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yuki

消費生活アドバイザーの目

組織における危機管理

2005-09-19 15:48:27 | Book
先日、講演会で作家の江上剛氏から「組織における危機管理」の話を聞く機会がありました。

江上氏は、映画化された高杉良の小説「金融腐食列島-呪縛-」で、役所広司演ずる第一勧業銀行の総会屋への不正融資事件を広報部次長として混乱収拾に取り組む銀行員のモデルになったこはよく知られていますが、氏の経験をベースに書かれた座礁-巨大銀行が震えた日-(新潮社)は、組織人が陥りそうなシーンが沢山描かれています。

頭脳明晰なはずの人達がその場に立たされると自分達に都合の良いように解釈をして安心しようとする意識が潜在的に働いてしまい、組織の常識・社会に非常識的な判断をしてしまう。

小説の中にも総会屋との癒着がマスコミに報じられ対策に追われる主人公”渡瀬”が、総会やと係わった経営層のリストを見ながら

”先送り、前任者からの引き継ぎをまた次に引き継ぐ滞りなく流れてさえいれば、誰もそのおかしさに気がつかない。・・
ああ、あの案件ね。前任者から引き継いだだけだよ。しかたないじゃないか。そりゃ、ちょっとおかしいかなと思ったことはあるよ。
でも、僕が今更・・ひっくり返したら、前任を誹謗中傷するみたいで、嫌だよ。
渡瀬は耳を押さえた。リストに記載された人たちの言い訳の声が聞こえてきたのだ。・・”

と関係者に犯罪性の認識がないことを嘆くシーンがありますが、ごく普通の人なら当たり前のことと思う感度が組織に埋没することで薄れる(敢えて薄れさせる)。

組織が危機に瀕したときに一番必要なのは、組織を守ろうと取り繕うことではなく一般の人ならどう捉え、どの様にするだろかと考えられる感性であると氏は考えられているようです。

組織に属するものが同じ価値観を共有することで効率的な運営をしてきた経営形態に組織疲労がおきてきており、社会常識を保ちつつ経営ができる人材が求められるようになってきていると思います。

その意味からも、消費者と企業の双方の立場から価値判断ができる「消費生活アドバイザー」が社会に認知される力を身につけることが必要と思った次第です。


企業家サラリーマン

2005-09-17 23:06:22 | Book
企業家サラリーマン著者は、小説スーパーマーケット等の著作で知られる安土敏氏

久しぶりに安土氏の本を読みましたが、起業家としての実績を積まれた氏の著作にはいつもながら熱き思いが沸き起こります。

エリート商社マンが畑違いのスーパーに落下傘出向、出向元のS商事が銅不正取引で2,800億円の損失を被り存亡の危機に立たされたときに、「スーパーの株を売却すればこの位の損失は大丈夫ですよ」と言い切ったと噂された話が真実みを帯びる位に育て上げた流通のプロフェショナルが書いた、起業家を目指す人にぜひ読んでいただきたい本です。

上場が終着点ではなく、見果てぬ夢を実現する手段としての上場であって欲しいのですが、六本木ヒルズに暮らすことが目的化しているような風潮を感じるベンチャーブームに危惧を覚えるのはオジサンの証拠でしょうか?

指紋を発見した男

2005-09-16 21:44:48 | Book
指紋を発見した男 ヘンリー・フォールズ 主婦の友社

医師ヘンリー・フォールズが宣教師として日本に滞在中に大森貝塚から出土した縄文式土器に残された古代人の指紋にヒントを得て、指紋が犯罪捜査に役立つとした論文を1880年にネイチャーに投稿した。

今日でこそ個人識別の切り札をDNA鑑定に譲った感もある指紋だが、実施に犯罪捜査に使われている比率は圧倒的に指紋が制しています。

その大変な発見をしたフォールズは、生前はその功績を認められることなく失意のままにこの世を去っていきました。

本書はそのドラムを描いたノンフィクションですが、ビジネスマンとして興味を持ったのは、個人識別法としてフランスで身長や頭部の長さ幅など11ヶ所を測定し、分類することで個人を特定する人体測定法を確立したアルフォンス・ベルティヨンが、フォールズの指紋による個人識別を排除し、そのためにフランスが犯罪捜査に遅れをとった事実は、「成功は失敗の父」を地で行った事例で過去の成功に拘泥して破綻した企業や経営者の姿を見ました。

それにしても、コンピュータが無かった時代にファイリングシステムを構築することで、該当する指紋を手作業で探し出す仕組みを考え出したフォールズの頭脳に乾杯です。
そのフォールズが日本の漢字の辞書を編集する方法からヒントを得て、指紋のパターンの特徴に従って類別する方法をあみ出したことは、日本人として誇っても良いのではないでしょうか。

85歳だった時から25年が経っている。52歳の誕生日に・・

2005-07-18 10:25:23 | Book
なんだかクイズみたいなタイトルですが、パット・ムーア「私は三年間老人だった-明日の自分のためにできること-」のあとがき”25年を振り返って”に書かれている文章です。

同書は、当時26歳の工業デザイナー、パット・ムーアが85歳の老人に変装して、社会から老人が受ける扱いを自ら体験したノンフィクションです。

日本では、1988年に「変装-私は三年間老人だった」で出版されましたが、2005年4月に16年振りに復刻されました。

本の中に、若い女性のときには親切な店員が、変装して85歳の老人になった彼女を突っけんどんに扱ったことが書かれています。
映画の水戸黄門なら「この印籠が目に入らぬか・・」となりそうな場面ですが、老人は厄介で何かと問題を起こしていくとの先入観があり、ごく普通の人でもやってしまいそうなことです。

本の最後に老人病棟で働く看護婦さんから送られてきた、
「看護婦さん! 目を開けて見て下さい
 気むずかしいおばあさんではなくて、”私”をもっとよく見て!」
                亡くなった老婦人が残した詩が紹介されています。

身体が不自由になって怒りっぽくなった老人も最初から年を取っていたわけではなく、両親の愛情に育まれて成長し、愛する人と巡り会い、子供を授かり、懸命に育て、やがて巣立ちを見送る、波瀾に満ちたドラマを演じきった役者が、今は老人の役をしている。

老人と一括りにしないで、個々を尊敬し、同じ視線で接することのできる社会が実現するようにしたいですね。

25年経ったら、81歳か! 
 厄介者扱いされない老人にならないように今から心がけよう! 少なくとも家族からは・・

徴農のすすめ

2005-07-17 22:55:17 | Book
竹島問題に端を発して韓国では反日活動が盛んなようですが、日本の小母様族は相変わらず韓国の男優に熱を上げており、平和そのものです。
小母様たちが韓国の男性に憧れる理由の一つに凛としたところがあり、それは徴兵制度から来ていると考えられています。

徴農制度が日本を救う-明日を担う若者を”農業”を通じて育てる-
 伊藤ハムマーケティング研究所発行 飛岡健、伊藤正視(伊藤ハム社長)共著 では、
兵役ではなく、高校・大学の必修科目として一年間の農業体験を提言しています。

自らの手で、土を耕し、種を蒔き、雑草を刈り、収穫をすることで、身体が鍛えられるだけでなく生物や物理で学んだ知識が実感として理解できることでしょうし、人知を超えた自然の厳しさも体感することでしょう。
また、すべての若者が一年間の農業体験をすることにより、優れた才能が農業の革新を生み出す可能性も高いと思われます。


作家の吉永みち子さんも「自然との共生、現代社会の問題点」の講演の中で、
「アインシュタインは第3次世界大戦の武器はわかりません。しかし第4次世界大戦の武器は石になっているでしょうと言っています。・・今の消費文明に歯止めをかけ、精神文明になるべきです。自分が第一次体験をして生きていく体験をし、その中で経験したことをいかす。これからは徴兵制ではなく徴農制にすべきだと思います。子供たちが大地(土)を使って生きていくすべを会得していくような世になってくれればと思います。」と若いうちに自然と共生することの大切さを体感すべきと語っています。

伊藤さんと飛岡さんの主張は、限られた資源(時間と才能)の中で、目標に向かっていかに効率よく到達するかを問う受験対策型のエリート養成には役立ちませんが、事実を観察し、問題点を発見し、解決のための枠組みを設定、実行、検証できる創造力のある人材を育てるには有効で、一年間の農業体験は無駄にはならないと考えます。

アルコール漬けで身体の鈍った中年世代には体力的に無理でしょうが・・