冬桃ブログ

夜明けの寂寞

 考えても仕方がないこと、考えるしかないことが
頭に渦巻き、ブランデーも睡眠薬も効果のない夜がある。
 なんとか寝なければと必死になるのだが、ただの悪あがき。
 仕方がないので未明にベッドを出た。4時半をまわった頃。
 外は白いもやがかかっている。
 暖かいものを着て外に出た。田んぼや畑が連なる農道を
独りで歩く。もちろん誰の姿もない。
 靄の中から、少しかすんだ太陽が昇っていく。


 田んぼに水が入り始めた。
 もうすぐここに、オタマジャクシが湧く。
 あたりが明るくなるにつれ、畔に咲く花の
色が濃くなっていくような……。


 透き通った蜘蛛の巣が、翼を広げた妖精のよう。


 こんな風景を毎日見られるのは、私に与えられた最後の幸せ。
 でもそれを維持する力が、日々、衰えていくのを
意識しないわけにはいかない。
 人生の終盤だというのに、踏み迷ってばかり。
 
 こんなにも美しい自然の中で。

 S村の神秘な山中にある滝。

 
 

コメント一覧

yokohamaneko
市山さん

 長い入院から戻ってまいりました。
 「死」ではありませんでしたが、
体の機能をひとつ失っただけで
世の中がまるで違って見えました。
 知らないこと、気づかないことが
ありすぎると、あらためて自覚しました。
市山貴章
僕は家(UR)のそばの風景に癒されて、生きてる幸せを感じている毎日です。この目と身体がある喜び。この美しい世界を感じる事の幸せ…しかし終わりは必ずやって来る。

小学生のある日、必ずやって来る‼️という死を納得出来なくて強く反発していた時期がありました。 誰かの死がキッカケでは無かったんですが ずっと、それから死と共に生きてきたのかもしれません。 だから…ってどうの、こうのは無く
少しずつ 砂が崩れていくように生きていきます。
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