*フェノロサの妻
*隣に座るという運命について
*月下氷人
*切支丹屋敷から出た骨
*シスターフッドと鼠坂
*坂の中のまち
*エピローグ
大学生になった坂中真智さんの卒業までの物語。
7篇に分かれていますが、ひとつの物語です。
大学入学と同時に富山から東京にやって来て、祖母の友人の下宿屋に住むことになったところから物語は始まります。
東京の茗荷谷の辺りなのですが、私は東京にはまったく無縁なので全然わかりません。ですが、最近のこと、秋篠宮家の悠仁さまが高校を卒業されたニュースを見ていたら、悠仁さまが「茗荷谷」という地名をおっしゃられて、「え~~!!茗荷谷って今読んでいる本に出てきたけど」とびっくりして、グーグルマップを見たりしました。
坂はたくさん出てきます。もう、何が何だかわからなくなるくらい。
坂があってもなくても、町には歴史があります。過去があって今があって未来がある。この物語も遠い過去の出来事があって、ちょっと昔のことがあって、今の物語があります。
ちょっと昔のことというのは、真智さんにとっては大事件だったりするのですが、まわりのみんなが過去のものとしているので、読んでいる私も衝撃はあまりなく、「そうなの???」と思うくらい。
それは、今みんな幸せだからだろうな、と思ったりします。みんなが幸せになる方法をみんなで選び取ったのだから。
時々、生きているのかいないのかわからないような不思議な人物も登場したりします。それが、とても自然でインパクトがあってよいです。
まちさんの家族、同級生、訳あり大家さん、知り合う男性たち、みんな個性的で楽しい人たちです。
その楽しい人たちのお陰で、とても楽しい読書時間を過ごすことが出来ました。
もうすぐ4月。時季もぴったりな物語でした。
<本文より>
自分の母親が平凡かどうかなんて考えないで生きてきたが、もしかして、この人は「平凡」を意志的に選び取ったのかも、という気がしてきた。