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中国の経済統計は信頼できるか?

2011年01月31日 | NEWS & TOPICS

 GDP世界第二位の座を中国に明け渡したことがショックだったと見えて、
 日本における各種メディアの経済ニュース欄を一読すると、
 やたらと中国経済の台頭ぶりを伝える記事であふれかえっている。
 借金まみれで経済成長の道筋さえ示すことができない日本の現状を顧みた時、
 時代はもはや完全に中国といった印象を受けることは止むを得ないが、
 多少、冷静に中国経済を見る感覚は必要であろう。
 
 たとえば、中国の軍事費について、公式発表を額面通りに信じている人はいないであろう。
 一説によると、実態は公表された数字の三倍以上とも言われているが、
 中国の統計数字が必ずしも信頼に足るものではないという点は、
 軍事だけでなく、経済に関しても当てはまるものである。
 この点について、米国の保守系シンクタンク・ヘリテージ財団で、
 アジア経済政策を専門に研究しているディレク・シザース氏は、
 次期首相と目されている習近平氏が、中国のGDPの数字について、
 「単なる参考のため(for reference only)」のものであると認めたことに言及しながら、
 中国政府の統計データへの疑問を呈している。

 Derek Scissors
 "China Grows 10 Percent Again: Is This Believable?"
 The Heritage Foundation, Web Memo, No. 3098 (January 20, 2011) , pp. 1-4.
 http://report.heritage.org/wm3098

 シザース氏が注目するのは、中国政府が発表した公式数字のうち、
 2010年における中国のGDP成長率が10.3%と力強い発展を見せている一方、
 その他の経済指標に関しては、そうした成長の勢いを感じさせるものになっていない点である。
 具体的には、消費者物価指数はわず3.3%上昇にとどまっており、
 この数字は、中国の物価対策において最低水準のものであった。
 また、他国では、GDPの算出に含まれる不動産投資や固定資産収入について、
 中国の公式数字においては含まれていなかった。

 なお、シザース氏は、今回の発表は修正されるものと予測しているが、
 中国のGDP成長率は、常に高く設定されることに変化はないであろうし、
 修正された内容も公表されることはないと見ている。
 むしろ、習近平氏が言及したように、中国の経済統計を過信しないことが重要であり、
 その点において、習近平氏の言い分に耳を傾けるべきと提言している。
 また、信頼できる統計数字を見ている限り、
 中国の経済発展は、GDP成長率よりも低いと言わざるを得ず、
 インフレをはじめとして、今後、中国が直面する経済的な試練も大きくなっているとしている。
 
 米国でも、中国の経済統計に関する検証が進んでいるとは言えない状況のようだが、
 軍事と同様、これから地道に行なわれるようになるだろう。
 経済成長を約束しなければ、支配の正統性を根拠づけられない中国共産党の実情を踏まえば、
 その動向を把握する上でも必要な作業であろう。