この物語は、宝くじで3億円当たってそれを何に使ったか、というお話だと思います。
当たった正子さんが、誰のためにどう使ったか。
もちろん、いちばんは自分のため、であるのですが。
別の登場人物を主人公にして、このお話の別バージョンを描いてみたらとても面白いと思います。
私なら、主人公は、正子さんの友人でありニセ妹である、あぐりさん。
あぐりさんは、正子さんの友人でありニセ姉である百夜さんを仲間に引き入れ、宝くじで家を建て、まだ億単位のお金を持つ正子さんに寄生することにしました。
正子さんから泊りがけの夕食に誘われたのを良いことに、百夜さんと正子さんの家に住むことにしました。
住むのは、簡単でした。実の姉妹がいても住んでいればいいのです。
正子さんは「帰って」とは言わないことは、何となくわかっていたのです。友人ですから。
帰らないでいると、正子さんは、実の姉妹を追い出し、百夜さんとあぐりさんと姉妹になりたい、と言い出しました。三人とも、ラッキーとばかりに、ニセ姉妹が誕生しました。
そして、あぐりさんは、次の計画のチャンスを待ちました。
ほどなく、チャンスは訪れ、大好きな「パンを焼くこと」を仕事にすることができました。
めでたしめでたし。
百夜さんは、あぐりさんと正子さんに引っ張られる形でしたが、もとの仕事は派遣だったので、やはり住む家と仕事の心配もなくなり、なんと事実婚の夫までゲットしたのでした。めでたしめでたし。事実婚の夫って、やっぱり、ニセ夫?
しかも、ニセ姉妹もニセ夫婦も、喫茶店も40年後も続いているのです。めでたしめでたし。
で、正子さんの実の姉である衿子さんと園子さんの40年後は描かれていません。
なので、とっても気になります。もやもやします。
めでたしめでたし。でしょうか?それとも???
あっ、衿子さんや園子さんを主人公に物語を描けばいいのですね。
ニセ姉妹の三人より、ずっとめでたしめでたしの物語を。
本文より
「そうね、小説だってロボットが書けるようになるらしいね。でも、機械ができないことをやるのが人間じゃないよ。機械ができることでも一所懸命にやるのが人間だよね」
茂と結婚して主婦になったとき、金をもらって生活することの罪悪感を覚えた。宝くじの金で家を建てたとき、茂から苦々しく思われていたと今になってはわかる。・・・・・
ただ、百夜と正子とあぐりの組み合わせの場合、金の遣り取りの緊張が走らない。それが、百夜とあぐりを姉妹に選んだ理由のすべてのような気がする。