とタクヤの手が空中フェーダーをいじる。
調光器のフェーダーっていうのは音でいうとボリュームのこと。舞台上のすべての灯りはこの音響でいうミキサーのようなところ調光器に入っていく。そして観客を幻想的な世界観へといざなうのだ。
「いや、でも夕方っていうのは?どうするん?」
「 あー、それはねえ、まだチョット考えてないんやけど」
マコの突っ込みに、タクヤはサクッと答える。
「・・・できないかも」
マコは驚いてからあきれ返るという芸当をみせる。
「 えええー、それ出来ひんの?」
作者のオレも一緒になって凹む。
いや、マジか。確かに夕陽が照明で表現出来ひんのは・・・痛い。
「あ、でも、目潰しっていうね、パーライト使って、観客に向けて、こうパーって」
少し焦ったのかタクヤは身振り手振りでパーライトの光量を表現しようとする。
「わざわざヤマトくんに言われて借りて観たのにな、ウルトラセブンの『狙われた街』」
見てくれていたかマコ。ありがとう。全然興味なさそうだったのに・・・。
「あー、だから元ネタやんな、だから、あれってめっちゃ逆光で、全然顔取れてなかったりするシーンがあって、それをな、目潰し(照明の名称)使ってね、・・・」
「あー、夕日の下、ダンとの対決でしょ?出来んのかな。」
「・・・表現しようかな、と」
タクヤは困った顔をしていて、マコはすでに激しく落ち込んでいる。
俺も一緒に落ち込む。夕日のシーン、できないのかあ。
気まずい沈黙を破ったのは、繕い物をしていたイズミさんだ。
「そのシーンやけど、結局メトロン星人とか出すん?」
「あー、川上くんの名前、わざわざダンにしたしね。龍輝(リュウキ)なのに」
タクヤは話が変わって少し嬉しそう。
「メトロン星人にするなら、それ、作るのは・・・大友さん?・・私?」
リタルダンドに弱気になっていくイズミさんの問いに、マコが顔をあげる。
「そりゃあ、衣装さんかなあ。」
衣装担当イズミさん、絶句。
「ええー、・・・・・」
ちなみにアカリの小道具係と衣装係とは作るものが多いので別れている。。
両手をだらりと下げ、もう精一杯と主張するイズミさん。
深い沈黙が一同を覆う。
やがてイズミさんが絞り出すように一言。
「衣装作んなきゃ・・・、なので」
イズミさんは去って行った。六人目。
そしてタクヤがやばい一言を放つ。
「あ、でもホントにメトロン星人的なやつやんないとヤマトくん怒るよ。」
怒らねーよ。
「あーーーーーー!!、もういやー」
と、泣き出すマコ。呆然とするタクヤは、おろおろするばかり。
最近の「そうして、誰もいなくなった」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事