能を観る人の心を打つ大きな要素は、単純な舞う姿や謡だからこそ、写実的な演劇以上に演者の心情、すなわち眼にみえない内面のエネルギーに触れ、観る人の直感力、創造力が働き、刺激され、それぞれの人の心の中にある感じたいものにタッチするからです。
現在、私たちは肉体的、精神的な苦悩に向き合いながら生きています。痛みは内面的なもので、表面的に楽しむことはあっても、なかなか本質の痛みを癒すことは難しいです。その内面をしっかり見つめることが、能と重なる点かもしれません。
これから、海外にはばたく日本人にとって、会話手段として言語(特に英語)が必要になってきています。しかし、その前に日本人としての文化を身体で感じていること、日本人としてのアイデンティティの必要性が海外では大事になってくると思います。
日本の文化のルーツである能楽を身につけてみませんか? 足袋を履き、扇子を持って舞ったり、和の謡いをうたったり、礼儀作法を学んだりと、いろんなことが自然に身につけられます。
また、ご両親から譲り受けた箪笥に眠っているお着物を稽古や発表会で着てみる良い機会でもあります。そしてまたそのお着物をお子様やお孫様ご親戚の方などへ差し上げたりと伝承していくのもよいかと存知ます。
~ 伝 承 ~
650年もの間、脈々と親から子へ、子から孫へ、また師匠から弟子へと 一度も絶えることなく伝え続けられている演劇は、世界中でも日本の能が唯一であ る といっても過言ではないでしょう。
能楽は2001年5月、 パリのユネスコ本部において第1回「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言 」を受け、更に2008年11月、無形文化遺産保護条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的一覧表」に初めて登録され、後世に伝えるべき貴重な財産として広く 世 界の認定するところとなりました。(能楽協会より)