皆様、こんにちは。総合診療医からの健康アドバイスの時間です。
今日の沖縄は晴れ時々曇り。予想最高気温は23度です。今回は先月にFM那覇で放送された内容をお送りいたします。では、どうぞ。
アーサー 昨年の流行状況等のおさらいをしつつ、ゼロコロナにむけての提言を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします」。
まず、2020年を振り返る中で、日本が歩んできた「ウィズコロナ」とはそもそも何か、そして私たちの生活、日常的な取り組みがどのような形で推移してきたのか、振り返りたいと思います。
徳田 「ウィズコロナ」とは、政府が、コロナとの共生ということで、コロナは大したことはない、コロナがある程度流行しても経済は回せる、社会も動くというコンセプトで使った言葉です。しかし世界中で、ウィズコロナと言っている国はないんです。
アーサー ここがすごく不思議な部分です。報道情報番組の取り扱いでも、私自身も不思議に思っていたのが、コロナと共生をする、つまりある程度の市中流行を容認するということが、ウィズコロナの前提としてあるという理解だったわけですが、なかなか市中流行の容認というものがどのような形で影響するのか、もしくはそれがどのような部分に当たるのか、明確にメッセージとして伝わりにくかった印象があります。
徳田 そうなんですよ。1年前を振り返ると、最初、中国・武漢でアウトブレイクが起こって、そこでかなりの感染者、死者が出て世界中が注目しました。今から思えば、第一ラウンドのゴングが鳴ったということだったと思うんですね。ゴングが鳴って、コロナ対中国という緒戦が展開されて、リング上にはコロナと中国が乗っていた。世界中が、日本を含めて、リングサイドというか、リングの外から眺めていたと。
アーサー どちらかというと対岸の火事といいますか、ある種、他人事と。
徳田 そう。中国がどうやるのかという感じで、まさかこれが世界中に広がって、中国以上の被害を受けるとはあの時点で思った国はなかったと思います。とにかく第一ラウンドは中国が闘ったと。この第一ラウンド、第一戦で中国があっさりと勝った。数か月はかかりましたけど、ゼロコロナに持っていったじゃないですか。
アーサー はい。その時に特に際立って報道されていたのが、ロックダウンと並行して行われていた徹底的な保護隔離政策でした。
徳田 そう、大規模検査に基づく保護隔離。
アーサー ここがものすごく印象に残っています。
徳田 はい、中国は今も、ときどき、感染者が見られた地域では一千万人規模の大規模検査を二日くらいで行って、数百人の陽性者を探し出して、その人たちを保護隔離をして、コロナを抑え込む。これをずっと、戦略として使っていますよね。それでゼロコロナを達成しています。それをみていて、「そこまでやらなくても自分たちは大丈夫だろう」と、いうふうにみたのが日本と欧米だったんですね。
アーサー このあたり、あの当時の見方とすると新型コロナウイルスという単独のものというよりは、新型インフルエンザの延長線的な雰囲気で、どちらかというと市中流行を容認しながらある程度、感染者数が膨らんだタイミングで叩く。「ハンマーとダンス」と呼ばれる政策かと思うんです。具体的には自粛要請による抑え込みという部分、これがウィズコロナの典型的な戦略の位置づけだったと理解しているんですけれども。
ただ、結果的に5月以降、最初の緊急事態宣言以降の流れを全体的に見ていても、経済都の両輪どころか、ものすごく弊害が大きくなっていったという動き方で、昨年を終えたという印象ですが。
徳田 昨年はそれで終えて、今の状態になった。そこで、これではウィズコロナでは回せないということはわかったんじゃないでしょうか。さすがに今、ウィズコロナと言っている政府関係者や専門家はいないと思います。
アーサー ここは、改めてリスナーの皆さんにお伝えしておきたいのは、感染の基本原則というのが大きく3つ挙げられますが、そのひとつだけが主になされてきたということです。
3つの原則の一つ目は「感染源対策」。病原体を除去したり、感染者の早期発見や隔離がそれにあたりますけれども、その感染源の対策をうつこと。次に、「感染経路をきちっと絶つ」。そしてもう一つがワクチンなどで「感受性を落とす」つまりうつらないようにする。これらの組み合わせが、基本的な感染対策といえるのですが、ウィズコロナというのは、主に2番目の感染経路を絶つ、しかもここが私たち「三密」を避けるという行動回避であったり、マスク、手洗いという、各自の自己努力によって行えるものばかりをやりましょうということで、その結果が今あるということ。そういうことをお伝えしたかったんです。
徳田 そうですね。一言でいうと、感染対策をケチった。ウィズコロナという言葉を全面に出して。中国と闘ってあっさり敗れたコロナだから、大したことはないやつだと。これに全力を出す必要はないだろう、3分の1くらいの力で、あとは自分たちがやりたいことをやった方がいいだろうというくらいの認識だった。つまりコロナを甘く見た。
アーサー おそらく、政治的なお話からすると、東京オリンピックの開催をぎりぎりまで迷ったということもあるでしょうし。それ以外にも、あの当時、中国の習近平さんの来日ですとか、さまざまな政治的な項目があったということもあると思うんですが、結果的にそこで、後手を踏んだ結果、もう個人の努力に頼るということの限界がもう来ているという状況ですね。
徳田 先ほどのお話のように、感染対策には感染源、感染経路、そして宿主の感受性に働きかけるという3つがあります。日本がやったのは個人に責任を帰着させる、感染経路対策のみなんですね。先ほども出た、三密回避、マスク、手洗いなど。そして、初期のころは「夜の街」、今は「飲食店」が問題だと。そのあたり基本的に個人の努力のみに頼っていて、政府としての対策はいまだにケチっている。
アーサー そうですね。私もこれは問題だと思っていたのが、昨年から徳田さんの提言としてたびたびお伝えしていたPCR検査の拡充がなされなかったことです。特に、エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々を含めて、医療関係者福祉の方々の検査体制を拡充させ、きちっと安心できる環境で、クラスターを発生させにくい環境をつくる。そしてまた無症状、もしくは軽症状の方の宿泊施設での保護隔離と追跡という部分。この辺りを一番最初のときからきちんと整えていれば、おそらく沖縄のみならず、日本の全体的な流れから見ても、感染経路不明という割合があそこまで膨らむことはなかったんじゃないかという認識をもってます。
徳田 そうなんです。感染対策は、個人の努力による感染経路対策だけではなく、全部をやらなければいけないんです。全力で闘わないと勝てない相手なんですね。ところがそれを甘く見た。そして闘ってみたらこれが強かったと。今のところ、コロナにやられているわけですよね。
しかも、コロナにやられているというのも隠していた。検査をしなければ陽性者が見つからないというところを逆に利用した。日本は、コロナでノックダウンを、何回もノックダウンを受けているんだけれども、このノックダウンをしていることを隠そうという。けれど、いくら隠そうとしてもコロナは出てきます。体中がコロナに殴られてアザだらけになっている。「このアザはなんなんだ」となって、これでばれちゃったということなんです。
クラスターも同じことです。クラスターだけを追うということですが、徹底的に検査・追跡・保護・隔離をやっているわけではないから、クラスターといっても一部だけしか見えていない。特に、家庭内感染はクラスターに数えられないことが多い。なぜかというと、国の言うクラスターの目安は5人程度です。家庭でも例えば6人の感染ならクラスターなんですけど、今どき6人家族、7人家族ってそうそうないでしょう? そうすると4人家族全員が陽性になってもクラスターとはされないということになる。
(「1カ所で5人以上の感染」をクラスターと呼ぶことが多いが、クラスターの公式な定義はない。厚労省は報道を基に、「複数の感染」をまとめており、2~4人のケースも含む。・・との記事ありhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/68052)
ですから、クラスター対策といっても家庭ではみつからないと。だから夜の街とか、どこそこのスナックバーとか。今は飲食店でクラスターが発生しているという。あとは病院、介護施設ということになってます。もちろん、病院と介護施設の定期的な検査は必要で、私は1年前から言っていますけれど。
とにかくもっと徹底的に、バイヤスのない、検査をして、本気になってコロナと闘わないと。
コロナを甘く見たツケはかなり深刻です。それは内閣支持率の推移をみてもわかりますよね。
アーサー そこで改めて、きょうこの番組でお伝えしたいゼロコロナ。これを深堀していきたいと思います。ウィズコロナというものが、一定の市中感染の流行を容認しつつも、感染が膨らんだ時点でたたえて抑えるという取り組みだということ。その取り組みの主たるものが、私たち一人一人の行動様式に委ねられてきたということを先ほど来お話してきました。
それに対して、ゼロコロナとは何か。お話お聞きしたいんですが、まず前提条件は、市中感染をなくすということがいちばん大きなポイントに当たると思うんですね。つまり、陽性者ゼロをターゲットにしているわけではない。
徳田 そうです。だから、ときどき、1例2例陽性がでるとか、そういうこともゼロコロナでは当たり前なんです。なぜかというと、周りに、地球全体にコロナが散らばっているわけですから、どこかから入り込んでくるわけですね。
中国でも、台湾でもオーストラリアでもニュージーランドでも、ゼロコロナを達成しているところでも、時々陽性者がポンと出るわけです。だけどその陽性者をちゃんと把握するためにサーベイランス検査というのをやっているわけです。これは無症状の人に対して、定期的に、特にホットスポットを狙って検査しているから見つかるわけですね。
アーサー なので、みなさんに勘違いをしていただきたくないのは、陽性者ゼロを目指すものではなく、市中感染をなくすことによって、経済活動を後押しする、両輪を回すということがゼロコロナのひとつの効果だということです。
これまでの特集でも繰り返し徳田さんがおっしゃっていたのは、沖縄であれば、空港もしくは港における水際対策というのが大きく一つあるということ。それと検査体制の拡充をもって、より早くホットスポットと呼ばれる感染が広がりやすいところのターゲットをいち早くとらえて、さらなる感染を防ぐ。同時に、感染者が確認できたときは保護隔離とその追跡を並行して行うことが必要だということです。
ここでもう一つ、ゼロコロナ戦略として必要な対策としてあげられるのは、その保護隔離の方々に対しての保証ということです。「日当」という表現で、番組ではお伝えしてきたんですけれども、そういった形で、生活の上での安心をえるということ。以前、徳田さんがご指摘されましたが、それによって、一人一人が「隠す」といったことがなくなるというのは、もっともだなと思いました。
徳田 行動経済学的に考えますと、だれしも理想的には動かないんですよね。例えば濃厚接触者になったとき。原則として2週間自宅療養、自宅で隔離といってますが、一歩も外に出ないで、2週間ずっと家の中に閉じこもってだれにも接触しないということが果たしてできるのかといったら、それは無理ですよ。
アーサー おっしゃる通りです。
徳田 それは人間の行動を無視した理想論にしか過ぎません。ですから、徹底して検査をして陽性を見つけて、ホテルで療養する。食事からなにからきちんと提供する。こういうことをしなければ。
罰則とか言う話もありますけれども、罰則より検査をする方が先です。検査も拡充していないのに罰則というのはもう。
アーサー 特措法の話ですね。
徳田 今まで見つける努力をしていないのに、いざ見つかった人に対して罰則をするというのは。これでは逆に逃れようとする人が出てきてしまいます。
アーサー ウィズコロナのもたらした弊害ということであえてこの番組でメッセージとして出しておきたいのは、ウィズコロナで私たち一人一人の行動様式を問われた結果、その負の状況として起きたものが、自業自得という考え方であったり、そこから派生したSNSを通じた誹謗中傷であったり、もしくは自粛警察と呼ばれるものであったということです。そうした一つの集団心理となって個人を攻撃するという場面が、たびたび出てきたと思うんですが、それ自体が結果的に、この流行を抑えることを妨げる結果に結びついたと思うんですね。
徳田 そうなんです。だから政府のやっていることが、個人に対する努力目標ばかりを言うから、それに失敗した人が感染したんだから自業自得という論調になるんですよ。
そもそも「勝負の三週間」などとといったり、ありとあらゆることで個人に対するプレッシャーをかけた。そして陽性になると「あなたが悪い」ということになってつるし上げになる。だからみんな検査からも逃げるし、隠すということになるわけです。
アーサー そうなってくると、必然的に目に見えないところで広がり続けることを止めることができなくなってしまう。昨年から一貫してメッセージとしておっしゃっていただいていましたけれど、ウィズコロナと経済とが両立しない、その一番の理由はそこにあるかと思います。それはまさに今、今回の緊急事態宣言の発出も含めて、各都道府県の経済状況を見ても明らかではないでしょうか。
徳田 例えていえば、プロレスでは、カウントワン・ツー・スリーでフォール勝ち。そのワン・ツー・スリーまできちんとフォールするというのがゼロコロナです。それだけ徹底する。徹底して抑え込む。コロナも最後は抑え込むことが必要なわけで、カウントワン・ツー・スリーで勝つわけで。日本のやり方ではカウントワンくらいで力を抜いて、そしたらまたコロナが出てきてやられるわけです。カウントスリーまでちゃんと抑え込まないとやられますよと、私は申し上げているわけです。1年前から。
アーサー そしてまた、ゼロコロナを推進してきた主な国々、中国、台湾、南半球のオーストラリア、ニュージーランドも該当するかと思うんですが、トータルで見たときにウィズコロナよりも結果的にゼロコロナの方が費用対効果も高いという。
徳田 そうなんです。ウィズコロナは、どちらかというと経済優先です。経済優先で、命はやむを得ないというのがコンセプトとしてウィズコロナには入っているんです。ところが経済もストップするということがわかりました。今回、病院がいっぱいになって緊急事態宣言が発出されまあしたけれど、欧米もそういうことです。イギリスもアメリカも病院がいっぱいになって結局ロックダウンです。つまりは経済が止まってしまう。ウィズコロナで経済を止めてしまった。経済界の期待でウィズコロナというコンセプトを出したと思いますけれど、逆に経済界にとって、これは悲劇となった。これがウィズコロナの失敗です。
アーサー ある種の跳ね返りですね。さて、そしてゼロコロナの提言です。改めてお伝えしておきたいのは、経済活動というものを下支えするためにはこのゼロコロナの政策が必要なんだということ。そして、このゼロコロナの提言の一番の軸は、政治に付帯する取り組みというのが非常に大きいのだということ。これをあえて、この番組で様々な形で、発信は継続したいと考えております。
ここからは、具体的に、ゼロコロナが目指す検査戦略をキーワードとしてお話しいただきますが、主軸としてはすでに発売されています雑誌『科学』2月号に徳田さんが発表された「ゼロコロナを目指すための検査戦略」に沿ってまいりたいと思います。
徳田さんが昨年来、一貫しておっしゃっていたのは、この新型コロナウイルス自体は、無症状の感染者からでも感染が広がるという現実的な問題です。ウイルスが、唾液、もしくは咽頭等にウイルスが存在するのかどうか、見極めが問題になるということがひとつ、前提条件としてあります。そして、それに基づく、感染を封じ込めるための防疫を目的とするための社会的検査というものが必要だということを再三ご指摘いただいていました。その点を頭において、まず、現在、PCR検査の体制について、どうでしょうか。
徳田 防疫を目的とした社会的検査は全然進んでいません。流行当初、目詰まりであると、安倍総理も言って、これからキャパシティを増やすと言ったんですけれど、たしかにキャパシティは少し増えましたけれど、実際の検査数が増えていないんですよ。
注目したいのは行政検査です。最初は行政検査だけでやろうとして、それですぐに破綻したのが第一波でした。それ以降、医療機関で検査してくださいということで、医療保険で検査を受けるという形に切り替えて、では行政検査はどうなったかというと、結局その後あまり増えてないです。沖縄でも1日当たり、数百くらいしかやっていない。しかし、防疫目的の社会的検査は行政検査でやるべきなんです。
アーサー この辺り、昨年2020年の国のメッセージとしてはPCR検査を受ける方の優先順位を当初定義していましたよね、症状のある方をまず優先にと。
徳田 最初、「4日は自宅で」と。そのあと取り下げられましたけれども。4日はウチでということで軽症の方、あるいは、4日未満の方は、病院に行かないで家で休んでいてくださいと言っていたわけですけれど、それは5月になって受診してよいということになりましたけれど。そこで検査を受けるべきなのは、症状のある人たちとその濃厚接触者。それ以外の社会的検査はやる必要がないといったわけですね。いまだにその立場は変えてないです、正式には。
けれど世界的にみると社会的検査、サーベイランス検査をやっているわけです。ということで、やっぱり甘く見ているわけです。カウントスリーまで抑え込もうという気がないということで、コロナを甘く見て、カウントワン、カウントツーくらいまでで頑張って抑え込めるかなと思ったら、体を返された。返されてまた技をかけられたと。こういう状況です。
アーサー そういった中、徳田さんの科学の記事を拝見しまして、非常に注目したのが、医療機関ではなく、公的補助のもとで、国民一人一人、国民自身で検査をしてもらおうという。この提言、興味深かく読ませていただきました。
徳田 これはパブリックドメインでやった方がいいというコンセプトですね。もともとハーバード大学のマイケル・ミナという人の率いる感染症疫学の専門のグループがあるんですけれど、そのマイケル・ミナのグループが提唱した方法で、実際彼ら、世界的なジャーナルにも論文も出しています。そこでパブリックな検査、検査を自主的にやってもらおうといいっています。
それを踏まえて日本を見てみましょう。保健所が行政検査、保健所の指示で医療者がやるわけですね。医療者は現状でも、手一杯。この半年間、マンパワーも増やされなかった、機械もふやされなかった。結局予算はGOTOとオリンピックとかそういうのには行きましたけれど、保健所にはいかなかった。我々ずっと、保健所のマンパワー増やしてください、機械を入れてください、コンタクトトレーサーも雇ってくださいと、ずーっと言い続けて、ありとあらゆるチャンネルを使ってそれを提言していたんですが、まったくそれがされていなかったということですから。これはもう、保健所ルートでは検査は無理だ。自主的に国民がやるしかないということです。
アーサー 今回の記事でおもしろいなと思ったのは、人間ドックというキーワードですね。聞きなじみのある方多いと思いますが、例えば特定検診、人間ドックと呼ばれるもの、私たち検査をすることへの抵抗感がない、諸外国に比べてハードルが低い。
徳田 例えば大腸がん検診で検便がありますよね。朝、便をとって、検査センターに出す、あれと一緒です。それよりももっといいのは自分でそれを判定すればいい。日本人の能力だったらふつうにそれはできます。慣れていますから。それをやって、陽性の人たちだけ、隔離施設に入る。迎えに行って、保護隔離の方向に行くと。もちろんPCRで、再検するというのが私のアイディアですけれど。
アーサー なるほど。とするとここで言われる、各自のご家庭で行う検査キットの前提としては抗原検査が該当するという理解でよろしいですか。
徳田 ええ。PCRの機械は各家にないし、その技術的に無理ですから、結局保健所や医療機関に頼らないといけないですから。そういったところではなく、国民自らでやる。
アーサー 最低限自己確認ができるように。
徳田 ええ、そして陽性者だけPCRにかけるということです。妊娠反応検査なんかも、キットを薬屋で売っているじゃないですか。あれと一緒です。
アーサー なるほど、それだと各自でチェックができながら、陽性反応が出た方の連絡を通じて、濃厚接触者の特定ですとか、検査の確認の指示もしやすいというメリットがありますね。
徳田 はい。それを抗原検査はPCRに比べて感度が低いというのがあるんですけど、Binax Nowという製品だと、アボットという会社が作っているんですけど、かなり感度がいいんです。
アーサー これ、年末の特集の時にもおっしゃってましたね。
徳田 そういうのを使えばいいんです。精度のよくない日本製を使う必要はないんです。世界中に精度のよいのが出ていますから、それを国民のために利用して使うということです。
アーサー あとはこの、抗原検査キットの配布も含めてなんですが、家庭での検査回数ですとか頻度、目安を作ってあげることによってセルフチェックできると。
徳田 できれば週2回はやりたいですね。
アーサー 習慣ができればいい。
徳田 市レベルの選挙のメカニズムがあるじゃないですか、選挙ではがきが来る、あの仕組みをもとにした(★「使って」だと、在日外国人を排除することになるのでとりあえず)メカニズムで、1か月分、各家庭に検査キットを郵送すればいいわけです。それを使って各家庭で自分たちでやる。これは義務としてやっていただきますということです。
ハーバード大学の計算だと、スケールメリットがあれば、1キット1ドルでできるといっています。
アーサー なるほど。
徳田 そのくらいコストダウンできると。先日もここでお話ししましたけれど、携帯電話料金を下げるとか、政府は言っていますけれど、そういう検査の料金を下げるくらいのことをむしろやるべきではないか。これは安全保障にもかかわる問題なんです。軍事費は大量につぎ込んでいるじゃないですか。敵基地攻撃とか、戦車も何千台ももっているわけですけれど、それには莫大な費用がかかっている。その費用はがんがん出して、なぜそんなに出すんですかと問えば「万が一のために」というわけです。では今ある危機はどうなのか。投資が不足していると思いますよね。
アーサー そうですよね。これを仕組みとして動かすことができると、もう一つ、これまで徳田さんがずっと提言されていたPCR検査のプール方式というやり方、PCR検査を一人一人にやっているのを、数名の方の検体を同時に検査していくやり方で、より短時間に大量に回転させるための方法ですが、そこを組み合わせると、もっとスピード感が増してきますよね。
徳田 そう。しかし今だに厚労省はプール方式を認めていないんです。世界中でもう当たり前のようにやられていて学術論文も出ているのに、日本では認めていない。ですから、これはサイエンスをきちんとフォローして、認めるべきものは認めるということでやっていかないと。
あとはオーストラリアなどでは下水のPCR検査をやっています。下水のPCRをやることによって、どのエリアで感染者が発生しているかというのがわかるわけです。そのくらいPCRというのは感度がいい。下水に交じっているRNAでさえ、見つけることができる。実際はそのくらい精度がいいのに、精度がよくないと最初からたたきに叩いて、コロナは大したことはないと、コロナを見つける検査もダメだというふうにやるから、コロナにやられたということなんです。
アーサー 現実的な組み立てとして、抗原検査キットの配布はすごく有効だなと私も感じた部分というのは、お話あったように各家庭で、まず、各人が確認ができるということがひとつ。そして、連絡体制が整っていれば、すぐに宿泊療養施設、もしくは病院等への仕分けができる。ここがスピード感を増す一つのポイントかと思っています。例えば宿泊療養施設であれば、先ほどお話ありましたように、宿泊、隔離というものと後追い、そして宿泊される方の日当としての保証をする。また、送迎についての対応も沖縄であれば、県内のタクシー会社と提携をするのもいいでしょうし、専用としての契約を持つことも当然、ありますよね。
徳田 そうすることによって、GOTOトラベルをやらなくても、ホテル業界にも助けになるし、感染者が何百人いても、ホテルに泊ることができるわけですから、直接ホテルにお金が入るわけですからホテルにとってもいい話です。タクシー業界にとっても。療養者へのデリバリーで、飲食業界にとってもいい話でしょう。困っているホテル、タクシー業界、飲食店に対しての支援として、賢いやり方だと思います。
アーサー プラスだなと私も思います。かつ、日当という部分を繰り返しお伝えしているというのも、特に飲食店にお勤めの方には、明らかに非正規雇用が多いという現実があります。これは沖縄のみならず全国的な状況と思いますが。その場合、現在国と県が支出している、各飲食店向けの補助という、実際の金銭というものが、勤めている方々の生活の保障としてきちんと割り当てられているかどうか、ここが表に見えにくいという現実があるわけです。
徳田 そうなんです。お店には行くけれど、従業員にはいっていないことがある。この従業員が、症状が出ても隠してしまう。もし陽性になったら2週間隔離の間、日当も出ない、仕事にも行けないということで。それはもう生活ができない。ただでさえ、いろいろなことでお金が必要じゃないですか。貧困状況も沖縄、厳しいですから。そして子供の学費とか、養育費もありますし、家賃、水道光熱費、借金もあるかもしれない。そういうことをきめ細かく考えずに、ただ単に症状が合ったら自主隔離2週間とか、検査しに来なさいとか言っても、これはなかなか来ないですよ。その挙句、陽性者が出たら、店にはバッシングが来るわけですから。それはみんな隠しますよ。
アーサー うーん。この辺りをきちんと払しょくしつつ。今お話が出た、様々な業界と連携しながら経済活動を下支えというものをとりつつ、コロナ対策にきちんとつなげていくということが必要ですね。
徳田 政府の分科会もそういう飲食店の従業員の代表者も入れた方がいいですよ。しかも若い子たちがどういう動きをするのか、その代表者も入れた方がいいですね、20代30代、40代の。その人たちしかわからない動きというのがあるんです。それをウイルス学舎の人たちとかわからないんです。
アーサー 確かに。その辺のズレというのは必然ですよね。
徳田 はい。生活に困っている人たちの動きというのもわからないわけです。ウイルス学者の人たちが理想論を言っても、家から一歩も外に出ないで生活できるのかという、あと、家族が何人もいて、家族と接触しないで、家族に感染伝播しないで暮らすことができるのか。医療知識がない人たちにそれをさせる、やりなさいというのは、酷じゃないですか。2週間もそうしていなさいと。もし、感染が起こった場合、その家族の中でも人間関係がこじれると思わないんでしょうか。もし親にうつして、親が人工呼吸器につながったりしたら、そのは親に対して、親も子供に対して、どういう気持ちになるのか、考えたことがあるのかと思います。
アーサー 本当におっしゃるとおりです。
徳田 一言で、「4日はウチで」とか、「濃厚接触者は自宅で療養」とか、一言で、あるいは一行ですむようなことかもしれませんけど、それはさまざまな人間にたいへんなことを強いているということ。これを理解してほしいなと思います。社会全体をみなければいけないと思います。
アーサー おっしゃるとおりですね。そしてもうひとつ、今回の提言で欠かせない、ことに沖縄には欠かせない水際対策というところがあります。
沖縄の場合ですと、空港、港という入り口が、間口が限られているという前提があるんですが、現在取り組んでいるサーモグラフィーで発熱をチェックするということですと、以前も徳田さんからお話ありましたが、やはり現実的に機能していない。
徳田 サーモグラフィーで引っかかるのは数パーセント(陽性者が?)といわれていますから。ゼロではありませんからやるのはいいです。ただ、それだけで「やってる感」を出すというのは、これは演出といわれても逃れられないですね。もっといろいろな方法が世界中で使われているわけですから。例えばハワイでも、国内フライトに対してPCR検査を義務化しています。それを今、民間の検査会社でもできるようになっていますから、それを導入すればいいだけです。
アーサー これはPCR検査を受ければ、フライトとして移動するという前提だった場合ですが、PCR検査を受ける前は、出発直前での検査でしょうか?
徳田 できれば24時間以内ですね。
アーサー このあたり、先ほどの抗原検査キットとの組み合わせということはどうでしょう。
徳田 もし抗原検査でやるとしたら、1階だけではなかなかキャプチャーは難しいということになりますから、前後で少なくとも2回。出発前と到着後ということで義務化してもらうと。それでみんながやってくださいということにすればいいわけです。
アーサー フライトに関してはそこがスタンダードになると。もうひとつ、私、思いましたのは、例えば抗原検査の簡易性と短い時間での確認ということをうまく組み合わせてキットが配布できるのであれば、沖縄ではレンタカー会社あたりがひとつ、カギを握るのかなということです。不特定多数の方が車両をまたぐという前提があるので、双方の安心というものを少しでも担保するという意味では、やるといいのかなと思いました。
徳田 ●●がリスポンスシブル・ツーリズムについて、雑誌『世界』に書いています。旅行者にも責任をもつという、安心安全のツーリズムがこれからは必要だと。これは副知事が書いてますよ。それをやっていないわけですね。どこが安心安全なのか、サーモグラフィだけで。「やってる感」といわれるのは免れないでしょう。
少しでもリスクを下げるようなことをやるというのが、もしやらないのなら2週間隔離ということになりますよ。
アーサー 到着後ですね。
徳田 はい、検査をやらないのであれば2週間隔離になるわけです。本来であれば、島のエリアというのはプロテクトされているんですよ。実はコロナから守りやすい。やり方次第です。ところができていない、そこで、雑誌『女性自身』(2021年1月5日・12日合併号)の「全国知事のコロナ対策ワーストは?」という記事で、沖縄県知事は残念ながらワーストワンになってしまいましたが。
アーサー 私も読みました。
徳田 私もびっくりしました。我々の提言を取り入れてやっていればワースト1位にはならなかったと思いますね。とにかく沖縄にとっては水際対策というのは大事です。
アーサー このあたり、初期の段階での移入例を紹介した時にも徳田さんから情報発信があった部分なんですけれど、この水際での移入を抑えていくメリットというのは、島国である沖縄県にとってはとても大きいですね。
徳田 特に小さい島が危ないんです。小さい島でバンバン人が入ってくる。ですから今、石垣島、宮古島。石垣島は県立八重山病院があって、私もそこに勤務していたことがありますけど、そこがコロナの患者さんがオーバーになっているという記者会見をしていますが。やっぱり(本土からの?)直行便があると、どんどん入ってくるわけです。今もう、何千人と東京からやってくる。ところが石垣空港ではサーモグラフィーしかしていない。それではコロナは入ってきます。ノーガードでコロナと闘っているようなものです。それで勝てるのかという話です。
アーサー このあたりを含め、21年のコロナ戦略については、来月2月には1月の時短営業というのが解除になります。その後の状況を加味しつつ、改めてお伝えできればと思っています。来月もどうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
徳田 よろしくお願いします。
『科学』2021年2月号 巻頭エッセイ「「ゼロコロナ」を目指せ」
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/
『科学』2021年2月号 「ゼロコロナを目指すための検査戦略」*印刷前プレプリント
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_202102_Tokuda2-preprint.pdf
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