“お前の役に立つ脳みそは 1個だけじゃねえだろ。使える脳みそは 全部使っとけ。
周りにいくらでもあんだろ。”
デンバー社の技術者・ピコ・ノートン(小山宙哉「宇宙兄弟」より
これで、四人が去った・・・。それにケイゴがあろうことか同調する。
「あ、あ、俺も」
それがマコの怒りに火をつけた。
「アンタがグズグズして体育館じゃなくってこんな野外ステージになったんでしょ」
ケイゴも押し込まれながらも返す。
「でも、古代ギリシャみたいでカッコイイって・・・」
「いや、最初こそそう思ったけど、メリットゼロ。」
「え、・・・」
「意外と道路の音うるさいし、そもそも雨降ったら終わりやん。」
「そんな、そんなん俺に言われても・・・」
もはや八つ当たりの感も免れない。
「あ、照明ー・・・」
マコは飽きたのか水嶋拓也(ミズシマタクヤ)を呼び出す。
この演出は飽きっぽいくせに仕切り屋で、みんながついていけなくなる所以だ。
いまいち役者の信頼も得られていない。もっともスタッフは皆、兼任している。
ケイゴは弁明を諦め、その場からしょぼんと去ることにした。
「あ、オレ、本番二日前と一日前の稽古場、交渉に行ってくる。」
「そうそう、二日前には必ず通し稽古を二回やりたいから、それだけは確保して。」
思わぬマコからの激励に喜ぶケイゴ。人は励ましが必要やねん。
「あ、もちろんもちろん。人は集まりそう?」
し・ば・たー、二回同じ言葉繰り返すなー。嘘くさく聞こえるやろー。
「二日前やし来るに決まってるやん。そんとき場所なかったら、土下座してもらうからね」
こええー。
「・・・オッケー」
ケイゴは去って行った。五人目だ。
とそこへ、さっきマコが呼んでいた照明屋のタクヤが来る。
こいつは賢い。天才と言ってもいい。
あまり進学するやつがいない、うちの高校では成績はピカ一だ。でもその頭の賢さのバランスを取るためなのか、色々と身体が弱く、出席日数も不足気味で、稽古場へも・・・。
そもそも本番に体調を整えて来られるかがマジで不安だ。
そんな俺の心配もなんのその。こいつは、全く悠々と、そして飄々と現れる。
「あ、はい、はい。・・・照明が何か?」
さすが天才、必要最小限の質問。
「そうそう。野外で何ができるん?真昼間やで」
そう、マコの疑問は当然だ。だからこそのタクヤ起用。
なんとかお前の知恵と知識で乗り切らせてくれ!
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