YuHiのブログ

(論文) VigiBaseのHPVワクチン有害事象報告の統計解析


以前Twitterで紹介した2017年の論文です。
全文ダウンロードできます。

Safety Concerns with Human Papillomavirus Vaccineとは
Safety Concerns:安全性に対する懸念・心配 
つまり、HPVワクチンの安全性に対する懸念・心配の話です。

まず、著者の所属を見ると、
・Uppsala Monitoring Centre, WHO Collaborating Centre for International Drug Monitoring, Uppsala, Sweden 

WHOと共同して国際的に医薬品の安全性をモニターする部門

・Department of Computer and Systems Sciences, Stockholm University, Kista, Sweden 
ストックホルム大学のコンピューター・システムサイエンス部

VigiBaseに放り込まれた有害事象報告を、ビッグデータとして統計処理した研究です。


ざくっと。

『2015年1月までにVigiBaseに報告されたHPVワクチンの有害事象(AE)のクラスター解析を行った。
その結果、54クラスターに分かれ、その中には主な大きなクラスター4つと小さなクラスター4つ。小さな4つには、重篤で明確に診断がつかないものが含まれていた。』

54のクラスターの内容は、Supplementary materialをダウンロードすればすべて見ることができます。

そこで主なデータ。

Supplementary materialのTable2。

"PRRs were calculated using 45,780 HPV vaccine reports and 32,839 non-HPV vaccine reports from females between the ages of 9 and 25 years."

定量的シグナル PRR については、こちらを参照。
『PRR>2 注目した医薬品と副作用の組の報告割合が、その医薬品とほかの副作用との報告割合の2倍以上。 シグナルありと判定。』

で、Table2を見ると

AE(Adverse Event)「頭痛+目眩+ひどい疲労感 または失神」を含むクラスターが、9〜25歳の女性において、他のワクチンより統計的に有意に多かった。(PRRの値が2以上であった。 シグナルが検出された。)
ここでは、すでにシグナルが検出されていたデンマークと日本からの有害事象報告をわざわざ除いてデータ解析しています。
それにもかかわらず、有意差が認められています。



Table 3
しかし、重篤なという言葉を加えると、PRRの値は1以上ではあったが、他のワクチンとの統計的な有意差は認められなくなったと。ここでも日本とデンマークからの報告を除いてある。
(「重篤な」というより主観的な言葉を加えるか、加えないかで有意差が違ってしまうということですね。)


「頭痛+目眩+ひどい疲労感 または失神」を含む4つのクラスターは、HPVワクチンを導入したすべての国で、市販後に報告されている。


AUS Australia, DEU Germany, IRL Ireland, USA United States of America, UK United Kingdom, ESP Spain, HUN Hungary, CAN Canada, DEN Denmark, JPN Japan, SWE Sweden, BEL Belgium, FRA France, NOR Norway, AUT Austria
2013年にこの深刻な有害事象の報告が最も多かったのは、米国であった。 
次にデンマーク、UK、ドイツであった。

(ですから、私は、HPVワクチン副反応騒ぎは「日本だけ」とか「日本発」と言っている村中璃子や峰宗太郎は嘘つきだと思います。)


(結論)


(和訳)
『クラスター解析によって、HPVワクチンの有害事象(AE)報告の中には、その性質が深刻であり、
なおかつPOTS(起立性頻脈症候群)、
CRPS(複合性局所疼痛症候群)、
CFS(慢性疲労症候群)
の症状と部分的には重なるが、明確に診断つかないものが存在することが明らかになった。
さらに、9〜25歳の女性におけるこのクラスター数は、日本からのCRPSとデンマークからのPOTSの報告を除外しても、他のワクチンに比べ偏りが認められた。

AEとHPVワクチンの因果関係は今だに不明である。しかし、ここで提示した事実について、より厳密に研究(調査)することは、今後もHPVワクチンの安全性を保証するために必須である。

我々の研究は、個別にあがってくる(症例)報告を詳細に、徹底したシグナル検出によって評価することが、より優れた実質的なケースシリーズになることを示している。』

HPVワクチンにしか見られない深刻な有害事象は、HPVワクチンを導入したすべての国で存在しています。
各国がそれを無視しているか、認めているかの違いだけです。
決して、「存在しない」のではないのです。
日本政府は、不十分ながらも、存在していることを認めているのです。
HPVワクチンの積極的勧奨を再開し、他の先進国並みの接種率に戻せと喚いている人たちは、他の国と同様に、深刻な有害事象を無視する国になれと主張しているのです。

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