちの訪問になったわけです。
 
現地で調査結果報告会を開催

 一九九九年の調査結果に関する公式報告会は今年八月三日夕方から、ホテルの庭にある集会場で開かれました。報告会で高田教授は、一九九九年の調査結果からわかる危険度や広島など世界の被爆地との比較、前歯のベータ線測定の意味などについて説明しました。さらに来年以降の現地調査、前歯調査の継続、アメリカの調査データの検証などを行うことができることを表明しました。1時間余の説明が終わった後、帰島後考えられる健康問題、産まれてくる子どもたちへの影響などについて質問があり、さらに約1時間の熱心な質疑応答が繰り返されました。
 
来年以降の調査活動で合意

 ロンゲラップの人たちの心情は複雑です。島に帰りたい気持ちは募っても、身近な人が次々と死に、出産障害を目の当たりにした経験から放射能に対する恐怖を振り払うことができません。ポイズン(放射能毒)がある限り島に帰ることはできないと言うのです。また、自分たちを被曝させ、研究の対象にはするものの十分な治療をせず、調査データを隠してきたアメリカ政府や科学者の言うことは信用できないので、安全性を判断することができません。
 私たちは、ロンゲラップ環礁が、いま島民が住んでいるどの島よりもはるかに豊かな自然に恵まれていることを知っています。そして、彼らの心の底には強い望郷の念と帰島の意思が根付いていることを感じています。今回の交流でも、私たちが客観的で科学的なデータを提供でき、ロンゲラップの人々が帰島・再定住に関して自ら判断して行動できれば、という思いが強まりました。
 滞在の最終日には、今後の調査研究活動についてロンゲラップ村、高田教授、ブンブンプロジェクトの三者が共同で進めるという内容の覚書を締結することができました。来年八月に次の調査が行われる予定で、ロンゲラップ環礁全体や近くの環礁における残留放射能を測定し、昔のような暮らしをした場合の被曝の度合いについて分析することになります。
 
「豊かで幸せな生活」をめざして

 ロンゲラップの人々の帰島がかない、海の民として豊かで幸せな生活を取り戻すことができればすばらしいことです。その日をめざしてブンブンプロジェクトの活動は続くことでしょう。皆様方のご協力ご支援をお願い申し上げます。

                            以上