パリという街
パリは東京の山手線の内側くらいの面積で、樺太の緯度と同じくらいの北にある街です。
丘といえば、モンマルトルの丘くらいでまったくの平坦地です。
モンマルトルの丘も高い丘ではありませんが、パリの街を一望できます。
モンマルトルの丘
フランス自体が山の少ない国で、スペインとの国境であるピレネー山脈ともう一箇所くらいの山地があって、あとは平野です。
5月からはサマータイム時間となっていますが、それでも一日の日照時間はかなり長くなっています。
朝は日本と同じくらいの時間に明けますが、夜は9時を過ぎてもまだ明るいです。
その長い日照時間を利用して、夜遅くまでカフェで過ごすパリジェンヌは、少々の雨が振っていてもお構いなしで、歩道いっぱいを占領したカフェで何時間もねばります。
その山手線くらいの面積を2種類の地下鉄が縦横無尽に走っています。
日本と違うところは、パリの地下鉄は案内が少ないということです。
案内板はフランス語のみ、最近の日本では英語・韓国語・中国語が併記されているところが増えましたが、フランス語しか表記しないところにフランスの見栄と誇りを感じます。
余計なところにお金を使わないようにして公共料金に賦課されないようにしているのかもしれません。
英語を使える人は少なく、ホテルでも英語が通じないことも多いそうです。
さらには地下鉄には車内放送がなく、目的の駅までは自分で気をつけないと乗り過ごしそうです。
これが、個人主義というもので自分が責任を持てということでしょうか。
乗り過ごしたとしても駅と駅の間が短いので、一駅二駅くらいはわずかな時間で歩いて戻ることができます。
しかし、どこまで乗っても同じ料金ですし、切符の磁気が狂わない限り、値上げしたとしても半永久的に使えます。
この話を聞いて、10枚単位で手に入れた切符の残りを今でも持っています。
いつか使える日が来るかもしれません。
市内にはコンコルド広場と凱旋門広場の大きな二つの広場があり、その二つの広場をシャンゼリゼ大通が2キロに渡って繋いでいます。
その広場を中心にするように放射状に道路が伸びています。
シャンゼリゼ大通のマロニエの大木の葉は道路にはみ出ないように、直角に剪定されています。
私たちを乗せたバスが通りがかった時にちょうど剪定が行われていました。
凱旋門広場を南に行くとエッフェル塔が見えてきます。
エッフェル塔
エッフェル塔にも国策が現れています。
というのも、エッフェル塔の色は誰の目にも優しく、しかも他の景観に影響を与えにくい色にしたそうです。
われわれ夫婦がエッフェル塔を見た場所は絶好の写真スポットといわれているところだそうですが、緑の中で見ることもちゃんと考えられている色でした。
そのエッフェル塔のそばをセーヌ川が流れています。
私の以前からの持論ですが、もう一度いってみたいと思う良い街は必ずといってよいほど川が流れています。
パリの街を行き交う車はプジョーとルノーの小型車が多く、道路端に縦列駐車で多くの車が止まっています。
ベンツも走っていますが、やはり小型車タイプが多く止まっていて、それも車同士の間がほとんどない状態で止めてあります。
バンパーで前後の車を押して動かして、走り出す話は本当でした。
だから、日本のようにきれいに掃除が行き届いたような車はあまり見当たりません。
パリの街はほとんど駐車場がなく、路上駐車でかまわないお国柄です。
パリジャンの人々は、住まいはアパートでもかまわないらしく、富裕層は別荘として郊外に1戸建ての家を持つそうです。
パリ市内のアパートの造りはパリ全体が同じような造りをしていて、窓にはお花を飾ってあり統一感があります。
パリは、たくさんの美術館があり芸術の街ですが、全部の美術館を見て歩くことは非常に時間がかかり、また、美術館自身も芸術的な建築物なのです。
このように、パリは長年にわたって造られた街で、フランスの国策を感じます。
日本の政治家のように刹那的な政治をする国とは大きな違いがあります。
最近、セーヌ川にかかる橋のレンガを磨きなおしたそうで、元祖「自由の女神」も新しく感じます。
ただ、スリに気をつけなければいけないことが欠点といえば欠点でしょうか。
空港からホテルへのバスの中、観光地へ向かう大型バスに乗るたびに、ズボンのポケットに財布を入れてはいけない、人通りの多いところはバッグの口を押さえて歩かなければならないとか、観光地では刺繍売りの黒人に気をつけなければならないとか、必ず注意されます。
日本人が一番被害にあっているそうです。
安全な国で育ったからでしょうが、最近の日本は安全ではなくなってきていますから、どこを歩くにしても注意が必要な世の中になってきました。
もうひとつ欠点がありました。
公衆トイレが少ないのです。
切羽詰ったときはカフェに入り、アメリカンコーヒーを頼んでお金を払ってから地下のトイレに入ることを教わりました。
わざわざコーヒーを、と思うかもしれませんがコーヒーの値段も水の値段も変わらないのです。
ただで、安心な水を飲めるのは日本だけのようです。
フランスではコーヒーを注文するとものすごく濃いエスプレッソが出てきますので、アメリカンと明確に言わなくてはいけません。
明確にといえば、断るときも「ノン、メルシ」とはっきりいわなければ法外な値段を取られますから要注意です。
しかし、ホテルのディナーで飲んだワイン、セーヌ川のディナークルーズで飲んだワインは今までに味わったことのないおいしいワインでした。
昔からおいしいものは現地で味わわないといけないといわれていますが、まさにそのとおりでパリで飲んだワインは濃くのあるおいしさでした。
そして、フランスパンも実においしかった。
赤ワインとフランスパン、この二つはいつかはもう一度味わいたいと思うおいしさでした。