またエチュードについての話の途中ですけれど、抜粋して掲載します。
芸術作品とは、社会や人間を芸術家がどのように見ているのか、その世界の見え方を通して観客が新たな自分自身や世界観と出会い感動をするものである。
社会における芸術の価値とは、世界の多様性、人間存在の奥深さ、そして社会の重層性を我々の意識の奥深くに訴えかけることによって人間理解や他者との協働関係を促進し、差別意識や戦争を止めて世界平和の実現に助力することにある。
一般に芸術と聞いて思い浮かべる絵画や音楽が「個人芸術」であるのに対して、舞台芸術は「集団芸術」であり、自分とは異なる他者との協働によって人間そのものを表現していく。
その創作過程では他者と出会いぶつかり合うが、理解し合おう、合意形成しようともがく中で、新たな自分と出会うことに喜びを見出していく芸術なのである。
さらに、観客に見せることが前提であるゆえに未知の他者を想定し、できうる限りの表現手段を尽くさなければならないが、それが一度限りの邂逅であるゆえに、私たちは自らの内面世界と外面世界をつなぐ橋である「言葉」を信じて、毎回舞台袖で緊張し祈るのである。
この創作態度・姿勢は多くの紛争を解決する最適のシミュレーションでもある。通信手段が進歩した反面、人間関係が希薄になった現代において、最も平和に資する有用な芸術分野である。
最近の「演技・演出演習」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事