5分20秒くらい泣き続けただろうか。
ここで止めてしまえば、2度とできる日はこないだろう。
でんぐりがえりができない人生だってあるに違いない。
そう思いかけた時、
「もう一回やる」
奴は立ち上がり、もう一度手をついて、回ろうとしている。
「待て!待て!」
どうやったら回れるのかを、
きちんと奴に分かるように教えなくては。
体育の先生は偉大である。
いったいどうやって教えれば、
奴にでんぐりがえしをさせることができるのか。
「まず、手をもっと近くについて、次に、頭をぐっと中に入れて、
そうそう、後ろのタンスが見えるまで、ずっと中に入れて、
そして、お尻を少しずつ上げていって、そう、そう、少しずつ」
何度かの練習の後、ついに不格好ではあるが、
でんぐりがえしが成功。
できると、楽しくて仕方がないらしく、
就寝前にでんぐりがえしをしてから寝るという、我が家の
奇妙な習慣ができてしまった。
「次は、側転を教えてね」
つい、聞こえないふりをする自分。
教えるのってむずかしい。
体育の先生は、やはり偉大である。