大学一年生の片井海松子さんの成長物語。
ちなみに海松子は「みるこ」と読みます。かわいい名前だけど、読みづらいですよね…私は最後まで読みにくさを引きずってしまいました。
なので、失礼ながらここではひらがなで「みるこ」と呼んでいこうと思います。
みるこちゃんは真面目で裏がない素直な美人(?)でいい子なんですが、真面目過ぎて裏がなさ過ぎて素直過ぎて美人過ぎ(かどうかは不明)で、思ったことを思ったままに言っちゃう所謂「困ったちゃん」なのです。
嫌味や悪気は全くないんですが。それは自覚がないからなので、言ってみれば「根っからの困ったちゃん」です。
物語は、そんなみるこちゃんの大学に入学してからひと夏の経験を経て真冬までのほぼ一年間を描いていきます。入学したての春は出会う(登場する)人々の紹介から始まり、読者はみるこちゃんとともにその人がどんな人なのか知っていきます。あわせてみるこちゃんの家族構成や性格や見た目も否応なく知っていきます。
離島への旅行や恋バナの夏、バイト先の塾での悩み、みるこちゃんは少しずつ自分の、加えて他の人の思いに気づいていきます。
そして、文化祭の秋。みるこちゃんの良さがみんなに周知されてくるなか、みるこちゃんに訪れる異変。その異変こそみるこちゃんのオーラ。(と、みるこちゃんは信じて…)
離島は「与野島」として描かれていて、本当にある島なのかと思いグーグルマップで見たらありませんでした。たぶん、「与論島」ですね。
偶然にもインスタに与論島の海で亀が泳いでいる映像が流れてきて、あまりの美しさに目を奪われました。美しいものには本能的に惹きつけられます。
私がこの本を手に取ったのも、このピンクのきらきらした美しい見た目。
それが戦略なのかどうかわかりませんが、私も素直なのかまんまと嵌りました。
戦略、大事ですね。
戦略の部分を担うのは萌音ちゃんなのですが、彼女はとっても優秀な戦略家です。
みるこちゃんをオーラから救うのも、みるこちゃんの恋の成就も萌音ちゃんのおかげ。でも、萌音ちゃんを救うのもみるこちゃんだったりして、それはお互い様というか持ちつ持たれつというか、みんな性格的にはいろいろありますが、そのあたりを物語はさら~~っとさわやかに描いています。
さわやかも、大事ですね。
この物語、どう人を惹きつけるか?もテーマなような気がします。
大学生のみるこちゃんは全然魅力的ではなくて、高校生までの魅力的なみるこちゃんを知る人には「何があった?」と言われちゃうくらい。
みるこちゃんが魅力的なみるこちゃんでいるにはプロジュース力が必要だったのです。
みるこちゃんだけではなく、友達のまね師の萌音ちゃんも。誰でも。
プロデュース、大事ですね。
プロデュースするためにも自分をよく知ること、みること。それが魅せるための第一段階。
自分をよく観察してよく知らねばです。
魅せるためじゃなく、自分が楽になるためにもね。
というのも、私はどうしたら私は私に楽させてやれるか?をついつい考えているように思うからなのです。
魅力的になれて楽ならこんな良いことはないので、もっと自分を知らなければ!!!です。
オーラの件は、間違ったプロデュースはどうなってしまうのか?を作者は描きたかったのでしょうか?
オーラって目に見えないから難しいですよね…。
自分では絶対に見えないだろうし。
ここはまね師の萌音ちゃんの言葉
「自分が神がかってるなんて信じる人間は、思い上がりも甚だしいし、めちゃくちゃ感じ悪いからさ」が良きです。
でも、神がかっている自分も面白かったりしますよね?
だから、嵌っちゃうんですよね…。特別な自分。捨てがたい…。
<本文より>
※この人は自分のしたいことしかしていない。私もそのスタイルでいこう。
※「それも困るんだよなぁ。私は一方で、流行も好きだから。みんなが似たような恰好をしてないとダサいって馬鹿にされる、そういう窮屈な縛りも好きなの。どれだけ個性を消して流行りに全身浸ろうとしてもうっかりちょろっと出てしまったその人の個性を摑んで真似するのが私は好きなんだ」
☆追記
「海松子(かいしょうし)」は松の実のことだそうです。漢方薬なのだとか。
それから、「海松子(みるこ)」は清少納言の名前かも、だそうです。