漫画家アシスタント 第３章 その３４

(　この写真は、27年前・・・「トキワ荘」正面玄関前から撮影した「うさぎ荘」2階の我が部屋の窓
　　である。今は・・・もうない。《1979年昭和54年 撮影》 )


【　はじめての方は、　「漫画家アシスタント　第１章　その１」　へ、どうぞ。】




　　　　　　　　　　　　　　その３４　・・・・・・・・・　 2006年03月25日 21時27分 (公開)



私が東京豊島区南長崎の「 うさぎ荘 」に越してきたのは1978年 秋・・・・　23
歳の時でした・・・・・・。

部屋は2階の角、隣は無口な学生さんが住んでいました。　夜中に喜多郎や
イーグルスをガンガンかけて随分、不愉快な思いをさせてしまったのではない
かと思います・・・・・。

私は完全に夜型の人間でしたので、昼間はカーテンをしっかり閉めていました
が、たまにその薄汚れた青いカーテンを開けると・・・　目の前に「トキワ荘」が
あったわけです。

「トキワ荘」の2階・・・・　この部屋だったのだろうか・・・・・　石ノ森先生が酔っ払
って窓から小便をしたのは・・・・・　ボンヤリと視線をトキワ荘内庭の地面に落と
す・・・・・　その黒い地面に浸み込む石ノ森先生や赤塚先生の小便のシミをしみ
じみと想像したりなどしていました・・・・・。　『 冬だったら、湯気がたっていたか
もしれないなァ・・・ 』


毎日、お昼過ぎからの仕事に必ず遅刻して来る私に、先輩アシスタントは誰
一人として、文句を言ったりしなかったのです・・・・　しかし・・・・・　ある晩、仕事
帰りに初めてリョウさん( 仮名：内海遼一、岡山出身、25歳 )のアパートに行っ
た時・・・・・

　リョウさん　「Ｙ君・・・　ちょっとヤバいかもしれないよ・・・・　気を付けた
　　　　　　　　方がいいよ・・・・。」

　私　　　　　「え・・・・・？？？」

　リョウさん　「Ｊ先生はしばらく様子を見るんだよね・・・。そして・・・・急に
　　　　　　　　来るから・・・・」

　私　　　　　「え・・・・・？　何が来るんですかァ？」

　リョウさん　「Ｙ君、危ないよ・・・。」

この時、私はリョウさんの忠告をまったく理解していませんでした。　ただ、Ｊ先
生が私の事をそうとう怒っているらしい位のところは理解したのですが、私は相
変わらずノー天気に過ごしていました・・・・。


いつもの様に夜更かしして、床についたのが深夜4時・・・　朝の7時頃まで寝付
けずにモンモンとしてから、やっと眠ったと思ったら時計は午後2時を指している
・・・・・　

午後の日差しはトキワ荘の汚い屋根瓦に反射し、私は寝汗をグッショリかきな
がらあわてて飛び起きる・・・・・・　その時・・・・

りりりりりッ・・・・！　電話が鳴る・・・・・　また・・・　私はやってしまった・・・・。

　「 Ｙ君～ン、仕事ですよォ～ッ！ 」　
　　　　　　　　　　　　　　（ おカミさ～ん、時間ですヨ～！みたいな・・・ ）
　
ユミさん( 仮名：吉村由美子、？出身、自称24歳。本当は27歳。 )からの( 明る
い！ )電話。これは、彼女がＪプロを去る数日前の出来事でした・・・。

　私　「 すいませ～ん。すぐ行きますから～ッ！」

いつもは2,30分の遅れが、今日は2時間近い遅刻になってしまう・・・・・　額にビ
ッシリとこびりついた汗をぬぐうヒマもなく、大急ぎで服を着て外へ飛び出して行
く・・・・・。　頭の中に真っ白な蒸気がズッシリと詰っている様な気分で自転車を
こぐ・・・。

この時、私は2,3日前にリョウさんから言われた忠告などは、完全に忘れ去って
いた・・・・　いや！　忘れようとしていた！



　　　　　　　　　　　　「 漫画家アシスタント　第３章　その３５ 」　へつづく・・・



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　このページへのコメント 【　計　２　】



　☆　うさぎ荘 (ぱるちゃん)

2006-03-26 21:05:35

うさぎ荘って、何処からこのネーミングが来たんでしょうかねぇ？
よく大家さんの名前から来てたりしますが、もしかして名字が「うさぎ」？？？？

んなことないですね....笑



　☆　「トキワ荘」と「うさぎ荘」 (yes)

2006-03-27 22:21:45

ぱるちゃん、コメントありがとうございました。
　　
「トキワ荘」に暮らした漫画家は有名、無名を問わず相当な数
になると思います。　実はＪプロの先輩でガンさんと同期にＪ
プロに入ったＮさんは、この「トキワ荘」に住んでいたそうで
す。
　　
手塚先生という柱があってこその「トキワ荘」だったんだと思
います。　もう、二度とこんな所は出てこないでしょう・・・・。
　　
　　
この「トキワ荘」に諸先生方が居られた頃には、アパートの正
面は空き地になっていた様なのですが、その空き地に出来たの
が、私が暮らした「うさぎ荘」なのです。
　　
「うさぎ荘」と言う名のイメージからは、程遠いねずみ色のボ
ロアパートでした。　大家さんは腰の曲がった老夫婦で、耳が
よく聞こえないのか、毎日、テレビの音量をとてもデカクして
いたのが印象に残っています。　
　　
「うさぎ荘」と言う名に由来は、残念ながらまったく分りませ
ん。　はじめてこのアパートに入った時も、その名前に妙な違
和感を覚えました・・・・。
　　
私の予想では、たぶん大家さんの奥さんの干支(誕生年)かなん
かでは、なかろうかと・・・・・・・