「だからー、音響はオレやるから。だけどクラシックってよく分からへんし、ただ元ネタはな、多分クラシックやねん。だからそういうのでいくんか、俺の得意のヒップホップとかロックでいくんか」
考えているとタクヤが援護射撃?、をしてくれた。
「演サブー、ここは役者に逃げずに頑張ってねー」
タクヤはマコと同じ演サブって呼ぶのか・・・
「え?何が?」
どこからどこまでエルは分かってないんだろうか。
とにかく、演出不在時はエルが演出だ。指示を仰がねば!
「クラシックでいいん?」
「いや、ヤマトくん、そもそもあそこのシーン、夕陽はつくれないんだよね。」
わかってるよタクヤ、聞いてたよ。でもさ、っでもな・・・
「あと、なかなか着ぐるみも、難しいみたいやで、衣装的には」
タクヤは追い討ちをかけてくる。俺は息も絶え絶えだってのに。
「ちゃぶ台は?」
「あー、それ大道具だっけ?小道具のだっけ?」
お、エルー、ナイス。演助っぽい発言だぞ!
「難しいなあー」
俺も一緒に悩む。
「でもさあ、やっぱ、作るとかって工夫次第ちゃう。」
演出助手も同意してくれた。
良かった、三年五組はまだ死んでない。
「演劇に不可能はない!!」
俺たち二人はうなずきあった。
「でもさー。結局照らせるとこと照らせないところがあるわけよ。」
タクヤがまぜっ返す。「ましてここは野外だし」
言ってやらねば。
「意図のないところに創造は無いのよ。偶然にはスゴイものとかクリエイティブなもんとか、他とは異なるオリジナリティー溢れるものは生まれへん。」
せっかくの熱弁にタクヤが水を差す。
「あ、でも双子とか」
急に顔が変わるエル。タクヤは続ける。
「おんなじだよね、偶然二つになって」
俺は反論した。
「いや、違うよ。現にエルとイズミさんは全く違うやん」
「ありがと、見分けてくれて。でも最初は間違えてたじゃん」
よっしゃ、味方につけた。
「うん、わかるよイズミさん」
俺が返事したとたんに、タクヤの顔色が変わり、笑い出す。
「ええーっと。ボケた?」
何言ってるんだろう
「そして、なぜさんづけ?」と、エルは一言残し突然去る。
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