しまたろう

「しまじろうだ～」そう言うと、娘はダッシュでかけだした。
　久々に来たリナワールド。
　以前は入園料がタダだったのだが、システムが変わったらしい。
　予想外の出費である。
「へー。でもしまじろう（うちの娘が大好きなベネッセの虎キャラ）の着ぐるみがいるなんて、なかなかリナワールドも頑張ってんじゃない？」と俺。
「でも、なんかちょっと違うみたいよ」と妻。
　よく見ると、顔の作りが微妙に違う。
　服も違う。
「うーん。ニセじろうか」
　そんなことはお構いなしに、娘は、奴と握手したり、ハグしたりして大喜びである。
　うちの娘は、とにかく着ぐるみが大好きなのである。
　でも、着ぐるみには本物（？）と中に人間が入っている偽物の２種類があると思っていて、たとえば、街中の店の前で、看板か何かを持っているクマの着ぐるみを見ると「あれって、中に人間が入ってるんだよね」と冷静に言うくせに、先日見た、どうみても出来悪すぎ！の人間の形に近いドラエモンの着ぐるみを見たときには「えー。ドラエモンわざわざここまで来てくれたんだー」としばし感激にひたり、記念撮影までした始末である。

　俺は観覧車の中で、俺はちょっと意地悪な質問をしてみた。
「ねえ、さきのトラさ、しまじろうと、ちょっとちがうんじゃない？」
「あれは、しまじろうじゃないよ、しまたろうだよ」
「しまたろう？」
「しまじろうのお兄さんだって言ってた」
「お兄さん」
　うーん。敵もなかなかやるもんである。
　
　その後、いろいろなアトラクションに乗り、帰り道またゲートへと向かう。
「あ、しまたろうだ！！」
　もうすっかりしまたろうの虜（とりこ）になってしまった娘は、またも奴とハグしたり、踊ったり、撫でたりしている。
　とにかくいい表情である。
「ねえ、パパも来なよ！しまたろうだよ、早く、早く」
　仕方なく、苦笑いをしながら近くに行くと、なんと娘と手をつないでいた奴は、俺にもう一方の手を差し出したのである。
　一緒に踊ろうの合図である。
　そして俺と、しまたろうと娘は、春の暖かな日差しの中で、丸くなって輪になって踊った（恥）。
　中にはどんな奴が入っていたのだろうか。
　なかなか、いい奴である。

　次の日は、買い物で、エアリに行った。
　そしてたまたま、サンリオの前を通りかかると、娘が半狂乱になった。
「キティーチャーン！！」
　今度はキティーの着ぐるみである。
　しかし、今回の奴は違った。
「５００円の限定２０人の写真撮影会なので、チケットの無い人はだめです」
　そう、冷たく言われた。
「あのーせめて握手だけでもだめですかね」
　悲しそうな表情の娘とは関係なく。
「うーん。だめです」との係員の冷たい返事。

「キティーチャーン！！」
　娘の号泣が始まった。
「キティーチャーン！！」
　５歳児の全身全霊？の鳴き声は凄まじく、すれ違う人すべての失笑をかっていたような気がする。
　だっこしてその場を早く立ち去ろうとした俺は、まるで誘拐犯のようであったに違いない。
「キティーチャーン！！」
　なめんなよ、キティチャン。限定何人、写真撮影５００円、なんて言わないで、たくさんの子供とふれあって夢を与えるのが、あんたの仕事じゃないのか？
なあ、キティーチャン。

　

　

「宿命」と「運命」

　「宿命」と「運命」はどうちがうのか？
　今日読んだ本にこう書いてあった。
　
　人は生まれ、どんな人も必ず死にゆく。
　これが「宿命」

　そして、人がどのように生きて、どのように死んでいくのか。
　これが「運命」

貧乏人も金持ちも、善人も罪人も、きれいな人も、そうでない人も、みんなそれ

ぞれ違う「運命」を持っている。

　だけど、それぞれみんな同じ「宿命」を持っている

　「人間は、だから平等だ」と小説の中の登場人物の、神父の台詞である。

　今日、知り合いの女性の旦那さんが、急に亡くなったとの訃報が入った。
　残された、家族の気持ちを考えると、本当につらいです。

　
　昨日のバイク事故。
　
　考えてみれば、その時に対向車が来ていれば、私はもうこの世にはいなかったのかもしれない。

　自分は、どんな「運命」だったのか、その瞬間には分かるのだろうか。


　明日は、ちょっと遠いけれど、お通夜に行って来ます。

　
　さて、今日から新しいスタートを切った人も多いはず。

　明日も頑張ろう、日本のおじさん　おばさん。

　
　ちなみに、バイクはやはり修理することにしました。
　このことに関しては、後日。

　　

最悪の日曜日

　気がついたらもうアスファルトの上をバイクと一緒に滑っていた。
　事故の瞬間、景色はスローモーションになり、走馬燈の様に様々な映像がかけめぐるというこの感覚はやはり、本当だ。
　
　今日は選挙。
　朝一番で、投票に行こうということは、昨日から決めていた。
　ただ、しばらくバイクに乗っていないために、ちょっとエンジンかけて、久しぶりに動かしてやろうとしたのが、いけなかった。
　本当は、最近の運動不足解消のために、歩いて行く予定にしていたのだが、この時点で、もう悪夢は始まっていたのだろう。
　
　ＧＢ４００のエンジンに火を入れ、久しぶりに体に伝わる鼓動にわくわくしながら、投票所へと向かった。　
　路面は昨夜降った雨で濡れていた。
　午前８時。
　まだ人はまばらの体育館の中で、さっさ投票を終えたのだが、給油のため、近道を通り、いつものジョモのスタンドへ。
　そしてその途中で、あっけないほど簡単にスリップし、大転倒。
　長い間オークションで探し求めた末に手に入れた、俺の愛車は、あっけなく傷だらけの事故車に。
　
「大丈夫ですか？」
　転倒の際の激しい音を聞き、近くの人たちが集まってきた。
　コマのように回転したバイクと俺は、あと数センチで田んぼ落ちるというところでようやく止まった。
　
　とにかく出てきてくれた農家の人たちの温かいこと温かいこと。
　バイクを移動してもらい（もはや自走は不可）、肩をかしてもらい、車で家まで送ってもらった。
　
　３針。

　幸い、救急外来の外科で一番痛んだ左ひざは麻酔をされ、チクチクチクとステッチされる羽目に。

　あのバイクの処理をどうするか、修理するべきか、廃車にするべきか。
　それが問題である。
　でも、足が治ったら、やっぱりバイクに乗るんだろうな。
　明日はこの痛みではたして職場に行けるだろうか。
　頑張れ、日本のおじさん、おばさん。

東山にて

　花　をたくさんもらった。
　職場が一時変わるということで、うちには今、送別でいただいた美しい花があふ

れている。

　言葉にできない気持ちを、花にして贈る。

　人生において、花を「贈ること」「もらうこと」どちらにしても美しい瞬間にち

がいない。
　
　今日は、たくさんの花を抱えて、とても幸せな気持ちになりました。

　本当に今までありがとう。
　
　君たちに出会えて本当によかったです。

　また、会う日まで。　

　

　
　

母親のいない日

福山　Ｍ　のコンサートに行くと言い残し、妻は私と娘を残して、家を出ていった。
　帰りはおそらく２２時過ぎになるとのこと、自分が仕事や飲み会で帰りが遅いことは山ほどあるのだが、娘と私が残されて、１日過ごすというのは考えてみれば初めてのことだ。
　天気はいいが、風がとても強い、どうやら外の公園で時間をつぶすのは辛そうである。
　この４歳の暴れん坊将軍と、どこへ行って時間をつぶしたらいいものか。
　で、まずは科学館へ。
　そこでしばらく時間をつぶし、まあ、館内にある遊具はほとんど把握ずみなのだが、きれいなおねえさん２人による「サイエンスショー」や、「一緒に作ってみようコーナー」など、人と関われるところがやはり良い。
　でも前回行った時と（だいぶ前）内容が全く同じだったのには、少しがっかりした。
　でも娘は結構楽しんでいたけどね。
　
そしてその後は、Ｔジャスコへ。
　サンドウィッチマンという若手芸人がで１５時からライブをするというので見に行ったのである。
　娘はああいうところで営業をする若手アーティストや、歌手、芸人が大好きで、見ると必ずファンになってしまうという、性癖（？）を持っており、今まで買わされたＣＤは数知れない。
　
時間ぎりぎりにつくと黒山の人だかり。
　ブームの力ってすごい。
　私的には漫才やショートコントなど、結構面白かったのだが、娘は途中で飽きてしまい、大人と子供の笑いのポイントの違いを改めて実感した。
　さて、その後夕食であるが、ドラエモンの塗り絵があるというだけの理由でココスへ。
　でもハンバーグとライスでオーバー１０００円ってやっぱり外食って高いよね。
　
　遊び疲れた奴は、今はすやすやと布団で眠っている。
　母親なしで寝たのは、今日が初めてではないだろうか。
　こんなふうに、とことん子供に付き合ったのもホント久しぶりである。
　
まあ、パパ、パパと寄ってきてくれるうちが華だろう。
　
　明日はいよいよ新しい職場へ。
　今週も頑張ろう、日本のおじさん、おばさん。

　


Studio Jazz Party by Johney Griffin