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yuki

消費生活アドバイザーの目

たかがビールされぞビール

2006-02-08 07:04:25 | Book
「たかがビールされぞビール」アサヒスーパードライ18年目の真実
松井康雄 アサヒビール元マーケティング部長  日刊工業新聞社

瀕死のアサヒビールを救った”アサヒスーパードライ”を開発し、販売の指揮を執った著者の栄光と挫折の歩みが淡々と書かれています。

スーパードライが発売される以前の時代に酒屋さんにアサヒビールを注文すると「本当にアサヒで良いんですか?」と聞かれたものでした。

ビールと言えばアサヒと思っている若い人に是非読んでいただきたい本です。

【優れた経営者と言えども慌てると間違った判断をする】
 アサヒビールがスーパードライでナンバー1になれたのは、アサヒの戦略が素晴らしかったと言うより、キリンが主力のラガービールを熱処理から生に変更してユーザーから見放された要因が大きいと分析しているくだりがあります。
ペプシコーラがコカコーラを逆転した時のコカコーラの失敗と通じるものがあります。

【正史のウソ】 
 アサヒビールの社史に「業績に大きく貢献した」「大ヒットした」「よく頑張った」と気された表現がある。
昭和60年にはシェア10%を割り込み、危急存亡の事態に追いこまれ様々な打開策(目先を変えた新製品を投入)が講じられたが、いずれも本質を突く物ではなく成功したと言えないにも係わらず・・

世の中に出まわっている本の多くが、直接取材してのではなく(昔の話しや直近の生々しい話しでしたくても出来ないのが多いのも現実ですが)本や広報を通じての間接取材によって書かれており、会社やその時の権力者にとって都合の良い話しになるのも仕方がないかもしれません。

「正史に書かれていることだけが真実ではない」
時の権力者によって編纂された歴史書は鵜呑みにするのではなく、何故そう書かれているのかを考えながら読むことも大切だと改めて感じた本でした。

キリストがサラリーマンだったら

2006-01-03 16:56:53 | Book
商社マンだった神父鍋谷憲一氏がキススト教徒のサラリーマンが出くわす様々な困難にキリスト教ならどう対応するかを10話にまとめた小説仕立ての本です。
もしキリストがサラリーマンだったら」阪急コミュニケーションズ

団塊の世代の著者が経験した話も織り交ぜて、サラリーマンならありそうなテーマが網羅され一気に読めますが、俗人の小生ではとてもこの本に出てくる主人公達のようにスマートに対応できないなと感じました。

コラム7で「宗教多元論」についてボクシングとマラソンレースの喩えも出して絶対の信仰を論じていますが、日本でキリスト教徒ですと堂々と言えるようになるにはこの問題に触れずには難しいのですが・・日本の風土にキリスト教はどうなんでしょうか。

ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル

2005-12-28 10:00:00 | Book
 ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデルは、「超」整理手帳の野口悠紀雄教授の「超」シリーズ
1849年にカリフォルニアを襲ったゴールドラッシュに始まり、現在のアメリカをリードするスタンフォード大学を中心とするビジネスへつながる起業家の歴史を野口史観でつづる、ベンチャーを志す人に読んで欲しい一冊です。

最初に自分が所有する広大な土地で金を見つけた農場主ジョン・サッターは一番有利なポジションにいたにもかかわらず、大金持ちになるどころか全てを失い。

反対に一攫千金を狙った集まったフォーティナイナーズ(金堀)に金を掘るための道具を売ったサム・ブラナンや、丈夫なズボン(ブルージーンズ)を作ったリーバイス・ストラウスなどの”mining the gold miners(金の掘る人達を採鉱する)”ビジネスを創り上げた人達に富をもたらした。

本に書いてあるとおりやったら成功すると言うモノではありませんが、成功したシナリオに謙虚に学ぶことは大切で、ネットだ!バイオだ!と注目されると一極に集中しがちなベンチャーを目指す人に儲けるビジネスモデルの作り方を教えてくれます。

スタンフォード大学が一人の鉄道家の意志によって創られたことを知りませんでした。
カーネギーホールが鉄鋼王カーネギーの、メトロポリタン美術館がロックフェラーやモルガンの寄付により今日あるように日本の六本木ヒルズ族も次の世代に何か残すのでしょうか?



もう一人のブッシュが原爆を作った!

2005-10-10 12:34:43 | Book
 41代と43代のアメリカ大統領ブッシュ親子とは血のつながりはないようですが、原爆を作ったもう一人のブッシュがいます。

 原爆開発を計画し指導した科学者ヴァニーヴァー・ブッシュのことです。

 原爆開発と言うと、ルーズベルト大統領に開発の進言をしたアインシュタイン書簡と開発リーダーのオッペンハイマーが有名ですが、原爆プロジェクトを立ち上げ日本への投下まで導いた、もう一人のブッシュについて
科学他国アメリカは原爆投下によって生まれた-巨大プロジェクトで国を変えた男-歌田明宏(平凡社)に詳しく紹介されています。

 当時、核分裂の研究開発でドイツに遅れをとっていたアメリカは、ヒットラーに先を越されることを恐れ、秘密裏に原爆開発計画をスタート、当初の目標ドイツには間に合わなかったものの1945年8月に最終兵器を日本に投下し、世界の覇権を握った・・と言うようなことが書かれています。

 本によるとドイツは1942年には、物資の不足から原爆開発は断念していたことが後からわかっています。まるで、生物兵器に怯えてイラクに攻め入ったブッシュ大統領のことのようですが、情報がない中で判断せざる得なかったヴァニーヴァー・ブッシュを責めるのは酷のように思います。

 ヴァニーヴァー・ブッシュは、原爆開発とは違った面で今日の私たちの生活と関係しています。
文字や絵・写真などを関係づけて画面に表示するハイパーテキストの原点となった「メメックス」のアイデアを生み出し、コンピュータを計算機から人間に思考を支援するツールに発展させるキッカケを作っています。

 見えない敵への恐怖から生み出された原爆
 見えない思考への憧れから生み出されたメメックス

一人の科学者が残してくれた遺産を人類は上手に使って行きたいですね。


いのちの落語

2005-10-05 22:46:15 | Book
消費生活アドバイザー仲間の社繁亭倍蔵さんは、家電メーカーのOBですが社会人落語大会で上位入賞をする腕前です。

彼が属している全日本社会人落語協会の副会長でもある樋口剛さんがガンとの闘いと二つ目の命を落語とともに生きている今日を「いのちの落語」と題して出版された本を読みました。

落語家の語り口を彷彿とさせる文章で、リズム良く読めるのですが書かれていることは3年生存率5%の壮絶な闘病生活と常識を越えたリハビリ、私にはとてもまねの出来ない世界ですが、挿入された写真がホッとする空間を与えてくれます。
その中でも樋口さんの笑顔が一番素敵です。

新聞の見出しにもなった「笑いは最高の抗ガン剤」で世の中でガンで苦しむ人から不安が癒され絶望が希望に変わると良いですね。